環政第1310号平成20年 3月19日

株式会社IWD東亜熊本代表取締役 小林 景子 様

熊本県知事 潮谷 義子

IWD東亜熊本最終処分場事業に係る環境影響評価準備書」についての熊本県知事意見について(通知)

 平成19年2月5目付けで環境影響評価準備書が送付された本事業については、地下水への影響、土砂災害の危険性、クマタカ等の希少動植物や農作物への影響、搬入道路の問題等から、水俣市長及び多くの市民等が強い懸念を抱いているところであり、これらの意見及び熊本県環境影響評価審査会の意見を踏まえ、熊本県環境影響評価条例第20条第1項の規定により、別紙のとおり環境保全の見地からの意見を述べます。

 なお、本事業が計画されている水俣市は、今なお多くの人々が被害に苦しんでいる「水俣病」という悲惨な公害病を経験した地で、その教訓を生かして、地域内ゼロエミッションの確立や資源循環型地域システムの構築など環境に配慮した様々な取組が行われているところであり、県が開催した公聴会において、このような視点から処分場建設に反対する意見が数多く出されました。

 貴職におかれては、水俣市長及び市民等の生活環境への影響を懸念する意見及び水俣病の過ちを二度と繰り返してはならないという思いに配慮し、適切に対応されるよう強く望みます。

問い合わせ先(略)



「IWD東亜熊本 最終処分場事業に係る環境影響評価準備書」についての熊本県知事意見
 環境影響評価書(以下「評価書」という。)の作成及び事業の実施に当たっては、次の事項について十分勘案すること。

 なお、住民等から提出された意見、水俣市長意見(平成19年12月28日付け環政第1111号により送付)及び公聴会において述べられた意見(平成20年2月26日付け環政第1244号により送付)についても配意すること。

IWD準備書についての熊本県知事意見

【全般的事項】 

(1)準備書全般において、説明が不足している箇所、根拠に乏しい箇所、記載漏れや記載の誤りが多く見られる。また、用語の不統一や不正確な表現も見られる。 
 評価書の作成に当たっては、記載内容を照査し、正確で理解しやすい図書となるよう十分配慮するとともに、調査地点の選定や予測手法の内容及び評価の記載については、結論に至る過程及び根拠を示し、結論のみの記述とならないようにすること。 
(2)準備書において、引用したデータの出典が明らかにされていない箇所が見られる。 
 評価書の作成に当たっては、引用したデータや文献等について、どの資料等からのものか、その出典を明らかにすること。 
(3)評価書の作成に当たっては、全体の構成を見直して、読みやすい構成とするよう努めるとともに、重要な項目の説明については、関係する各項目で詳細に記述し、理解しやすくなるような工夫を行うこと。 
(4)「事業の背景と目的」において、水俣市が取り組んでいる「環境モデル都市づくり」や資源循環型のまちづくりを目指した「水俣エコタウンプラン」と当事業の関連について記述しているが、水俣エコタウンプランそのものが当事業の一部として関わっているような印象を与える表現となっている。 
 評価書においては、当処分場への水俣エコタウンからの搬入量及びその他の地域からの地域ごとの搬入量等の計画を明確にした上で、「環境モデル都市づくり」に取り組んでいる水俣市を建設地として選定した理由及び「水俣エコタウンプランと連携させたコンセプトを計画の中でどのように展開させるのか」など、当事業の背景と目的を改めて明らかにすること。 

【事業計画に関する事項】
(1)「排水処理フロー」において、原水水質についての記載がなく、排水処理が適切に行われるかどうかを判断することができないことから、評価書においては、想定される原水水質を明らかにし、それが各工程でどのように変化していくのか、それらの処理工程で計画している水質が達成できる根拠も含めて、わかりやすく記載すること。 
(2)埋立地は、盛土構造で堆積の高さも高く(最大埋立高50m)、大量の埋立廃棄物による重圧や地震等に対する埋立地の安定性の確保が重要であることから、評価書においては、埋立地の安定性が確保できるとする根拠を明らかにすること。 
(3)貯留堰堤の法面は、雨水による侵食を受けるおそれがあること一から、法面の緑化等侵食対策が必要である。 
 評価書の作成に当たっては、法面の緑化に関する植栽計画について、盛土の土壌の特性も併せて明らかにすること。 なお、法面の緑化には、現地の植物を利用する等、生態系の保全に配慮すること。 
(4)遮水シートを含む速水工については、地下水汚染防止を図る上で重要な施設であるが、当事業は埋立高が最大50mとなること、及び事業実施区域近くに出水断層等の活断層が存在していることから、評価書においては、埋立廃棄物の重圧による不同沈下、地震等の物理的な負荷に対する速水工の安全性及び長期的な安全対策を説明すること。 
 また、浸出水による化学的な反応に対する安定性についても併せて説明すること。 
(5)遮水シートが万一破損した場合の補修対策について、廃棄物が厚く埋め立てられた状態(埋立高最大50m)でどのような方法で補修を行うのかなど、具体的な補修対策について明らかにすること。 
(6)「埋立計画」の「埋立物の搬入ルート」において、予定している二つの予備ルートは「大型車通行禁止」及び「未完成」で、現時点では埋立物運搬車両(以下「運搬車両」という。)の通行はできないことから、予備ルートについて再検討を行った上で、評価書においては、「埋立物の搬入ルート」についての記述を見直すこと。 
 また、「埋立物の搬入ルート」に係る運搬車両の運行管理等に関する計画を明らかにすること。 
(7)「跡地利用計画」において、「埋立終了後の埋立地及び覆土・残土置場の天端は、多目的広場として人と自然とが触れ合える場所とする計画」としているが、具体的な跡地利用計画が明らかにされていない。 
 評価書の作成に当たっては、現時点において想定している跡地利用計画について、その維持管理計画を含めて明らかにすること。 
 なお、跡地利用の計画を策定する際は、積極的な緑化等による生態系の回復に努めるなど、環境保全に配慮すること。

【大気環境】 

(大気質・騒音・振動・悪臭〉 

(1)「環境影響評価の項目の選定」において、「最終処分場の設置の工事」による窒素酸化物の影響が選定されていない。 
 当事業は規模が大きく、設置工事に使用する重機等が多数となることから、「廃棄物の埋立て」と同様に「最終処分場の設置の工事」による窒素酸化物の影響についても評価項目として選定し、予測・評価を行うこと。 
(2)「気象の状況」の「②現地調査」において、調査方法は「『地上気象観測指針』(平成5年 気象庁)に従い実施した。」としているが、気象観測を行うに当たって必要とする基本的な事項をまとめた「気象観測の手引き(平成10年9月気象庁)」が示されていることから、同手引きに基づき、風向・風速の調査地点、調査方法が予測・評価を行う上で適切かどうか検証すること。 
(3)「廃棄物の埋立による粉じんの影響」において、「予測項目」には、「廃棄物埋立機械の稼動により発生が考えられる「粉じん」とした。」と明記されているが、「予測の基本的手法」では、風力による粉じんの飛散の可能性を定性的に予測するのみとなっており、廃棄物の埋立時における運搬車両による廃棄物の搬入や荷下ろし及び重機が稼働することに伴い発生する粉じんによる周辺の生活環境への影響について予測・評価されたものになっていない。 
 廃棄物の埋立時における粉じんの影響については、埋立物の特性や埋立作業の際の運搬車両や廃棄物埋立機械による作業状況を十分検討した上で、「最終処分場の設置の工事による粉じんの影響」と同様に予測式による予測を行うこと。 
 また、廃棄物搬入を分散させる計画としているが、このことにより、廃棄物を搬入してから覆土を行うまでに時間が空き、廃棄物の飛散につながらないか検討すること。 
(4)「最終処分場の設置の工事による騒音」の予測については、複数の点音源からの音を伝搬理論式によって歴巨離減衰させた値を求め、それらの値をエネルギー合成して得られた値を騒音の予測値としているが、その値では、騒音規制法の規制基準との比較ができないことから、適切な予測方法で予測し、改めて評価すること。 
(5)「最終処分場の設置の工事による騒音の影響」について、騒音源としてブルドーザー、大型ダンプ、バックホウが挙げられているが、伐採木をチップ化するチップ製造機は騒音源として挙げられていない。チップ製造機の騒音はこれらの騒音より大きく、しかもかなり長期間、建設機械等の騒音源と同時に稼働することになるものと考えられることから、騒音の影響については、このチップ製造機及び関連重機等を騒音源として追加し、予測・評価を行うこと。 
(6)「埋立物運搬車両による騒音の影響」のNO・2地点は、運搬車両通行ルートの県道水俣出水線のうち、道幅が狭く民家が隣接して交通量も多い通称「平通り」から離れた地点セあり、県道水俣出水線の道路交通騒音を代表していないと考えられることから、交通量、路面状況、車線数、環境基準の類型当てはめ等を勘案し、改めて「平通り」で調査地点を選定した上で、調査・予測・評価を行うこと。 
 また、等価騒音レベルを基に面的評価を行い、環境基準との整合を評価すること。 
 なお、「平通り」は第一小学校、第三中学校、水俣高校の通学路でもあることから、騒音・振動のみではなく、歩行者に対する安全の確保、大型車通行による渋滞の発生等も考慮し、運搬車両の運行管理計画を策定した上で、具体的な対策を講じること。 
(7)「埋立物運搬車両による騒音の影響」の評価において、騒音規制法の「自動車騒音の要請限度」を環境保全目標値としているが、要請限度については、市町村長が道路管理者等に対して自動車騒音を減少させるよう必要な意見を述べるための基準であることから、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準である「騒音に係る環境基準」・を環境保全目標値とし、予測・評価を行うこと。 
 なお、環境基準を目標値とした場合、NO・1地点の予測結果は、この地点の環境基準値を超えていることから、環境保全措置を検討すること。 
(8)振動に関する環境基準がないため、「埋立物運搬車両による振動の影響」において振動規制法施行規則の道路交通振動の限度(L10)を環境保全目標値としているが、本来L10は、交通量が多く連続的に大きく変動する振動レベルに適用されるべきものであり、閑静で大型車の通行量が少ない地域では環境保全目標値とすることは適当ではない。 
 道路交通振動の影響については、特定建設作業振動の周期的・間欠的な場合と同様に、変動ごとの最大値の平均値で予測・評価を行うこと。 
(9)「埋立物運搬車両による振動の影響」のNO・2地点は、通称「平通り」から離れた地点を設定しているが、民家が隣接し交通量も多い「平通り」において、最も運搬車両による振動の影響が大きいと考えられる地点で、改めて調査を実施し、予測・評価を行うこと。 
(10)運搬車両による騒音及び振動の影響について、「廃棄物運搬車両が利用する主な搬入ルートに加えて、予備ルートを想定し、必要に応じて交通量の分散を図る計画である。」としているが、予備ルートについては調査・予測・評価が行われていない。予備ルートを設定する場合は、主に使用する搬入ルートと同様に、運搬車両による騒音及び振動の影響について、適切な調査地点を選定した上で、調査・予測・評価を行うこと。 
(11)「廃棄物の埋立に伴う悪臭の影響」において、「埋立後は、即日、(中略)(覆土)作業を行う」ため悪臭の影響は少ないと、定性的に予測しているが、廃棄物を搬入してから覆土を行うまでの間に発生する悪臭及びガス抜き管から排出されるガスによる悪臭も予想されることから、これらの悪臭について、風向や周囲の集落の状祝を踏まえ、臭気拡散モデル等の適当な方法で、定量的に予測・評価を行うこと。 なお、予鮒に不確実性を伴う場合は、事後調査を行い、必要に応じて環境保全措置を講じること。 
(12)当事業では、焼却灰も埋め立てる計画となっているが、焼却灰にはダイオキシン類が含まれており、飛散しやすいことから周辺の環境に影響を及ぼすことも考えられる。 
 ダイオキシン類については、「ダイオキシン類対策特別措置法」により環境基準が定められていることから、大気・水質・底質・土壌におけるダイオキシン類について、調査・予測・評価を行うこと。なお、予測に不確実性を伴う場合は、事後調査を行い、必要に応じて環境保全措置を講じること。 

【水環境】 
(水象・水質・地下水) 
(1)防災調整池については、造成工事期間中は仮設防災調整池としているが、造成工事期間中においても仮設でなく、「開発許可申請に伴う調節池設置基準(案)熊本県河川課」に基づく調整池を設置すること。また、造成期間中の土砂流出防止のために、調整池とは別に、仮設沈砂池を設置すること。最終処分場の設置の工事による水象及び水質への影響については、調整池及び仮設沈砂池の設置を前提として、改めて予測・評価を行うこと。 
(2)事業実施による水象への影響を予測する上で「防災調整池容量」、「浸出水調整池容量」、「日最大放流量」及び「日平均放流量」が重要であるが、算出根拠が明確でないことから、評価書においては、その算出根拠を明らかにすること。 
(3)「廃棄物の埋立て」による「富栄養化」への影響は、放流水が適切に処理されたものであること、海域に出るまでに河川の希釈効果があることなどから評価項目に選定されていないが、その根拠が明確でない。処分場からの大量の排水が、湯出川、水俣川を経て閉鎖性海域である八代海に注ぐことによる八代梅の富栄養化への影響を否定することはできないものと考えられることから、本事業による負荷が加わった場合の富栄養化への影響について、評価項目として選定すべきかどうか改めて検討し、選定しない場合には、選定の必要がないと判断した根拠を明らかにすること。 
(4)「最終処分場の存在及び稼動による排水の影響」の予測・評価において、排水の放流先である(呼称) 鹿谷川(以下「鹿谷川」という。)における「BOD、SS」の環境保全目標値を、「環境基準が設定されていないが、(中略)利用目的に農業用水とされているD類型の環境基準を環境保全目標値として設定する。」としているが、「廃棄物処理施設生活環境影響調査指針」(平成18年9月環境省 大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部)によれば、「水域類型指定が行われていない場合は、下流河川の類型指定及び当該地域の現況を勘案し、当該地域の現況水質及び下流河川の類型指定と比較して同等以上となるように、適切な類型を設定する。」とされていることから、鹿谷川における「BOD、SS」の環境保全目標値を見直した上で、改めて予測・評価を行うこと。なお、鹿谷川では農業用水の取水が行われていることから、排水による農作物への影響についても検討すること。 
(5)「最終処分場の存在及び稼動による排水の影響」における有害物質(健康項目)の予測及び評価において、「全ての項目で健康項目に係る環境基準を下回る水質とした。したがって、排水の放流を行っても、有害物質(健康項目)に係る環境基準を満足できる」としているが、浸出水処理施設の計画処理水質では、「人の健康の保護に関する環境基準」(健康項目)の基準値と比較し、「ほう索」「ふっ素」「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」の3項目が10倍、「鉛」が5倍の値となっていること、及び浸出水処理施設からの日平均放流量(最小103.8m3/日)が鹿谷川下流の流量(河川水象調査結果 31m3/日及び73m3/日)を上回っていることから、「環境基準を満足できる」と直ちに評価することはできないと考えられる。 
 当該4項目の環境基準の適合畦について、浸出水処理施設からの放流量と河川の流量の相関関係を明らかにした上で、改めて予測・評価を行うこと。また、鹿谷川の水質、流量の変動に伴う流域の生態系への影響や土石流災害発生の可能性についても検討すること。
(6)地表地質踏査とボーリング調査結果からまとめた「地質平面図」では、地層の年代的な上下関係が、凡例(地質構成表)と図上で相違があり、構成地質の時代論を踏まえたものになっていない。また、溶岩や火砕流、凝灰岩などは連続性に乏しいのが一般的であるにもかかわらず、「地層断面図」では各地層が単調に連続したものとなっており、地質構造を十分に把握した上で作成されたものとはいえない。事業による周辺地下水への影響を予測する上で、地質構造を十分に把握することが必要であることから、改めて地質調査を行い、地質層序を明らかにして、「地質平面図」及び「地層断面図」を見直すこと。 
(7)「地下水水位、流向調査結果」では、地下水が標高の低いところから高い方へ流れているような表記になっていること、また「調査結果の整理・解析」でボーリング孔(No・B-6)の地下水を「宙水」と記述しているにもかかわらず「地層断面図」では宙水ではなく地下水位の線が連続していること、更に当該地区の地下水流向は北及び北西方向としているにもかかわらず「地層断面図」では南東側より北西側の地下水位が高くなっていること等から、地下水についての把握が十分とはいえない。事業による地下水への影響を予測・評価する上で、地下水の流動を把握することが重要であやことから、調査地点や調査時期等を見直した上で、地下水の水位・流向・流速について改めて調査を行うこと。なお、調査結果を基に帯水層区分を行うとともに地下水位等高線図を作成し、地下水の状況を明らかにした上で、湧水等との関係を評価すること。 
(8)地質調査結果の「地質解析」において、断層を掘り抜いたボーリング調査の結果から「断層粘土は伴っていない。」としているが、これは地下水の通り道となっていることを意味する可能性がある。地下水の流動を的確に把握する必要があることから、水の上下の移動についても解明すること。 
(9)「湧水の位置、溝水量の状況」では、地下水や表流水の判定を目視により行っているが、湧水状況からみて目視のみで判定することは困難と考えられる。大森地区等事業実施区域周辺の集落では、同区域付近からの湧水を生活用水として使用しており、湧水の状況を把握することが重要であることから、水文地質構造の把握を行うとともに、改めて水象・水質の調査・解析を行い、地下水と湧水の関係を科学的手法によって明らかにし、事業による湧水への影響について、予測・評価を行うこと。 
(10)事業実施区域には、リニアメントが1本のみ抽出されているが、「断層、リニアメント図」の地形図からみても事業実施区域には他のリニアメントの存在が考えられ」リニアメントの把握が十分とはいえない。リニアメントが断層により現れたものである場合、断層面は地下水の通り道になることが多く、事業による地下水への影響を予測するためには、リニアメントが断層により現れたものであるか否かを明らかにすることが必要であることから、事業実施区域内及び周辺地域のリニアメントを抽出し直し、その生成要因について調査・検討すること。 
(11)事業実施区域で抽出されているリニアメントは、「このリニアメントは断層により顕れた可能性が考えられるが、(中略)断層であっても古い地質断層と考えられる。」とあるが、「地層断面図」では、「地質構成表」で第四紀の地層であるLa-2がずれているように図示されており、記述と地層断面図とが整合していない。事業を実施する上で、活断層の存否は非常に重要な要素であるが、当該断層が活断層でないとするには調査と資料が不十分であることから、更に必要な調査を行い、当該断層が括断層でないとする根拠を客観的に説明すること。 
(12)事業実施区域周辺は、平成15年7月20日の土石流災害において、宝川内地区での斜面崩壊を始め、多くの山腹斜面の崩壊が発生し、事業地に隣接する湯出川沿岸斜面でも同様の崩壊が発生している。 本事業における防災対策について、「事前に慎重に地下水の調査をして、安全性を確かめるとともに、自然災害に対する防災計画を明示する必要がある。」との方法書に対する知事意見に対し、事業者見解では「ボーリング調査や現地踏査により地質や地下水の状況を調査した上で自然災害の誘発の無いよう設計検討を行っております。」としているが、自然災害に関する具体的な説明が行われていない。 評価書においては、地質構造や地下水との関連を十分把握した上で二 自然災害に限らず、事業実施に伴う災害発生の可能性を検討し、災害に対する具体的な防災計画を明らかにすること。
(13)事業実施区域の地盤は、ボーリング柱状図の標準貴人試験結果からみると、かなり深くまで風化が進行し軟弱になっていることが分かる。廃棄物の埋立てに伴い軟弱な地盤が不同沈下を起こした場合、遮水シートの破損にもつながりかねず、地下水への影響も考えられる。評価書においては、事業実施区域の地質特性を明らかにするとともに、軟弱地盤に対する方策を明らかにすること。 
(14)「湯の鶴温泉への影響」-では、「温泉源は処分場計画地域と断層で遮断されており、また対象地質も異なるため、処分場計画地域の地下水と温泉泉源の地下水は影響しないものと予測される。」としているが、「模式地質断面図」には地下水に関する記載がなく、影響しないとするには客観的データが不足している。 
 また、断層は地下水の通り道になることもあり、「四万十層群(中略)は亀裂が密に発達しており」としていることから、肥薩火山岩類や四万十層群及び断層について、地下水に対する性質や地下水位などを示しながら客観的に予測・評価を行うこと。 

【動物・植物・生態系】
(1)動植物の調査において、安定型予定地だった南側に比べて、北側の管理型予定地の調査密度が少ないものとなっているが、北側の方が改変区域が広く、事業による影響が大きいことから、北側における動植物の調査地点、調査方法が適当か検証すること。 
(2)クマタカの調査について、隣接つがいとの関連を含めた調査区域及び調査地点の設定となっていないこと、1回の調査が連続した調査日となっていないこと、また水俣市が調査した結果と事業実施区域内における飛翔の状況に差異があること等から丁クマタカの行動圏の把握が十分とはいえない。 
 事業によるクマタカへの影響を予測・評価する上で、その行動圏を把握することが重要であることから、改めて調査方法等を見直し、生息分布調査を行った上で行動圏の内部構造解析を行い、事業による影響について予測・評価を行うこと。 
(3)サシバについては、「事業による影響はない」と評価しているが、平成18年12月に環境省が発表した「レッドリストの見直し」で絶滅危倶Ⅱ類(VU)に格上げされたことを踏まえ、調査・予測・評価の見直しの必要性について検討すること。なお、その際には水俣市の調査で幼鳥が確認されたこと等樗ついても配慮すること。 
(4)事業実施区域内の樹木は伐採後、チップ化し、同区域内に散布する計画とされているが、チップ材の動植物への影響は予測・評価されていない。チップ材が地表面を覆うことやこ 降雨時の流出等により動植物へ影響を及ぼすおそれがあることから、チップ材の大きさや散布量、散布時期など十分検討を行い予測・評価を行うこと。また、チップ製造機及び関連重機等の騒音が動物に及ぼす影響についても予測・評価を行うこと。 

【景観・人と自然との触れ合いの活動の場】 
(1)事業実施区域においては、樹木の伐採や切土、盛土による埋立地の造成及び廃棄物の埋立てに伴い、その地形が大きく変化することから、予想される景観について、設置工事中や事業実施中・事業完了後の時間の変化も考慮して、フォトモンタージュ等を作成し、改めて予測・評価を行うこと。また、眺望地点については、事業地周辺からの眺望だけでなく、山頂や登山途中等の遠景も考慮の上選定すること。 
(2)「人と自然との触れ合い活動の場」において、「調査期間」は「春季の調査を中心とし、(中略)実施した。」としているが、「主な人と自然との触れ合い括動の場」として選定している「湯出川」は、春季より夏季の方が触れ合い括勤が行われる頻度が高いと思われることから、改めて調査時期を選定し、調査・予測・評価を行うこと。

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最終更新:2008年07月17日 20:07