63 二進法に生きる僕達・前編 ◆EY23GivUEuGq sage 2009/07/30(木) 07:57:03 ID:DXDwcUD6
「ほら、この画面を見てごらん?」
パソコンに映し出されているのは『0』と『1』という数字のみ。
このたった二つの数字が複雑に、法則性も無く、ただただ画面いっぱいに広がっていた。
「なあに、これ?」
「これはね、この世界のすべてよ」
姉はまるで魅入っているかのようにウットリと画面を見つめている。
幼い僕はそれが何なのか、そして姉の答えの意味すらわからぬまま同じようにパソコンの画面を見つめた。
「このパソコンの中ではね、0と1しか存在しないの。このたった二つの数字だけ、ね」
「うそだぁ! だってぼくが、この前つかったときはちゃんと他の数字がでたもん!」
「そうね。でも、その他の数字はこの0と1によって作られた、いわば『偽りの存在』でしかないの」
姉はギュッと僕の肩を抱き、細く白い指で優しく髪を梳いてくれた。
「例えば、01・・・これが『2』。10・・・これが『3』。100が『4』。101が『5』。110が『6』・・・」
「う~? わかんない・・・」
「・・・ごめんね。宗一にはまだ難しかったかな」
Deleteキーを押し、打ち込んだ数字を消してゆく。そしてもう一度力強く僕を抱きしめた。
背中越しに感じる体温は温かく、心が安らぐ。甘えたい年頃の僕は姉に全体重を預け、心地よい感覚に酔いしれた。
「つまりね、このパソコンの中では0と1があればその他全ての数字が表せるの。0と1さえあれば・・・他の数字の存在は必要無いのよ」
カタカタ・・・と今度は漢字で『零』と『一』を書き出した。
「あ、この漢字しってる! お姉ちゃんとぼくのなまえ!」
「大変よくできました」
にっこりと笑って僕の頭をグリグリと撫でる。そして空いた手で
姉と僕の名前を打ち込んでゆく。
天沼 零那(あまぬま れいな)
天沼 宗一(あまぬま そういち)
はしゃぐ僕をあやしながら姉は何を考えていたのだろう。今になって思うのはそんな事ばかりだ。
0と1。この頃から姉は僕のことを『そんな風に』見ていたのだろうか。できれば知りたくは無かった、あんな事を。
「そういえば。ねぇ宗一、この『0』と『1』って数字、男と女の『アレ』に似てると思わない?」
「『アレ』? ・・・ってなに?」
心底不思議そうな顔をする僕に姉は「もう少し大人になったらわかるわ」とだけ答え、パソコンを閉じた。
64 二進法に生きる僕達・前編 ◆EY23GivUEuGq sage 2009/07/30(木) 07:59:18 ID:DXDwcUD6
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僕の姉、天沼零那を人は「神童」と呼ぶ。
主にその才能は数学に関して発揮され、僅か9歳で世界の数学者が頭を悩ませている数式をいとも容易く解いてしまうという怪物ぶり。
まだ小学生の子が、それも美少女が世界的な学者を抑えての快挙を成し遂げたとして、メディアはこぞって姉を取材した。
その後もいくつかの数式を解読し、発表するとその名は海外まで知れ渡り、一躍姉は時の人となった。
が、こうした姉の露出にいい顔をしない者たちも居た。そう、世界の数学者達である。
長年の学者としてのプライドをズタズタに引き裂かれ、その研究者としての価値さえも消えそうになった時、彼らは強行策に出た。
プライドを捨ててでも、学者としてい続けたい。彼らは姉から高額で学会で発表する「権利」を買い取り、姉の手柄を手に入れたのだ。
姉が一つの数式を解くと学者たちは我先にと金額を張り合い、その数式を自分のものにしようと争いだした。
結果、神童・天沼零那の名は次第に忘れ去られ、我が家に残ったのは家族が一生分遊んで暮らせるだけの莫大なお金だけだった。
「あらぁ? なにしてるのよ宗一」
「何って・・・受験勉強だよ」
中学3年生の夏休みといえば決まっている。無論、受験勉強である。
3年間続けてきた部活動を引退し、いよいよ勉学に力を入れていくと決め、問題集のページを開いた矢先だ。
豪華なネグリジェに身を包んだ母が寝起きの顔を晒して僕の部屋に現れたのだ。
「今日から夏休みだろ。この夏は最低3冊は問題集を終わらせるって決めてたん・・・」
「なぁにあんた、まだ高校行くつもりなのぉ?」
はい出たよ・・・。勉強しろ、の怒声もそうだがこういった受験をしないこと前提の台詞も酷くテンションが下がる。
走り出したはずのペンは動きを止め、ウンザリした顔でジロリと母を睨んだ。
「高校なんて行く必要ないわよぉ。将来働く必要だってないんだしぃ。中卒で十分じゃなぁい」
「・・・あのね母さん」
コメカミあたりがピクピクしてるのを感じながらできるだけ穏やかに答える。
「僕は中卒なんてまっぴら御免なんだよ。出来るだけいい高校に入って、いい大学を出て、いい会社に就職して・・・」
「ふぅん、いい高校ね・・・。で、その高校はいくら払えば入学できるのぉ?」
「なんでそこで裏口入学の話になるんだよ!? 僕は自分の力で合格したいんだってば!」
「義務教育でもないのになんでわざわざ高校なんかに行きたいわけぇ? パパやママみたいに遊んで暮らしましょうよぉ」
なんで、なのだろう。たぶん理由としては2つある。
1つはこの両親の反面教師、ということ。
「裕福すぎる生活は人間を堕落させてしまう」他でもない姉の言葉だ。僕自身もその通りだと思う。
この両親を見ていればわかる。いかにお金に溺れた者の心が醜くなるのかを。
だから、こうはなるまいと。お金に頼らず自分の力で人より偉くなって見せると。そう決めていた。
もう1つは姉の存在である。
前述の通り、姉は神童と呼ばれる天才児だ。今の僕の歳にはもう特別編入した大学を卒業し、様々な研究室から声が掛かっていたはずだ。
そんな神童の血を分けた弟であるはずの僕は? ・・・残念ながら普通の人間としか言い様がない。
何かに天才的な才能があるわけでもなく、勉強も、事もあろうに数学が一番苦手というのがなんとも皮肉が効いている。
そんな姉に少しでも近づきたくて、彼女の弟と言われても恥ずかしくない人間になりたくて。
がむしゃらに良い高校、良い大学、良い会社を求め、結果を残そうと奮戦しているのだ。
「何をしているの、母さん」
母の後ろから影のように近づいてきたのは、正真正銘我が姉、生ける天才・天沼零那その人である。
僕より7つ年上の22歳。幼少の頃の美しい顔立ちはそのままに、スタイル良し、器量良し、おまけに富豪という完璧ぶりだ。
今まで何回お見合いの類の話が舞い込んできたかは定かではないが、とにかくまぁモテる。有り得んくらいモテなさる。
とはいえ、その全ての話を蹴って未だ僕にべったりなのは彼女がブラコンだからなのだろうか。
いや、考えすぎか。
65 二進法に生きる僕達・前編 ◆EY23GivUEuGq sage 2009/07/30(木) 08:01:17 ID:DXDwcUD6
「お、おおお、おはよう、零那ちゃん」
母の寝起きのボケ顔がみるみる引きつり、曲がっていた腰はシャキッと伸びた。相変わらずこの変化は見ていて愉快だ。
「宗一に何を言ったの?」
眉一つ動かさずに姉は淡々と詰め寄った。
母は、というより両親は姉に頭が上がらない。それもそのはず、今の富豪生活は姉のもたらしたものだからだ。
もし姉の機嫌を損ねようものなら、両親が現在湯水のように使っているお金が使えなくなる。
最悪、親を捨てとっとと一人暮らしでもするかもしれない。そう考えているのだ。
そう考えると姉のお見合い事情も、両親の思惑が絡んで意図的に破棄させている可能性もある。
「な、何も言ってないわよ? べべ勉強頑張ってるかなって思って・・・ねぇ?」
母が祈るような顔でちらりとこちらに目を配らせる。
反論しようと思ったが、面倒なことになりそうなのでやめておいた。素直に頷いておく。
「そう」
スタスタと母の前を横切り、僕の肩越しに机を覗き見る。
「あら、新しい問題集ね。どう? 進んでる?」
「今始めたばっかりだよ」
母さんのせいで手が止まったけど、と付け加えようとしたが母が手を擦り合わせて拝んでいるのを見てこちらもまた止めておく。
なんというか、母親の威厳のようなものがまるで感じられないのはいかがな物だろうか。
兎にも角にも母は去り、姉の監督の下再び勉強が再開されることとなった。
カリカリカリ・・・。聞こえるのは僕の奏でるペンの音と外の蝉の鳴き声。姉は物音一つ立てずに僕のペンを見つめる。
「宗一はどこの高校を狙っているの?」
僕の勉強の邪魔をしない為か、小さく掠れる様な声でそう尋ねられた。
「うーん・・・。とりあえず第一志望は陽明院(ようめいいん)かなぁ・・・」
「あら、県下一のとこじゃない。実力のほうは追いついているの?」
「・・・あー・・・合格判定20%未満・・・」
どこまでも凡人というのは苦労する。目の前に迫る高校受験でさえ、遥か高い壁となって立ち塞がる。
こんなところで燻っていながら、姉に追いついてみせる? 無理に決まってる、と心のどこかで叫ぶのが聞こえた。
ペンが止まり、目の前が霞む。ひょっとして僕はあまりに無謀な事にチャレンジしているのではないか。
凡人がいくら頑張ったところで、天才になれる筈も無い。やはり両親の言うとおり、全てを捨てて快楽の生活を選ぶほうが賢いのだろうか。
「まったく。幾つになっても宗一は泣き虫さんね」
え、と反応する前に姉の寝巻きの袖で頬を拭われる。どうやら無意識のうちに涙を流していたようだ。
慌てて後ろを向き、ゴシゴシと乱暴に目を擦る。と、後ろから伸びてきた腕に頭を捕縛され、後頭部から姉の胸元に引き寄せられた。
夏だというのに姉は長袖の寝巻きを好む。その袖の部分で僕の目を覆い、もう片方の手は優しく頭を撫でていた。
「無理をするのはよくないわ」
まるで僕の心を見透かしたかのように、静かに話しかける。
薄手の寝巻き越しに伝わる温かさと柔らかさ、そして顔全体を包むいい匂いによってざわついていた心はみるみる落ち着いていった。
「自分に合った、自分のレベルの高校にしなさい。体面を飾ったところで自分の本質を偽ることは出来ないのよ」
それはつまり、僕にはこの高校は無理だという意味が込められている。
姉の言うことは、過程はどうあれ結果的に正解となる場合がほとんどだ。数学とは基本的に答えは一つであり、その答えへと導く数式を
いかにして解くかを考えるものである。
天才的な数学の才能を持つ姉は、人生においても「最良へ至る過程」を瞬時に、正確に導き出すことが出来るのだ。
「でも・・・。僕は
姉さんの弟なのに、結局普通の人間だ。何かの天才でもなければ、凄い才能がある訳でもない。
姉さんの弟と胸を張って言える為には、結局努力でどうにかなる勉強しか・・・」
「宗一」
66 二進法に生きる僕達・前編 ◆EY23GivUEuGq sage 2009/07/30(木) 08:03:24 ID:DXDwcUD6
頭を撫でていた手を止め、今度は力を込めて抱きしめた。姉は何か大事な話をするときは決まって僕を抱きしめる傾向がある。
「努力をする事は勿論大事なことよ。でも、誰かのために自分を変える必要なんて無いのよ」
「・・・姉さんは恥ずかしくないの? こんな何の取り柄もない僕なんかが弟だなんて言われて。
クラスの奴も言ってるよ。凡人の僕なんかが弟なのは勿体無い、僕の存在が姉さんへの侮辱だって」
別に学校で虐められているわけではない。だが、一時とはいえテレビや新聞で騒がれ、おまけに美人な姉である。
学年を問わず、学校行事などでよく顔を出す姉を半ば狂信者のように崇拝し、親衛隊やファンクラブを名乗る者達までいる始末だ。
クラスの友達だって、その半数以上は僕を通して姉とお近づきになりたい、という一心で仲良くしているだけに過ぎない。
そんな彼らが、よくデパート等で一緒にべったりと買い物をしている姉と僕を見かけてジェラシーを感じないはずが無いわけであって。
「まったく・・・。赤の他人が勝手に宗一の存在を侮辱扱いしないで欲しいわ」
ゆっくりとため息をつき、よしよし、と肩をポンポンと叩かれる。
どうやらクラスでの陰口を思い出してまた涙が溢れてきたらしい。姉の言うとおり、やっぱり泣き虫なんだな、僕は。
「まぁ、そのクラスの連中はあとでぶん殴りに行くとして」
一通り僕が落ち着いた後、姉は顎を僕の頭に乗せ、優しく語り掛ける。
「私は宗一を恥ずかしい、なんて思ったことは一度だって無いわよ。これまで15年間、ずっと見てきたからわかる。
いつだって胸を張って言えるわ。宗一はどこに出しても恥ずかしくない、私の自慢の弟です、って。」
抱きしめる腕に更に力がこもる。包み込む温もりや甘い香りが一層強くなった。
「誰が何と言おうと、あなたは私のたった一人の血を分けた弟なのよ。天才だとか何だとか、そんなの関係ない。
無理してありのままの自分を否定しなくても、私だけはちゃんとそのままの宗一の存在を受け入れてあげるから」
それじゃ駄目? と付け加え、もう一度体全体を使って強く抱きしめられる。
今まで、僕は自分のことを姉の「いらないオプションパーツ」としてしか認識してこなかった。
『お前なんかが』 『君は何が出来るの?』 『それよりお姉さんの話を聞かせてよ』 『本当に弟なの?』 『何も出来ないくせに』
『やっぱり信じられないなぁ』 『DNA鑑定とかちゃんとした?』 『このくらい簡単だろ?』 『なんかがっかり』 『もういいよお前』
比較対象があまりにも凄くて。みんなから愛され、敬われて。結局僕には、皆が期待するものは残されていなかった。
僕は僕としての存在意義が無い。天才と呼ばれる人間の、単なる「おまけ」であり、パーツに過ぎないのだと。
だから自分を変えたかった。誰が聞いても、流石彼女の弟と言ってくれるために。何より姉本人に認めてもらうために。
そうする事でしか、自己のアイデンティティを確立する術は残されていないと思った。
けれども。変わることは無い、そう言ってくれた。
おまけでもパーツでもなく、一人の人間として、自慢の弟と言って認めてくれる人がいた。
凡人でもいいじゃないか。
認められなくてもいいじゃないか。
誰からも見向きもされない人生という耐久レースの中でたった一人、立ち止まって待っていてくれる人がいるじゃないか。
「台詞が臭いよ、姉さん」
「あら、私が言うと絵になるでしょ?」
冷房の効いた部屋の中で姉の体温は心地よく、結局この朝はずっと姉に抱きしめられていた。
もっとも、夏休み初日の朝から勉強なんて馬鹿馬鹿しい、と凡人じみた考えのもと意図的にペンを握らなかったのだが。
「言ったでしょう? 0と1だって」
「は?」
「私にとっても宗一にとっても、互いの存在によって無限の数字を生み出すことが出来るのよ。世界中の人間全てに認められなくても、
私がいさえすれば、宗一は何でも作り出すことが出来る。何だって出来るのよ」
「はは、少なくともデジタルの中では僕らは神様になれるね」
ここで昼食の準備だ出来た、と内線が入った。もう大丈夫、と立ち上がり僕らは連れ立ってリビングへ降りていった。
67 二進法に生きる僕達・前編 ◆EY23GivUEuGq sage 2009/07/30(木) 08:05:29 ID:DXDwcUD6
姉の見つめている世界とは何なのだろうか。
たびたび口にする「0」と「1」。二進法で構成されているデジタルなデータではこの2つこそが絶対である。
「零」那と宗「一」。偶然かどうか分からないが、僕らの名に使われているこの数字のことだとすると、姉は僕と二人でならどんなこと
でも出来るのだと、そう言っているのだろうか。
ならば、姉は僕と何を作り出そうとしているのだろう?
容姿でも、富でも、世の女性であれば羨むほどのレベルに達している姉が、それほどまでに欲しいもの、それは一体なんだ?
「女性の・・・欲しいもの・・・?」
小物やアクセサリーについては違う。姉はあまり興味を示さない。ファッションについても同じだ。
考えれば考えるほど、その全ては基本的に姉の容姿と金で手に入れることが出来る。僕の出る幕は無い。
―――じゃあ僕の存在とは?
姉は言ってくれた。誰が認めなくても、自分だけは僕の存在を受け入れてくれると。
―――なぜ?
弟だから。家族だから。少なくとも他人が見てブラコンだと思われる程度には僕に愛着を持ってくれているのだろう。
―――どうしてブラコン気味?
歳の離れた弟だから可愛いのだろう。僕を抱きしめるのが大好きだし、外を歩くときは人目を気にせず腕を組むし。
―――人目を気にしないの?
恥ずかしくないのかな、あれ。少なくとも僕は恥ずかしいけど。
それとなく姉に聞いたときは「自分の気持ちに正直に。偽りの姿は見せたくない」とか言ってたっけ。
―――偽り?
そういえば姉は「偽り」という言葉をよく使う。数学には「真偽」という分野も有るから、そのせいだろうか。
最初にこの「偽り」って言葉を聞いたのは、確かまだ僕が小学校に上がる前、姉が初めて「0」と「1」を教えてくれたときだった。
『そうね。でも、その他の数字はこの0と1によって作られた、いわば『偽りの存在』でしかないの』
なぜだかあの日のことは、今でも鮮明に覚えている。幼い僕を膝に乗せ、0と1だらけの画面の前でキーを叩いていた。
他にも色々なことを喋っていたはずだ。
『つまりね、このパソコンの中では0と1があればその他全ての数字が表せるの。0と1さえあれば・・・他の数字の存在は必要無いのよ』
必要無い・・・?
姉は何かを欲しがっていたのではないのか? 0と1、姉と僕とで何かを作り出そうとしていたのではないのか?
0と1さえあれば、他の数字は必要ない。それはつまり、姉と僕以外のものは必要無いということで・・・?
何だろう。
何かとても嫌な予感が、これ以上は考えてはいけないような気がした。
しかし、頭の中の記憶は過去の場面をリロードし、ついに最後の台詞を思い出してしまう。
『そういえば』
いけない。思い出してはいけない。姉の言葉に隠された真意に気づいてはいけない。
『ねぇ宗一』
「0」。記号的には穴のように見えなくも無い。「1」は見たまんま、棒だ。「穴」と「棒」、男と女の「穴」と「棒」。
『この『0』と『1』って数字、男と女の『アレ』に似てると思わない?』
姉の言葉はいつだって正解に基づく過程で構成されている。
あの頃から、姉は僕のことを「性的に」欲していた。他の存在を消去し、0と1だけの世界を望んでいたのだ。
最終更新:2009年08月02日 22:48