突然だが、私は一人の女性として、シン・アスカを愛している。いや、恋をしているといった方が適切だろうか?
いつから意識しだしたのかは覚えていない。ただ、気がつけば彼の一挙一動を目で追っていて、そしてもう目が離せないことを自覚してしまっている。
好きなのかと聞かれれば、好きだと答えられる。だけど、彼が私のことを好きなのかと聞かれれば、わたしは答えに窮する。
彼にとって、私は周りにいる女の子の中の一人に過ぎないのだろうから。でも、答えが欲しくて彼と共に居るのではない。彼の近くに居たいから居るのだ。
彼の赤い目はいつもどこか遠くを見ている。彼はここではないところから来て、そしていつかはそこに帰ってしまうのだろうか?
でも、私はその目で見つめて欲しいといつも思っている。時折、彼が見せるあたたかい眼差しが何よりも好きだから、誰よりも側に居たいと思っている。
彼は深く傷ついてきた。『終わったことだから……』と話してくれたけど、私はその傷に深さに言葉がなかった。
守らねばならない家族を失い、守りたかった存在を守れず、守るべき国をも失った。『それが戦争だ』と言うにはその傷は深すぎた。
戦争を知らない私が口にしてはならない言葉でもなかった。流す涙も枯れ果てた彼の心を癒したい。心の底からそう思った。
私は彼に歳相応に振舞って欲しいと思った。そんなことで彼が心の傷を忘れられると思ったわけではない。でも、なにかをせずにはいられなかった。
漫画でもいいし、ゲームでもいい。遊びに連れ出すのもいいし、買い物に無理矢理つき合わせてもいい。とにかく、彼に少しでも向こうのことを忘れて欲しかった。
分かっている。彼が向こうを忘れても、私のことを見てくれるなんて思ってなんかいない。ただ、彼の寂しそうな表情を見たくないだけだ。
逆に本来なら彼が享受するはずの当たり前の幸福を見せ付けてしまっているのではないか、そう考えることもある。
付き合いのいい彼に甘えてしまってはないかと自問したのは二度や三度ではない。
私が彼にしてあげられることなど、本当はなにもないのかもしれない。でも、何かしてあげたくて、私は彼に声を掛ける。彼の返事が欲しくて、声を掛ける。
きっと、私にできる彼への最大の気遣いは、この胸の想いを彼に伝えないことだ。
彼は優しいから、きっと困らせてしまう。彼が私を、一人の女性として意識してないのは誰よりも私が自覚している。
だから、私は『私』らしく振舞う。彼をからかうように、振り回すように、ゆる~く、意識されることのないように。彼のただの遊び仲間として。
シン 「……どうした
こなた?目赤いけど、寝不足か?」
(=ω =.) 「いや~、泣きゲーを徹夜でやっちゃって、もう眠くて眠くて……」
シン 「おいおい、ゲームもいいけどちゃんと寝ろよ。身体壊すぞ」
(=ω =.) 「シンは本当にやさしいね~(ナデナデ)」
シン 「子供扱いするなよ……俺より背低いのに」
(=ω =.) 「……と見せかけ、チョークスリーパー!」
シン 「こらこらっ、前に俺に負けたのを根に持ってるのか?」
こうやって、彼を抱きしめたいけど――今の私には、じゃれあいの中で刹那の抱擁を甘受するのが精一杯。
(=ω =.) 「な~んてね。じゃあ、出かけようかシン」
シン 「へいへい、付き合ってやるかよ。んで、どこ行くんだ?」
(=ω =.) 「それはね――」
貴方と一緒なら、1000レスまでも。
最終更新:2007年11月13日 09:13