勘違い
──土曜日の夕方、常盤台の寮──
「御坂か?明日暇か?暇ならいつもの自販機の前で1時頃に会いたいんだけど」
びっくりした。私からの連絡はいつも無視するアイツ、なのに今日はアイツから電話が来た。最近待ち伏せしても全然会えなかったのに!しかもそれだけじゃない!私に会いたいって……
え?え?え?え?え?え?これってどういうこと??もしかしてアイツも私のこと好きになっちゃったとか?
いやいや、きっと行ったらたいした用事じゃないわよね、アイツのことだし。
でもでも、アイツからわざわざ連絡が来たの!しかも電話じゃあ無理みたいな……
ううん、きっとこうやって期待しても裏切られるんだろうなー。勘違いってわかってるんだけど期待しちゃうじゃない!!
明日、そう日曜日が暇か聞いてきたし、もしかしてデートとか行くのかな?流石に話すだけだったらわざわざ呼びださないわよね……
でもでも、ただ会いたかったとか言ってくれたらどうしよう!!!!!!
「お姉様……」
黒子がそう呼びかけてもベットでもだえてる御坂には全く聞こえていないようだ
ワナワナと震えながら黒子が絶叫した。
「思っていることが全部声に出てますわよーーー!!!あの類人猿め!!!!!!」
黒子が叫ぶように言ってるのですら御坂の耳には入っていない。
その様子を見て、恨み言を言いながら枕にひたすら頭突きをしていた。いったいその枕は何の代わりなのだろうか?
また、御坂も枕にほお擦りしながらひたすら妄想の世界に入っていた。いったいその枕は何の代わりなのだろうか?
ドン!
「コラ!!お前ら…………」
あまりにもこれ部屋が騒がしかったため怒りに部屋に飛び込んできた寮監。
しかし、すこし様子を見てそっとドアを閉めた。
流石の寮監もブツブツ言いながら枕にほお擦りし、興奮気味にベットを叩いてる御坂と枕に頭突きしながら絶叫してる黒子の様子を見て、何も言えずにそっとドアを閉め立ち去った。
──日曜日、自販機そばのベンチ──
時刻はまだ12時だが、ベンチにはすでに御坂がいた。
(やっぱり早すぎたかな?でも寮にいても落ち着かないし……あーもうどうしよう!)
身だしなみは何度もチェックした、初めて彼から誘われたのだ。しかも日曜日に。朝も楽しみすぎて無駄に早起きしてしまい、待ち合わせの30分前に行こう。行く途中で何が起こるかわからないから30分は大目に見ていこうと、結果1時間も前から待ち合わせの場所に来ていた。
流石にこんなに早く来るとは思わない。しかも彼は遅刻してばっかりの人間だ。しかし、それでも誘われたのが嬉しくてたまらないし、寮にいても落ち着かないからこんなに早く着てしまった。
30分後
御坂はベンチでソワソワしながらひたすら妄想していた。そこに頭の中ではなく、はっきりとアイツの声が聞こえた。
まだ30分前なのにもうきてくれた!!
「大丈夫だって!俺に任せろ!ちゃんと紹介するから」
「──────」
「俺だってそうだよ。アイツは良いやつだからさ!仲良くなれるぞ」
「──────」
(一人じゃない?誰かと話してる?え?私に紹介する?)
混乱する頭で声がするほうを見た。彼ともう一人いた。前に見た友達じゃない、女性だ。しかも
「佐天さん?」
そう、上条と一緒に来たのは佐天さんだ。
二人で仲良さげに歩いてきている。手にはお昼ご飯だろうか?ビニール袋を持っている
おそらく今そこで会ったとかでなく午前中も二人でいて、ちょっと早めに行きお昼ご飯を食べながら待っているつもりだったのだろう。
そう、おそらく午前中も二人は会っていたのだろう。
(そういえば最近佐天さんとは全然会ってないかも。休日も用事があるとか言ってたし。)
(あーそういうことなのかな?二人は付き合ってるの?)
御坂は唖然とした表情で二人を見ているとやがて二人も気づいた。
「おー御坂。早いな」
「えー!!上条さん!もしかして御坂さんの事なんですか?御坂さんなら私すでに友だちですよ!」
「え?なんだよー。じゃあ今日意味ないじゃん……」
「アハハ、上条さんらしいなー。」
仲良さげに話す二人とは対象に御坂は無表情で黙っている。
しかし、二人だけがしゃべっているのが気に食わず御坂から用件を聞いた。
「で?一体何の用なの?」
御坂本人はいつもどおりに振舞おうとしていたのかもしれない。しかしその様子は怒っているようにしか見えなかった。
二人もそれに戸惑いながらも答えた。
「え?いや、ただ御坂とは仲良いから紹介しとこうかなーって思いまして……」
(あー。なるほど。さっきの様子といい紹介といいやっぱり付き合ってるんだな。)
「へぇー。そう。ならもう用事は終わったのね?わるいけどちょっと用事思い出したから帰るわ。またね」
そう言い、常盤台のほうにスタスタと帰って行った。
残された二人は呆然と見送った。どっか具合が悪かったのだろうか?機嫌が悪かったのだろうか?二人で話しても結局何故帰ってしまったのかはわからなかった。
──常盤台の寮──
(あーあ。何勝手に期待して落ち込んでるんだろ)
(今思えばアイツには迷惑かけてばっかり。あんな態度じゃあ好かれる訳ないわよね……。)
御坂は気がつけば寮まで帰っていて、ずっとベットにもぐりこんでいた。
黒子がジャッジメントから帰ってきた時に声をかけたが、生返事。食欲がないと言い結局日曜日はベットの中にずっといた。
その日から御坂に元気がなくなった。
本人は普段どおりに振舞っているつもりだろうが元気がなく、遊びに誘っても気分じゃないと言われ食事もあまり取っていない。
──数日後、ファミレス──
「実は相談があります。お姉様が幻覚を見はじめてるっぽいんですの」
今日はジャッジメントが非番らしく、久しぶりにいつものメンバーで遊びに出かけていた。しかし、そこには御坂の姿だけ見えず黒子、初春、佐天の3人だけである。今はファミレスで話しているようだ。
「ええ!?それ御坂さん大丈夫なんですか?え?え?幻覚ってどんな風に見えてるんですか?私ちょっと調べますよ」
初春はそう言い鞄からノートパソコンを取り出し調べはじめた。
「そうですわね。わたくしがへこんでるお姉様を慰めようと夜な夜なベットに侵入するんですが、その時にお姉様は私が見えていないようで虫を見るような目つきになるんですの」
パタン
初春はパソコンを閉じながら言い放った。
「御坂さんは正常みたいですね。多分白井さんのこと本気で軽蔑してるだけですよ。」
「でもへこんでるって御坂さん何かあったんですか?」
基本的に御坂は可愛いものに弱いなどの弱点はあるものの、へこんだり、悩み続けているのはらしくない。そう思う初春と佐天だから御坂のことを本気で心配しているようだ。
「わたくしも詳しいことは知らないのですが先日類人猿に会ってたようで、その後から様子がおかしい事からどうせ類人猿がなんかやらかしたのでしょう。」
「類人猿?」
「カミジョーさんって言う高校生ですの。」
「うわー流石お嬢様だな。年上と付き合うなんて恋愛も大人。御坂さんと付き合うなんてきっと高レベルの方なんでしょうね」
「彼はレベルは0ですの。そしてあんなのとお姉様が付き合ってるわけないでしょう!!」
「レベル0?意外ですねー。じゃあ御坂さんの片思いなんですね!」
「フン!でも今回の事でお姉様も深く傷ついておられるようなのでカミジョーさんのことも嫌いになるでしょう。そして傷心のお姉様を黒子が癒して……ゲヘヘ」
(先日、御坂さんと上条さん、そして御坂さんの片思い、急な不機嫌……もしかして御坂さん勘違いしてる?)
──常盤台の寮──
(やっぱりこんなの私らしくない。辛いけどアイツのこと祝福してきっぱり忘れよう!)
御坂は心を決めて携帯電話を取り出した。
上条には何故かメールが届かないし返信もなくて見てるかどうかわからないからたまに頑張って電話をするんだが、そんな時はいつだって悩んで練習して苦労してようやくかける決心がつく。それでも電話に出ない事が多かったりしたのだが、御坂は毎回非常に緊張していた。
発信履歴を見たらすぐに名前が見つかった、それにあわせて通話ボタンを押す
(いつもみたいに出なければ良いな……アハハ、決心したのに)
プルル、ガシャ
「もしもし、御坂か?」
こんなに早く出るとは思わなかった。驚きつつもしっかりと用件は言う。
「アンタ今大丈夫?大丈夫ならいつもの自販機の前でこれから会いたいんだけど」
「ああ、俺はかまわないけど……m」
「そう?じゃあ悪いけどすぐ来てね。」
ピッ
電話を切った。決心は固まった。後は会いに行くだけだ
──自販機そばのベンチ──
御坂がついた時、すでに上条は待っていて、空を見上げていた。
「やっ」
御坂が声をかけながら片手を上げた。
そうしたら上条もようやく御坂に気づいたようで片手を上げた。
「えーと、なんて切り出したら言いのかな……。まぁおめでとう」
御坂は会ってそう切り出した。おそらく早く言わないと決心が鈍ると考えたのだろう。
「まさかアンタが中学生相手に手出すなんて~。言っとくけど佐天さんは「おい、ちょ「私の友達なんだから」
上条が何かを言おうとしているが御坂はそれを許さずしゃべり続ける。ただ目線は合わせず後ろを向いている。
「まぁ私の友達同士が付き合い始めたんだから祝福はしてあげるけど「御坂!お前「大切にしなかったら許さないからね!」
ここで初めて御坂は上条を見つめた。そこで目にした上条は困惑しているように見えた。
おずおずしながらもはっきりと言った。
「俺は別に佐天さんと付き合ってないぞ?」
御坂の中では時が止まった。
(え?え?え?え?……でも、だって……)
「お前が何勘違いしてるか知らないけど、不幸な上条さんは誰か付き合ったりしてないですよー」
「でも、じゃあ急に紹介するとかなによ!?付き合ってるからこの間自慢の彼女を紹介しに来たんじゃないの!?」
「あれは佐天さんがレベルのことで悩んでて、能力が使えないだけで馬鹿にされたりが辛いとか言ってたんだ。だから高レベルだけど無能力者とも普通に接するお前みたいな存在がいることを教えてやろうとだな」
御坂は今までの決心が何処に行ったのやら、少しホッとした表情を浮かべながら上条の話を聞いていた
「それより、お前具合悪いんじゃないのか?熱は?」
そう言いグッと近づいて来ておでこに手を当て熱がないか確認し始めた。
ぶっちゃけよう、二人の距離はものすごい近い。御坂が少し背伸びして距離を詰めれば簡単にキスできるだろう。
好きな人がそんな距離にいるのだ、当然熱は上がっていき失神寸前だ。ここで漏電しないの上条が右手で熱を測っているからだ。
「ふにゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「おい!美琴!お前何急に失神してるんだよーーーー!!!!!」
(私やっぱりコイツのこと忘れるなんて絶対に無理だな…………)
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TO:御坂美琴
FROM:佐天涙子
Sub:NOTITLE
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御坂さん!何か勘違いさせちゃった
んならゴメンなさい!
私は別に上条さんとは付き合ってな
いです。ただ補習で知り合って仲良
くさせてもらっているだけです。
でも、御坂さんにも好きな人ってい
たんですね!ちょっと意外です!
今度ゆっくり馴初めとか聞かせて下
さいね!!
PS
上条さんって御坂さんのこと話す時
迷惑そうな口ぶりの割りには顔がに
やけてて楽しそうなんですよねー。