84 今のところ安全 (1/3) ◆Hx2CWeG5HI sage 2009/06/23(火) 06:44:00 ID:yZcYW1qu
ここは、どこだ…
目を開けば、そこは知らない天井だった。
俺の部屋は木目上の天井だ。
だが、ここは…薄暗くて良く分からないが、おそらく白い。
まるで一昔前の病院のような…
…動けない。
指一本たりとも。
首を曲げることすら出来ない。
そのため自分の身体を見ることすら出来ない。
ただ、天井を見続けることしか出来ない。
そもそも俺は服を着ているのか…
それすらも分からない。
俺の触覚はちゃんと生きているのか…
「よっちゃん」
声が、聞こえる。
この声は…
姉さん…なのか…
姉さんが、俺の顔を覗く。
胸から上しか見れないが、何も纏ってないような気がするな…
姉さんと呼ぼうとしたが、声が出ない。
口が、喉が、動かない。
「私の愛の力で動けないよ」
意味分からん…
というか何でこんなことになってるんだよ。
「もちろん、よっちゃんと一緒になるためだよ」
分かるように答えてくれ。
そもそもなんで俺が言おうとしていることが分かるんだよ。
「よっちゃんのことならなんでも分かるよ」
説明になっていないぞ。
…ところでここはどこなんだ。
「二人だけの世界だよ」
頭、大丈夫…じゃないな。
「大丈夫。今は分からなくてもその内分かるから」
…そうかい。
説明する気がないってことは分かったさ。
で…帰らせてくれないか。
「だーめ♪」
なんでだよ。
「だってよっちゃん…私のこと見てくれないんだもん」
は?
今現在お前をガン見してるんだが。
動けないし。
85 今のところ安全 (2/3) ◆Hx2CWeG5HI sage 2009/06/23(火) 06:44:31 ID:yZcYW1qu
「…よっちゃん、わざと言ってるの?」
何がだよ…事実だろ。
「やっぱりよっちゃんは馬鹿だね…」
悪かったな馬鹿で。
「うん悪いよ。私のこといっつも放って他の女のとこに行っちゃうんだから」
…は?
「よっちゃん馬鹿だから…すぐに誘惑に乗っちゃうんだもん…ひどいよ…」
他の女って…彼女を作って何が悪いんだよ…
「だからね…私しか感じられないようにしてあげる。そうすれば私から離れられないもんね♪」
何をする気だ。
質問には答えず、姉さんはどこかに消えた…
かと思ったらすぐに俺の視界の中に戻ってきた。
大きな鋸と共に。
「まずは脚からね」
おい…まさか…
「脚があるから離れていっちゃうもんね…大丈夫だよ。よっちゃんここから一歩も動かなくてもちゃんと私がお世話してあげるから」
やめろ!やめてくれ!!!
「だーめ♪やるときは徹底的にやっておかないとね」
ぎこぎこと肉を、骨を削り切ろうとする音が聞こえる…
いやだいやだいやだいやだ…
「…出来た!ほら見て、ちゃんと二本とも綺麗に切れたよ!」
血塗れになりながらも、誇らしげな顔で俺に脚を見せ付ける。
これは…現実なのか…?
「じゃあ…次は腕にしようかな」
姉さんが…こんなことするわけ…
「腕があると汚い女狐を抱きしめちゃうもんね…思い出しても腹が立つ…」
夢に決まって…
「…よし!できた!!」
「次は…おちんちんも切っとこうか」
「これがあるから発情期の雌犬が寄ってくるもんね…」
「私以外に目移りしないように眼も潰しときましょうか…」
「彼女が出来たなんて嘘をつかないように舌も切り取って…」
「耳障りな雌猫の声が聞こえないように鼓膜も破って…」
86 今のところ安全 (3/3) ◆Hx2CWeG5HI sage 2009/06/23(火) 06:45:04 ID:yZcYW1qu
――――
「…っ!」
声にならない声を叫ぶ。
目を覚ませば、よく見知った光景だった。
ここは…俺の部屋か…?
そうだ、身体は!?
慌てて布団から飛び起き自分の身体を見てみたら特に何もなかった。
そうか、夢…だったのか…
「どうしたのよっちゃん!?大声上げて!?」
扉を勢いよく開けて姉さんが飛び込んでくる。
ああ、夢でよかった…
「なんでもないさ…ちょっと変な夢を見ただけだ」
「もう…なによそれ…変な声出さないでよね!夜だっていうのに近所迷惑でしょ!!」
「俺だって出したくて出したわけじゃねーよ…」
ああ…これが現実か…
これがいつもの姉さんか…
「…なんか全然元気ないけどそんなに変な夢だったの?」
「ああ…なんか俺が姉さんに切り刻まれてたんだよ…女が寄り付かないようにって」
本人に何言ってんだよ…
相当参ってるな俺…
「もう…まだそんなことするわけないでしょ。よっちゃんわたしにべったりで彼女一つ作れないのに」
ゆっくり近付いてくる。
「怖い夢見たんだね…じゃあわたしが一緒に寝てあげるよ。これなら怖くないよね?」
ベットに乗り、押し倒してきた。
そしてすっかりずれていた掛け布団を、掛け直す。
夢の内容的にお前が怖いんだが…
「姉さん…別に一緒じゃなくていいんだが」
「いいでしょ…たまには甘えさせてよ」
「…怖くないようにって言ってたけど、ただ単にお前が甘えたかっただけかい」
「えへへ…」
やれやれ…
「まあいいか…おやすみ、姉さん」
「おやすみ、よっちゃん」
瞼を閉じる。
今度は悪夢を見ないことを祈りながら、意識を手放した。
最終更新:2009年06月28日 21:14