「あーもう! 何でこんな問題を間違えるの!?」
怒声が響き渡る、放課後の教室。それが向けられている相手は…悲しくもオレだったりする。
今、オレはこのツリ目の少女に勉強を教えてもらっているのだが…正直、逆効果でしかない気がするのは気のせいだろうか?
まぁ、テスト前。オレはある教科を前に、大苦戦を強いられていた。
その教科とは日本史のことであり、オレが既に完全な苦手意識を持ってしまっていた教科だった。
他の教科なら概ね並以上にこなせる自信があるのだが、この教科だけはどうしても…そう上手くはいかない。
なぜかは分からないが、人名だとかを覚えることができないのである。
しかし、オレが苦戦しているのをどこで見ていたのかは知らんが…ここで助け舟を出してくれたのが、柊かがみだった。
「シン! アンタの日本史…私が見てあげてもいいわよ?」
確かに頼もしい言葉ではあったが…本心としては、一人で静かに勉強したかったので…できるだけやんわりとお断りしようと思っていたのだが…。
なんか赤いオーラを身に纏いながら、ゆっくりと近づいてくる柊を前にすると断ることもできず、俺は(ビビって)そのまま協力を要請することにしたのだった。
こうして、オレとかがみ先生の二人三脚による勉強が現在の放課後に至るまで続けられたのだが…その結果は散々なものとなった。
「ホント…こんな簡単な問題も解けなきゃ終わりよ? 少しは真面目に覚えようとしなさい」
「言っとくけど、オレはいつだって真面目だ! それに人間だもの、間違えることだってあるだろ?」
「だからって、私が作った問題の…この正解率は何? 何か言ってみなさいよ!!」
そう言って柊は、さきほどオレが答案を書いた問題用紙を見せつけてくる。正直、目を逸らすことしかできないんだけど…。
「目を逸らさない!これが現実よ! これには徳川の3代目将軍を『空条●太郎』なんて書いちゃう、アンタのバカさ加減が詰まってるのよ!」
「でも…●太郎は3代目だろ? それに時だって止められるし…!」
「全然関係ないでしょうに! 何をどう考えたら●太郎になるのよ!? もう…、ホントにバカなんだから…!」
わかっていただけただろうか? オレの日本史がいかにヤバイかを。正直、情けないかぎりだが。
「でも…まさかここまで日本史がダメダメなんて。これは、根本的な補修が必要ね…」
なんだよ、根本的な補修って…? なんか絶対にロクなものじゃないような――――!
…いや、補修というならオレにいい考えがある。この意見、通してみるとしようか。
「そうだ。その補修案だけど…アンタに先生をやめてもらうってのはどうk」
だが、ここまで言ってオレは怯んだ。
かがみ先生が、オレを凄い目で睨んできたから。
「そんなの…絶対ダメよ。私はやると言ったら絶対やるんだから」
闘志を燃やしてくれるのはいいんだけど…。
…アンタの存在がオレの勉強を阻害している可能性というのは――――…考えてくれないんだろうな、全く。
しかし、そろそろ夕方も終わりに近づいてきた。ここまで柊の怒声を聞き続けてきたためか、体にガタがきている。
「なぁ、いい加減…帰らしてくれないか? もう、体中が疲れ果ててるんだけど…」
「ダメ。少なくとも、あの空の夕焼け色が安全に消えるまではここで頑張ってもらうから」
柊は腕を組み、断固とした態度で俺に接してくる。コイツ…オレの頭を爆発でもさせたいのだろうか。
とりあえずここは省エネ省エネ。適当に覚えてるふりでもしてればいいだろう。
「あ、それと後でどれだけ覚えてるか、もう1回テストするんだから…いい加減な気持ちでやっちゃダメよ?」
「…………!!」
ちくしょう、こうなったらヤケクソだ…!!
んで、後もう少しで夕陽が沈むといった頃に…もう一度テストが行われることとなった。
「それじゃ、この問題を解いてもらうから。全部で20問よ。1問5点で計100点」
「わかった」
もうオレとて、そうそう失態を見せるわけにもいかない。この問題を作ったという柊の鼻っ柱、オレが叩き折っt
「それと、もし…///」
すると俺の思考を遮って柊がなんか言ってきた。その視線は泳いでいて、頬もどこか赤い。
さっきまでの先生としての態度はどこに消えた? ってか、まだ何かあるのかよ?
「この問題で7割正解できなかったら、アンタん家までいって特別補習してあげるから…///」
「……は?」
柊はなぜか俺から恥ずかしげに目を逸らしつつも…かなり、とんでもないことを言ってきてる。
それは、つまりアレか。いわゆる…
「そうよ。もしこの程度の問題で7割も取れないようだったら、私が付きっきりでアンタの面倒を見てあげないと…!
だから、そうなった場合…仕方なくアンタん家に泊り込んで勉強を教えてあげようって言ってるの」
コ…コイツ、何を言うだぁーッ! 正直…いらない、そんな補習ってかペナルティは! 逆効果にしかならねぇっての!
「じょ…冗談じゃない!! 俺は…帰ってゆっくりプラモでも作ろうと思ってたのに!! なんで帰ってまで勉強なんか…」
「な…何言ってんの。 まだ行くと決まったわけじゃないのよ。アンタがイヤだって思うなら…7割以上正解すればいいだけの話じゃない。
まぁ、この選りすぐりの問題が解けたらの話だけど(ボソッ)」
最後、柊が何を言ったのか聞き取れはしなかったのだが、そんなことはどうでもいい。…そう、7割以上取ればいいだけの話じゃないか。
こう言っちゃなんだが、オレは追い詰められれば追い詰められるほど…強くなれる、多分。
シャ●ザク製作時間の確保のためにも、俺の真の力…ここで思う存分、柊に見せつけてやるとしようか…。
で、アンタのその何故か真っ赤な顔を…悔しさで染め上げてやるさ!!
そして、オレが答案を書き終えた後、採点が行われていた。俺としては、手ごたえ…ありである。
そんでしばらくすると、採点を終えたらしい柊が…えらくニコニコしながら俺に問題用紙を見せつけてきたのだった。
「――――…はい、0点。泊り込み補習…決定ね」
「………………! そうか、こりゃ…参ったな」
ダメでした。
「…ってちょっと待て!! アンタ、ちゃんと採点したのか? 結構、自信があったのに!」
「アンタの自信なんて、所詮そんなモンってことよ。また珍解答の連続だったんだから。
それに気になることがあったんだけど、なんで答えが織田信長の所に私の名前を書いてるのよ?」
ああ、確かにアンタの名前を書いたが…その問の答え、オダノブナガとかいうヤツだったのか。なんて紛らわしい問題だよ。
「まぁ、どうでもいいけどね。じゃあ、そろそろ遅くなってきたし…行くわよ。…それにしてもアンタってホント、世話のかかるヤツよね///」
ここでどことなく、上機嫌に見える柊が席を立つ。ってか、行くってどこに? まさか…泉家?
「ちょ…ちょっと待てよ?泊り込みったってアンタ…?」
「…準備ならできてるわよ。ほら」
そう言うと、柊はどこからか黒い旅行カバンのようなものを取り出してきた。…なんか都合がいいというか、準備が良すぎるぞ。
「そりゃそうよ。だって始めからアンタん家に行くつもr――――…って、何言わせるのよ!!!」
なんか一瞬…聞こえてはいけないものが聞こえた気がするんだけど、気のせいってことにしておこう。
「それじゃ、
こなたと
そうじろうさんにはどう説明する――――ってダメか…」
そう、あの二人なら…柊を心よく迎え入れるのは目に見えている。どうする…?
「あ…安心して。寝るときはちゃんと、こなたの部屋に行くから…///」
そんなことはどうでもいいっての! とにかく、俺が言いたいことはただひとつだけだ。
「俺の部屋に脚を踏み入れるな! 俺はいいが、他はダメなんだよ! アンタはおとなしく国へ帰れッ!」
こうなったら、ストレートど真中。言いたいことは…はっきり言ってやる。たとえ相手が柊だろうとな。
だが、もはや何を言っても無駄なのか。逆に柊が俺に疑惑の視線を向け始めたのである。
「…もしかして、アンタ…私を部屋に入れたくない理由とかがあるんじゃないでしょうね?」
どうやら…いらぬ誤解を生んだようだ。柊は、少し怒ったような目付きで俺を睨み…そして
「つ…ついでだから、アンタの部屋の探索もしてみるとしましょうか。どうせ、その…イヤらしい本とかを隠してあるのが見え見えじゃない。
だから、全部…見つけ出して破り捨ててあげるわ。そ…そんなもの持ってること自体、許せないことなんだから!!」
アレ…? もはや勉強、関係ないだろ!? ってか、アンタにどんな権限があってそんなことをッ!
このままじゃ、折角そうじろうさんから授かったコレクションがァァァ!!
「ほら、つべこべ言わずにさっさと行くわよ///」
柊はソッポを向いているが、微笑んでいるのがよくわかる。そして笑顔のまま、俺の制服の袖を無理やり引っ張っていく。
つーか、なんでここまでしてくれるんだ? もう正直、はた迷惑でしかない。彼女はそんなに俺を苛めたいのだろうか。
こんなことしたって、柊には一銭も入らないというのに。
――――…いや、待てよ? 後で受講料とか取る気なんじゃないだろうか? ってか、そうに決まってる。
「痛いっての! とにかく考え直せ! 勉強とかいいから、俺を…もう俺を見捨ててくれッ!!」
何を言ようと、柊が俺の意見を聞く様子はない。
ただ、無力たる今のオレは…柊に引きずられながら泉家に行くことだけだったのである。
「シンのエロ本防衛戦」に続く…かもしれない
最終更新:2009年05月08日 04:41