シン「くそう…折角の日曜だってのに、風邪をひいちまった…
そうじろうさんは仕事の都合で出掛けてるし、
こなたはバイト。
挙句の果てに、
ゆたかまで実家に呼び戻されて留守と来たもんだ……
なんか久しぶりに一人だな…家に一人でいるのって、こんなに寂しい物だったっけか…」
(ぴんぽーん♪)
シン「くそう、誰だよこんな時に。哀れな病人を引っ張り出してそんなに嬉しいか。
こちとら脇に追いやられるのは慣れっこだが、その逆は苦手なんだよ……はーい、今出まーす」
(パジャマ姿のシン、ふらふらになりながらドアを開ける)
ふゆき「こんにちは……って、
アスカ君!?」
シン「あ、天原先生!?まさか、そんな、なぜ!?どうして天原先生がここにいるんですか!?」
ふゆき「いえ、それは…実は先日、小早川さんが保健室に忘れ物をしてしまったのですが
今日はたまたま私もこの近くに用事があったので、折角だからお届けしようと思いまして…」
シン「ああ…それはどうも、わざわざすみません。
今はちょっと皆留守にしてますけど、後でゆたかにはちゃんと言っておきますから…ゲホゲホ!」
ふゆき「アスカ君…!その様子だと、やはり体の具合が…」
シン「い、いや、大したこと無いですよ!それに、折角来て下さったのにこんな格好ですみません。
本当ならきちんと出迎えなきゃいけない所なのに、これじゃあ逆に先生にまで風邪を移しちまいそうですし…」
ふゆき「何を言っているんです!私の方こそ本当にごめんなさい、安静にしていなければならないのに、アスカ君に無理をさせてしまって…」
シン「いえ…天原先生、本当に気にしないでいいですから……うぅ、ゴホッゴホッ!」
ふゆき「……っ!」
ふゆき「はい、アスカ君。あーんして下さい」
シン「あ、あの……天原先生?」
ふゆき「何でしょうか?」
シン「えーと、あの、そのですね…なんだってまた、俺を強引に部屋のベッドに押し込んで、
ついでにあり合わせの材料でお粥なんか作って、更にそれを俺に食べさせようとするんです…?」
ふゆき「アスカ君が風邪をひいているとわかった以上、養護教諭として放ってはおけません。
それに、今のアスカ君が一人でお留守番をするのでは、何かと不具合もあるでしょうから」
シン「そ、そのお気持ちはとても嬉しいんですが…何も天原先生にそこまでして貰う訳には…」
ふゆき「お気になさらないで下さい。これは私が望んでやっていることですから。
私はアスカ君のことが心配だから、こうしてアスカ君の看病をしてあげたいんです。
…でも、勝手に押し掛けて来て、その上で更に恩着せがましい真似をしているのも確かですね。
いずれにせよ、私がアスカ君に迷惑を掛けてしまったのは事実ですから…そのことは本当に申し訳なく思います」
シン「……天原先生。お粥、頂きます」
ふゆき「アスカ君」
シン「折角、天原先生がわざわざ俺の為に看病してくれてるんです。
ここで俺があーだこーだ言って、先生を悪者にするわけにもいかないでしょう。
…それにこんな状況の中、一人で留守番してるって時に先生が来てくれて…正直すごく心強いです」
ふゆき「ふふ…それでしたら、遠慮なく召し上がれ。
もう私の用事も済みましたし、今日は出来る限りアスカ君の側にいさせて頂きますから」
シン「本当にありがとうございます、天原先生。
俺も出来るだけ、先生に風邪を移さないよう気をつけますから…」
ふゆき「では――アスカ君の風邪を移されちゃったら、その時は逆に、アスカ君に私の看病をして貰おうかしら?
つきっきりで、今みたいに二人きりで。
今日のアスカ君がそうしているように、今度は私がアスカ君を独り占めしてしまいますから」
シン「ええぇ…っ!?」
ふゆき「ふふふ。アスカ君、早く良くなって下さいね。やっぱりアスカ君には元気な姿が一番良く似合っていますから」
シン「は、ははは……なんだか別の意味で俺の体温っつーか、熱が上がった気分だぜ……」
777
シンの風邪が治って登校した日の朝
ななこ「ようアスカ。風邪治ったようやな~」
シン「はあ・・・なんとか」
ふゆき「おはようございます」
ななこ「おはようございま~す」
シン「おはようございます。『ふゆき先生』」
ななこ「あれ?この前まで『天原先生』やなかった?」
ふゆき「い、いえ・・」
シン「それは、まあ、その・・いろいろ」
最終更新:2009年06月25日 20:51