さいたま県中部に近年できたレジャーランド『糖杯出・蛇南公園』。
羊やキングコブラを初めとして様々な動物に触れ合えるフロアや、四回転ループのあるジェットコースターなどもある。
一部の人向けにはサバイバルフロアなどというサバゲー専用の――安全第一のため、BB弾ではなく赤外線レーザーの判定装置を使っている
――場所もあった。
その、なんでもとあるシュールレアリストに頼んでしまって出来たという、星形っぽい謎のオブジェが置かれた入場口前にて、私服姿のシ
ン・アスカは時計を確認していた。
「そろそろか」
向こうの要望で現地集合ということになっていた。
別に駅でもいいじゃないか、と言ってみたが、空気の読めないやつやな~、などと言われ一撃で沈んだ。
その結果として、シンだけが20分前から待ちぼうけを喰らっていた。
「なんだよ、自分から現地集合っていったくせに…」
そんなふてくされたことを呟いていると、不意に視線を感じた。
元ザフトレッドであるシンはそれが殺気ではないとだとすぐに気付くが、何者かの確認のために視線がぶつけられた方向を見る。
が、休日のレジャーランドとあってか人だらけ。
一体誰がぶつけてきたのか分からない。
仕方なく顔を元の位置に戻そうとし、そこにいつの間にか立っていた一人の女性に気付き、見惚れた。
櫛を通し乱れのない金のロングヘア、身長はシンと同じか少し大きいぐらいであまり変わらず、その身はクリーム色の柔らかな、外出用の
サマードレスに包まれている。
ピンクにも見える赤のカーディガンがそれによく似合っていた。
靴もいつもの実用的・実務的なものと違ってキュートなものを履いている。
「よ、よっ、
アスカ、待ったかいな」
いつもの雰囲気とはまるで違う、どこかの令嬢のような格好をした女性、黒井ななこが照れくさそうに、はにかむような笑みで挨拶してき
た。
そんな彼女の仕草にシンの動悸がワンテンポあがった。
それはシンに顔を背ける、などという子供っぽい行動をさせ、同時に血流を操り顔に集中させ紅潮させる、などという芸等までしてきた。
なんで俺は目をそらしたんだ、と自問。
今日のお相手に失礼だと思い向き直る。
そこにはやはり、いつもとは違う黒井ななこがいて。
「きれいだ…」
「へっ?」
そんならき☆すけな台詞を吐かしていた。
次の瞬間、ななこの顔が周囲の熱気を吸い上げたように真っ赤になり、シンもまた自分が口にした言葉の意味を再認識し、何故か顔が赤く
なった。
「え、あ、いやその…。いつもの雰囲気と全然違ってて、つい」
「……そ、そうか?ウチ、そんなにきれい?」
「え、あ…はい。すごく、きれいで」
「はいはいごめんよ~」
慌てふためき初々しい恋人のような2人の間を遮るように、帽子を被った、小柄な、しかし不貞不貞しい人物が通り過ぎていった。
その人物の声はどこかで聞いたことがあるような気がしないでもないが、しかし冷静を失っていた2人がそれに気付くことはなかった。
「あ~…とりあえず、中にいきませんか?」
気を取り直して、シンは今更ながら辺りを見る。
特徴的なオブジェのせいで待ち合わせに使っている人が多く、しかもシンたちに気づいていた人の中には某居候先の娘さんよろしく意地悪
い笑みを向けている者や、生暖かい微笑みを向けてくる者がいた。
「そ、そやな」
それに
ななこも気づき、羞恥で顔を赤くした。先程から顔がずっと赤くて、熱が中々抜けてくれない。
チケットを出し、入場口の受付に切ってもらい、噂のレジャーランドへと足を踏み入れる。
「…うし」
「ん?」
不意に、シンの少し後ろを歩いていたななこが掛け声のような呟きをすると、小走りでシンを追い越し、ストレートの髪をなびかせながら
振り返った。
入場口の目の前にある巨大噴水の水が、一緒になってななこの後ろを飾り付けた。
「今日はシンの奢りなんやろ?ならんな固くならず、遊ぼうやないか」
そこでシンは、ふと目の前の人物が自分の教師であることを思い出した。
ついさっきまであんなに心が落ち着かなかったのに、これが日頃の恩返しと思い出すと、気持ちがニュートラルとなり、偶には先生のスト
レス発散に付き合う生徒としての自分と、いつも周りの少女たちと戯れふざけあう自分を取り戻した。
「…はい、けどだからって調子にのってバカスカ使わないでくださいね」
「あ~それはどうやろな~それはアスカの態度次第や」
そういって、ななこはまた笑った。何かを隠すような陰をシンに見せず。
そんな2人を見つめる視線があった。それも複数。
『こちらウルズ1。一度雰囲気を壊すことに成功したよ、オーバー』
『ナイスよウルズ1。ウルズ7はこれから目標の右側面から尾行をするわ…てこら
つかさ、そっちいっちゃだめ』
『う~羊~…ウルズ2、お姉ちゃ…じゃなくってウルズ7と一緒にいます、おーばー』
『こちらウルズ3です。泉さ…ウルズ1さんはどちらにいますか?出来れば合流したいのですけど。オーバー』
『こ、こちらウルズ4です。現在目標の後ろにいます…て、きゃー助けて岩崎さぁん!?』
『…ウルズ5、ウルズ4が人並みに飲まれたので助けます、オーバー』
『お、オメガ11、出来ればウルズ4を助けにいきたいっす。むしろなんで私だけオメガなんすか?しかもイレブン!?』
『オー、それはきっととあるFlightSimulationのネタデース…ウルズ6、targetの前をいきマース。over』
『おっけーみんな。それじゃ「誰だろうと抜け駆けは許しまへんでぇ」作戦、開始だよ』
乙女たちの策謀が、家族や恋人たち、そして一部複雑な思いを見せる少年と女性教師を包もうとしていた。
因果律補正によって79%の確率で失敗するが。
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きっと他の方々は・・・
ひかる「どうだ?」
ふゆき「家の監視衛星からの情報によると話題のレジャー施設にいるようです。
ええ、万が一に備えてスナイパーと工作兵による妨害部隊も派遣済みです。
気にしなくても大丈夫ですよ」
ひかる「(相変わらず敵に回すと怖いな・・・)」
ゆかり「いざとなったらスキマね~」
かなた「蝶々も飛ばしたから監視体制は万全よ」
みき「針に色々と仕込んだわ、こっちも万全よ」
最終更新:2010年02月06日 23:09