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14-766

『………』
 つかさ・こなた・みゆき、そして私の4人は昼食を無言で食べていた。
 これは私たち4人がケンカしてるわけではない。無論、4人で食べるのが初めてというわけでもない。1年前まではこの4人で普通に昼食を食べていたのだから………。
 原因は……恐らく私。

「……ねぇ、お姉ちゃん?」
「なにつかさ?教科書忘れたの?」
 空気に耐えられなくなったのか、つかさが私に話しかけて来る。私は平静を装い、いつもの様に返す。
「シンちゃんと何かあったの?」
「ぐっ………」
 ……まさか、直球勝負で来るなんて…つ、つかさらしいけど………
「……よく、わかったわね………」
「そりゃわかるよ~。かがみさっきからずっと遠い目してるもん」
「それにシンさんも、授業中溜め息ばかりなさって、昼休みが始まると脱兎の様に教室から出て行かれましたし………」
 私の呟きをつかさに変わってこなたとみゆきが答える。
 私を見る3人の目は「理由を話せ」と促している。
「……仕方ないか………」
 私は3人の圧力に観念し、そう呟いた。
「……実はね…私……ちゃったの………」
「かがみ、全然聞こえないよ~」
「……だから…私……シンに、フラれちゃったのよ………」
…………。
『ええーー!?』
「あ、あんた達、声が大きいって!」
「す、すみません!…と、ということはかがみさんは告白されたのですか?」
「今日の朝にね――」
 そう言って私は朝のことを3人に話した。

「……それって、告白になるのかな?」
「シンさんはそれ位では気付かれないかと………」
「ハハッ!どうだろ?私、顔にわりかし出やすいから気付いたんじゃない?」
 つかさとみゆきの疑問に笑って返す私。
 不安なのだ。……そうしておかないと、自分がどうにかなりそうで………。
「……だから、アンタ達とご飯食べるのも今日で最後」
「えっ?」
「そんな!?」
「私がここに来たら……アイツ1人でご飯を食べる事になるじゃない?…私は同じクラスにも友達いるけど……アイツの友達はあんた達しかいないしさ………」
 私はもうアイツの友達ではない。でもアイツには転校してきた時のような、寂しい顔はしないでほしい。
 ……おかしいわよね、フラれた相手の心配するなんて………。
「そういうわけだから、アイツに伝えといてね」
私は一方的に言うと、逃げる様に教室を出ていった。

「……お姉ちゃん、泣いてないけど泣いてた。」
「…ええ………」
 かがみさんが教室を出ていかれた後、ぽつりと呟かれるつかささんに頷く事しか出来ない私。
 辛いです。かがみさんの気持ちが痛いほど解るから………。
 でも何故でしょう。かがみさんは先ほどの様に、自分より相手の事を考えられる、素晴らしい女性です。
 そんな女性を、何故シンさんは………
「どうしたのこなちゃん?さっきから黙って」
 そんなことを考えている間に、つかささんが難しい顔をなさっている泉さんに声をかけられました。
「……かがみ、知らなかったのかな?」
「何を?」
「いや、あのさ――」

バレンタインの次の日に?そんなの聞いたことないよ~」
「え、ウソ?これってオフィシャル設定じゃないの?」
 私もバレンタインについて調べた事がありますが、そんな話は聞いた事もありません。 しかも、私だけならまだしも、かがみさんやつかささんも御存じないと言う事は………
「恐らくその決まりはは地域ごとの風習みたいなもので、正式な日本のバレンタインの決まりではないかと思います」
「ちょ、マジ!?……ということは……シンが絶交宣言されたと思ってるのは誤解で」
「かがみさんがフラれたと思ってるのも誤解だということは」
「ど、どんだけぇ~」
 なんという偶然が重なった誤解なんでしょう!……ですが、これで原因はわかったのですから、お2人を仲直りさせる事が出来るはずです。
「問題はどのようにしてお2人の誤解を解くかですね」
「今回はわたしの責任だよ!わたしが2人に話して誤解を解くよ!」
「で、でもこなちゃんが誤解って言っても、2人とも慰められてるだけって思わないかな?」
「うぐっ、たしかに……こういう時ダブルツンデレってやっかいだね………」
「やはり、お互いの口から誤解ということを伝えてもらうのが一番良い方法かと」
「でも、どうやって?」
「みゆきさん何か作戦でもあるの?」
「ハイ、こうして――どうでしょうか?」
「ゆきちゃん、頭イイ!それならイケるかも!」
「さすがはみゆきさん!作戦名は『Rotten Xmas cake』ってとこだね☆」
「さすがに、それは………」
 しかし私達に出来るのはお膳立てまでです。後はお2人の……絆を信じるしかありません。

「失礼します」
 放課後、オレは黒井先生に職員室に呼び出された。
 理由は特に思いつかないが、恐らくは苦手科目の1つ世界史の事だろう。説教されるのは嫌だが、このお陰でかがみに会わなくてすむなら、不幸中の幸いというやつだ。
「おお~来たかアスカ
「用ってなんです?」
「実は世界史――」
 ホラ来た。
「やのうて、それよりも大事な話や」
「それより大事……ですか?」
「そや。なんやお前、柊の姉の方と喧嘩したらしいの~?」
「なっ!だ、誰がそんな事……こなたか………」
「そんなんどうでもええやろ。喧嘩したんかしてへんのんか?」
「はい…まぁ。……でオレに、どうしろと?まさか、仲直りしろとか言うんじゃないでしょうね?」
「さっすが、アスカ。察しがええな~」
 普通の喧嘩だったら言われなくても、そうしてる!
 だが今回のは喧嘩ではなく絶交宣言。……出来るわけがない。
「……無理ですよ」
「ほ~なんでや?」
「かがみはオレの事嫌ってますし、仲直りなんて出来ませんよ」
「嫌っとる?なんでそう思うねん、柊にそう言われたんか?」
「今日、チョコを渡されたんです………」
「それで?」
「先生も知ってるでしょ?バレンタインの次の日に渡したらそいつのことが嫌いって事」
「……それで嫌われとると判断したと?」
「ハイ」
「………。ほな次の質問や。お前は柊を信頼しとるか?」
「ハイ、してます!」
「はっ、心にもないことを、笑わせよんな」 迷いなく言ったオレの返事を先生は鼻で笑い飛ばした。
「なっ!オレが嘘ついてるって言うんですか!?」
「せや、最低でも信頼はしとらんやろ?」
「そんなことあるもんか!!オレはアイツを…かがみを………」
「ほな聞くが、お前はその『信頼』してる柊から、嫌いって直接言われたんか?」
「え?……そんなこと言われなくても、チョコが――」
「チョコチョコとうるさいやっちゃな~。おのれはチョコレートマンか!
だいたい、柊がその決まり知らんかったかもしれんやろ?」
「そ、そんな、まさか………」
「やなくても、昨日渡すことが出来んかったとか、その日にチョコが作れんかったとかかもしれへんやろ?」
「そんなの推測じゃないですか!?」
「そや推測や、ウチは柊から何も聞いてへんしな。……けど、お前もそやろ?」
「うっ………」
 確かに、かがみはオレのことを面と向かって嫌いとは言わなかった
「直接聞いてもおらんのに、推測だけでそんな判断して、よく信頼出来るなんて言えるな~」
「………」
 先生の言葉にオレは言葉もでない。
「お前が柊を信頼してるんやったら、柊はお前が真剣に聞いたら答えてくれる、ちゃうか?」
「でも………」
 確かに聞いたら答えてくれるかもしれない。……だから怖いのだ、オレを拒絶されたらと思うと………。
「……ええか、アスカ。大事なんは、お前が柊の事どう思ってるかや!嫌われとってもええやないか、抗ってみい!
このままやったら絶対自分は後悔するで……大切なモンは1度離すと、もう戻ってこーへんねやからな」
「あっ………」
 ――そうだった。オレは何度もそれを経験してるじゃないか……なのに、オレはまた大切なのを失おうとしている。
 そんなこと、そんなことさせるもんかぁぁ!!
「黒井先生、ありがとうございます!……オレ…もう少し抗ってみます!」
「……わかったんやったら説教はこれで終わりや。ほな、ケジメつけよか」
「お願いします!」
 そう言うとオレは歯を食いしばった。
 ドゴッ!!!
「いってぇぇぇぇ!!!」
 オレの絶叫が職員室に響いた。
「なんや、これくらいで声出しおって、ガマンせぇ!!」
「普通あの場面は頬殴るでしょ!!なんで頭の上なんだよ!?」
「アスカ、セオリーは覆すためにあるんやで♪」
「………」
「今のはウチのぶんや、今度からウチの授業を集中して聴くように!後のケジメは…柊につけてもらえ」
「ハイ。先生、ホントにありがとうございました!!」
「感謝する気があるんやったら、週末のネトゲ、ウチに付き合うこと、ええな?」
「ハイ!それじゃ失礼します!」
 そう言うやいなやオレはまだ痛む頭部を押さえながら、職員室を飛び出した。

続く

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最終更新:2008年06月09日 15:00
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