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ヴァレフォール星団中心領域
「付近を航行中の船舶に対し、宙域安全航行法に基づく重力異常に関する警戒情報を発令する。
磁場観測システムより星団標準時〇一:〇一に重力異常発生として警告が出された。
原因は、中心領域に存在していた二つの巨大恒星の衝突によるブラックホール連星形成と推測される。
解析の結果、その規模はカテゴリー5、即ち数百天文単位と算定された。現在もブラックホールは膨張を続けている。
また宙域航行安全管理局から既に数十隻の船舶がレーダー上からロストした模様との報告を受けている。したがって十分に警戒されたし。
繰り返す・・・」

「危ない道を敢えて通過する。それが海賊の美学!」
「俺たちこんな辺地で何やってるんすかねえ・・・」
「何って、麻薬密売だろが。
まったく取締りが厳しくなったせいで商売すらまともにできねえ。とんだ世の中になったもんだぜ」

旧ハイド・マテリアル籍の男組はリリスの秘薬(帝国製)を手に余談に浸っていた。

「しっかし、相手は教団のへなちょこ警備艇なんかじゃねえぜ?
何でも飲み込んじまう無慈悲な野郎だ。」
「教団も似たようなもんさ。いやブラックホールの方が幾分マシだな。」
「どうしてだ?
どうせ死ぬんだぜ?」
「悪いが、あんな不細工な収容所で野垂れ死だけは遠慮しとくよ」
「第一この艦艇は星団一のスピード狂を唸らせる代物だ。ブラックホールが何だってんだ」
「・・・・・・、亜空間を捻じ曲げちまう相手にもか?」
「ボスの言うとおりだ。この際、死ぬのは後回しにしておけよ」

強気口調の男も黙るほかなかった。

「こっから一番近くの星系は何処だ?」
「ネルヴィル星系かと存じます。
なお、先ほどの情報を総合的に判断して跳躍してもさほど影響はありません」

モニターからAIの声

「なあ、その口調なんだか気に食わないんだよな」
「仕方ありません。機械ですから」

あくまで機械的に愛想よく答える。

「よし分かった。〇二:一〇に亜空間跳躍を使う。
総員、準備にかかれ!」


「防衛局レーダーサイトよりクロイツⅢ防空識別圏に国籍不明船の侵入を感知」
「何隻だ?」
「一隻です。どうやら問題の麻薬密売組織が乗っているようですよ」
「ハイド・マテリアルズか。
厄介だな・・・。」
「どう出ますか」
「一応知らぬ存ぜぬはできん。要撃機をスクランブル発進させろ」
「了解」

クロイツⅠ、
数十年前の大戦で崩壊した惑星の姿。

「全要撃機、スクランブル発進!」
「目標、不明船。距離五百キロメートル」

ネルヴィルの微光に輝く銀色の機影
その先には、驚くほど早い移動速度の船があった。

「不明船へ、直ちに停船を勧告する。繰り返す、不明船へ・・・」
「こちら、船長。そんな低速で追いつけると思うか?」
「直ちに停船しなければ、撃つ。 流石に弾より早いわけが・・・」

「要撃機、二機被弾! 不明船より攻撃がありました!」
「馬鹿な。シールドが効いてないだと?」

既に要撃部隊は混乱していた。
そこへ通告が来た。

「親切だから間抜けな指揮官に教えてやるよ、
海賊の美学その一、売られた喧嘩は即刻帰す。
美学その二、機体に中途半端な装備はつけるな。
そちらさんのシールドは要を成してないんだよ。この重力波砲に前にはな」
「だがこれは最新鋭の・・・」
「お前たちから見れば確かにな」
「どういうこと・・・」
「立派な機械ならそんなことくらい、自分で考えろ!」

「こちら防衛局。どうした反応が消えたぞ」
「要撃部隊、全滅した模様。繰り返す、要撃部隊は・・・」

不気味な静寂が支配する世界に全滅を知らせる悲壮な報告が流れていた。


「戦果報告は確かに受理しました。 ご苦労様です。」
可憐な少女の姿がディスプレーデバイスに表示される。

報告は無くても、電波を傍受していたので既に感知していた。
だが一応は目を通すことにした。

少女は深呼吸し溜息をつく。

彼らの発した言葉に関して回想していた。
たった一隻相手に二十機の要撃機が全滅。シールドを易々と破壊した敵の重力波砲。
懸念すべき材料は山積していた。
開国以来、我が国で勇み足で進んだ技術革新の結晶、
それに対しても麻薬密売組織が圧倒し得る技術力を保有していたこともその主たる一つ。
われわれはいまだ遅れをとっているのか・・・。

そして
と、以前に惑星タイフォン周辺にウロツク不審船の話があったのを彼女は思い出した。
確かアレは一ヶ月ほど前だっただろうか、その時の彼らは無用心過ぎる動きを見せていた。
ハイドの残党ということでそれなりに規模が大きかったから、集団心理というものが働いていたのかもしれない。
しかし、今回の場合、見逃すかも知れない機影しかレーダー上に現れなかった。
つまり、ステルス性に於いても格段に進歩したということだろう。
これは危ない兆候と見てもいいかもしれない。

「事件(帝国麻薬密輸事件)以降、強められる封鎖を潜り抜け、こうした高技術を得ているという点からも、国家的な何らかの策動が働いているはず」

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最終更新:2008年12月30日 20:15