723 :
三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/10/29(月) 18:16:04 ID:7mLJx4m4
「せ、先生……?」
白いカーテンで仕切られたベッドの上。シーツの上で横たわる僕を高倉先生が見下ろしていた。
「気がついた? 誠二くん」
まどろみから覚めた僕に気付くと先生はえへへと長いまつげを揺らして猫のみたいににっこりと笑う。
なんだかおなかが重いなぁ、と思ったら先生は膝立ちで僕の体を跨いでいた。そのせいで先生のタイトスカートはぴんぴんに横に引っ張られていた。
「あ…、あれ? な、僕、なにかしましたっけ?」
えーっと、記憶を思い返してみる。確か、
姉さんに手のひらで打たれたことは覚えて……、
そうだ、ぶたれてぶたれて打たれまくった。家にいた頃のように。いや、むしろそれまで以上に多かった。何度も何度も。
意識がおかしくなるくらいぶたれたのは久しぶりかもしれない。これだけぶたれたのは何年ぶりだろうか、えーっと……?
ふわり。先生の手のひらがやさしく僕の頬を撫でた。
「まだ、痛むかしら?」
「あ、いえ」
痛みは感じられない。でも、あの時のぶたれた感触は容易に思い出せる。それを思い出せば、心を伝わって頬に痛みが蘇りそうだった。
「腫れています?」
「ううん。大丈夫。綺麗なままよ」
よかった。おたふく風邪みたいに腫れ上がってたらクラスメイトに見せられなくなる。僕は安堵の息をついた。
「お姉さんに何度もぶたれたって聞いたわ。大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
慣れてますから、そう続けようとして一瞬で飲み込んだ。
「先生。いま、何時ですか?」
いま僕がいるのは保健室だということは理解できていた。時ノ瀬先生がボロボロになった僕を運んでくれた後、ベッドに寝かせてくれたのだ。
ビンタぐらいで寝かせるなんて、あまり聞いたことない話だけど、時ノ瀬先生の風貌(Tシャツに白衣に裸足でサンダル履きそして土足)が許されている時点でもうアレなので、そこらへんは変に納得してしまう。この先生にこの処置あり。
そうして、ベッドに入れられた僕はお言葉に甘えてそのまま寝付いてしまったみたいで。そして、気がついたときには先生に跨がれていたというわけである。
というわけって?
「んーっと、四時前ぐらいだわ」
先生が腕に巻いた小さな腕時計を見て答えてくれた。大体六時間目終わってHR終わって何分かぐらいだから……。僕かなり寝てるぞ。
あー……、そっか。昨日先生のうちに泊まって寝不足だったからだ。……だって先生激しいんだもん。
「じゃあ、もう放課後なんですね」
僕が体を起こそうとすると先生は潤んだ瞳でえへへと笑い、僕の両肩を掴んだ。僕の体はぐいと体重を押し込まれ、そのままパイプベッドの白いシーツに体を戻してしまう。パイプベッドの揺れる音にあわせてギシシと軋む音が響く。
「待って」
「あれ、先生?」
僕が疑問の声をあげると、先生はまた僕の頬を撫で始める。なんだか、肌質やかすかに生えた産毛をさわさわと撫ぜうっとりとした顔になっていく。かすかに口元からじゅるりと唾液をすする音が聞こえた。
「本当に綺麗なまま……」
すりすりと僕の頬を先生は優しく丁寧に撫ぜ続けている。くすぐったくて僕は体をよじって逃げようとするが先生に跨がれてるのでうまく動けない。
というか先生が僕の下腹部に腰を下ろしていて、ぷっくり膨らんだスカートの中身が当たってる。あそこに……。
「せ、先生っ」
汗がぶわっと噴出す。せ、先生。まさか、こんなところで!?
「ねぇ、もうすぐ職員会議だからさ。その前に一回だけいいでしょ?」
ねとつく視線を僕の体に彷徨わせ、先生の細指が僕のカッターシャツのボタンに伸びた。ぷちりと音がして首元のボタンがひとつづつ外されていく。
第三ボタンまで外されたとき、ようやく僕は声を出した。
「だ、ダメですよ! 先生っ」
「なんで?」
「学校の保健室じゃないですか!」
「燃えるでしょ?」
「ダメダメ、危なすぎますよ!」
「10分で済ませるんだから大丈夫よ」
「だって、保健室ですよ! 誰か来たらどうするんです」
724 :三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/10/29(月) 18:17:03 ID:7mLJx4m4
というか、こんな状況なのに誰か保健室にいないのか? 養護の時ノ瀬先生がいるはずですよ!
しかし、そんな僕の心情とは裏腹に先生は終始落ち着いていた。なにか絶対に大丈夫という確信を持っているみたいだった。
僕のカッターシャツのボタンを全て外し終えた先生は、楽しげに口笛を吹いて僕の胸をはだけさせた。タンクトップごしに先生のひとさし指がつつくように動いて
「まぁ、口ではそんなこと言いながらも、こっちはそう思ってないみたいだけど」
うわぁ、ありがちな台詞と返す間もなく、先生は押し付けているタイトスカートの中にある膨らみを下着の布ごしにゴシゴシと僕のズボンを擦るように蠢かせる。
先生のスカートはズボン越しの僕の熱を持った棒に狙いを定めていた。そりゃあ、僕もいっぱしの男子学生であるわけで、さっきからずっと押し付けられている先生の柔らかな感触に、舌のほうも反応してしまっていた。
先生はそれに気付くと、頬をピンク色に染めてはぁはぁ熱い吐息を混じらせ、腰の重力移動を強くする。ぐにっぐにっと先生の大事なふくらみに潰される刺激に僕の下の棒はどんどんと熱を上げて膨らんでいった。
「ふふふ。こんなに大きくなっちゃ私が帰ってくるまで待てないよねぇ? 誠二くんは動かなくていいから。ぜーんぶ先生に任せてね」
先生の体が浮いて、棒にかかっていた柔らかな圧力が消える。見下ろしてみると僕のズボンは明らかに縦に一本膨らんでいた。先生の細長い指が僕のズボンのジッパーを抓むとゆっくりと手を下ろしていった。
ちーーっ。
「ちょっちょっ!」
慌ててズボンを抑える。しかし、先生はそのズボンを抑える僕の姿に妙に萌えたらしく、鼻息をぷすぷすと荒くし、口元をにんまりと歪めて意地悪く笑った。なんだか背中から黒い翼のシルエット見えそうだ。
「そうやって抵抗する姿も可愛いんだから……。もぅ、いただきまーす♪」
「やめんかい」
その言葉と同時に白いカーテンが勢いよく開かれた。
まさか、バレた!? 体が恐怖に硬直する。
カーテンを開いたのは時ノ瀬先生だった。ぼさぼさにうねる長い髪と『定期預金』と描かれたTシャツに白衣といういつもの格好で、呆れた顔でベッドで倒れている僕らを見下ろしていた。
「せ、せんせいっ!?」
「ったく、人が人払いしてやって見舞わせてやってるのに、調子に乗りおって……。私のベッドで狼藉を働くな」
「むぅー、時の字のいぢわる」
体中の毛穴という毛穴から冷や汗を噴出している僕とは反対に、高倉先生はまるで悪戯をしている現場を母親に見られた子供のような態度で、僕から体を離さないまま時ノ瀬先生に不満の声をあげた。
「あ、言っとくけど時ノ瀬先生は私たちのコト知っているから。大丈夫」
高倉先生は僕の様子に気付いて、軽く説明してくれた。本当かと思い、時ノ瀬先生へ視線を移すと、時ノ瀬先生は呆れた顔で僕らを見ていた。視線が少し痛い。
「ほら、良子先生。さっさと職員会議にでも行け。10分で済ませるとか言ってたがもう時間無いぞ」
「え、あ。本当だわ」
先生が保健室にかかった時計に視線を移すと、軽く驚いていた。先生の腕時計にズレがあったのかな。
「ごめんね。誠二くん。つづきは帰ってからね♪」
僕のおでこを人差し指でつんと突いて言い聞かせる高倉先生。でもどっちかといえば僕が先生に突っつく方じゃないのかな。この立場だと。
そんな風に思いつつ体を起こすと、先生はベッドから降りてぶぅぶぅと時ノ瀬先生に文句を垂れていた。しかし時ノ瀬先生は文句が言える立場かと一喝して、出入り口に顎を向けて外へ促した。
僕もベッドから降りる。確かに、時ノ瀬先生がちゃんと人払いしていたようで保健室には僕以外生徒の姿は無い。白いカーテンがさっと窓を遮っていて、きちんと外からを見えないようにされていた。
よかった。本当によかった。危ない危ない。
時ノ瀬先生と高倉先生はまだうだうだ愚痴っぽく話していた。その二人の横を通り過ぎる。僕のカバンはここには無い。さすがにカバンまでは持ってきてくれなかったらしい。じゃあ、あとで教室に取りに帰らないと。
「じゃあ、またね。」
ちゅっ。
出入り口へ向かう高倉先生とのすれ違いざまに、お互いの唇が軽く合わさった。啄ばむようなキス。
ばいばいのキス。
僕の頬がぽぽぽっと熱をあげる。
高倉先生はそんな僕にニコリと子供みたいに笑うと、ばいばいと手を振って保健室から出て行った。
はぁ、とため息。
725 :三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/10/29(月) 18:17:44 ID:7mLJx4m4
「良子先生の世話は大変だろう? 君なぁ」
そんな僕の肩をやさしく叩く時ノ瀬先生。そういえば、時ノ瀬先生は僕と高倉先生の関係を知っているんだ。僕は誰にも喋ってないから……、高倉先生が喋ったのだろう。
ん、じゃあ仲いいのかな…?
「あの、時ノ瀬先生……」
「良子先生とは大学の頃の友人だよ」
時ノ瀬先生はすぐに察したのか、すぐにイロイロと教えてくれた。
時ノ瀬先生いわく。高倉先生とは大学の頃の先輩後輩の間柄だったらしい。高倉先生が先輩で時ノ瀬先生が後輩。なんだか雰囲気的には立場逆のような気がするけど、そうらしい。
で。たまたま同じ学校に来て、僕のことについては高倉先生はよく時ノ瀬先生に相談していたとのこと。相談と言っても愚痴や僕に対するのろけが主だったらしい。
それにしても、普通生徒と付き合っているとか言われたら止めたりとか反対したりとかしないんだろうかと思ったが、
「良子先生は頑固でな。一度これと決めたら神に咎められようが、曲げん。私の反対なんてどうせ無駄だよ」
と、先生は苦笑した。
でも、僕らの関係を秘密にしてくれたり、保健室に運んで人払いして高倉先生と二人っきりにしてくれたりと、かなり気を回してくれている部分、時ノ瀬先生は高倉先生を嫌ってはいないよう。
時ノ瀬先生はパイプ椅子に腰掛けると、白衣のポケットからタバコを一箱取り出した。保健室で喫煙はダメなんじゃないかという僕の視線を無視して、先生は一服を始める。
ぷはぁーっと、先生が吐いた白い煙は天井まで昇り、通風口へ吸い込まれていった。
「先生。僕を保健室まで運んでくれたのは先生なんですよね?」
「ああ。たまたまそこを通ったときに、やったらばちーんばちんと叩く音がしてな。女子生徒がキャットファイトでもしているのかと思って覗いてみたんだよ。あ、もちろんキャットファイトでも注意するつもりでだぞ」
すると中に居たのは延々と抵抗もせずに頬を叩かれている僕だった。
「こりゃ珍しいと思ってしばらく様子を見てたんだよ」
早く止めてください。
「最初は恋人が浮気していた怒られているのかと思ったんだが……。だんだん妙な雰囲気になっていてな。しかも叩かれている奴を見ると、良子先生がいつも話している君だったんだ。そこでさすがにおかしいと感じて止めに入った」
「じゃ、叩かれているのが僕だったらまだ見てるつもりだったんですか……?」
「そこはノーコメントだ」
ぐりっ。
時ノ瀬先生が携帯灰皿の中にタバコを押し込んだ。ほとんど吸ってないのに。贅沢な吸い方だなぁ。
「ところで……。沢木誠二くん」
「はい」
「君のお姉さんについて聞かせてくれないかな?」
「え?」
先ほどまでの野暮ったい表情から一転、真剣なまなざしを僕に向けて放ち先生は言った。
「姉さんのことですか?」
ああ。と頷く。
「どうしてです?」
「カウンセリングみたいなものだよ。答えなくなかったら答えなくて良いからちょっと質問に付き合って欲しい」
はぁ。僕は軽く頷いた。
「今日君の頬を叩いていたのは君の姉さんでいいのだな?」
「はい。僕の姉さんです」
千鶴姉さん。僕よりずっと優秀でずっと凄い姉さん。
「ああいうのはしょっちゅうなのか?」
「しょっちゅう……?」
「ビンタだよ」
ばしーんっ。
ああ、僕の頬にあの感触が蘇ってきた。鋭い痛みの連続。
「えーっと、あんなにぶたれたのは久しぶりですね」
「ふむ。ぶたれることは日常茶飯事なのかい?」
「いや、無意味にぶたれることは無いです」
そうか、と先生は呟く。
そのまま先生は考え込むように口元に指を当てて、黙る。ペンをくるくると回し、とんとんと机を叩き、時折なにかううんと呟く。
僕は不安になって声をかけた。先生はそれに頷き、ぼりぼりと頭を掻く。
「……実はな、君の姉さんのことについていろいろと良子先生とも話しているんだが」
「え?」
高倉先生が? 僕の姉さんのことについて?
たしか、高倉先生と姉さんがきちんと顔を合わしたのはあの三者面談のときだ。いや、学校ではなんどか顔を合わしているはずだけど、ちゃんと面と向かって話したのはそこが最初だと……、先生はそう言っていた。
それ以降、先生が姉さんのことを話題にしたことは無い。いや、僕が姉さんのことを話そうとすると嫌がり、話題に上らないように阻止された。
……待てよ。そういえば、先生は三者面談の時、はじめて逢って話しをしたって言ってたよな……。
726 :三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg :2007/10/29(月) 18:18:27 ID:7mLJx4m4
三者面談で初めて話す先生が進路について指導するって、なにかおかしくないかな?
それに、先生は姉さんのことについて話題に出すのも拒否するのに、あの時は積極的に姉さんを呼ばせるようにセッティングしていた。姉さんと僕と先生、あの三人が集まるように動いていた。
先生いわく、三者面談に僕を呼んだのは「君のお姉さんを説得できるのは誠二くんだけだから」と言っていたけど。僕が姉さんを説得なんて出来るわけが無いのにね……。
なんだか、引っかかる。
「…………」
あ、しまった。考え事に夢中で時ノ瀬先生のこと忘れていた。慌てて意識を先生に戻す。
「……先生?」
しかし、先生は無言のまま僕を見つめているだけだった。いまなにか話しました? いや、話してない。さすがに意識は無くても言葉が発せられていたかどうかはわかるし。
時ノ瀬先生は僕を見つめ、10秒ほど無言のまま止まり、なにかを言いたげに口を開こうとするが、すぐに閉じて、ふるふると頭を横に振る。そして、雰囲気に似合わない小さなため息をつくと、
「すまん。やっぱり今のは忘れてくれ」
「ええ?」
言いかけてやめるって。
僕がそう言おうとするが、先生も申し訳ないといった顔ですまんと呟く。
「もう少し時間が経ったら言おう。ちょっと、私の口からは言いづらいことなのだ」
先生は左手を頭にあてて、本当にばつが悪そうに言った。いつもクールな先生とは違う、なにか納得のいかなさだけが残される。
僕は文句をいいたくなったが、ここは空気を読んで素直に頷いた。
教室でカバンを回収する。机の上には今日配られていたらしいプリントが数枚置いてあった。なんてことない、ボランティア参加のお知らせだ。
学校の周りの掃除何とか空き缶拾いとか、先生も参加するのかな?
とりあえず折りたたんでカバンの中に入れておいた。
……ん、そういえば。携帯電話が無い。
ポケットを探るとあるはずの四角い感触。それがぽっかりとなくなっている。あれ? いつのまに……? 思い出してみれば、保健室に居たときから僕のポケットにその感覚は無かった。
じゃあ、どこに? 落としたのかな……。記憶をたどる、たどる、たどる…。あの時にはあった、あのときにはあった……、最後に……。
あ、姉さんにビンタされた時。あの時に腰が砕けた拍子に、ポケットからすべり落ちたのかもしれない。
カバンを掴むと、僕は教室を出て、あの空き教室まで移動する。まだ姉さんがいるかと思って警戒していたが、さすがにあれから何時間も経っている。
おそるおそる中を覗くと、姉さんはおろか誰の姿も無い。もぬけの殻。ホッと息を吐く。
明り取り用の窓のみの暗い空き教室の床を僕は見て周る。目立つ色だからすぐ見つかるはずだけど……。何かをカツンと蹴った。床を滑って良く光るなにか。
あ、あった!
この携帯電話には僕と先生のメールのやり取り(ラブメール多し)が入ってるんだ。
一応ロックはかけているけど、バレたら先生はこの学校を去らなきゃいけない。よく考えればそう簡単に無くすわけにはいかない物だ。
それを右手で拾い上げる。
が、僕の携帯電話は持ち上げた途端、折りたたみ式携帯電話のディスプレイ部分がぼろりと落下した。
「え?」
カツン、コロコロコロ……。
僕の携帯電話はボロボロに折り潰されていた。
最終更新:2007年10月30日 12:29