学校、教室にて・・
梅雨のせいか、ジメジメした空気の朝。そのジメジメした空気に拍車をかける男がいた。
シン「ブツブツ・・ブツブツ・・」
それは、先日・・
こなたに癒えぬトラウマを植えつけられたエターナル・エアーこと、シンである。
その姿は誰の目から見ても、明らかに暗い。
どこまでも絶望しきった表情を浮かべているシンだが・・時々、壊れたかのように渇いた笑みを漏らしている。
その表情がクラスメイトたちを大いに恐怖させていた。
彼一人で、教室の温度が5℃は下がっているといっても過言ではない。
そして隣のクラスから遊びにきた柊かがみが、このクラスを覆う暗いムードに気づいた。
かがみ「うわ・・暗ッ!どうしたのよ、アンタのクラス・・?」
こなた「いやぁ、それはシンくんを見ればわかるよ」
そう言って、こなたはシンを指差す
かがみ「こ・・これは・・!!アイツ・・なんか凄まじいネガティブオーラ出してるわね・・」
こなた「でしょ!参ってるんだよねコレがー」
かがみ「・・あまりオマエの口調から参ってる響きが感じられないのは気のせいか?
それより、誰か元気づけてやんなさいよ。このままじゃこのクラスの温度・・下がる一方よ?」
こなた「でも、私からはちょっと声かけづらいんだよね・・。なにせシンくんのトラウマ作ったの、私だし☆」
かがみ「そんなことを明るく言うなッ!!」
今日もかがみのツッコミが冴える。どこか教室の温度が少しだけあがった気がした。
すると、
つかさがこなた達の会話に入ってくる。
つかさ「・・じゃ・・じゃあ、私がシンくんに声を・・・!!」
こなた「ストップ!つかさはダメだよ。シンくんってさ、比類なき妹萌えだから・・つかさみたいな妹属性の塊・・何されるかわかったもんじゃないよ。
悪いこと言わないからやめといたほうがいいって」
つかさ「そ・・そうなの・・?」
かがみ「んな大げさな・・」
だが、真面目な顔でこなたはこう返す
こなた「大げさじゃないよ。なにせシンくんは妹属性の子を見たら決まって[マユ・・]とか呟き出すからさ、かなり重度のシスコンだよ。
つかさは危険すぎるから、そういうわけでかがみん・・シンくんへの声かけよろしく」
かがみ「ハァ!!??なんで私が!?」
こなた「シンくん、シスコンだけど姉属性はあまり持ってないんだよね。それにかがみん、凶暴だし」
かがみ「オイ・・、凶暴だからなんだってのよ?それに自分のクラスの問題は自分で解決s」
こなた「いーからいーから!頼むよ、このクラスを救うためにさ。よッ、元学級委員!!ほら、つかさもつかさも」
つかさ「えッ?えーと・・お・・お姉ちゃんッ!!お願い!このクラスを救って!!」
かがみは溜息を付く。そして仕方ないといった感じで
かがみ「・・ハァ、アンタに言われるとなんかムカつくけど、つかさが言うんなら・・まぁいいわ。なんとかしてやろうじゃないの」
こなた「・・・おお、やってくれるか・・かがみんや。しかし、これでやっとかがみにフラグが・・」
かがみ「アンタ・・何ブツブツ言ってんのよ・・?」
こうしてかがみは、地雷原に足を踏み入れることになったのだった。
かがみはシンの机の前に立った。そこには焦点が定まっていない目をしたシンが座っている。
近づくにつれ感じていたことだが、そのネガティブオーラは更に力を増してくる。そしてここまで近づくと、こちらまで理由なくネガティブになりそうなぐらいである。
この空気を吹き飛ばすため、かがみが大きく息を吸い・・シンに声をかけた。
かがみ「ちょっと話があるんだけど、いい?」
シン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シンは無言であった。少しかがみはイラッときたが・・だからといって、話をやめるわけにもいかない。
かがみ「まぁさ、そりゃ人ってのは落ち込む時だってあるわよ・・。私だって体重・・・ってそこはいいわ。
とにかく、こなたに何されたかは知らないけど・・ちょっと落ち込みすぎよ。元気・・・出しなさいって」
シン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シンは・・やはり無言である。かがみは怒りで拳が震え始めた。
…が、それでもかがみは、できるだけ優しい響きで言う。
かがみ「クラスの皆だって心配してるんだからさ、ほら・・そんなヤツれた顔すんな」
シン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シンは・・・どこまでも無言であった。この態度にかがみは耐え切れなくなり、ここでついにプッツンした。
かがみ「ああもう!!どこまで落ち込んでるのよアンタ!ウジウジしすぎよ!!!
それにアンタのその態度がクラスの空気を悪くしてるって気づかないの!?」
ここで・・・シンの体がビクッと震える。ついに反応を見せたのだ。
かがみ「やっと反応を見せたわね・・。で、何?・・なんか言ってみなさいよ」
しかし、かがみは地雷を踏んでしまったいたことに気づかない。
シン「・・空気。空気・・か。そうだ、全く持ってその通りだよ・・」
かがみ「え?アンタ何言って・・」
シン「ハハ・・オレはどうせ空気だ・・。ま、途中から自分でも薄々感じてたんだけどな・・オレが永遠の空気だってことに・・。
それでも、認めたくはなかった。頑張って主役を張ろうとしたんだ・・・」
かがみ「ねぇ・・。なんかアンタの言ってることがよくわかんないんだけど」
事態が把握できていない・・そんなかがみを無視し、シンは話を続けた。
シン「でも、やっぱりオレは空気だった。人間ミラコロだったんだ・・・。どんなに努力したって報われない・・。
それに先日だってそうだ。ZAFTのエースであろうオレが・・あんなゲームなんかで醜態を・・」
シンはさらにネガティブオーラの暗い輝きを増した。かがみはそのあまりの強烈さに・・一瞬怯むほどであった。
だが、事情は把握できていなかったものの、かがみはなんとかシンを元気づけようとする。
かがみ「まぁ、事情はよくわかんないんだけど・・報われないからって努力するのをやめたらその・・・なんだっけ?
ええと・・そうそう、ますます人間ミラコロとかってヤツになっちゃうんじゃないの?」
するとシンは、少しだけ目に生気を取り戻した。
シン「・・・そう・・だよな。ここで努力するのをやめていたら・・オレは本当に・・終わりだよな」
かがみ「そ・・そうよ。ここで諦めてたらホントにただの負け犬よ!気合を入れなさいよ、気合を」
シン「気合か・・。よく考えれば・・気合と根性だけがオレの取り柄だ。それすら忘れちゃったらオレはどうなるってんだ・・?なぁ・・オレ!」
シンの目に生気が大分戻ってきた。ここで言うのもなんだが、現金というか、回復が早い男である。
とにかく、これを見たかがみはなんとなくだが、安堵した。
かがみ「やっぱり話がよくわかんないんだけど・・もう大丈夫そうね。もっと手こずるかと思ったけど、立ち直りも案外早いじゃない
アンタが単純なヤツで良かったってことか」
シン「・・オレは確かに単純かもな。そうでもなきゃ、オレの精神はとっくに壊れてるだろうし」
かがみ(その発言を聞くに・・なんかいろいろ苦労してるのね・・・)
シン「それより、すまなかった」
かがみ「え・・・?」
突然のシンの謝罪にかがみは驚く。
シン「なんか・・大分迷惑をかけたらしい。オレ、さっきまで正直・・校舎の屋上から身を投げたい気分だったんだけど、なんとか思い留まれた」
かがみ「え・・えらくギリギリの精神状態だったのね・・。まぁ、それなら良かったんじゃない?」
そしてシンは、いつになく素直な気持ちを述べた。
シン「オレは・・やっぱ弱い人間だからな。誰かに、慰めてほしかったのかもしれない。・・ありがとう」
かがみ「べッ・・別に礼を言われる筋合いはないわよ!このクラスのためだし・・それに妹に頼まれたから、ちょっと元気づけようと思っただけ!!」
シン「何でもいい。とにかく、ありがとう」
すると、こなたがスタスタとやってきた。その顔はニヤついている。
こなた「おお・・・これはいいツンデレ!いいもの見せてもらったよ、かがみん♪」
かがみ「だからツンデレじゃないって言ってるだろうに!!・・ハァ、なんかまだ授業始まってないのにいきなり疲れた・・」
こうして、クラスの安定は保たれた・・・かに見えた。
しかし、一人の女生徒の登校によってまたも教室の雰囲気は激変する。
それは皮肉にも、このクラスのトップたる委員長を務める・・高良みゆきであった。
みゆき「ふぅ、なんとか遅刻せずにすみました・・」
こなた「あ・・みゆきさん、おはよー・・。ってアレ、メガネはどしたの?」
みゆき「それが・・今朝、割れてしまいまして・・。今日は裸眼のままなんです」
それが新たなる悲劇の始まりであった。シンはふと、裸眼のみゆきを見る。
今日は裸眼であるその顔、そしてピンクの髪は・・嫌でもシンの脳裏にトラウマとして残る あ の 人 物 を思い起こさせてしまった。
シン「あ・・・・あああ・・・・あ・・アンタはッ!!!!」
シンはみゆきを見て後ずさる。それは明らかに幻覚であるが、その顔は恐怖で歪んでいた。
その態度を不審に思ったみゆきはシンに声をかける
みゆき「あの・・どうかなされましたか?」
シン「こ・・来ないでくれ!オレは・・オレは・・・アンタなんかに洗脳されてたまるかーーーーッ!!!!!!」
そういってシンは、風のように教室を出て行ったのであった・・。
その光景を見たクラスメイトは皆、唖然とするだけである
みゆき「あの・・私、なにかシンさんに不躾なことでもしたんでしょうか・・?」
こなた「いや、それはないから安心していいよみゆきさん。シンくんにはシンくんの事情があるんだよ・・きっとね」
このクラスにシンが馴染める日は・・・こないのかもしれない。
最終更新:2007年11月11日 00:38