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14-704

昨日ほど自分の不甲斐なさに嫌気がさした日はなかった。
私は、結局直接渡せなかったのだ。
つかさやみゆきの作った物を見た後だと、どうしてもそれを手渡すことが出来なかった。
正直後悔してるけど、もう過ぎたことは忘れようと思っていた。
そんな時だった。

プルルル プルルル

突然携帯電話の着信音が鳴り響く、画面に表示されたのはこなたの自宅の番号だった。
「もしもしこなた、どうしたのよこんな時間に?」
「あ、かがみか?俺だ……シンだ」
「シ、シン!ちょっと、どうしたのよいきなり!?」
受話器から聞こえてきた声はシンの声だった。
私は予想していなかった展開に少し慌てしまった。

そして、次にシンから発せられた言葉によって私はさらに混乱させられた。

「あのよ……チョコ、おいしかったぜ」
何がどうなっているのか全然わからなかった。
私のチョコは確かに、帰りに焼却炉の前のゴミ箱に捨てていったはずだ。
それが何故彼の手元に行ったというのだろうか。
「……お……かが……おい、かがみ?」
「ふぇ?……な、何よ!」
私がその理由を考えている間に、シンが何かを言っていたようだ。
シンの呆れている顔が、電話越しからでも想像出来る。
「……聞いてなかったみたいだな、もう一回言うからよく聞いとけよ」
シンは溜め息を一つ吐いてからそう言った。
「お前……何でこのチョコ直接渡してくれなかったんだ?」
「そ、それは……あの……えっと……その……」
私は何も答えることが出来なかった。
もしあのままシンに手渡していても、彼はちゃんと食べてくれる。
二人のに比べて形が悪いだの、味が濃いだの言うかもしれないけど、それでも食べてくれる。
そして最後には心からありがとうと言ってくれる、それはわかっていた。
でも……それでも、どうしても渡せなかったのだ。

二人の間での沈黙はしばらく続いた。
そして、しばらくしてシンの声が再び聞こえてきた。

「なぁ、かがみ。言いにくいなら言わなくてもいいけどよ……白石には感謝しとけよ」
「え……?」
「アイツ、帰り際にたまたま焼却炉の前で暗い顔して立ってたお前を見つけたらしくてさ」
「……」
「それで、どうしたんだろうと思ってゴミ箱を覗いてみたら……これがあったらしい」
「そう、なんだ……」
「そうなんだ、じゃないだろ!俺、白石に危うく殺されそうになったんだからな!」
「……どうしてよ?」
「このチョコを俺が捨てたと勘違いしたんだよ!こなたに誤解を解いてもらうまで大変だったぞ?」
「……ごめん」
「それから、つかさにもホントにこれがアンタのなのかってちゃんと確認とって……」
「……ごめん」
「大体、何でアンタそんなことを……」
「……ごめ……ごめんなさい……」
「え?……かがみ?アンタ、泣いてるのか?」

私はとうとう泣き出してしまった。
こいつの……シンの前だけでは泣かないと決めていたのに。
もうこうなってしまったら、思考よりも先に言葉が出て行くだけだった。
私はシンに思いの丈を全て打ち明けていた。

「あげられなかったの……あげられなかったのよ!つかさやみゆきのチョコを見てからじゃ……私の作ったこんな不味くて形も悪いチョコなんてあげられなかったのよ!」
「かがみ……俺はそんなこと……」
「わかってるわよ!シンなら……アンタなら、ちゃんと食べてくれるってわかってたの!」
「かがみ……ごめんな……」
「……何でアンタが謝んのよ!」
「ごめん……でも、かがみ。これだけは言わせてくれないか?」
「何よ……」
「本当においしかった。かがみ、ありがとうな……じゃあ、また明日学校でな」

プツン

「何なのよ……何なのよアンタは……」
私は再び声を押し殺して泣きじゃくった。
お父さんやお母さん、お姉ちゃんたちと……そしてつかさに聞こえないように精一杯小さな声で。
自分の行った過ちを、悔やんでも悔やみきれないことを、忘れるまでただひたすら泣き続けた。

そうしている内に夜は更け、朝になった。

「おはよ~こなちゃん、シンちゃん」
「やぁ、つかさ……あれ、かがみんはいずこ?」
「お姉ちゃん、今日遅刻していくって。お姉ちゃんが遅刻なんて珍しいよね~」
「かがみ……」
「ホントだねぇ……おや、シンどしたの?」
「え?……あ、なんでもない」
「……シン?」

正直俺もどうしていいのかわからなかった。
俺は守らなきゃいけない存在を、この手で傷つけたのかもしれない。
そう考えるとたまらなく怖い、怖くて怖くてしょうがなかった。
授業中もずっと、ずっとかがみのことばっか考えていた。
そして、気づいたらもう3限のチャイムが鳴る時間にまでなっていた。
その時、俺の目には廊下を歩くかがみの姿が映った。
考えている暇なんかなかった。
俺は素早く立ち上がり、廊下に向かって走り出した。

「かがみ……かがみ!」
「シン?……どうしたのよ急に?」
「昨日、ってか今日の夜中だけど……本当に俺が悪かった。許してくれとは言わないから……」
「何言ってんのよ、アンタ?もうあの話はお終いよ」
「でも、俺……かがみのこと……」
「あぁー!いいって言ってるんだからもういいの!それより……ハイ、これ」
「これ……?」

かがみがバックから取り出したもの、それは昨日と全く同じ包みの箱だった。

昨日、直接手渡せなかったから……」
「かがみ……じゃあ、今日遅れたのって?」
「一から作ってたの!手際悪くてこんな時間掛かったけど……でも、ちゃんと食べてよね」
「あぁ……ありがとう、かがみ」
「何よ、かしこまっちゃって……こっちが恥ずかしいじゃない!あぁ、もうアンタ早く戻りなさいよ。私これから白石のとこにも行ってこなきゃいけないんだから」
「そっか……じゃあ、またあとでな」
「うん、またあとでね」

1日遅れのバレンタインチョコ、他の人がもらったらおかしいと言うかもしれない。
でも……アイツだけは絶対にそんなこと言わない。
そう、信じてるから。


白石が出したくて書いた。後悔はしてない。

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最終更新:2009年05月01日 02:06
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