とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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だれでも歓迎! 編集

告白の練習



※キャラ崩壊注意。
※美琴がほとんど出ません、そういう趣旨です。
※こうだったらいいなー、という妄想なので、ご容赦ください。
※出てくる人達は基本仲良しです。

以上のものがOKという方はどうぞ。
美琴がでねーなんて、ざけんなよー!という方は読まないほうがいいと思います。








「はァ?超電磁砲の欲しそうなものォ?」

「あぁ」

素っ頓狂な声がのどかな公園に響く。
声の主は髪も肌も真っ白な少年と髪をツンツンにたたせた少年だ。
真っ白な少年は呆れた表情で、ツンツン頭の少年はいかにも本気ですといった表情で
お互いを見ている。

「なァンで俺に聞くンだよ」

やってらんねェと呟きながら白い少年は右手に付いている現代的なデザインの杖で
地面を突きベンチから立ちあがる。

「ま、待ってくれ!理由は話す!話すから上条さんを見捨てないで!?」

だが、自らを上条と呼ぶ少年は真っ白少年を引き止めようと体に引っ付く。

「だァァ!離しやがれ!てめェに構ってるほど一方通行さンは暇じゃないンですゥ!」

真っ白少年、一方通行は杖を突きながら器用に体をひねり少年を振り払おうとする。
しかし、彼の女性と思わせるほど華奢な体と力では平凡とはいえど
それなりにがっしりとした上条を簡単には振り払えない。

「た、の、む!!」

「おい!杖をひっぱンな!上条ォ!――――うォあああああああ!!」

ついに一方通行の軽すぎるからだが上条の体重に耐え切れなくなり二人は転倒する。
のどかな筈の休日の公園で高校生にもなる二人の少年の叫びが木霊した。





一方通行と上条当麻、この二人はロシアでの戦争が終結した後
イギリスで再び邂逅を果たした。
一方通行は上条の残したメモを頼りにインデックスまでたどり着き、打ち止めを救った。
上条当麻は右方のフィアンマを打ち倒したインデックスの快復を心より喜んだ。
まるで血の繋がった家族のように振舞う二人の周りにはインデックスと最後まで対峙し守ったステイル=マグヌス
インデックスの快復にいの一番に駆けつけた神裂火織、そして、そんな彼らを見つめる御坂美琴の姿があった。
……御坂美琴はロシアで上条と再会し、そのままイギリスまで着いてきていたのだ。
イギリスに滞在した二人の英雄はそれぞれの目的を達成し、学園都市へと目的の舞台を移すことになった。
一方通行は学園都市のクソッタレな計画を潰すため。
上条当麻は守るべき人達の日常を取り戻すため……そして。



一方通行の記憶はイギリスから学園都市へ帰還するときのものに切り替わる。
イギリスの王女が用意した旅客機に窓際から上条・一方通行・美琴・インデックス・打ち止めの五人は横一列になって座っていた。

「むむっ!このご飯すっごくおいしいんだよ!」

「本当だねってミサカはミサカは両手をほほに当てて愕然としてみたり!」

「こらこら、二人ともそんなにがっつかないの!」

女性陣が楽しく会話をする機内。
その逆に沈黙しきった男性二人の沈黙を破ったのは、上条だった。

「な……なぁ……」

遠慮がちに話しかける上条を一方通行は一瞥してすぐに視線をはずす。

「ほぉら!インデックス!口元汚れてる!打ち止めも!」

「「むぐぐ!でもー!(ってミサカはミサカは抗議してみたり!)」

だが、はずした視線の先には美琴が(一方通行曰く『クソガキ』)の世話しており
どちらを向いても気まずい事この上なしだったので、仕方なく上条に視線を戻す。
どれだけ時が経っても彼女に向ける顔などない。

「ンだよ……俺、ねみィンですけどォ?」

反応を示した一方通行に少しだけ上条は笑顔を見せ
一方通行に顔を寄せ、ヒソヒソと内緒話を始める。

「そ……そうか!眠いのか……!じゃぁさ!俺と席交換しないか?窓際だし!」

「はァ?………あァ、そういうことかァ」

上条の唐突な頼みにわけがわからないと眉をひそめた一方通行だが
理由に予想がつくとニタリと顔をゆがめる。
女性陣に聞こえないよう上条に負けないくらい小さな声で上条に問いかける。

「上条ォくンは超電磁砲ちゃンのとなりがいいンですねェ?」

「な!?」

上条の表情が図星を突かれた犯罪者のような表情になりオロオロとし始める。

「な、なんのことだ?ハハハ……」

「バレバレだっつゥの、馬鹿が」

はぁ、と溜息をついて一方通行は旅客機に乗るときの上条の行動を思い起こす。
旅客機に乗るときに断固として窓際を譲らなかったのは上条だった。
初めは理由がさっぱり分からなかった一方通行だったが
旅客機に乗って一時間ほど経った時、ある可能性に気付いた。

『上条当麻が御坂美琴に好意を寄せている可能性』

イギリスにいたときから違和感を持っていた。
インデックスと話をしている時もチラチラと視線が泳いでいたし
美琴と目が合うと顔を真っ赤にして、突拍子もない話題をインデックスや一方通行に向けたり
極端に美琴と二人きりになることを拒否したり。
誰から見ても美琴を意識している事は当たり前なのだが、一方通行も妙なところで鈍感で
旅客機に搭乗して暫く経つまでは全く気付いていなかった。
だが、今の上条の一言で一方通行は確信した。

「(こいつ、超電磁砲に惚れてやがンなァ?ぎゃは!!いつからだっつゥの?)」

にたにたと笑い、上条を見る。
上条はといえば、相変わらずオロオロとし、要領を得ない事をぶつぶつといっている。
ロシアで美琴と出会ったといっていたのでそのときに何かあったのだろうと一方通行は推測する。
しかし、厄介なのは『このとき』上条が美琴への好意がどんなものか分かっていなかったことだ。
掴みそうで掴めない、彼女への好意の正体。
どうみても『恋』であるそれを上条はロシアでの恩義と勘違いしている節があり
今もそれは変わらない様子でモジモジ、オロロとどうすればいいのか分からない様子だった。

「ま、まぁ、それはいいとしてさ!変わってくれね?」

一方通行が憧れる、ほかならぬヒーローからの頼み。
断る理由は無いが、捻くれた彼の性格では素直に頼みを聞こうという気は全くなかった。

「人にもの頼む時は頼み方があンだろォ?素直に
『美琴ちゃンの隣に座らせてください』っていえよォ、なァ?ヒーロー?」

カカッと馬鹿にして笑い、一方通行はなじるように上条を見る。
上条はうぅと唸り、チラチラと美琴のほうへ視線を向け、視線が美琴を捉えると
顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「(ぎゃはは!!おっもしれェ!なァにこれェ?なァーンなンですかァ!?
恋するあの娘にゃ目も合わせらないってかァ?初心すぎじゃねェ?)」

それ以上に上条には好きな女の子に情けない姿を見られたくない気持ちがあるのだろうが
一方通行はそんな上条の反応が面白く、大笑いしてしまいそうになり必死に抑える。
気分は弱者を虐げる、暴君だった。
それですっかり気分を良くした一方通行は、今までよりも更に凶悪な顔をして上条の頼みを聞く事にした。

「上条ォくゥン?かわってやってもいいぜェ?」

「えっ?」

「だァからァ、席を替わってやってもいいってンだよォ」

そういうと、ぱぁと上条の表情が天使でも見たように明るくなった。

「ほ、ホントか!?」

「あァ、ただし……」

ここで、一方通行は調子に乗ってしまった。
上条に席を譲った時点で彼は身を引くべきだったのだ。

「俺に連絡先を教えろ」

「な、なんで?」

一方通行は自身の発言に後に後悔する事になる。

「超電磁砲について何か言う事があったら俺に報告してみなァ!
この俺一方通行がお前の力になってやンよォ!」

上条当麻が単純な人間だと気づく事ができなかったが為に。
そして、上条が自身の美琴に対する気持ちに気付くのが思いのほか早かったという事にも。
上条が一方通行に報告をしてきたのはそれから二週間ほど後の十一月のことだった。

『よっ!一方通行!』

この日の上条は上機嫌だった。
不幸が代名詞の彼をよく知るものが見れば、槍でも降ってくるのではなかろうかと思うほどに。

「あァ?ンのようだっつゥの?」

それとは逆に睡眠を邪魔された一方通行は不機嫌だった。
もちろん、旅客機内での上条との約束など当の昔の事のように忘れ去っている。

『そ、相談に乗って欲しいことがあるんだよ!聞いてくれるんだろ?』

「はァ……?――――――あァ、ン、まァな」

上ずっていた上にあまりに嬉しそうな声だったので
約束を忘れていた一方通行でもその幸せオーラに耐え切れず、曖昧に返事を返す。

『一端覧祭でさ!御坂にさ、誘われたんだけど!どうすればいいんだ!?』

なんでそんな事を俺に聞いてくるのこのヒーローは?と甚だ疑問だったが
約束を忘れる無責任な、男の風上にも置けない学園都市一位はその返事すらも適当に返そうと思っていた。
彼は寝起きで面倒くさかったのだ、何もかもが。

「いいンじゃねェ?行けよ、ンでもって挨拶代わりに抱け、そうすりゃころっと落ちる」

『む、無理!!無理無理!!そそそ、そんな出来たら嬉しいけど、引かれる!
上条さんの初恋終わっちゃうよ!それで!』

「いいンじゃねェの?行けるところまで行ってみろよ、お前ならその日のうちに抱ける」

『だっ抱くってそっちの意味!?ば、バババババカヤロゥ……で、でも、してみた……
だああああああああああああ!!俺のアホ!と、とにかく行けばいいんだよな!やべぇ緊張してきた!」

勝手に迷走し始めるヒーローを差し置き、一方通行は二度寝の準備を始めていた。
彼にとって至福の瞬間だ、一方通行はとっとと電話を終らせる。

「いいンじゃねェの?頑張れヒーロー、じゃァな」

『おう!それじゃ!』

通話が終了し、それと同時に一方通行の意識がまどろんでいく。
この眠りにつく瞬間が何にも勝る快楽の時。
眠りの沼につかり始めた意識の最後、一方通行は先ほどの電話の主に悪態をつく。

「(人の睡眠邪魔すンなっつゥの)」

彼は、どこまでも無責任な男だった。
しかし、彼の睡眠はそれから定期的に邪魔される事が決定していた。
一方通行の記憶は次の回想に移っていく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――――『十二月』
『一方通行!御坂をクリスマスに誘いたいんだ!』

「いいンじゃねェの?抱けよ」

『上条さんはそこまで節操なしじゃありません!あのさ、プレゼントって何がいいんだ?』

「ンなもン、なンでもいいンだよ、そういうのは気持ちっていうだろォ?」

『そ、そうだな!アクセサリでも贈る事にするよ!』

「いいンじゃねェの?じゃァな」

―――――『一月』
『一方通行ああああああああ!!き、聞いてくれ!
みみみみみ!御坂の実家と俺の実家すげぇ近いらしくてさ!
年越し一緒に過ごしちまった!!』

「いいンじゃねェの?抱いとけよ」

『ま、またそれ!!?ご両親がいるのにも関わらず!!?』

「それだけなら切ンぞ」

『お、おう!』

―――――『二月』
『あくくく!あくアクセ!アクセ、一方通行!』

「(またかよォ、頼むから俺の安眠を邪魔しないでくれよォ)」

『み、御坂、御坂から、バレ、バレンタインの、ちょチョコを!
もらっ貰っちまった!!こ、これみゃ、脈ありゃ、ありって見ても良いのか!?』

「……落ち着け上条ォ、義理かもしンねェ、まだ確定するのははえェぞ。
重くしすぎンな、冷静にことを見つめろ、今すぐの告白は自殺行為だ」

『は、はじめてまともな返答をいただけた!
そうだよ、な……御坂みたいな可愛い子が俺に本命なんて………』

「(めんどくせェ)アホか、卑屈になるのも早とちりだ
超電磁砲が良い女かどうかはともかく、まだそいつのてめェへの評価を決め付けンな、いいな」

『そ、そうだな!よ、よし、まずはホワイトデーのお返しを考えねぇと!』

「(気ィ早すぎンだろ、まずチョコの礼言っとけよ、まァいいや関係ねェし)……いいンじゃねェの?じゃァな」

『おう!じゃっ!』

「……………………」

―――――『三月』
『一方通行あああああああああああああああ!!』

「(なンだ、なンだよ、なンなンですかァ!?もォいやだっつゥのォ!誰か助けて欲しいンですけどォ!?)」

『み、御坂に!御坂に!バレンタインのお返ししたらありがとうって言われた!』

「(そンだけかよ!困ったら電話しろよ!この三下がァ!)」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
という、美琴にゾッコンになってしまった上条から
一月に必ず一回、ひどい月には二週間連続で報告があった。
あまりにもくだらない内容ばかりなので一方通行としては勘弁して欲しいところなのだが
愛に生きる男となってしまった上条を一方通行はとめることが出来なかった。
そして、先ほどの場面に繋がるわけで、公園に呼び出されたしだいである。

「くっそがァ!てめェいい加減にしろよ、俺が超電磁砲の欲しがるもンなンざ知るわけねェだろ!」

よろよろと揺れながら何とか立ち上がり、上条に掴みかかる。

「わ、悪い!で、でもさ、これには理由がありまして」

「あァ!?理由だァ?」

掴んだ手の力を強くするが、一方通行の握力は平均的な男性に比べれば大したことがない
むしろ、同年代の少女たちの方が強い可能性すらある、そんな手の力で上条が驚きはともかく怯みはしない。

「あぁ!そうだ!理由があるんだよ!」

上条は逆に一方通行の肩を掴んできた。
表情はロシアでお互いに対峙した時のような真剣なもの。
一方通行の握力は徐々に抜けていき、急に抜けたためすとん、と上条は尻餅をついた。

「全部話せ、洗いざらいだ」

「お……おぉ……」

上条はコクリと小さく頷き、一方通行を呼んだ理由を話し始めた。

「お、俺、御坂に告白しようと思って、それでその、プレゼントでも一緒にしようかなって思ったんだよ」

「つまり、物で女を釣ろうとしたわけだ、せこい真似してンな、ヒーローよォ」

図星なのか、自分でも良い方法だとは思っていないのか上条は視線を一方通行から離しうっと唸る。
だが、その方法を変える気も無いらしく、上条は一方通行を見据え、話を続けた。

「―――――でもさ、アイツの欲しいものってなんなのか分かんなくて悩んでたんだよ。
……それで、思いついたんだ」

「何をだよ」

「打ち止め」

「クソガキ?どうしてまた――――――あァ……そうか」

何故、打ち止めが突然出てきたのか分からなかった一方通行だが
美琴と打ち止めの関係を考えるとすぐに答えは出た。

「なるほどなァ、あのガキが欲しそうなもンだったら、超電磁砲も欲しがるってかァ?」

馬鹿にする表情で見たつもりだったが、上条は一方通行の言葉に腹を立てず
むしろ、嬉しそうに顔を輝かせてきた。

「そう、そうだよ!話が早くて助かる、一方通行!」

きらきらと輝く上条の表情は無垢な子供のようで、打ち止めをかぶせてしまい
一方通行はたじろいだ、学園都市最強の男は純粋な子供にはめっぽう弱いのだ。

「あァっ!引っ付くな!離れろ、クソが!」

「あぁ!そんな殺生な!」

しらねェよと思いつつ、上条を振り払う。
一方通行は元々自身に関係ないことだったり面白くなさそうな事にはさっぱり興味を示さない性質だ。
もちろん、それが彼が守る対象に決めた打ち止め、ひいては全ての妹達であれば話が別だが
いままで様々な問題を右手一本で解決してきた上条なら別だ。
この程度の瑣末な問題は彼自身の手で解決して欲しい……とは言っても、

「(俺が手伝ってやるって言っちまったらしいからなァ)」

ここまで困った人間を放っておくなど、一方通行は出来ない。
彼自身が今までしてきた、狂った実験に比べれば、平和なものだ。
たまには気まぐれを起こしてみるのもいいだろう。
一方通行は、一人頷き、今にも土下座を始めそうなヒーローに笑いかけた。

「いいぜェ、上条、この俺、一方通行が手伝ってやンよ」

「ほ、ホントか!」

「あァ、大マジだ……なンでもやってやるよォ!」

だがしかし、誇大表現。
一方通行は、自分で言ったことで前回首を絞めしたのだが
それをもすっかり忘れてしまっていた。

「なんでも……か……それじゃぁさ」

「おっ?早速か?任せろォ!」

ドンッ、とない胸板を叩き上条の続く言葉に構えるが、

「告白の練習相手になってくんない?」

一方通行は固まってしまった。
今、この少年はなんと言ったか、男である一方通行に、なぜ……

「なンで俺に言うンだよォオオオオオオオオオオオオオオオ!」

頼む相手が違いすぎる。
上条は男で、一方通行も男だ。
告白の練習だからといって相手が悪い。
少なくとも一方通行にその方面の趣味はなかった。

「(やばいだろ!ンなもン、知り合いにでも見られてみろ!
誤解どころの騒ぎじゃねェだろうが!)」

「さ、流石に、女の子に頼むのはさ、悪いだろ?
俺の友達にも頼んでは見たんだけど、断られちまって……」

「(ったりめェだろうが!男のお前にンな事頼まれたって嬉かねェよ!)」

しかし、このままでは一方通行が告白の練習相手に任命されてしまう。
そんな不名誉な練習相手になる気はさらさらない。
死んでもごめんな一方通行は周囲を見回し、おあつらえ向きの相手(生贄)を探す。

「…………!ちょっと待ってろ!!」

「え?お、おう」

とある人物を見つけた一方通行は首にあるチョーカー型の電極のスイッチを操作し
一般人から『超能力者』へと姿を変え、その人物まで一気に距離を詰めた。
そして、上条の視界からいったん姿を消す。




テメェチットツラカセ!
アリ?ナンデバレテタノ?
ウッセェ!サッサトキヤガレ!
ハナシテヨ~ミサカニチカンダナンテ☆
ウゼエエエエエエエエオラコイヨ!



というやり取りを数秒で済ませ、一方通行が手を引いてきたのは、

「なんでミサカがアナタの言いなりにならないといけないわけ?
ミサカだって暇じゃないんだけど」

不満げな表情の番外個体(ミサカワースト)だ。

「俺の後をつけてた、てめェのどこが暇人じゃないってンだよ、つかなンで常盤台に制服着てンだ、頭沸いてンのか?」

けっ、と番外個体に負けず劣らず悪態をついた一方通行の言うとおり
彼女はロシアで着ていた軽量の装甲ではなく、今は常盤台の制服に身を包んでいた。
彼女のことを知らない人間が見れば、普通の休日を過ごす、普通の女の子に見えるだろう。
いや、むしろ少しイヤらしい目で見られることのほうが多いかもしれない
番外個体の体は他の妹達や、オリジナルの美琴と比べて女性的な体をしている
美琴よりも制服から少し盛り上がった胸や、丈のあっていないスカートから見える白い肌の足は
扇情的で、男性の視線を集めるのは必至だろう。
が、会って話を始めれば、彼女がただの女の子には見えなくなるに違いない。

「ぎゃはっ!何言ってんのぉ?ミサカは偶然ここを通りかかっただけだってぇ。
それとも何?被害妄想?女の子みたい☆ぶひゃひゃひゃ!」

端正なはずの顔立ちを歪めて笑う彼女を見てしまうと
きっと彼女に対して持った第一印象という幻想はぶち壊されるからだ。

「うっせェ、間違ってねェだろうが。白昼堂々俺に釘を向けてるクソ女が……と
俺がてめェを呼んだのはンな事言う為じゃねェ……おい上条」

「はっはい?」

今まで絶賛蚊帳の外中だった上条は突然の出来事にあっけに取られながら
そして、突然話しかけられ、ビクリと肩を震えさせる。

「コイツで練習しろ」

「はっ…………?」

ビッと番外個体に指をさし、上条を促す。
上条はぽかんとアホ顔をさらして硬直してしまった。

「男の俺でやるよか、こンな奴でも超電磁砲に似てたほうがいいだろォが」

一方通行が思いついた事は単純なことだ。
男で練習するよりもそっくりな妹達で練習すればそのほうが本番により近づける。
女性にするのは失礼だとかそんな事を一方通行は気にしていない、というよりも
番外個体をそういう対象としてみていないといった方がいいだろうか。
勿論、それについては全くの無意識であるのだが。

「そういうの女の子に頼むの失礼だと思うけど?」

悪意を受け取りやすいが学習装置で一般常識を植えつけられた番外個体はわざとらしく膨れている。

「あァ?なにがだよ……てめェがンな事、気にする柄かよ」

「ケケケ、仰るとおりだけど……ミサカは好意なんてもの持たなくても
好きでもない男から告白なんかされたくなんかないんだけど」

「はっ?好きな男ならされたら喜ぶのか、お前が?」

一方通行の表情が少しだけ驚いたものに変わる。

「…………聞こえなかったみたいだけど、ミサカは好意なんて持たないよ。
それに『お知り合い』も少ないしね、それとも一方通行が紹介してくれるのかにゃーん
ギャハハハハハ!!」

でもいないよねー、と腹を抱えて笑う番外個体を尻目に
聞きなれた笑い声を無視しながら一方通行は上条に向きなおす。
ああいう手合いは無視するのが定石だ、とでも言うように番外固体の挑発をスルーをしきった。

「いいだろ?あの女なら、女と思わなくて練習できる」

完璧だ、と腰に手を当ててふんぞり返る一方通行とは対照的に
上条は物凄い速度で首を振っていた。表情は青ざめている。

「……む、むりむり」

「あァ!?ンでだよ!」

「だ……だって……に、似過ぎだし、緊張する、だろ」

「はァ?クローンつっても一人一人別だろォが、寝ぼけてンのか」

「ば、馬鹿野郎!ここここ、告白の練習だぞ?好きな子に告白するんだぞ?
それで、その子とそっくりな子で練習とか無理に決まってんだろ!」

そこまで言って無理だーと上条は逃げ出そうとする。

「オラ、待て」

そんな上条の肩を思いっきり引っつかみ、逃げた方向とは逆方向に投げ捨てる。
力が無くても知識はある一方通行は有利な状況であれば上手い具合に力を入れて、最小の力でことを済ませる。

「うっわぁ!」

「ん~?――――――ぎゃひ!?」

吹っ飛んだ上条は番外個体へダイビングする形にぶつかった。
二人はきりもみ気味に体をひねって地面に叩きつけられる。

「さっさと、練習しろよ」

上条が抵抗したせいで一方通行は砂埃をじかに喰らってしまい視界が悪い。
若干涙目になりながらチッと舌打ちをして、視界が回復するのを待つ。
少しずつ視界が戻っていく。
上条は、

「う……な、なんか柔らかい……」

着地に成功していた、番外個体の胸というクッションを使ってだが。
ぶつかられた番外個体はといえば、

「ひひっ!これはセクハラで訴えられるかもねー」

上条が胸に埋まっている事など毛ほども気にしていない様子だった。
恥ずかしがる仕草など見せず、むしろ幸せそうな表情の上条を面白そうに見ている。

「わっ!うわ!すみませんでしたー!」

ようやく柔らかさの正体に気がついた上条が高速で番外個体から離れ土下座を始める。
手馴れた感じでこれが正しい土下座とでも言えるような格好だった為、一方通行は
いつもこんな事をしているのだろうかと目の前の情けないヒーローに多少幻滅する。

「…………ぷっ!ぎゃははは!なになに~?アナタってそんなに軽い頭なんだ~!
一方通行と同じくらい面白すぎ!!ひひひ!」

番外個体は上条を見て腹を抱え大笑いしている。
一方通行としては同じくらい面白い、と言われて心外だったが
この茶番をさっさと終わらしたい心境なので上条を引き摺り上げる。

「ンなことしてる場合じゃねェだろォが!さっさと練習しろ!」

「えぇっ!?だって、この妹達だって嫌だって!言ってただろ!?」

ビシッと上条は番外個体を指差した。
番外個体はまだ笑っている様子だったが、上条に指を差されると、

「ん?いいよ、手伝ってあげても、ぎゃはっ!」

「え……?」

ニタリと凶悪気に顔を歪めた。
上条はこれを見て悪巧みでも考えているように見えただろうが、一方通行は違った。
一方通行にしか分からないことだが、番外個体は笑う時に微妙に違いがある。
馬鹿にする笑い、見下した笑い、しかし、今回のは今まで見せた彼女の笑いとはまた違っていた。
凶悪そうに見えて、少しだけ嬉しそうな笑顔。
ロシアでであった時には決して見せなかった、表情だった。
一方通行はその表情を見て心が揺さぶられた。

「(ンだァ?コイツもあのガキ見てェに笑えンじゃねェか)」

打ち止めと番外個体の表情が重なってしまったからだ。
笑顔の形はあまりにも違うのに、感情の底にあるものは同じに思えた。
ロシアでの事件の後から彼女に何が起こったのかは一方通行には分からない。
だが、考える暇もなく上条と番外個体のうちだけで話は進んでいっていた。

「あの……え?いいの?」

「告白の練習は嫌だけどね、アドバイスくらいしてあげるよ」

ふふん、と番外個体は鼻で息を吐く。

「ほ、ホントか?助かるよ」

「まっ、後からアドバイス料を出してもらうかもしれないけどねー」

えっ、と上条が驚いた表情をすると、番外個体はまた顔を歪める。

「ジョーダン、ジョーダン!やっぱりアナタ面白い……好きなっちゃいそう☆」

「な………なな!」

上条の顔が紅潮していく。
好きなってしまいそうなどと言われれば、上条のような純な少年なら
恥ずかしかったり、期待をしてしまうものだろうが
番外個体は人の嫌がったり困ったりする表情が大好きだ。
腹を抱えてまた笑い出す。

「ぶひゃひゃ、あひゃ!ジョーダンだって!」

「うがー!人の純情を弄びやがって!不幸だーーーーーーーー!」

「普通に分かるよねー、それにミサカは…………」

そこから言葉が止まり、番外個体がはっとした表情に変わる
だが、その表情をすぐに引っ込めて、ニヤニヤと笑った。

「ま、いいや、それで~告白はともかく、『お姉様』の事どうするの?」

「ンなこたァ、決まってンだろ」

話しを黙って聞きながら、二人の様子を伺っていた一方通行が話しに割ってはいる。

「さっさと、渡すもン決めて、『好きです』ゥっていやいいンだよ」

「バッ!そんな簡単に言えるか!」

一方通行ののんびりとした、手っ取り早い方法を上条が即拒否する。
予想通りの反応だが、一方通行はギロリと上条を睨んで威嚇した。

「もたもたして超電磁砲が他の男に取られてもいいのか?」

「ぅっ……それは……」

上条は言い淀む。
上条も分かっていて焦っているが、踏み込めないのだ。
美琴を意識し始めて約四ヶ月経つが、全くといって(上条的に)進展していない。
美琴との距離が歯がゆく思っているに違いない。
一方通行は上条を睨んだまま動かず、上条はなかなかスイッチを入れられないようだ。

「――――逃げてばかりじゃダメだよ」

そんな二人を見かねてか、番外個体が口を開いた。

「えっ?」

番外個体の言葉に一方通行も上条と同様に彼女を見た。

「いつまでも、いつまでも、失敗が怖くて進めないだなんて。
『そんなこと』に足をとられてちゃ、だっさいよ」

まるで、自分自身がそうであるように。
『そんなこと』というものに彼女自身が足をとられていると語っていた。
二人は、何も言う事ができず、番外個体を見つめた。
黙ったままの視線に耐え切れない何かを感じたのか番外個体は目を伏せる。

「「「…………………」」」

三人の中で沈黙ができる。
雰囲気ははっきり言って最悪だった。
蟻地獄のようにこのままずるずると沈黙に引きずりこまれるかと思った矢先。

「そう、だよな」

上条が沈黙を破った。
一方通行は上条を見ないが、耳だけを傾ける。
番外個体も同じだろう、僅かに顔の向きが動いたのが視界の端に見て取れた。

「人に頼ってちゃ意味がねぇ!こんなことでうじうじするなんて俺らしくねぇよ!」

グッ、と彼の自慢(と困り者)の右手を握り締め上条が立ち上がる。
一方通行は上条の表情は見れないが、上げた声からは決意のようなものがにじみ出ているのが分かった。
そのまま、上条は走り出した。

「ありがとな!一方通行!番外個体!覚悟が決まったよ!」

「お、おい……!」

じゃーなーと後ろ向きのまま握った右拳を空に向けて挙げて上条は去っていってしまった。
一方通行がとめようとしたのも無理は無い。
意気揚々と飛び出しのはいいが、この公園の出口すぐ近くには線路があったはずだからだ。
そして、一方通行の記憶が正しければ、この時間は、電車が通る時刻だ。
数秒の後、ぎゃああああああああああ!という叫び声が聞こえたが気のせいだと思うことにした。

「…………」

公園内は、多少の沈黙が舞い戻ってきてしまっていた。
一方通行と番外個体は顔を合わせるまでもなく悲鳴が聞こえた出口とは逆の出口へと向かった。








12「あー………不幸だった………」

学園都市七学区の商店街にて、一人の少年が彼の代名詞とも言える言葉をぼやく。

「流石の上条さんも死んじゃうところでしたよ」

上条当麻は公園を出た直後、考えなしに線路に飛び出し
それを読んだかのような素晴らしいタイミングで電車が迫ってきた。
遮断機の音が聞こえないはずは無いのだが、その日ちょうど上条が通る二、三分ほど前に故障したらしく
封鎖する直前の出来事だったらしい。
しかし、持ち前の勘でとっさの判断で転がり出て九死に一生を得たのだ。
いや、それ以上に今の上条には死ぬわけにはいかない理由があった。

「ふぅ……危ない危ない、まだまだやるべき事はたくさんあるぞ!」

そう、上条は決意した。
思い切って想い人に告白する。
その結果が惨敗だろうが、成功だろうが気にしない。

「番外個体が言ってたように、逃げてちゃダメだよな!」

逃げていては進めない、それは彼が一番よく分かっていることだ。
今までどんな困難も逃げずに立ち向かってきた。
禁書目録と呼ばれる少女を救い、錬金術師を倒し、学園都市最強に立ち向った
これは彼にとって勇気を振り絞った一部でしかないが、それに比べれば想い人に気持ちを告げるなど造作もないことだ。

「よっし!やるぞ!」

気合を入れる。
この時間ならば、会えるはずだ、と辺りを見回すと、案の定、彼女はいた。

「ちょろっとー!!アンタこんな所で何してんのよ!」

ズンズン近づいてくる想い人に上条は気付かれぬようにニヤリと笑う。
彼女をデートに誘い、そこで話をしよう。
そして告白が失敗したら友人に愚痴でも聞いてもらおうと決める。
だが、もし成功した暁には、

「(コーヒーでも、奢ってやるかな?)」

両人とも喜ぶだろうか、などと考えて上条は想い人と向き合うことにする。
緊張はするが、奮った勇気はとどまる事は無い。
――――数日後、仲睦まじいカップルが学園都市に生まれる事になる。

         ☆

おまけ

「そういや、お前なンで常盤台の制服なンざ着てやがる?」

「ん?単純にアナタをからかう為かな?」

「……………あっそ」

「あっれーん?もしかして欲情しちゃったわけぇ?ぎゃは☆」

「アホ、ちげェよ…………ちったァ丸くなったかと思えば……」

ヨォ、オジョウチャンコンナトコロデドウシタノ?

「あン?」

ダ、ダレカァタスケテクダサァイトミサカハ
ヘヘヘ、コンナトコロデモウフイチマイナンテ

「……………おい、あれ」

「あれ?」

ダイジョウブダヨ、オニイサンガヤサシクシテアゲルカラ
イヤ!ヤメテクダサイ!

「ふええええええええええええええええええ!誰か助けてください!」





「おィ!あれ妹達じゃねェか!ンで素っ裸に毛布一枚なンだよ!」

「あっ、一九〇九〇号に制服借りたまんま放置してた☆」

「お前の服貸せよォォォォォォ!!放置してた『☆』じゃねェだろうが!」

「おっと、一方通行、ミサカに構ってる時間は無いよ?」





「は、離して下さい!とミサカは自身の危機を察知して掴まれている手を振り払います!」

「おら!逃げてんじゃねぇぞ!そんな格好でいるんだから誘ってんだろうが!」

「番外個体許すまじ、とミサカは未だに帰ってこない痴女に怒りを露にします」




「ちィ!くそ女がああああああああああああああああ!」

「ぎゃははは!さっさと行きなよ学園都市の第一位さん?」

「てめェ覚えてろよ!」


オラァソコノチンピラ、ソノオンナハナシヤガレ!
ア、アクセラレータ!?ナ、ナゼコンナトコロニ!?トミサカハオドロキガカクセマセン









「…………」

タク、メンドクセェ
ア、アノ、アリガトウゴザイマシタトミサカハ……

オ?アァ、キニスンナ、テメェノセイジャネェヨ
デスガ……
ソレヨリオマエナンデカオアカインダヨ、カゼカ?
ナ、ナンデモアリマセンヨ、ミサカノフカクデス
ハァ?

「ひひっ!今度はどんな風にからかってやろうかな?」


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