とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集


「「えっ、えええええ…白井さん!!!!」」

 とあるファミレスに二人の少女の叫び声が響き渡る。
あまりの声に周りのお客が、なんだなんだとその一角を見やる。

「――いっ今なんて…」
「そっそうですよ、今のは」
 もう少し声のボリュームを落としてくださいませと、周りの視線を気にしながら、二人に注意する。

 うっかり口を滑らせたのが原因だった。ちょっとお姉さまに思いを馳せたら、先ほどの事を思い出して
何とも切なくなって、ぽろりと涙が溢れて零れて止まらなくり、二人に慰められる形でぽろっと出てしまったのだ。
そして二人の少女の叫びへと至るわけである。

 (黙っておくつもりでしたのに…佐天さんと初春にはしてやられましたわ)

「で、白井さん…御坂さんと上条さんはどこに?!」
 と、佐天は白井に迫る。
「それを、聞いてどうするつもりですの?」
 答えは、予想がついているのでおざなりに返す。
「も・ち・ろ・ん、見に行くんですよ!」 
 ああ、やっぱりかと…もっと捻った回答が欲しかったような気がしないでもない。
「そんな野暮な真似は…わたくしのプライドが許しませんわ」
 そうかなぁ~と佐天は続ける
「二人の恋の行方は気にならないんですか?」
「それこそ…野暮じゃありませんの」
 大体、あのお二方は既に両想いであるということがわかっている。これ以上、何を気にしろと言うのだ。

「え~二人が両想いなら尚更じゃないですかー」
 続く佐天の言葉には白井にとって妙に説得力があった。

「御坂さんも上条さんも出会ってから気付かないうちに愛を育んできたんですよーだからもしかしたら
そのまま一足飛びでステップアップってことも、早すぎる大人への階段、これはまずいと思うんです、白井さん!」
 佐天は、危険ですよと主張し、告げる。
「様子を見に行くべきだと思うんです!」
 佐天さん、その理論はむちゃくちゃですよと初春は突っ込んでたりするのだが、その声も既に白井には届かない。

 ま、まさか、お姉さまに限ってそんな事あるわけがない、いやでもあの類人猿はどうだ…あの類人猿は
信用ならないかもしれない、不安だ。そんなお姉さまを無理やり…あらぬ方向へ妄想は膨らみ、止まらない。

「佐天さん、初春…それにインデックスさん」
 まんまと乗せられた白井は、立ち上がる。
「行きますわよ、鉄橋に!」

 やったーと佐天はガッツポーズ、白井に何が起きたのか分からず、ただ困惑する初春。
まだ食べたりないのにと、一人食べ続けていたインデックスはちょっぴり不満そうにした。

 かくして四人の少女は、鉄橋へと向かう。
勿論、そんなとあるファミレスでの一幕を知るはずもない、上条と美琴。四人と二人が交差するとき、物語は始まる。

 一人の少女がぽつんと夜の鉄橋に立っていた。
街の中心部から離れたこの場所は、少女にとって思い出の場所だ。
ここで、最初の収録が行われ、そこで二人は出会ったのだから。

(あいつ、来てくれるかな…)
 はぁ~とため息をつく。待つ間、特にする事がない美琴は、とりとめない考えを巡らす。

 美琴の予定では、こんなはずではなかった。もっと段階を踏んでから、きちんと告白するつもりでいた。
あの時、あんな風に偶然出会わなければ、あの様な恥ずかしい告白の仕方は回避できたかもしれない。
いやでもインデックスといたから、居候を許しているから、全部あいつが悪いと責任転化しそこに落ちつく。

(それにしても、黒子のやつ…)
 と美琴は先ほどのやり取りを思い出す。

 もう逃げないと、ファミレスへ戻ろうとしたところを黒子に止められて
「お姉さま、せっかくですから、この際告白をし直すという手もありますの」
 と提案され、あの告白の仕方は…と思うところがあった美琴は、思わず賛成してしまった。

 黒子の提案の内容はこうだ、お姉さまの一大イベント、こんなムードもへったくれもない公園や、ファミレスに戻ってなんか
するよりは二人のワンシーン、鉄橋での一幕、つまりここで告白すれば、それはもう思い出に残る素敵な物となるはずであると。
ちなみに、振られないことを前提としているわけであり、振られたらそれこそ立ち直れないのではと、その時は気付かなかった。

 お姉さまは大船に乗った気持ちでお待ちくださいませ、全ては黒子に任せてくださいと、別れてから
少々時間が経ち、既に辺りは真っ暗な夜なのだ。大船どころか泥舟って事はないだろうかと心配になってくる。

(大丈夫だろうか…)
 心配なのはあいつではなく、黒子のほうだ。美琴は、黒子が泣いていた事に気付いていた。
迎えに行きますと申し出たのは、黒子なりに決着を着けるためかもしれないと美琴は思う。
 誰よりも美琴を想い慕う後輩であり、相棒である黒子にありがとう…と心の中で感謝する。

 様々な要素が重なり、美琴はここにいる。
だから、ちゃんとあいつに想いをぶつけよう、どんな結果でも私は後悔しない。


「御坂っ!」
 聞き覚えのある声、間違えようもない。
唐突に名を呼ばれた美琴は、来てくれたんだとそれだけで胸がいっぱいになった。

 待ち続けた人――上条当麻がそこにいた。

「「……………」」 

 いざ、その時となると、中々言い出せないものだ。
お互いに顔を見合わせては二人して意識し、顔を赤くして俯くを何回か繰り返して、
初々しいこと既にカップルじゃないですかと、外野がいたら突っ込まれそうな雰囲気を醸し出している。

 いい加減この状態を、ぶち壊さなければと上条は思い。
対する美琴も、言わなきゃと自分を叱咤し、二人は同時に口を開いた。

「「……あの!」」

(だぁぁあータイミング悪すぎだー!)
(あぁもう、なんでうまくいかないのー!) 

 タイミングが重なり、何とも言えない空気が流れる。

(まずい、何かきっかけを作らないと…)
(どっどうしよう…何かきっかけがあれば…)

 数分後、意を決して言葉を紡ぎだしたのは美琴だった。

「ね、ねぇ」
「なっ、なんだ?」
「あ、あのさ…今日、あんたに言った事、覚えてる?」
「…お、おう、覚えてるぞ」
「ど、どうなのよ…」
「ど、どうって…」
「だから、私が…「まっ待て!御坂っ、それ以上は言うな!」
 あまりの歯切れの悪さにじれったくなった美琴は言おうとするが、止められてしまった。

(えっ、言うなってつまり…もしかして、私振られた…の?)
 どんな結果でも後悔しないと思っていたのに…やっぱり無理だ。
途端に泣けてきて、その顔を見られまいと美琴は俯き、逃げるように走り出そうとする。

「って、御坂!どうしたんだ、いきなり?!」
 様子がおかしい事に気付き、逃げようとする美琴の腕を掴む。
「は、離して…」
「嫌だ」
 と言ってその腕をぐぃっと引っ張り抱き寄せる。
突然の事で、何の抵抗もできずに美琴は腕の中に納まった。
「えっ、ちょっと…なっなにしてんのよ!」
「お前、何か誤解してるだろ」 
「そ、それは…だって…」
「だって?」
「さっき言うなって…だから私」
「いや、それは…そのだな…」
「…………うん」
「…御坂に先に言われたくなかったんだよ」
 観念したように告げ、美琴を抱きしめる腕をほどくとその肩に手を置き、少しだけ離す。
ちょうど、美琴が見上げる形になり、二人の視線は交差して、互いの瞳に相手を映し出した。


「俺は…お前の事が好きだ!」
「……………っ!」

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。
言葉は、心に響いて、気持ちは溢れて涙になった。

「まっ紛らわしいのよ、このばか…」
 勝手に一人で勘違いして、恥ずかしさ半分、嬉しさ半分、どうしていいか分からない。
頬を伝う涙は止まらなくて、泣くなよとその雫を拭う手が不意に添えられる。

「なぁ…お前の気持ち、もう一度ちゃんと聞きたいんだけど?」

(ずるい…そんなのもう分かってるじゃない)

 添えられた手、徐々に縮まる距離、『好き』という気持ちは言葉になる前に塞がれた。

 しばらく二人は黙って寄り添っていた。
永遠に続けばいいと思う時間は、唐突に終わりを告げる。

「お姉さまーーーーー!」
「とうまーーーーーー!」 
「「御坂さーん!」」

 えっと思って声のする方向には、見知った四人の少女達。
いやな予感が駆け巡る、もしかして…一部始終見られた?

「ばっちり見ましたよ!」
 と佐天は言う。
「遠くから見てたんで、何を喋ってるのかは分かりませんでしたけど!」
「でもドラマみたいでした!」
 とこれは初春。
「おのれぇぇぇお姉さまのベーゼをあっさり奪っていくとはぁぁあ」
 と言うまでもなく、白井。
「だぁっはー痛い!こら噛むな、インデックス!」

 皆が祝福してくれてるのは分かる、分かるけど。

「なんていうかこれって、不幸だぁぁぁぁぁぁあー」

 満天の星空に、一人の少女の叫び声が木霊した。


――ザッ

 川原にツンツン頭の少年とパチっと放電させている少女がいた。

緊迫した空気の中、ツンツン頭の少年はうんざりした面持ちで、口を開いた。

「で…何の用だ、ビリビリ」
「ビリビリじゃない!いい加減、名前で呼びなさいよゴラァァ」

 ビリビリと呼ばれた少女はちょっと顔を赤くしながら  

「今日は、あっあんたに…えっとその」
「はぁ?…てか一日早く呼び出しておいて何も考えてないとかはないよな?」
「明日は、そう都合が悪くなったから、今日呼び出して何が悪いのよ!」 
「俺の都合は無視かよ…で、改めて聞くが何の用だ?」
「あ、あの、私はあんたの事が好…『ピピピピピピピ』」
「あ、わりぃ…メールだ、で何か言ったか?」

 ふるふるふる…

「…っ好きだって言ってんのよゴラァァァァ!」
「ぐふぅ!」

『とある科学の超電磁砲<レールガン>第4巻いよいよ発売!』


おまけ

 帰り道、二人の少女は話に花を咲かせていた。

「ねえ…初春」
「何ですか、佐天さん?」
「私たちもさ、いつかあんな恋がしたいね!」
「…そうですね!」
「あ~もうほんとっお似合いだなぁ~」
「上条さんは、幸せ者ですよね!」
「ね、二人の結婚式とか楽しみじゃない?」
「って気が早すぎですよ!」



終わり


ウィキ募集バナー