「・・・と、いう訳です。」
「・・・そだ・・・」
「え?」
「嘘 だ ッ ッ ! !」
シンの目の前には、泣きながら全身を怒りに震わす中年の男が居た。
泉そうじろうその人である。理由はもちろん・・・
「こたながッ!
こなたにすきなひどがsjftあせふlじこ;@」
「ちょ、ちょっと!落ち着いてください!!」
まったく厄介な依頼を引き受けたものである。
当初のシンの予想通り、こなたの件を聞いた
そうじろうはやはり激怒した。
まぁあれだけ溺愛しているのだから仕方ないといえば仕方ないのだが・・・。
それにしてもこの怒り様は異常である。このまま相手を撃滅しそうな勢いだ。
「俺はあくまでもこなたの友達から聞いた話をいっただけですよ!
あいつ本人から聞いたわけじゃ・・・」
「いや、かがみちゃんが言うんだから間違いない…
ちくしょう…ちくしょぉぉぉおおおおーーーーーー!!」
これはもう駄目かもしれない。シンの瞼には、そうじろうさんにフルボッコされる男子の姿が浮かぶ。
可愛そうに…こなたに好かれた為に・・・。そう思い少しその男子に同情すら覚えた。
「シン!!」
「…はい?」
「君に第二のミッションを与える。その男を突き止め…俺の前につれて来い!!」
「え!俺が、ですか…」
「シンならやってくれる、よね?」
「いやでも…」
「よね?よね?」
「…わ、わかりましたよ。やればいいんでしょ、やれば!」
「戦果を期待する!!」
鉈でも隠してそうなその雰囲気に、嫌という選択肢はシンには残されていなかった。
普段温厚な人ほど、怒ったら怖い。その意味を今深く理解したシンだった。
書斎を出て居間へ。そこにはゲームに興じるこなたとゆたかの姿が。
「あ、シンお兄ちゃん。おじさんと何話してたの?」
愛くるしい笑顔で問いかけてくる
ゆたかに、シンは苦笑いであいまいな返事をするしかなかった。
「い、いや~、まぁその、色々と。」
「駄目だよゆーちゃん、男が二人で話しこむっていったら…ねぇ?」
ゲームをする手を止め、こなたが目を細めてこちらを見ている。
「なにがだよ、何が。」
「フッフッフー。さぁてねぇ」
「???」
頭上に『?』を浮かべるゆたかと、いやらしい笑い方をするこなた。
誰のせいでこんな面倒なことを背負い込んだのか・・・
今すぐぶちまけてやりたかったが・・・そこは我慢してため息にすり替えた。
「ッ・・・ハァ~・・・もういい・・・」
それっきりにして自室へ戻ろう。そう思い居間を出ようとした時だった。
「あ、シンお兄ちゃん!」
ゆたかの声にシンは足を止めた。
「ん?何だゆたか?」
「うん、えっとね、明日なんだけど・・・」
なぜか言い出し辛そうなゆたかに変わって青いアホ毛のちんちくりんが続きを語った。
「あたしとゆーちゃんで明日お弁当作るんだけど、シンの分もつくってあげようか?」
「うん、もしシンお兄ちゃんがよかったら、だけど・・・」
「弁当か・・・」
意外な申し出だった。ゆたかもこなたも料理については全く文句のつけようが無いため、味の保障は十二分にある。
さらに、シンの今の財布の中身を考慮すると少しでも昼食など出費は抑えたかった。
(特に断る理由も無いか・・・)
シンはその申し出を受け入れることにした。
「ああ、じゃあついでによろしく頼むよ」
ゆたかの嬉しそうな顔と、終始ニヤニヤのこなたが印象的だった。
―――翌日。
(弁当か・・・)
鞄の中にはこなたとゆたかが早起きして作った弁当が入っている。
長いこと一人での生活だったシンにとって、誰かに弁当を作ってもらう事はある意味で新鮮だった。
不思議な感覚だな。そう思いながら靴箱で靴を履き替える。
「お、あの後姿は?」
紫の長い髪を二つに結んだツインテールが、シンの少し前を歩いていく。
「おーい、
かがみ」
「え・・・あ、シン・・・」
振り返ったその顔は、柊かがみその人だった。
が、その顔はいつもと少し違った印象を受けたのはシンの気のせいだろうか。
「オッス。どうした、元気ないな」
「別に・・・そんな事無いわよ」
「そうか?俺はてっきりお菓子の食べすぎかと・・・いや悪い!冗談だ!」
いつもなら、ここで確実に鋭いツッコミが入ってくるところだった。
もちろん、シンもそれに備えて防御の体制をとっていた。しかし。
「そうかもね。それだといいんだけど。」
「え?あ、ああ・・・」
やはりおかしい。ここ最近、かがみに元気が無い。
シンといえど、それぐらいは気づくのだ。
「なぁ、本当にどっか悪いのか?」
「別に。何とも無いわよ」
「そんなわけないだろ、何か変だぞ?」
「何とも無いって」
「いやでも・・・」
「だから!私は何でもないって!!」
昨日の今日で、まだ心の整理も出来ていない。
その状況で好きな男に自分を心配される。かがみにはそれが耐え難いものだった。
そんな中、募った不安や不満が大きな声となって出てしまった。
「なんだよ、なんでそこまで怒るんだよアンタは!?」
売り言葉に買い言葉、シンも声を荒げて答える。
無論、シンにその理由は分からないのだから、シンからしてみれば大声を出されるいわれ等ないのだ。
「ハッ!人が心配してるのにその態度はないだろ!もういい、勝手にしろ!」
そう言ってかがみに背を向け、逆方向に歩いていく。
背中で何か声がしたが、シンは聞こえないことにしてその場から立ち去った。
「クソッ!なんなんだよあいつは・・・あ、これ美味いな」
シンは今朝の出来事に怒りながらもしっかりと弁当は味わっていた。
「おーっすシン、飯食おう…って、なんだ今日は弁当か?」
「白石」
「いいねぇ、愛妻弁当か。かー、俺も作ってもらいたいもんだ」
「そんなんじゃない、ついでに作ってもらったんだよ。」
「ついででそこまで作ってくれるとは、お前の嫁さんは働きものだねぇ」
昼食はいつも売店な白石の冷やかしを受け流しつつ
(やっぱりこなたの玉子焼きは美味いな。)
そんな事を考えながらこなたとゆたかの弁当をモリモリ食べる。
「食った食った。」
白石のしょうもない世間話やバイトの愚痴を聞きながらでも、弁当は美味かった。
(出来ればたまに食べたいな・・・)
弁当を包みながら白石と雑談をしていた時・・・
「おいウサ眼!」
聞き覚えのあるその声。というかシンをそう呼ぶのはこの学校でも彼女だけだろう。
「
みさお・・・と、
あやのさん?」
昨日と言い今日といい、どうしてこう白石と話していたら来客があるのだろう。
白石には時報ならぬ呼び鈴のような特性でもあるのか?
「
アスカくん。ちょっといいかしら?」
意見するといつものようにニコニコしているが、その眼は・・・笑っていない。
ちなみにみさおはいつものままだ。
「俺はいいですけど、白いs」
そこに既に白石の姿は無かった。相変わらず、奴には厄介ごとから逃げる素晴らしい能力があるのだろう。
「ここじゃあ何だから、ちょっと表で話しましょうか」
「ウサ眼~覚悟しろよ~?」
「みさちゃん」
「・・・悪いあやの…」
なんだ、今度は何が起こるんだ・・・シンの第六感が、この先起こるであろう面倒ごとにビンビンに反応していた。