Interstellar Wars
ネルヴィル恒星系宙域ネスト
戦闘の結果なのか、星間塵が辺りを浮遊していた。
塵の影響で普段は煌々と輝くネルヴィルが霞んで見える。不気味な光景。
「また一つ、国が消えたか……」
かつては惑星だったものを、見やった。
何かの兵器によって、瞬時に焦土に変えられてしまったのだろう星の屍。
しかし、この類いの悲劇はもはや悲劇のうちにもはいらなかった。
あの悪魔の船は、之までも次々と惑星を爆散させ、幾万もの民を殺戮している。
今回も仁義なき戦いの幕間劇の一つに過ぎない。
この連鎖に杭を打つには、調停者を探すほかなるまい。
だが、はたして……、奴らにこのまま良い思いだけさせて終らせてよいものだろうか。
どちらにせよ、ここに立ち止まる訳にはいかない。先を急ぐ。
「状況は確認した。これより全艦隊を反転させ、宙域を出る」
「了解」
「それと、インセクト種族は全滅した。NVUFにはそう伝えておけ」
「ですが大佐。実際は一人……」
「おっと、言い忘れたが……その通信は人類側に確実に漏れるようにしろ。いいな?」
「りょ、了解」
生き残ったとはいえ、たった一人だ。
まあその一人が、女王陛下様だったことが唯一の救いだな。
これで減じたインセクトたちもじきに元通りだろう。
だが彼らの母星、ネストはそうはならない。
調査によれば、重度の放射能汚染が確認された。汚染度が半減するまで一万年、元通りになるまで、二万年だ。
人類側のこの仕打ちに、我われは何をもって抗すれば良いのか……。
「宙域を脱しました。それとインセクトの女王陛下でありますが…」
「なんだ」
「見たところ、人の姿をしております。噂では、インセクト種族はミツバチに生態が似ているとのことでしたが」
「それは都市伝説にすぎん。まさか全身甲殻だとでも思っていたか?」
「いえ、ただとてもお美しい限りでして」
「…、確かにな。だが、見た目に左右されるな。いずれにしても蟲に一種だ。温厚でもあるまい」
「一応は警戒をしております。いえ同胞なのですから、そこまで気を使う必要はないのですがね」
「気品高き女王陛下だ。ご気分を害されないように気配りを怠るなよ」
「了解。そう命令しておきます」
貴族様は厄介だ。
彼らの性ゆえに手荒に扱うわけにもいかない。
気分を害して、同盟関係に亀裂が生じるような事態は避けなければならない。
艦隊からしてみれば、ただのお荷物だが…。
突然、警報が鳴り響く。敵艦隊接近の報せだ。
「大佐!」
「何かあったか?」
「セイルナシア恒星系外縁、カイパーベルト入り口に敵艦隊展開中
おそらくリルバーン帝國のものかと思われます」
「ちっ、待ち伏せか。敵艦隊の編成を教えろ」
「はい。画面出ます。
…どうやら悪魔の船が停泊中であるようです」
戦艦級三隻、駆逐艦級五隻、護衛艦級四隻か。
哨戒活動にしては、なかなかの戦力をそろえてやがる。
やはり航宙母艦は存在しないな。しかし、
「よりによってあの船か…、あれの航行速度から考えても、向こうが気づいていれば、我が方が撤退したとしても直ぐに食いつかれるな」
「気づかれる前に退きますか?」
「いや、退きはしない。あれの対策に取って置きの兵器を積んで置いたのだ。それを使う」
「き、機動兵器ですか!? しかし、あれはまだ試験段階でして」
「かまわん。一応は試験テストに合格したものだろう? 開発部に命令し、拠出させろ」
「…了解しました」
「それと―」
「なんでしょうか?」
「どんなことがあっても、あの艦を仕留めればならない。抜かるな」
「了解です」
―総員に告ぐ。セイルナシア恒星系外縁、カイパーベルト入り口に、敵艦隊が展開中である。
したがって、トレパング帰郷の前に、敵艦隊に一戦を交えなければならない。
幸か不幸か、敵艦隊には、多くの我が同胞を滅ぼしたという悪魔の船も含まれている。
つまり、この戦いにてあの艦を撃破すれば、人類側にもはや勝機はない。
これは戦況打開の格好の機会であり、逃すべきではない。
よって私は一戦を交えることを決断した。苦戦が予想されるが、諸君らの奮闘に期待する。
以上だ―
最終更新:2007年12月21日 22:51