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向こうで俺は『ラッキースケベ』なる不名誉な二つ名で呼ばれていた。
別に年がら年中、女性の胸を揉んでいた訳じゃない。
またまた青森湾で一度、通りすがりの女性がぶつかりそうになったのを支えようとして、胸を触ってしまっただけだ。
故意ではない、ただの事故だ。
たった一度の偶然だ。
だが、俺はその名で呼ばれ続けた。

まあ、そんな悪ふざけは日々作戦行動で緊張を強いられていた俺たちに許された唯一の人間らしい行動だったのだろう。
今になって思えば、そう納得できる。
アカデミーを出たてでいきなり始まった本物の戦争に遭遇した俺たちは、殺したり頃されたりの毎日の中で、 人間らしさを失う恐怖に震えていたのだ。
ふざけた振る舞いは俺たちが歳相応の人間らしさを失わないための拙い抵抗だったのだ。

血に塗れた自分の手がスケベの手、そんなギャップを笑わねばやっていけなかった。
プラントを守るため、なんて大義名分では人を殺す罪悪感を拭いきれなかったのだ。
俺たちはまだ、人を殺すことも、殺されることにも慣れていなかった。


こっちに来て、俺はゆる~くなったと言われる。
最近では自分でもそう自覚している。
彼女たちの会話に合わせて笑っている自分に驚かなくもなってきた。

注意力が散漫になってきたのだろうか? 
しばしば、彼女たちとぶつかりそうになる。
そんな時、俺は咄嗟に手を伸ばして接触を防ごうとする。
反射的にCQBやCQCを繰り出そうとするの物騒な防衛本能を押さえていると、何故か彼女たちの胸を触る結果になってしまう。
彼女たちは顔を真っ赤にしながらも『悪気はないのだから』と許してくれるが、俺はその度に自己嫌悪で死にたくなる。
女性は守るべき存在であり、俺みたいな血に汚れた奴が汚していい存在ではないのだ。
万が一のことがあったならば――俺は命にかけても彼女たちを守る。
向こうで大切なものを何度も守れなかった俺は、今度こそはと心に誓っている。

俺が不可抗力で彼女たちの胸を触ってしまうのを、こなたは『パルマ』と呼称している。
俺が向こうで使用していた兵器の名前すらも、こなたにかかれば不名誉な二つ名に過ぎないのだ。そのゆるさは見習うべきものだろう。


だが、思う。
こなたは俺の居候先の娘さんだ。
そのこなたが何故だか毎晩、いつの間にか俺の布団に潜り込んでいるのは年頃の女性として如何なものだろうか?
此方(こちら)ではそういう風習があるのだろうか?
いやいや、ないだろう。
此方(こなた)は何故、俺をそこまで信頼しているのだろう?
考えても、答えは出ない。
俺の硬い頭ではまだ答えを導き出せない。
もっと、ゆる~くならないと駄目なのだろう。

それはそうと、こなたが寝ぼけて何度も俺にキスしてくるのだが――このことはこたなの心証を察するに黙っていた方が賢明だろう。
こなたも年頃の女性だし、無意識とはいえ、俺なんかとキスしていると知ったらショックだろう。
ここは黙っておくのが最良の気遣いだ。
俺にもこのぐらいの気遣いはできるのだ。
逆に言うと、このぐらいの気遣いができるまでには歳相応さを取り戻せてきたのだ。
うん、少しゆる~くなってきたな、俺も。

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最終更新:2007年11月20日 10:31
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