とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ ○○○疑惑



「おっねっえっさまー!!」
「わっ!?」

 名前を呼ばれ振り向こうとした瞬間、黒子が空間移動してきて背中にのしかかってきた。
 もう高一になったんだから、人前で抱きついてくるのはいい加減やめてほしい。

「今日は風紀委員は非番なんですの! ですからお姉さま! 黒子と愛を深めに参りましょう!」
「あ、ごめん。今日は予定があるの」
「予定!? もしやまたもやあのガキンチョでは!?」
「そっ。だからアンタとの愛は深めないし深めるつもりも毛頭ないわ」
「そんな!? お姉さまは私よりもそのガキンチョを選ぶんですの!?」
(そりゃ誰だって騒がしい変態よりも騒がしい子供の方を選ぶでしょ)

 などとは言葉には出さず、携帯で時間を確認しつつ黒子を振りほどいて美琴は歩を進める。そろそろその『ガキンチョ』との待ち合わせの時間だ。
 後ろでは、まるで顔をどこかに打ち付けている様な重い音がテンポよく聞こえたが、大方発信源は黒子なので気にしない。

 気持ち早足になりながら美琴はいつもの自販機の前へ向かった。
 10分と経たずに到着したのだが、案の定、あの『ガキンチョ』の姿はなかった。
 自販機に蹴りをかましヤシの実サイダーを献上させてから、どこに居るか聞こうと携帯のメール画面を開いた。
 まぁどうせ、なんだかんだと地味な不幸に巻き込まれているんだろう。
 
「不幸だーーーーーーーー!!!!」
「そうそう、こんな感じに。……って、え?」

 声の方に顔を向ければガラの悪そうな人達に追われている、ウニヘッドが特徴の中学生がいた。

「ったく……。あのバカはまた首を突っ込んだのね」

 呆れて呟きながら意識を前髪へ向ける。
 狙うは不良たち。
 威力を調節し狙いを定め発射する。

『おおおおおおお!?』

『雷撃の槍』は不良たちへと突き刺さり、彼らを程よく焦げさせて気絶させた。
 その光景を「おお!」と感心したような顔で見てから、笑顔でこちらを向いた。

「ありがとなー! ビリビリ姉ちゃーん!」

 ピクっと美琴のこめかみが引くつき、美琴の前髪から再び不穏な音が鳴り始める。
 そして狙うはこっちに手を振っているあのガキンチョ。

「おわ!?」

 雷撃は少年を黒焦げにすることなく、少年の右手に吸い込まれるように消えていった。
 驚いている少年に美琴は歩み寄り、少し怖さを覗かせる様な口調で話しかけた。

「あぶねーだろ! ビリビリ姉ちゃん!」
「おいこらガキンチョ。ビリビリ言うなって前も言わなかったっけ?」
「そっちこそガキンチョ言うな! 俺には上条当麻って名前があるんだ!」
「アンタが私を名前で呼べばちゃんと呼んでやるわよ?」
「ぐっ……!」

 美琴のその言葉に詰まり少年、上条はブツブツと「ビリビリ姉ちゃんはビリビリ姉ちゃんだろ……」とどこか恥ずかしそうな、そして照れたような表情で呟いた。

「聞こえてるわよガキンチョ」
「げっ!? この地獄耳!」
「ほほぅ? って事は聞かれたくない事を言っていたのね?」
「ハッ! この騙したなー!!」
「ま、そこんとこは後でゆっくり聞くとして、ほら行くわよガキンチョ。試験近いんでしょ?」
「そうだった! 急ぐぞ姉ちゃん!」
「こら、急に走り出さないの。転ぶわよ」

 ハッとした表情で美琴の手を取り急いで走り去っていく上条。
 手を引かれながら美琴は「相変わらず手のかかるガキンチョね」と僅かに呆れを滲ませた優しい表情で、全力疾走している上条の頭を見下ろしていた。


         ☆


「はい、今日はこれで終わり」
「うがー……。疲れたよぉ……」
「アンタが普段から勉強してないのが悪いのよ」

 テーブルに手を投げだし突っ伏しながらぼやく上条に、美琴は使ったテキストを片付けながら返した。
 勉強場所は決まってこの少年の部屋だ。最初の頃は広い美琴の部屋や図書館でやっていたのだが、いつだったか自分の部屋でやろうと上条が強く言ってきたのでこの場所になった。
 そこは少年なりのプライドなのだが、その辺りは美琴にはわかっていない。

「姉ちゃーん……。腹減った~……」

 言われて時計を確認する。針は既に6時を差しており、外もすっかり真っ暗だ。
 その直後に「グゥ~」と腹の虫が激しい自己主張をしていた。
 そのまま帰ろうとしたのだが、そうまで訴えられたら帰りにくい。
 小さく息をつきながら美琴は立ち上がりキッチンに向かい、同時に上条は期待に満ちた眼差しを送っていた。

「……、仕方ない。なんか作ってあげるわよ」
「おーっ!! ありがと美琴姉ちゃん!」

 腰に衝撃。上条が後ろから抱きついてきたのだ。
 何とかそのまま身体を回し、上条と向き合う形になる。そして見えたのは、眩しいまでの笑顔だった。

「っ!? ……コホン。こらっ! 危ないから急に抱きつかない! ほら、ご飯出来るまでテーブル片付けてなさい」

 コツンと小さなげんこつと共に上条を叱る。上機嫌な上条も素直に「はーい」と言いながらテーブルの上を片付けに行った。
 その音を聞きながら美琴はエプロンを身につける。

(こんな時ばっかり『美琴姉ちゃん』って呼んで……。……………あれ? なんか、変な感じがする。あれ?)

 その変な感じを抱きながら美琴は冷蔵庫の中を物色する。
 中から料を取り出し準備を始める。今日は男の子なら皆大好きカレーライスだ。
 今日は勉強頑張ったし、ちょっとお肉多めにしてあげようかな。とか何とか思っていると本当に肉を多めに切っていく。

(ついでに旗でも建ててあげようかしら)

 多分、上条は喜ぶだろう。
 いくら大人ぶっていてもまだまだ子供だ。
 トントンとリズムよく材料を切っていく音と、リビングから聞こえるテレビの音の中、美琴は先ほどの変な感じに襲われていた。

 上条に笑顔で抱きつかれてからなんかおかしい。
 別に笑顔なんて初めて見る訳でもないのに。
 さっきからなんだか顔が熱い。耳の奥でドクンドクン! とうるさい。
 そこで「あれ? ちょっと待って。この感じって……」と発見しなくてもいい物を発見した時のような感覚に襲われた。

(私ってまさか、ショタコンだったの!?)


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