「
そうじろうさん、
こなた見ませんでした?」
こなたを探していたシンがそうじろうの部屋を覗き、そこでアルバムらしいものをみていた彼に声をかけた。
「こなたなら近所まで何か買い物行くって言って出かけたぞ」
そうじろうは見ていた何かから目を上げると部屋の入り口に立っているシンにそう答えた。
「そうですか」
「どうしたんだい」
「こなたの携帯が鳴っていたんでどこか家の中にいるのかなって思ったんですが」
「また、携帯忘れて出かけたのか」
「ですね」
しょうがない奴だと顔を見合わせて笑う二人。
「電話は
ゆたかからだったんで出ちゃったんですけどね」
「それでゆたかちゃんなんだって?」
「今日は
みなみの家にお泊まりだっていってました」
「ふ~~ん」
そうじろうは彼の手元にあったアルバムを指さした。
「ああ、そうだちょうどいい、シン君、君もいっしょに見ないか」
「なんですか」
「いや、片付けものをしていたら昔の写真が出てきたんでね、懐かしくなって見ていたんだ」
「いいんですか?」
シンは何か家族の大切なものを他人の彼が覗くようで遠慮がちになる。
「ああ、いいよ」
シンのことを家族と等しい存在だと思っているそうじろうは気安く答えた。
そうじろうの隣に座り彼と一緒にアルバムをのぞき込むシン。
そこにはこなたに似た、こなたよりも軟らかい表情を見せる少女の姿が何枚もうつっていた。
「これ、
かなたさんですか?」
「ああ」
そこには様々な仕草のかなたがいた。照れたり、むくれたり、笑っていたり……
シンはその中にある共通点に気がつく。
そうじろうと一緒に写っているもの以外での彼女のその表情。
それは完全に信頼している相手に対して見せる安心しきった表情だった。
「これ、全部、そうじろうさんが?」
「ああ、当然、僕が写っているものはそうじゃないけど。
それ以外はたぶんほとんど全部僕が撮ったんじゃないかな」
「かなたさん、そうじろうさんのことをすごく好きだったんですね」
「いや、まあ、なんか照れるな」
アルバムの中では次々とかなたさんのオンパレードが続く。
「やっぱり、こなたってかなたさんに似ているかな」
「そうだな、最近になって特に似てきている気がするな」
そして……
「うわ~」
「いや、なんかこれなんかすごく照れるな」
そのページにあったのはウェディングドレスを着たかなたと似合わない正装をしたそうじろうの写真。
「こなたもたぶん、こんな感じなんですかね」
「ああ、そうだな……」
「まあ、あいつもいつになったらこんなもん着るようになるんでしょうね」
「さあね、ずいぶん先なんじゃないかな。まだ高校生だしな」
「そ、そうですよね」
隣で何故か赤くなっているシンを複雑な表情をつくりちらりと視線を投げるそうじろう。
いや、少し残念だけどあまり遠くない将来、こなたの花嫁衣装が見られるような気がするんだ。
その隣にいるのはたぶん、この少年なんだろうな。……ちょっとしゃくに障るけどね。
だって端で見ていてこの少年とこなたの間に最近は、何か通い合うものを感じるんだ。
僕とかなたの間にあったのと同じような、でも誰かのそれとも全然違う彼らだけの何かをね。
おそらくこの少年とこなたは二人で幸せな家庭を築くんじゃないかな。
ま、僕の希望、いや願望だけどね。
……キミもそう思うだろう、かなた。
アルバムの中で微笑むかなたに心の中で語りかけたそうじろう。
彼は隣の少年にわからぬように瞳の中にあふれてきた涙を拭いた。
結局二人は帰ってきたこなたにその姿をとがめるまでずっとその数々アルバムを眺めて時を過ごすのだった。
最終更新:2008年03月12日 13:08