みゆき「あの、泉さん」
(〓ω〓.)「相変わらず胸でっけーなー。くれヨ」
みゆき「無理です。……お聞きしたいことがあるんですが」
(〓ω〓.)「え、どうしたの。そんなモジモジして」
みゆき「ええ……
アスカさんって、その」
( ゚Д゚)「ばっ! それは俺のみかんだ!」
白石君「やーい、悔しかったらとってみろー」
みゆき「別の世界から、いらっしゃったのですよね?」
(〓ω〓.)「うん」
みゆき「そのような方と、どのようにしてお知り合いになられたのですか?」
(〓ω〓.)「……あれ? 春休みにみゆきさんは泊まりに来なかったっけ?」
みゆき「春休み……すみません、あの時は」
(〓ω〓;)「あ、旅行してたんだっけね。ゴメンコ」
(#゚Д゚)「……」メリメリメリメリ
白石君「腕が! 腕がぁ!!」
(〓ω〓.)「ま、みゆきさんだし良いか。そう、あれは、ベトナム戦争の末期のこと――」
「いや、ベトナムってあんた」
「ホーチミンって食べ物っぽくない? こー、激辛ホーチミン特盛みたいな」
「ホーチミンのにっころがし」
テレビの上に、巨乳のメイドが鎮座している。
それは約30センチほどの大きさを持ち、片足を曲げたフラミンゴ・ポーズで、なにやら可愛げなアクションをしている。
表情は硬い。満面の笑みを浮かべてはいるが、その頬は石膏のように固まっている。
っていうか動いたら困る。
フィギュアだし。
「やばいな……
かがみんが愛らしくて仕方が無いよ」ジュルリ
「は!?」
「
つかさ、食べていい?」
「だ、ダメだよ!」
「ならばかじる! とーう!」
「ぎゃー!?」
そこから目を離して、ぐるりと部屋を見渡すと、
色鮮やかなアニメ絵のポスターが、結界でも張り巡らすかのようにベタベタと無闇に貼られていることに気が付く。
要らん知識を持つ人種ならばふと思うだろう。
――何でこんなにエロゲのばっかりなんだ、と。
「いーかげんにしろ!」ベチ
「あふん」
おおよそ、女の子の部屋とは思えない風体をしている部屋ではあるが、
この部屋を満たす香りは女の子のそれであり、
「近寄るな! アンタに纏わり付かれると貞操の危機を感じるんだよ!」
「かーがみん♪ オwフwフwwwww」
「おふふー」
「来んな!! つかさもマネすんな!!」
この部屋の主、泉こなたは紛れもなく女の子である。
たぶん。
「眠くなってきちゃった」
と、あくびを漏らすのは柊つかさ。
「全く……汗掻いちゃったじゃない」
こちらは柊かがみ。
本日、二人は泉家にお泊りに来ているのである。
名目は勉強会だったのだが、もう一人、来る予定であった智慧袋・高良みゆきさんが九州に旅行に行ってしまわれたので、
勉強会は宿題大掃除会となり、その後は夕食を経て座談会へと移行していた。
「こなちゃんこなちゃん、この子なぁに?」
「んふ、そいつに目をつけるタァ御眼が貴い! こいつァ、グーンていうイカ型ロボットさぁ」
「へー。かわいいなぁ」
「んふふ、でしょ? でしょ? とりあえず死ぬほどダブっちゃったから幾らでも持ってって!」
「わーい!」
かがみは無言で頭を振っている。
つかさはラックの上に累々と転がっているグーンの幾つかを、嬉しそうにオーバーオールの胸ポケットに入れている。
その中にいつの間にかアビスとガイアとブラストインパルスが混ざっていた。
暫くしてからポケットの中で戦争が勃発したのだが、それはこなたの妄想である。
「つかさぁ、あんた、そんなののどこがいいの?」
一つ、摘み上げながらかがみが言う。
「ええ? 手足とか」
「手足?」
手足を見た。いや、キモイだろこれ。
「短くてピコピコしてて、とっても可愛いよ」
「はあ」
「ほーら、ぐーん」
「はあ」
「あははぐーn(ぽろっ)あーっ!!」
腕が取れた。
涙が落ちた。
こなたは落ちた腕を拾うと、冷静に本体に取り付けた。
「あ、」
「い」
「う」
「やめい!!」
「”え”だよかがみぃん」
「うるさいうるさいうるさい黙れぇ!」
息が上がったらしい。かがみは肩で息をしている。
ふーと息をつくと、何事も無かったかのように口を開く。
「そういえばさ」「あーっ!!」
こなたは落ちた腕を拾うと、冷静に本体に取り付けた。
「で、なに?」
「何かもう、どうでも良くなって来た……」
「そうヒネるなよぅ、早く早く」
こほん、と咳払い。
今度こそ口を開く。
「そういえばさ、今日ってペガサス座流星群が地球に最接近してるみたいよ?」
「ああ、セ」
「黙れよ?」
かがみの声に、こなたの頬が膨らむ。
「そんなベタなこと言わないよ、先週ニュースで見たんだよ」
「流星群って流れ星だよねぇ」
「そうね。……で、この時間だと、そろそろ始まる時間なんだけど?」
様子を伺うように、かがみが言う。
こなたは変な顔をしていたが、つかさは目を輝かせて飛び上がった。
「見よう見よう! こなちゃん、カーテン開けて良い?」
「その前に電気消さないとダメよ」
「ちっ、そーゆーことですか」
「めったに見れない天体ショー! ここで
イベントシーンGETじゃないの?」
「何言ってるか分かってる? よっこらしょ……」
「へ?」
「これだから素人は」
ちら、と時計を見る。
「そろそろなのに……」
「どうせ録画してるんでしょ」
「そうだけど! 今日は」
「ん」
窓枠でこっちを見てる奴がいる。
「どきどきわくわく」
期待オーラを、持ち前の控えめさが抑えようとしているが、
それは全く意味を成さず、大きな瞳からは、少女特有の純粋な希望がダダ漏れしていた。
「止められる?」
「無理っす」
長い髪がするりと流れる。
こなたはとても悲しそうな流し目を残し、のそのそと電灯のヒモに手を伸ばした。
「消すよ」
電気は消えた。
「開けるね!」
カーテンのせせらぎ。
「……星、よく見えるね」
紺色に沈む町並みと、藍色の空の海。
瞬く星はまるで
「ゴミのようだ」
「台無しだな」
三人は空を見上げる。
くっきりと見える星は、しかし未だに流れていない。
「まだじゃん」
「まだだね」
「もうチョッとよ」
言葉少なく、ぼんやり眺める。
暫くすると、銀の筋が一筋流れた。
「まだかな」
「まだだよ」
「あとチョッとよ」
誰も気づいていなかった。
声を上げたのはほぼ同時。
「あ」
「キター!!」
「まだかnえっドコ!?」
ちょうど、風景の真ん中を駆け抜ける流れ星。
海に輝く銀の槍。
一瞬海を駆け抜けて、瞑るように消えて行く。
一つ二つとちらほら落ちて、そこから先は、無限大。
度重なる奔流は軽やかに、
穏やかなる眠りの空は、静かな轟音にて彩られた。
「きれい……」
つかさの瞳が潤んでいる。感極まったのか、それとも単に乾いただけか。
「本当……」
窓ガラスに手をつけて、かがみは夢中で見入っている。
「君の美しさには敵わないよ」
軽口を叩くが、その瞳は空の天体サーカスに見惚れていた。
三人は三様に、星の輝きに心を奪われていた。
それから、二分。
「飽きたぁ」
「眠い……」
「うわ、窓ガラスが指紋だらけになっちゃった……」
女学生なんてこんなもんである。
「これってただの隕石なんだよね」
「どんだけぇ」
「ゴミが燃え尽きてるだけなのよねぇ……」
銀の槍もかわいそう。
「テレビ見よー、電気点けるよー」
「待って! 願い事しよう」
「ああ、忘れてたわね」
「かがみぃん、もーいーじゃん」
「だーめ、せっかくの流れ星なのよ? お願いしなきゃ損じゃない?」
言いながら窓を開け、
「う、寒いわね。病み上がりには堪えるわ……」
顔をしかめながらも、大きく拍手を打つかがみ。
「宝くじ当たりますように宝くじ当たりますように宝くじ当たりますように」
「うーわー、なんだこいつ」
「私は現実的な女なの」
ふふん、と、何故か得意げに笑う。
「お姉ちゃん、宝くじなんて買ったっけ?」
「ん? 姉さんが買ってたでしょ。せっかくだから、たまには当たって貰わなくちゃね」
「そうだねー、いっつもがっかりしてるし……あ、私もしていい?」
「いいよ。つかさなら、何をされても……」
「 や め ろ 」
「えへへ、ありがとう」
背筋を伸ばし、静かに目を閉じる。
「みんな、末永く幸せでありますように、末永く幸せでありますように、末長く幸せでありますように……」
目を閉じたまま、厳かに手を合わせる。
「終わったよ。次はこなちゃ――」
振り向くと、かがみが真っ青な顔で、
こなたは今にも噴出しそうな真っ赤な顔で突っ立っていた。
「どどどどうかしたの!? 私ヘン? ヘンかな!?」
「違うんだよつかさ、君は悪くないよ、悪いのはかがみだよ」
「黙れ!」
「わたしはwwwげんじつてきなおんななのwww」
「きぃー!!」
コタツの周りをくるくる回るこなたとかがみ。
つかさは唖然と眺めるのみ。
暫くバタバタやっていたが、5分位してようやく動きを止めた。
「おふふ、かがみんの足では追いつけないだろうw」
「ち、ちくしょう……」
「こなちゃん外道ー」
「つかさ、私はスライムでもやくざでもないヨ。さーて折角だ、私もお祈りすっかねー」
とことこと窓枠へ向かうこなた。
空を見上げた。
いつも通りの星空が広がっていた。
「……ほ?」
いつも通りの星空が広がっていた。
お気の毒ですが流星群は止んでしまいました。
「ぷ」
空気が漏れる音。
かがみの頬がプゥと膨らみ、慌てて手を口へと持ってきたがそれは結局無駄な抵抗に終わり、
「ぶっはっはっはっはっはヒーッ! ヒーッ」
爆発。
真っ赤な顔して、涙と笑いを垂れ流しながらごろりごろりと転がる乙女。
時折床を叩いたり、足をビクビクと動かしたりしている。
よっぽどツボに来たのだろう。
「あ……あああ……ああ………」
こなたは真っ青で震えている。
表情といい、声の出し方といい、
その姿はまるで、強敵に出会ったクリリンのように無様であった。
「……」ナデナデ
つかさは複雑な表情でこなたを撫でている。
震える少女の横で、ボロ切れのようにカーテンがバタバタと鳴いていた。
「qあwsdrふじこlp@;:」
かがみの笑いが放送できないレベルになっている。
目が白目を剥いている。
もうあれだ、爆笑とかそういうのを通り越して卑猥ですらある。
誰か助けろ。
「いいもん。星空に願いますよ、私は」
「こなちゃん……」
しかし誰も助けない。なぜなら気が付いていないからだ。
「よーし」
きっ、と空を睨む。
ちょっと本気で怒っているみたいだ。
それはかがみに笑われたからではなく、何か見えないものに怒っているようだった。
だからなのだろう、
こなたは、思いっきり窓から身を乗り出すと、冷えた空気を薄い胸いっぱいに吸い込んで、
「
アニメの世界に、行けますよぉぉーにぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
冗談みたいな声量で、この世界を震わせたのである。
「あぁぁああぁぁぁ」キーン
つかさの耳は変になった。
「……勝った!」
こなたの無意味な勝利宣言。
「 」
かがみはさっきから動かない。
そのまま、時が止まること三秒。
――不意に、大きな星が空に現れた。
最終更新:2008年03月12日 12:11