ウイリアム・テル4―下

134 ウイリアム・テル4―下 ◆TIr/ZhnrYI sage 2009/12/26(土) 20:39:50 ID:cTBZGXYR
 両親の通夜が行われた夜。祖父母が身元を引き取ってわたしたちは田舎で暮らす、と云う話が上がった。
 もとより、親戚はほとんど居なかったし、立て続けに家族を亡くし、わたしはともかく、お兄ちゃんの精神状況はもう、ぼろぼろだった。
 お兄ちゃんはずっと自分の部屋に引きこもり、わたしも、お兄ちゃんのそばから片時も離れようとしない。
 そんな哀れな二人の兄妹の姿は、赤の他人の涙を誘うものだったようだ。
 そこで兄妹の傷心を癒すためにも田舎の祖父母の家で暮らすのは大人たちにとっても悪くない話だった。
 けれど、その案はお兄ちゃんの取り乱しぶりにあえなく廃案となった。
 無理もなかね、と祖母は涙をこらえながら言った。
 祖父母の家と言えば、遥ねえとの最後の思い出の場所だったから。
 遥ねえにべったりだった兄さんがその場所を嫌がるのも、確かにおかしくはない。
 だけど、それだけじゃない。もちろんそれもあるけれど、一番はきっとお兄ちゃんの罪の意識だった。
 遥ねえは、お兄ちゃんとの情事のあとに目に見えて衰弱していった。
 因果関係が本当にあるかどうかはともかく、お兄ちゃんはその事を責め続け、自分が遥ねえを殺したとさえ思っていた。
 その情事の場所がまさしく祖父母の家だったのだ。お兄ちゃんがそんな、罪の本源に迫る場所で平穏に過ごせるはずがなかった。
 まさか、と思った。
 まさか遥ねえは、その事まで考えて祖父母の家でお兄ちゃんとまぐわいを行ったのだろうか。
 まさか、ね。
 けれど、いくらなんでもそれはないと、きっぱりと否定できないのも事実だった。
 そこで祖父母は、次善の策として、田舎の家を売ってこちらに引越してこようとした。
 わたしは焦った。せっかく遥ねえが、遺してくれたお兄ちゃんと二人きりになれる機会をみすみす捨てるわけにはいかなかった。
 ない頭で一晩中考えて、それでもいい案を考えることができなかったわたしは、結局遥ねえの真似をすることにした。
 まだ喪のあけない、葬式の夜。わたしは、お兄ちゃんを、襲うことにした。


 お兄ちゃんを襲う計画において邪魔な存在である祖父母には今夜だけお兄ちゃんと二人きりで両親との最後の一夜を過ごしたいと、お願いした。
 最初は渋っていた祖父母だったけれど、わたしの熱意にほだされたお隣さんが、祖父母を説得してくれて、祖父母はそのお隣さんの家に一泊することとなった。
 普段は余り語彙のないわたしが、その時だけ妙に賢く見えたこともお隣さんの涙腺に引っ掛かったのかもしれない。
 お兄ちゃんは、相変わらず自分の部屋に閉じこもっていた。
 わたしは、虚ろに中空を眺めるお兄ちゃんを、ベッドに押し倒し、キスをした。
 あの日遥ねえが、やっていたことを思い出しながら見様見真似でお兄ちゃんの唇を蹂躙した。
「んん、……んふー、ぴちゃ…………れろ」
「んぐ!……んむむ、むむー!……ぷはっ!……ああ、姉さん
 とろんと虚ろな目でわたしを見据え、しかしお兄ちゃんの声はわたしの名前を呼ばなかった。
 途端溢れ、堰を切りそうになった涙をぬぐい、拙いキス。
「ちゅっ……あむ、んんっ……」
「んん、姉さん……ん、ちゅ、れろ……ぴちゃ」
 お兄ちゃんが自ら舌を絡めてきた。未経験のわたしから難なく主導権を奪った。
「ちゅる……ちゅ、れるる……お兄ちゃん」
「ん、ちゅ、じゅ……姉さん」
 なんて滑稽なのだろうか。それでも、やめたくない、と思った。
「姉さん、どうしたの?いつもより下手だね?」
 くすり、とお兄ちゃんが笑った。
 ああ、お兄ちゃんの笑顔を見たのは、一体いつ以来だろうか。
「今日は、お兄ちゃんが、りんごをリードして?」
「はは、姉さんは甘えん坊で変態さんだね。じゃあ、まずは、俺のを気持ち良くしてくれよ」
 りんご、と態と自分の名前を呼んでみても、お兄ちゃんの目の前にいるのは遥ねえだった。
 はは、と嘲笑。いったい誰に対するものかはわたし自身にも分からない。
 ベッドに座ったお兄ちゃんの前、床に跪いて、ズボンのチャックを下ろしパンツの隙間から、お兄ちゃんのモノを引き出した。


135 ウイリアム・テル4―下 ◆TIr/ZhnrYI sage 2009/12/26(土) 20:40:24 ID:cTBZGXYR
 既に屹立した肉棒を見るのはこれで2回目。
 けれどこんなに近くで見るのは初めてだった。
 むん、ときつい匂い。臭いはずなのに、何故かすんすんと、自ら嗅いでしまった。頭がくらくらする。
 きゅんと胸がうずいたような感覚。
 ――もしかして、わたしって変態なのかも。
 そ、と恐る恐る手を伸ばした。
 ぴと。生温かくて、何だか変な形。わたしの手が冷たかったせいか、大きく一度びくりと跳ねた
「わっ!」 
 驚いた。けれどお兄ちゃんの体の一部だと思うと、それさえも愛しく思えて。
 思わず頬ずりしてしまった。
 お兄ちゃんに触れるのは随分久しぶりな気がした。わたしの心が満たされていく。
「ちゅっ、ちゅ」
 キスの雨を降らせた。そういえば。
 お兄ちゃんへのさっきのキスが、わたしのファーストキスだった。
 官能にぞくり、と肌が粟立った。
「ちゅっ、れろ……れる、んむ……ぴちゃ、ちゅる」
 竿の部分を丹念に舐めていく。遥ねえも確かこうしていた。
 う、とお兄ちゃんの気持ちよさそうな声。
 よかった、間違っていないみたい。
 遥ねえじゃなくても、わたしにだってお兄ちゃんを気持ち良くすることができるんだ!
 調子に乗って、ペニスを口に含んだ。
「あむ……んむ、ちゅる…じゅ、えろ、れる……ぐぷ、ちゅぱ、じゅ…じゅ」
 噛まないように、慎重に肉棒を口でしごいていく。
「んぶ……ちゅる、ちゅる…ちゅぱ……じゅ、じゅ………れろ……ちゅっ、んふ……」 
「くっ……姉さんっ!」 
 ゆっくりとした動きにお兄ちゃんはもどかしそうな声をあげながら、わたしの頭をぐっと抑え込んだ。
「んんっっ!!……ごぶ、んぐぐ……ぐぽっ、ちゅるっ!」
 お兄ちゃんがわたしの喉の奥まで侵入して、暴れまわった。
 わたしは噎せ返りそうになりながらも、懸命に舌をペニスに絡ませた。
「んふーっ!じゅ…じゅるるるっ!ちゅー、れろ……ちゅぶぶっ」
 吸い込むような動作も加えてみるとお兄ちゃんの気持ちよさそうな反応。
 初めてでここまでお兄ちゃんを気持ちよくできるわたしは、きっと天才なんだ、と心中で呟いた。
 勉強の才能はなかったけれど、その代わりにお兄ちゃんを悦ばせることができる才能を授かったのだとしたら、寧ろ神様にありがとうと言いたい気分だった。 
 しかし、今ではこの時のわたしのフェラの技術は然程上手かったわけでもないと云う事を知っている。
 結局お兄ちゃんは、“遥ねえのフェラ”だから快感を感じていたのだろう。
「ごほっ!ん、ん、ぐ……じゅぽっ…んふっっ………ぐぼっ!」
 ディープフロート。
 こみ上げる吐き気と戦いながら、夢中で続けていると。
「あっ!姉さん、で、射精る!」
「む?……ぐぼっっ!!!」
 頭を抑えているお兄ちゃんの手の力が強くなった。
「は、遥っ!!」
 遥ねえの名前を叫ぶお兄ちゃん。
 と、同時にお兄ちゃんのモノから、精液が飛び出しわたしの喉を叩いた。
「んっ、んんむぅぅっ!?」
 射精の勢いにさすがに嘔吐感を我慢できず、反射的に精液を吐きだしそうとしたけれど、
 お兄ちゃんの手がわたしの頭を相変わらずがっちりと抑えていて許してくれなかった。
「うぅぅっ!……はぁ、はぁ………ふぅ」 
 射精し終わったお兄ちゃんが、満足して漸くわたしを解放した。

137 ウイリアム・テル4―下 ◆TIr/ZhnrYI sage 2009/12/26(土) 20:41:14 ID:cTBZGXYR
「ご、ごほっ、ごほっ、ごほっ!ぐうぅぅ………はっ、はあっ!はっ、はぁ、はぁ、はぁ」
 口に手を当てる暇もなく、こみ上げた嘔吐感のまま床に吐きだした。
 しかし、床に落ちたもののほとんどがわたしの唾液で、精液はお兄ちゃんが出した量に比べ少なかった。
 殆どを、わたしは飲み込んでしまっていた。
 ぽた、ぽたっ、と涙も床に落ちた。
 それがわたしの涙だと気づくのに、数秒かかった。哀しくないのに涙も出るんだな、と他人事のように涙の跡を眺めた。
 わたしの心の中を占めていたのは、お兄ちゃんをイかせたことへの満足感だった。
 わたしは、満ち足りていた。
「ふっ、ふぅぅぅ……」
 息を整えながら、暫し充足感へ浸る。
 この時すでに、わたしはお兄ちゃんを襲った本来の目的を忘れていた。
 もう、今日は、この満ち足りた気持ちのままお兄ちゃんと二人で眠りたい、と思った。
 ぼんやりと霞がかかった頭。
 床に押し倒された衝撃で、はっと我に返った。
「遥、俺、まだ満足できないよ」
 お兄ちゃんが、わたしの体に馬乗りになって、見下ろしていた。
 お兄ちゃんの虚ろな目。
 それは、わたしを通り抜け何処か遠いところへ向けられて、その瞳の奥に狂気の光を見た。
 お兄ちゃんの手が乱暴にわたしの衣服をはぎ取った。
 膨らみのほとんどなく、ブラの必要もない硬い胸が露出した。お兄ちゃんが乱雑にその胸をこねくり回し始めた。
 更に、もう片方の手で、わたしのパジャマのズボンと下着を同時に下ろして、ぴったりと閉じた秘蕾を無造作に触った。
 唐突、ぐ、異物の侵入する感覚。
 メリメリと張りついた膣内を剥がしながらお兄ちゃんの指が奥へと進み、処女膜の一歩手前ギリギリで止まった。
「あれ、遥、濡れていないんだね。死にかけの体でセックスしてよがるくらい変態さんなのに」
 お兄ちゃんの諧謔に満ちた声。
 ひ、とわたしは短い悲鳴を上げていた。その時わたしは、初めてお兄ちゃんを怖いと思った。
 発育過程の胸を乱雑に扱われることによる痛みと、膣内を縦横無尽に踊る指がもたらす痛み。
「いたい、いたいよ、おにいちゃん!」
「はは、まだ濡れがあまいけど、もういいよね。変態の遥ならまたあの時みたいにすぐ気持ちよくなっちゃうよね」
 わたしの声は届かない。遥、とお兄ちゃんは笑いながら、
「ねえ、なんであの時遥は俺に自分を犯させたの?なんで、俺に自分を殺させたの?」
 ねえ、なんで?
 お兄ちゃんの声が震えた。
 遥ねえじゃないわたしはその問いかけの答えを持っているはずもない。
 ある程度の予想はつくけれど、死の恐怖や、別れを目前とした遥ねえの気持ちを体験したことのないわたしが、軽々しく口にできる言葉ではなかった。
 それは、遥ねえがお兄ちゃんに打ち込んだ呪いにも似た楔だった。
 お兄ちゃんが遥ねえを片時も忘れることがないように打ち付けた、歪んだ愛の楔。
 ああ、お兄ちゃんは何て――
「あ、あああああぁぁっ!」
 不意に、思考を空前絶後の痛みがぶった切った。
 お兄ちゃんが、申し訳程度にしか湿っていない膣に肉棒を無理やりねじ込んでいた。
 ぷつり、と体の奥で何かが破れた感触。途端こみ上げるのは破瓜の痛み。
 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!!
 はじめてはお兄ちゃんと愛を囁きあいながら、優しく――などという、甘く、幼い幻想がかくも微塵に打ち砕かれた。
 お兄ちゃんは一気にわたしの奥にたどり着くと、休む暇も与えず、腰を激しく動かし始めた。
「いっ、がぁっ!ぎっ、いつっ!………づぅぅ!!!」
 痛みに、気を失いそうになり、更なる痛みで現に戻る。
 なんで、なんで、とお兄ちゃんは繰り返しながら、わたしの膣内を蹂躙した。
 獣のソレよりも低俗で、滑稽な性交。それがわたしの初めてだった。
 ぽた、ぱたた、とわたしの頬に温かいものが落ちた。
「うぅっ、うっ、なん、でっ!なんでっ、死んじゃったんだよっ、姉さんっ!?俺を、おれを――」 
 ――ひとりにしないで。


138 ウイリアム・テル4―下 ◆TIr/ZhnrYI sage 2009/12/26(土) 20:42:05 ID:cTBZGXYR
 お兄ちゃんの涙がとめどなく溢れては、またわたしの頬に落ちた。
 わたしはそっと手を伸ばし、そっと拭う。
 両手をお兄ちゃんの頬を包むようにあてたまま、今なお続く痛みに顔を歪めながら、何とか不格好に笑顔を作った。
 お兄ちゃん。
 目の前の愛しく、尊い存在に、優しく呼びかける。
「おにいちゃん、だいじょうぶ、りんごがいるよ」
 お兄ちゃんを慰めるいい言葉が、もっとこの世にはたくさん存在するのだろう。
 けれど、馬鹿なわたしにはこのくらいの言葉しか思いつかなかった。
 胸の中の多くを占める、お兄ちゃんを思う気持ち。お兄ちゃんのためなら、そう、人を殺すことすら厭わないような強い、気持ち。
 この気持ちを最大限に伝える言葉が欲しい、と思った。
 でも、そんな素晴らしい言葉、いくら頭の中を探しても見つからなくて。
 ただ、おにいちゃん、おにいちゃん、とその言葉以外知らないみたいに呼びかけ続けた。
「林、檎……?」
 お兄ちゃんの目が、はっきりとわたしを捉えた。
 途端、わたしの中に突き刺さった肉棒がひときわ大きく暴れ、わたしの奥に精を放った。
「あ、え?何で林檎が……」
 お兄ちゃんは混乱する頭を整理するように呟き視線をさまよわせ、わたしとお兄ちゃんがつながっている部分を見た。
 萎んだお兄ちゃんがわたしの膣内から外に出て、栓がなくなったわたしの膣内から、こぽ、と溢れる精液と、わたしの血。
 あれだけ痛く、痛みは今も続いているけれど、お兄ちゃんの剛直がわたしから抜けたことを寂しいと思っている自分に、思わず苦笑した。
「あ、あ、俺、俺――っ」
 状況をようやっと理解したお兄ちゃんが、頭を抱えて絶望を叫ぼうとしたところで、その口を強引に自らの唇でふさいだ。
 たっぷりと時間をおいて、唇を離し、お兄ちゃんに笑いかけた。
 今になってわたしは、元々の目的を思い出していた。
「ねえ、お兄ちゃん」
 首をかくんと傾げながら、お兄ちゃんに問いかける。
 ばちっと、お兄ちゃんとわたしの目があったことを見計らって、
「お兄ちゃんは、りんごの処女を奪っちゃったよね。痛がるりんごも無視して、欲望のままナカダシまでしちゃったね」
 子供ができちゃったらどうしようか、なんてお腹をさすってみた。
 お兄ちゃんの顔がさあっと青くなった気がした。
「あ、あ、謝ってすむ問題じゃないよな。お、俺はどうしたら……。林檎、俺はお前に何をしたら償える?」 
「そんなの、簡単な事だよ」 
 ふふ、と何となく遥ねえの笑い声を真似ながら、

「お兄ちゃんが責任を取って、これから一生、りんごのこと守ってくれればいいんだよ」

 これで、お兄ちゃんを十字架に縫い付ける楔は二つになった。
 遥ねえはわたしを哀れだと、嘆いたけれど。
 本当に哀れなのは、わたしなんかじゃなくて。
 遥ねえとわたし、倫理から外れた歪んだ愛に引きずられるまま、伴に真っ当な人間の道を滑り落ちたお兄ちゃんこそが哀れな人なのだろう。
 けれど、その時のわたしの胸を占めていたのはお兄ちゃんを哀れだと、悲しむ気持ちじゃなくて。
 これで漸く、遥ねえと同じ位置に、お兄ちゃんの一番になれたんだという、歓喜の気持ちだけだった。


 翌日お兄ちゃんは、わたしの頼みどおりに二人でこれから生活していきたいと祖父母を説得してくれた。
 彼らは初めはもちろん反対していたが、お兄ちゃんの昨日までの自殺しかねない様子が頭にあったのか、強く反対することができないでいるようだった。
 結局、最後は資金面では両親が遺してくれた遺産で賄い、祖父母はわたし達の家の近くに引っ越してくることに決まった。
 立て続けに家族を失ったのはわたしやお兄ちゃんだけでなく、祖父母も同じで、彼らは家族の死に臆病になってしまっていた。
 なにはともあれ、全てはわたしと遥ねえが望んだままにおちつき、こうして、わたしとお兄ちゃんの二人きりでの生活が始まった。

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最終更新:2010年01月07日 20:28
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