もしククゼシが遭難して無人島に2人きりになったら…
* * *
身体を隠すものをほとんど身につけず、焚き火を挟んで背中合わせのまま2人は長い間無言でいた。
ククールの脳裏にはさっき欲望に抗えず覗き見てしまった、ゼシカの艶めかしい後ろ姿が焼き付いていた。
暗闇の中ゆらめく炎だけに照らされた、真っ白なその肌。
うなじから細い肩をたどり、滑らかな背中を降りて柔らかそうなお尻まで(ちなみに下着だけは履いていた)。
ククールは消しても消しても浮かんでくるその光景を、なんとかして頭から抹消しようと必死だった。
なんというか、冗談抜きで、ひとっカケラの余裕もなく、ヤバい状態だ。今ならほんの些細なスイッチで
いとも簡単に自分はゼシカを押し倒すだろうという、まったく誇れない絶対的な自信がある。
ヤバい。
キスしたい。
触りたい。
手ぇ出したい。
彼女の横で旅を続けながら考えないように見ないようにしてきた男のストレートな欲望が、
堤防を失った濁流のように溢れ出してくる。無理やり抑え込んだまま、溜めに溜めてきたのだ。
一度放たれれば、その勢いはちょっとやそっとじゃ収まるわけがない。
―――お互い裸。ここにいるのは間違いなく自分たちだけ。誰も見てないし、誰も聞いてない。
ククールはこれまでの人生を振り返り、神の試練に違いないと思っていた数々の苦行が
いかに甘っちょろいものであったかを知る…
(今ならあの鬼兄貴ですらかわいく見えるぜ…)
己のだらしのない下半身を呪いながら、最高の自嘲をもって乾いた笑いをもらすのだった。
微妙すぎる空気が悶々と続く中、突然ゼシカの小さなくしゃみが響いた。
ビクリとしたククールだが、戸惑いながらも心配になり、背中越しに尋ねる。
「……寒いか?」
「…だいじょうぶ…」
と心細げな声。大丈夫なわけはない。そもそも全身を暖めなければならないのに、
自分達は焚き火に向かって背中しか向けていないのだ。これでは冷えるに決まっている。
……自分は無駄にカッカしているので問題ないわけだが。
このままだとゼシカがひどい風邪をひきかねない。わかっているが、どうすればいいのか。
下心なく、抱きしめて温めてやりたい気持ちと葛藤していると、さらにしばらくして、
「―――ククール…」
恐る恐るといった風にゼシカが自分の名を呼ぶのに、思わず振り返りそうになるのを慌てて押し留める。
「どうした?」
「……。……おねがいがあるんだけど……」
ドクン、とククールの心臓が跳ね上がった。ここまできたらさすがに大体は読める。
この状況で、この外見と裏腹な幼い彼女が、無邪気に自分に何を「おねがい」するのかを。
ギャーヤメテーと、理性という名のもう一人のククールが叫ぶ間もなく、ゼシカの小さな声。
「…背中合わせでいいから…。……そばにきて、……くれないかな…」
語尾はほとんど聞こえないほど恥ずかしそうに。嫁入り前の乙女から要求するにはかなり
はしたないことを口にしている、とわかっているのだろう。
―――しかしどこか認識が甘いゼシカである。はしたない、どころではない。
なぜならそれはすぐ後ろにいるその男に、「触ってもいいよ」と言っているようなものなのだから。
自分がどんな核爆弾を落としたのか気付かないまま、返事のないククールに対し
軽蔑されたのか、と不安を募らせるゼシカ。耐えきれず少しだけ振り返ろうとした時。
「――きゃ…っ」
後ろから唐突に2本の腕が自分を抱き込み、思わず身をすくませた。
もちろんそれはククールの腕に違いないのだが、羞恥と困惑で頭がパニックになり、
振り返ることもできずガチガチに身体を強張らせてしまう。
そのゼシカの冷えた両肩を、交差したククールの手が力をこめて抱きしめた。
「………………く、……クク…」
ようやく絞り出されたゼシカの声はどうしようもなく動揺している。
「……っ、わ、私…背中…って」
「………この方があったまる」
「だ、だって」
「見てないから」
「……。」
もちろんそれは嘘だったが、抵抗されない程度には効果があった。
ゼシカの首筋と肩に顔を埋めているククールからは、申し訳程度に両手で隠された乳房が丸見えだった。
徐々に体温が上がってくるにつれ、ゼシカはククールの素肌の胸が、自分の背中に
ぴったりとくっつけられていることを意識しはじめる。
一気に全身が紅潮した。
心臓に全ての血が集まり、脳が酸欠で思考回路がまったく働かない。
―――これって、この状況って、もしかして、もしかして。
あまりにも鈍いゼシカがようやく事態を把握しはじめたその時、ククールの熱っぽい声が耳に注ぎ込まれた。
「―――……ゼシカ……」
ダメ、と心の中でゼシカは叫んだ。
自分たちが決して行ってはいけない場所に踏み込もうとしているのを悟り、キツく瞳を閉じた…
☆★☆
【かゆ☆かわルート】→なんとここでタイミングよくエイト達の助けが!
さぁ何事もなかったように甘酸っぱい冒険の旅に戻りましょう。
【エロ☆かゆルート】→あんな広大な海原で都合よく無人島に助けなんか来ません。
さぁ貴方の脳内でありとあらゆる妄想を繰り広げましょう(もしくは隠れ屋へ)。
最終更新:2009年09月05日 10:49