狂もうと 第1話

318 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/11(火) 11:10:07 ID:9U2RMqv/
仕事から帰ってくるとリビングのテーブルに一つの紙切れがコップの下に挟まれていた。

この家には兄と私しか住んでいないので、兄からの伝言なのだろう。

その紙に書いてある内容を読んでいく。

『今日は友達と食べて帰るから先に食べてていいよ。』

何度も何度も読み返して、確認する。
間違えようがない兄の文字…。

今日は私の誕生日なのに他の人間とご飯をたべるの?家族の私じゃなくて他の人間と?

仕事の疲れも、上司のセクハラも、耐えてこれたのは兄を養う為なのに…。

成人式の日約束したじゃない…。

今の仕事を辞めて家で私の帰りを待っててって…。そしたら変な虫もつかないし、臭いニオイもつかない…。

家の中でなら何をしてもいいんだよ?
ただ、私がいない時に外に出たらダメ。
そうじゃないと、兄の仕事場を倒産させた意味が無くなる。

紙切れを破り捨て、カバンから携帯を取り出す。私の携帯のメモリーには兄しか登録していないので、探し出すのは簡単。

無論兄の携帯も同様に私の番号しか入っていない。


プルルルルルッ――プルルルルル――プルルルルル――ガチャッ

『もしもし…』


319 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/11(火) 11:10:59 ID:9U2RMqv/

「………なんでワンコールで出ないの?いつもすぐに電話にでてって言ってるよね…?」
『いや…友達と遊んでたからさ…』

「友達?今日私の誕生日なんだけど…」

『あぁ…おめでとう』

「ありがとう、今から車で迎えに行くから場所教えて。」

『いや…今日は…』

「場所教えてって言ってるのっ!!!」

『わ、わかったから…もう少ししたら帰るよ…』

「聞こえないの!?今から車で迎えに行くって言ってるのよ!!!」

『わ、わかった…○○っていうファミレスにいるから。』

「そう…怒鳴ってごめんね?今から迎えに行くから大人しく待っててね?」

『…』

「………返事は?」

『あ…あぁ、わかった…』

電話を切り、車のキーを掴み外に走る。

仕事帰りなのでスーツ姿のままだが着替えている時間なんてない…。
一刻も早く兄を家に連れて帰らなきゃ…。
ファミレスなんて誰が作ったからわからないような物を、兄に食べさせられない…家に帰ってきたら喉に指を入れて吐かせてあげよう。


ふふ……待っててね…お兄ちゃん…
326 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/11(火) 20:51:22 ID:9U2RMqv/

車をファミレスに停めて少し待っていると、ファミレスの扉からお兄ちゃんが出てきた……横に汚いゴミを引き連れて。

「…」

「よ、よう…」

「はじめまして、妹さんですよね?」

「そうですけど…どちら様ですか?」
いつまでお兄ちゃんの横にたってんだコイツ…汚い手で誰に触れてんの?

「優君の友達です。」
優…君?
私のお兄ちゃんの名前を……汚らわしい…。

「そうですか。それじゃ、兄を連れて帰るんで離れてもらっていいですか?」

「お、おい」
兄が慌てたように私に話しかけてくる…。
この女をかばってるの…?
家に帰って教えてあげなきゃ…誰が兄の事を一番に考えてるのかを…。

「まだ遊ぶ予定だったんですけど…」

おまえの予定なんか聞いてない。

「そうですか?残念でしたね。お兄ちゃん、助手席に乗って。」
助手席の扉に手をかけて開ける。

その瞬間、女の顔色が変わるのがハッキリと分かった。

「妹さん…少しおかしくないですか?優君の話をちゃんと聞いてあげてますか?」

「はぁ?毎日話してますけど?」

優君、優君って馴れ馴れしい…
次、優君って口走ったら女の口を潰そう…うん、決めた。


327 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/11(火) 20:52:07 ID:9U2RMqv/


「毎日話をしてるんじゃなくて、貴方が一方的に話してるんでしょ?」

「なんですかあなた?私と兄の間に割り込まないでもらえますか?」
人を逆撫ですることが上手い女は尻軽だと決まっている…てゆうか他人事に口出ししないでもらいたい。

「だから!優君も悩んでるんですって!!」

「馴れ馴れしい………外に出るから逃げるなよ?」
そう女に言い放つと、運転席から降りる。

今優君って言ったよね?この香水臭い娼婦…お兄ちゃんから早く離さなきゃ。

私の口調の変化に焦ったのか、女は後ろに後退り、兄の影に少し隠れた。

「やめろって!ほら、もう帰るから…悪いな、今日はもう帰るわ…」
私が女の元に着くまでにお兄ちゃんの声に足を止められた。

お兄ちゃんが助手席に入るのを確認すると私も運転席に戻った。
女は何も言わずただ眺めているだけ…このまま車で引き殺してやろうかと思ったが、女の悔しそうな顔を見れただけで満足だ。

「…それじゃ、兄のお友だちさん、サヨウナラ。」
窓から満面の笑みで笑いかける…何も言わずファミレスに戻っていった。
はじめからそうしとけ。てゆうかお兄ちゃんの前に一生現れんな汚物。


328 名無しさん@ピンキー sage 2009/08/11(火) 20:52:51 ID:9U2RMqv/
「それじゃ、お兄ちゃん…家に帰ろっか?」

「…そうだな。」

家まで我慢…家まで我慢…。

ファミレスを後にし、車を走らせる。

「お兄ちゃん、家に帰ったら何食べようか?なんでも作るよ?お兄ちゃんが食べたいもの言ってみて。」

「いや、ファミレスで食べたから…」

「…なに食べたの?」

「えっと…サラダとハンバーグ…かな…。」

「サラダとハンバーグ…そう…」

それぐらいなら家で作れる。
家にかえってすぐにトイレに連れていこう…全部吐き出させてまた私が作ってあげればいい。

「てゆうか、手を離せよ…片手で運転したら危ないだろ?」

「心配してくれてるの?でも大丈夫よ…私は運転うまいから。」

先ほどまでの鬱陶しい気持ちはすでに無くなり、家に帰ったらお兄ちゃんとどう過ごすかで頭がいっぱいになっていた

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最終更新:2009年10月05日 21:10
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