小ネタ その感情の名前も忘れている
「いい加減にっ!……1発くらいっ!……喰らったらどうなのよっ!」
しかし、放たれる電撃は全て、上条の右手によってかき消されてしまう。
放課後、いつもの公園でいつものように繰り返されるいつもの日常。
「ていうかっ……1発でも喰らったら……上条さんは死んでしまいますよ……っと」
「っこっ…このっ!このっ!このっ!」
いつものように余裕で電撃を捌かれ(美琴視点)、ムキになって連打する美琴。
敵意を剥き出しにして(上条視点)、電撃を連打してくる美琴に恐怖を覚えながらも、なんとか対応する上条。
「っくっ……っととっ……つーか、さっきからオマエは何をそんなに怒ってるんだ?」
「今日はスーパーの特売日だっていうのに………はぁ~不幸だ」
「スーパーの…特売日……ですってええええええええ!」
(落雷!?)
上条は、自分の頭上目掛けて落ちてきた雷を間一髪防ぐと同時に、己が地雷を踏んだことを理解した。
「う…あ…あの……み…みさ…みさか……御坂サン?」
「ほ~う、どうやらアンタは自分の命よりもスーパーの特売日の方が大事なようね」
(の、残された選択肢は少ない。どうすればこの危機を乗り越えられる?考えろ、考えるんだ上条当麻!)
「タノミマスカラオチツイテクダサイミサカサン」(土下座)
「ン~?私は落ち着いてるわよ……ええ…そりゃあもう……これ以上無いってくらいに……」
「アンタが誰と……何をしようが……何をもらおうが……ニコニコ笑ってられるくらいにはねええぇぇぇ!!」
「どこがだっ!……いや確かに今ニコニコ笑ってるけど、目が全然笑ってねぇだろうがぁぁぁ!!」
「消し飛べ」
「だぁぁぁぁ!不幸だあああぁぁぁぁ!!」
「き、今日は……厄日か何かか?」
すっきりしたという台詞を残して、御坂美琴は去って行った。そして上条はというと……。
「があぁぁ!もう駄目だ。上条さんの体力はゼロを通り越してマイナスですよ」
と、服が汚れるのも気にせず地面に寝転がる。
「ここのところ、ビリビリも少なくなって良い関係になってきたなって思ってたんだけどな………」
残された上条は、ここ最近の美琴とのやり取りを思い返しながら、ひとりごちる。
タイムセールに付き合ってくれたり、勉強をみてくれたりと、世話になりっぱなしなのである。何かお返しをしないとなと言うと、彼女は
『ンー……別にいいわよ。私が好きでやってることだし。それにさ………アンタは私に、もっと人に頼れとか言うくせに……』
『アンタ自身は全部一人で抱え込んじゃってさ…こんな時くらいもっと私に頼んなさいよ』と笑って言うのである。
「はぁ~……まったく何だってんだよ」その時の笑顔を思い出し、顔が熱くなるのを自覚する上条。
しかしもっと彼女の笑顔を見たいとは思う。だが何故そう思うのか分からない。分からない…判らない…自分自身のことなのに何も解らない。
「たく………この上条さんがまさか中学生に振り回されることになるとはねぇ……」ぼやきながらも、上条は笑っていた。
わからないことをいくら考えても仕方ない。上条は携帯を取り出すとメールを打ち始める。明日からまたあの笑顔を見る為に………。