「あなた、柊ちゃんに何をしたの?」
「何って、何がですか・・・?」
全くもって意味が分からない。
この人はなぜこんなに怒っているんだ・・・?シンの頭にはまずその疑問が浮かんだ。
突然教室から連れ出されて、怒りの表情でわけの分からない事を聞かれているのだ。
だが、二人はおかまいなしに続ける。
「私たちもね、おせっかいだとは思うの。でもね・・・あれじゃ柊ちゃんがあんまりにも可哀想よ?」
「
かがみが?」
「
アスカくんが誰を選ぶかはもちろんアスカくんの決めることよ。
でも・・・断り方っていうものがあるでしょう?」
「選ぶ・・・?何をですか?」
「とぼけるなよウサ眼~。お前…あのチビっ子と出来てんだろ?」
「みさちゃん!」
「
あやの、こーゆー鈍感な奴にはハッキリ言ってやったほうが良いんだって。
これぐらい言わないとわかんねーぜ、コイツは。」
「そこまではっきり言うつもりは無かったんだけど・・・」
「あのー…」
「まだ言い訳するか!往生際の悪い奴め!」
「いや、だから・・・」
「ハァ…柊ちゃん、早く立ち直れると良いんだけど…」
「だー!かー!らー!誰と誰がどう出来てるって言うんだよ!!」
話を聞かずどんどんと前へ進んでいく二人の会話にシンは大声で割って入った。
大声に驚き会話をとめる
みさおとあやの。好機とばかりシンはいっきにまくし立てる。
「何で俺があいつと出来てるんだ!っていうかそれがかがみとどう関係があるんだよ!?」
「・・・ウサ眼」
「アスカくん・・・」
取り乱してしまった。取り乱すな、ZAFTのエースは取り乱さない!
自分に言い聞かせ、声のトーンを落として再び口を開く。
「と、とにかく・・・俺は
こなたとは何も無いですよ。アイツはただの同居人…家族みたいなもんですから。」
「ほ、ほんとか~?」
さきほどの驚きを多少引きずりながらもみさおは聞く。
「ほんとだよ。お前が言うようなことはこれっっっぽっちもない!」
「ふーむ。てことは、あやの…」
「アスカくん・・・ごめんなさい、私たちとんでもない勘違いしてたみたい・・・ほんとにごめんなさい!」
顔を真っ赤にしながら謝るあやの。どうやらようやく分かってくれたらしい。
しかし、とんでもない誤解だ。こなたと付き合っていると思われていたとは・・・。
「分かってくれれば良いですよ。でも・・・変な誤解をされたもんですね」
「そ、それは…」
少しトゲのある言い方になってしまったが、なぜそんな誤解を受けたのか聞いてみたかった。
「そりゃー、ウサ眼はいつもチビっ子と一緒だからな。誰が見たってそう思うぞ?」
謝るあやのとは対照的に全く悪びれる様子も無くみさお言う。
「それで誤解したわけか。」
「ほんとにごめんね・・・」
「いいですよ、もう。分かってもらえましたから。」
「誤解ねぇ…誤解か…?」
「うるさいっ!ところで・・・その誤解とかがみと何の関係があるんですか?」
シンの言葉に二人が固まる。なにか地雷でも踏んだのだろうか。
「俺がこなたとどうにかなってるとして、それがどうしてかがみに関係あるのか分からないんですけど・・・」
普通の人間なら少し考えれば感付くものだが、この男はシン・アスカだ。わかるはずもない。
「そ、それは・・・えっと、ほら、ねぇ?」
「あ、あたしに振るなよ!」
なぜか二人は慌てている。そんなに答えにくい質問か?
「まぁ答えられないならいいですけど・・・。」
いいにくい質問なら無理に聞くことも無いか。誤解が解けただけマシだ。
これ以上突っ込んで、また厄介ごとを抱えるのも面倒だしな・・・。
「あ、アスカくん!」
思い出したようにあやのが口を開く。
「まだ何か?」
「その・・・お願いできる立場じゃないんだけど・・・
柊ちゃんにさっきの事、それとなくでいいから伝えてくれないかな・・・?」
「かがみに・・・ですか?」
「今は理由は言えないの・・・でも・・・お願い!」
「・・・わかりました、なんとかやってみますよ。
あ、でもアイツとは今朝・・・」
「喧嘩したんだろ?」
「ああ。だから暫くは口は聞けないと思うぞ」
みさおの質問にふてぶてしい態度で答える。
それもそうのはず、さっきの今で普通に会話するのはシンにもかがみにも無理だろう。
「それなら私たちがうまい事言っておくから大丈夫よ」
「まぁ・・・それならいいんですけど」
「たのんだぜ!ウサ眼!」
「ハァ~・・・わかったよ。それじゃあ・・・俺教室に戻りますよ?」
「色々ごめんね、アスカくん」
その言葉を聞き終えるとシンは教室へと踵を返した。