とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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上条さんと『気』の泉 1



上条当麻は眠っていた。今は夜中の2時なのだから当然だ。しかし何か息苦しさを感じて目が覚めた。
ちなみにここは浴槽の中であって、ベッドの上ではない。本来ならばベッドで寝ているはずだがそこは居候の腹ベコシスターに譲った。色々と理由があるのだがそこは割愛させていただく。

「うーーーーーーん、んん!!?うわああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!!???」

目を覚ました上条が絶叫した理由。それは、

「なんだあんた達!?あれ?ここ俺の部屋の風呂場だよな!!?」

なんか浴槽の縁に誰かが立ってこちらを見下ろしていた。しかも二人。
一人は長い髪が黄色く染められていて、良く分からない服を着ている。もう一人は着物を着て、髪は短い。そんな二人が何も言わずにこちらを見下ろしているのだから怖い、滅茶苦茶怖い。夜中の二時ということが余計に怖さを増していた。
このままと言うわけにもいかないので、恐る恐る上条は声を出した。

「あのー、あなた達はどちら様ですか?というかなんで無言で立ってんの?そして俺に何の用があんの?」

すると黄色い髪の方(以後黄色)が

「貴方、全然分かってない!!いくら何でも酷すぎる!!!!」
「ええ!!!!?何が!?」
「まあまあ二人とも落ち着いて」

と、今まで一言も発しなかった着物の方(以後着物)が二人を止めた。

「「…………」」

二人が落ち着いたのを確認して着物は説明を始めた。

「貴方は見に覚えの無い事で誰かの機嫌を損ねたり、怒られたりした事は有りませんか?」
「山程有ります」

昨日の事だ。下校中に偶然出会った(この一週間全て)御坂美琴と帰っていた時、いつの間にか美琴の髪に桜の花がくっ付いていたので取ってやろうとした。後頭部の辺りだったので美琴を呼び止め、肩に左手を置き右手で取ってやった。それを美琴に見せてやると、何故か馬鹿と言われそのまま走り去ってしまった。なんかのおまじないで取っちゃいけなかったのだろうか?

「という事がありました」
「これは……」
「想像以上だわ……」
「??何が?」
「あまりにも酷いので貴方を気の色と種類と何を考えてるかが大体分かるようにしてあげます!!」
「ちょっと待って!!『気』って何!!?それってほんとに有んの!?」
「有ります」
「即答!?」
「はいドーン!!!!これで良し」
「はいドーン!!!!じゃ無えぇぇぇぇぇええ!!!!!!!何してくれてんだあああああぁぁぁぁぁあああ!!?!?」
「ふっ、そう言ってられるのも今の内。あなたはきっと私たちに感謝する事となる」
「テメエ!!ふざけんなぁぁぁあああ」


携帯のアラームが聞こえる。セットした時間は7時。朝食の準備を始めるなければ。さもないと居候にえらい目に遭わされる。

「ん……あれ、朝か。って事は今のは夢か。はぁー、良かった……にしても何であんな夢を?」

まだ眠い。いつもならスッキリとした朝を迎えているはずなのに。幸い今日は休日だ。朝食を終えたらもう一眠りしよう。そう考えて風呂場から出て顔を洗い、台所へと向かう。今日の朝食は昨日の残り物でいいか、と考えつつ居候を起こす。

「インデックスー。ご飯ですよー。早く起きないと俺が全部食っちまうぞー」
「とうまーーーーーーーーーーー!!?」
「ぎゃーーーーーーーーっ!!!!?嘘、嘘だよこの家の食事の八割は貴方様の物で御座いますインデックス様ーーーー!!」

なんとか噛みつきを回避した上条は朝食を持ってインデックスの元へと向かおうとした。


「おいインデックス。なんだ!?それ!!?」

インデックスの体の周りにもやもやとした白い何かと、
『豚肉一日七千キロ 鶏肉一日三千キロ 生卵一日五万個 キャベツ一日二万個 玉ねぎ一日三万個 餃子一日百万個 食盛況にして万里を越える』
という謎の一文が。

「?どうしたの、とうま」
「いや、何でもない。飯食おうぜ」

どうやらインデックスには見えていないらしい。一体自分に何が起きたというのか。
考えごとに没頭しているとインデックスが、

「とうま、今日はこもえとあいさと一緒に出掛けてくるんだよ。だからお昼は要らないんだよ。美味しい中華料理を食べまくって来るんだよ」

と、楽しそうに言った。

「そうか、それは良かったな。いくら食べまくるとつっても一日で餃子百万個とかは食うんじゃ…無い……ぞ…」

言いながら上条は夢の事を思い出した。

『気の色と種類と大体の考えてる事が分かるようになる』

確かにそう言っていた。という事は、インデックスの周りの白い何かは『気』で謎の一文は『考えてること』という事だろうか。そう思いつつインデックスへと意識を向けると、

「ごちそうさまなんだよ、とうま」

食事を終えてスフィンクスと戯れていた。テーブルの上には空になったお椀と皿。考えごとをしている間に全て平らげられたらしい。

「ご飯だけで昼まで過ごせと……?」

昼までどう空腹を誤魔化すか考えながらとりあえずご飯を食べる上条だった。ちなみにそのご飯はちょっぴり涙の味がした。


インデックスを見送り、する事も無いので適当に外をぶらつきつつ昨日の夢について考えることにした。

「夢枕に立つの術、ねえ。本当に何だったんだろうなあの人?達。つーか『気』の色とか種類が分かるようになったって言っても、今の所白色しか見てねえし何色がどうとか説明が無きゃ分かんねえっての」

インデックスを見送る前に昨日の夢について相談をしてみたところそういう術が存在するということが分かった。が、二人の謎の人物と今の上条の状態については解らないとのことだった。
ぼやいていると、向こうから土御門がこちらに歩いてくる。暗く青い『気』を身に纏い、『妹愛 謝罪 やばい どうしよう』という一文と共に。

「よう。どうしたんだ土御門?舞夏とケンカでもしたか?」
「何故分かった?というわけで今のオレに上やんの相手をしてる余裕は無い。ブルーぜよ。はぁ……」
「ケンカするほど仲がいいって奴だって。元気出せよ」

上条がそう励ました瞬間、暗く青くゼリーのようだった『気』が赤い炎の様な『気』に変化し謎の一文も『上条殴る 今すぐ殴る テメエと一緒にすんな』に変化した。

「あのー土御門さん?ひょっとして怒ってらっしゃる?」
「よく分かったな。今日の上やんは冴えているじゃないか。オレと舞夏はなぁ!!!ケンカなんかした事無かったんだよ!!!!ケンカをしょっちゅうしてんのはテメエの方だろうがあぁぁぁぁ!!」

ものすごい剣幕で襲いかかってくる土御門に背を向けて走り出しつつ上条は、

「何の事だーーーーーーーーーーっ!!!?」
「超電磁砲と毎日一緒に帰りながらギャーギャー言ってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!!大人しくオレに殴られろぉぉぉぉぉ!!」
「絶対に嫌だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

なんとか土御門の追撃から逃れ、辿り着いたのはいつもの公園だった。散々走り回って喉が乾いたので何か飲もう。そう思い自販機へと向かおうとした。その時、

「アンタここで何やってんの?」

背後から聞き慣れた声がした。

「悪い御坂。ちょっと待っててくれ。上条さんは散々走り回って喉がカラカラなんですよ。」

そう言いながら自販機にお金を投入する。生憎殆どの飲み物が売り切れで残っているのは、『アポロドトキCン』、『媚多眠ウォーター』、『ヤシの実サイダー』のみ。

(何故にこんな訳の分からん飲み物ばかり置いてあるんだこの自販機はーーーーっ!!とりあえず御坂にはヤシの実サイダーとして、俺は……なんかこのアポロ何とかは危険な匂いがプンプンする。となると必然的にこっちの……ああもうなるようになれだ!!)

ベンチで待っている美琴の方へと向かいながら、上条は美琴の事を考えていた。

(昨日の事が有るから気まずくなるかと思ったけど、そんな事無かったな。そう言えば御坂の『気』がどんな色で何考えてるかも今なら分かんのか。これで御坂ともっと上手くつき合える様になれば良いんだけど)

「お待たせ御…坂……」
「そんなに待ってないわよ。ってどうしたの?」

今の上条には美琴の『気』の色や考えていることが分かる。
美琴の周りにはピンク色の小さいハートが沢山浮かんでいて、実にシンプルに一言『上条当麻 好き』と書いてあった。

(なんだこれどういう事だよ御坂のまわりにピンクな『気』出ててなんかハートが沢山浮いてて俺が好きって書いてあってつまり御坂は俺が好きででも昨日は馬鹿って言われてでもこの一週間毎日一緒に下校して俺もなんだか楽しくて嬉しくてもっとずっと一緒に居たくてつまり俺は御坂の事が……)
「ねえ、ちょっと大丈夫?」
「好きなのかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!???」
「えええええええええちょっ、何言ってんのよーーーーーーー!!!!!???」

二人してバニックに陥った。


二人が落ち着きを取り戻したのはそれから五分後の事だった。落ち着いたというか二人ともお互いにちらちらと横目で相手の顔を盗み見ようとしてはバッチリ目が合って顔を赤くしてもじもじする。そしてまた横目で……の繰り返しだ。
いい加減焦れったくなった上条は、

「御坂、聞いて欲しい事が有るんだ」

美琴の瞳を見つめてそう言った。美琴はコクリと頷いて、

「私も、アンタに聞いて欲しい事が有るの。」

上条の瞳を見つめてそう言った。


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