「ありゃま、だらしのない」
口からよだれを垂らし間の抜けた顔で、布団もかぶらずに寝ているシンの顔を見ながらこ
なたは呟く。
「まったく、みんなこんな間抜け面のどこに惚れるんだか……ま、あたしも人のこと言え
ないんだけどね」
シンの頬をプニプニしつつ、
こなたはまたも呟く。腹立たしいくらいにシン本人は気付い
ていないが、彼は女性に人気がある。こなたとその友人たちはいつ彼を巡っていざこざが
起こってもおかしくない状況である……はずなのだが、なんだかんだでゆるーい関係が続
いている。
「でも、いつまでもそんな関係を続けられる訳ないよね……」
頬をプニプニしていたこなたのゆるーい顔が急に暗くなる。普段はあまり考えないように
しているが、シンがたった一人しかいない以上、シンと結ばれるのもまた一人である。そ
の位置に納まるためにはシンを慕う他の人々を蹴落とさなければならない。
問題は蹴落とさなければならない人々というのが大切な友人だったり、妹同然の存在だっ
たり、可愛い後輩だったり、尊敬すべき大人たちだったりすることだ。
そんな人たちとの関係をすべて壊してまで自分はシンの側にいたいのか?ーその問いがこ
なたを悩ませる。
「シン……私どうしたらいいんだろうね?」
シンの側にいたい、みんなと仲良くしていたい……どちらも偽らざる気持ち。しかしきっ
といつか選択しないといけない日が来る。シンが好きである限り。
「参ったなぁ、こんなの私のキャラじゃないよ……」
他のみんなもこんな風に悩んでいるのだろうか。こんなつらい思いをしているのだろうか。
そう思うとのんきな寝顔をさらしているシンが腹立たしくなる。
「あんたなんか好きにならなきゃ良かった……ごめん、嘘……」
シンに、というより自分自身に言うように謝るこなた。
「なんだか疲れた……」
そう言うとこなたはシンの胸を枕にするように寝転ぶ。シンの匂いが、息づかいが、鼓動
が感じられる。
「誰にも渡したくないよ……どこにも行かないで、私の側にいてよ」
こなたの言葉は寝ているシンには届かない。それがわかっているからこそ言えるわがま
ま……
「ねえ、シン。私本気だかんね?いつか本気でこの思いを伝えるから、その時は……その
時は茶化さず真剣に答えてね」
寝ているシンとの一方的な約束。彼女なりの決意表明。それを終えるとこなたは一時の安息を貪るように眠りについた。
最終更新:2008年05月02日 15:22