最強乙女




「ちょっとぉぉククール!!返してよ私のお酒~!!」
「ダーメだっつってんだろコレ強いんだから!!こっちにしろこっちに!!」
「それ飽きた~!ククールばっかおいしそうなの飲んでズルイー!!」
「おいしくないから!ダメだって!こらゼシカ!言うこと聞け!!」
「いーやーぁー!!」
「うわっバカッ…抱きつくなって…!!///ああああ知らねぇぞもう!!!!!!」

「エイト、お花見って楽しいですのね。お酒もとってもおいしいですし」
「そうですね(ミーティアに飲ませてるのは全部ノンアルコールだけどね…)
あ、姫。それはダメです。こちらにしましょう、甘くておいしいですよ」
「へいきです。これが飲みたいの」
「いやっ、それは(アルコール入ってるからNG…!)」
「エイトと同じものが飲みたいの。…………いけないですか…?」
「……………///。…………………………………………………………………。
 ………………………………………………………………………少しだけですよ」

「ほらヤンガス!さっさと注ぎな!気が利かないねぇまったく!!」
「おいおいゲルダ…ちっとペースが早すぎるんじゃねぇのか…?」
「アンタこそ全然飲んでないじゃないか。それともなんだい?
このゲルダ様のお酌が受けられないってのかい?」
「そんなわけねぇけどよ…。お前はすぐ悪酔いするから心配なんだよ。
…あぁ、そういえば、お前とこんな風に飲むのも何年ぶりだろうなぁ」
「……、……このイノブタ!湿っぽくするんじゃないよっ!……バカ!///><」
「あいててて、な、殴るなよ(なんで怒るんだ?)」

          *

「…で、ねぇ。ミーティア姫とエイトって、お城ではどんな関係だったの?」

すでにシラフとは言えないゼシカが唐突に尋ねたのに、後ろの方でエイト本人が酒を吹いた。

「どんな?ですか?そうですね…ミーティアは、ずうーっとエイトがだいすきでしたわ」
「きゃーーー!!!!やっぱり!?やっぱりそうなんだ!!」
「み、ミーティ…あああえぇと、姫様、や、やめましょう、そういう話は」
「どうして?ミーティアはうそなんかついていませんもの」
「そういうアンタはどうなんだい、バンダナ。女にここまで言わせて自分はだんまりかい?」
「……………………………ぃぇ……………その、…ぼくも、……好き、です、が」
「エイトったら顔真っ赤~~!!かっわいい~~!!!!」
「ひ…っ、姫様!!ちょっと向こうに」
「その呼び方はいや!!!」
「うっ」

恨めしそうに、涙目でむうっと頬をふくらまして見上げてくる愛らしい姫君。
下戸の彼女にアルコールを許したのは自分で、当然のことだが彼女も酔っている。

「…………………………ミーティア…あのね…こういう所でする話じゃ」
「あーあーいいなぁミーティア姫は幸せ者よねー
なんだかんだ言っても、真面目で優しくて誠実な彼氏がいるんだもんねー」
「ま、男としちゃまだまだ なよっちぃけどねぇ。どこぞのつぶれ饅頭に比べたら…」
「えーゲルダさんだって、私から見ればちゃーんと愛されてるわよぉ」
「なっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!///」
「ヤンガスってあの通りだからパッと見は伝わりにくいけど、いつだってゲルダさんのこと
 気にかけてるし心配してるもの」

触らぬ神に…とばかりにコソコソと背中を向けていたヤンガスが、後ろで酒を吹いた。


「なっ、そっ、そんなっ、な、なにを、ゼシカッ」
「あらあらうふふ。今度はゲルダさんのお顔が真っ赤ですわ」
「ヤンガスのあれはね、気付いてないだけよ。単に鈍いのよ、そーとーね!
 だからわかってないだけで、無意識にゲルダさんのことは想ってるのよ」
「無意識に…っていうのが、なんだか素敵…」うっとり…
「あっ、あああ、アンタ達ねぇえ!す、好き勝手言ってんじゃないよッ!!」
こここんなっ、ただのイノブタマンがっ、そ、そそそ、そんなわけッッ」

未だかつて見たことがないほど顔を赤くして狼狽するゲルダの肩を、
複雑な苦笑いを浮かべたヤンガスが後ろから掴んだ。

「…………おいおいゲルダ、ちっと落ち着けよ。……ついでに言やぁ、 
 ちょいと聞き捨てなんねぇな。誰の何が“そんなわけない”ってんだ?」
「あっ、ああああアンタなんか関係ないよっ、しゃしゃり出てくるんじゃ…」
「まったくよぅ…、お前も酒飲んで酔ってる時くらい、
もうちょっとこう可愛げがあれば…ってなもんだぜ」
「う、うるさい!!悪かったね可愛げがなくて!!どうせあたしはっ!!」
「…ま、そんなんだからこそ、気になって放っとけないんだろうなぁオレもよ…」
「……う…………なんだい、カッコつけて…。………ヤンガスのくせに……」

「や、やだ…なんかヤンガスが男前に見えてきたわ…」
「ヤンガスさんがキラキラして見えます…」

思いがけぬ展開に驚きを隠せない2人の乙女(と書いてる本人)。

「んもう、結局ミーティア姫もゲルダさんも、らぶらぶなんだから!」
「あら、それを言うならゼシカさんだって」
「そうだよ。あんたさっきから人のことばかり言ってるけどさ。自分だって…」
「ちっがーう!全然そんなことないんだからッ!うちのエセ紳士サイテー変態スケベ僧侶はぁ!!><」

来るぞ来るぞとは思っていたが思いがけぬ不名誉ずぎる称号に、後ろでククールが酒を吹いた。

「不真面目だし、適当だし、いい加減だし、軽いし、もっかい言うけどスケベだし!
 もうね時々、そういうことしか考えてないんじゃないかって思うわ」
「つまり身体が目当て、と」
「そんな…ひどい…」

凶器に等しい3つの視線がククールの背中にドッスドス突き刺さる。



「でもさぁ、あの赤マント、しょっちゅう言ってるじゃないかい?可愛いだの好きだの」
「だって…そんなの、毎日毎日おざなりに言われたって…信じられると思う?」
「あー。ありがたみがナイってやつだね」
「そうですわねぇ。こちらからお願いしてもなかなか言ってくれない朴念仁さんも
 困りものですけど、口癖みたいに言われるのも…なんていうか…」
「そういうのウザイっていうんだよ、姫さん」
「あ、そうですわ。それが言いたかったんです」
「たまに想いをこめて言われるからこそ伝わるものじゃない?
 アイツのあれはなんていうかもう、とりあえずそう言っとけばいい、みたいな」
「まぁ…それはあまりにも不誠実ですわ」
「愛の言葉が惰性になっちゃあ、おしまいだね」
「それに相変わらず女の子と見ればヘラヘラするし」
「わたくし、わたくし、そういうのだけは、ぜえぇったい許せないんですの!」
「顔のいい男はこれだから始末が悪い。やっぱり男は顔じゃない、ハートだよハート」
「そのくせ私のことは束縛して。男の人と長話しただけで本気で怒るし」
「なんだいそりゃ。男の嫉妬はカワイクないねぇ」
「まぁヤキモチって…ミーティアは少し、憧れですけれど」
「冗談じゃないわよッ!!いったんそうなるとこっちがどう説明したって
自分の気が済むまでは絶対私のこと離さないし、その間ずうううっと
『オレのこと好きか?』とか、はっっっずかしいこと繰り返し聞いてくるし、
 納得できないもんなら怒ってキレて、ホントにヒドイことしてくるんだから!!!!」
「へぇ、ヒドイこと。たとえば?」
「たとえば、ひとばんzy」
「こらこらこら待て待て待てゼシカああッ!!!!お前こんなとこで何を言い出す…!!!!」

「ククールさんはだまって!!!!!!!!!」
「黙りな赤マント!!!!!!!!!!」
「ククールの変態!!!!!!!!!!!!」

「……………………………orz」←ククール

先ほどからの容赦ない攻撃で心をフルボッコにされたククールを尻目に、コソコソと密談を交わす乙女たち。
しばらくすると、不信感と軽蔑に満ちたまなざしが じぃ…っと彼に向けられ。

「「「……………………最低」」」
率直な一言が、最後にドシュッと、ナイーブな色男のハートを撃ち抜くのであった。

             **

下手に触れてこれ以上傷を増やしたら死ぬ、とチキンな彼氏たちが放置したため、
それからの数時間、彼女たちは誰のおとがめも受けることなく好きな酒を好きなだけ飲んだ。
結果できあがったのが、美女3人の酔っぱらいである。
てめぇの女はてめぇでどうにかする、という暗黙の了解のもと、
3人はそれぞれの彼女を各々部屋に連れ帰り、ひっそりとお花見を解散させた。
風に散りゆく桜の花びらには、どこか哀愁がただよう。
ライフゼロのククールには、仲間たちから無言のエールが送られるのみであった。

それからのち、この3人の乙女たちが集う場に
彼氏たちが足を踏み入れることは、決してなかったという。

**







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最終更新:2010年05月07日 22:11
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