アットウィキロゴ

5-225

「――!?」
目を閉じたまま、周囲の気配を探る。周囲に怪しい気配はなし。体内時計から推察するに午前2時。
そんな時間に不意に目を覚ますなんて――その原因を俺は眠った振りのまま探る。夜襲か?
いや、違う。俺は警戒を解いて、身体を起こす。部屋に存在する気配はふたつ。ひとつは俺、そしてもうひとつは――

こなた?」
俺の呼びかけに、窓脇の彼女が静かに振り返る。開け放たれたカーテン、窓から差し込む銀色の月光、そしてその中に彼女は佇んでいた。
膝まで届こうかという長い髪が揺れる。背中を隠すその髪の脇に見える彼女の腰を隠す布は見えない。いや、腰だけではない。肩にも腿にも夜着は見えない。
深く静かな月下の中、彼女は一糸纏わぬ姿で目を覚ました俺に向け、嬉しそうな笑顔を見せた。

「やっと、起きた」
そういって彼女は笑う。今まで起きなかった俺を批難するように。やっと気づいた俺に感謝を送るように。彼女はさも嬉しそうに笑った。
童女のような無垢の笑み。淑女のようなたおやかな笑み。娼婦のような妖艶な笑み。どう表現していいか、言葉を選ぶのは難しい。
だが、俺はその姿にただ見惚れた。『きれいだ』それ以外の言葉は嘘になってしまうと思った。そして、他の言葉を捜すより、彼女を見ていたいと思った。

「シン、私の心は既に貴方のものだから――私の身体を貴方のものに、して」
そういって彼女は俺の胸の身体を預けてきた。小柄な彼女の身体は軽かった。だが、その細さからは想像できないほどの弾力に満ちていた。
彼女が気にしていた薄い胸さえ、布越しでは知りえなかったやわらかさと女性らしさに溢れていた。咄嗟に受け止めた掌が、指が肌に沈む。胸が形を変える。
その女性らしいやわらかさと、心底嬉しそうな腕の中の彼女の笑顔に、俺は心の底から彼女をいとおしいと思った。だから、彼女の髪ごと、ぐっと抱き寄せた。


(=ω =.) 『そして、俺は艶めかしく濡れるこなたの唇を……(カタカタ)』
シン   「な・に・を・書いてるんだ、お前は?(がしっ)」
(=ω =.) 「いだだ……シン、頭へのパルマ禁止ぃ~割れる、割れるよぉ~(めきめきめき……)」
シン   「そんな文章を書くのも禁止だっつ~の(ぎりぎりぎり……)」
(=ω =.) 「シ、シン~、痛いよぉ~(みしみしみし……)」
シン   「痛いか、その痛みはそんな文章を書かれて、挙句の果てにネット越しで全世界に公開されそうになった俺の心の痛みだ(シャイニング~)」

(=ω =.*) 「シン~、パルマするなら私の胸にしてよぉ~。できればやさしく……ね?(ぽっ)」
シン   「……お前な~、二人の秘め事を人様に公開するなよ」
(=ω =.) 「いや~、シンと身も心も結ばれたと思うと嬉しくて嬉しくて……かがみたちに電話したかったんだけど、深夜だから止めたんだよね~」
シン   「だからって、ネットの掲示板に書き込むこともないだろうが?」
(=ω =.) 「まあ、そうなんだけどね~。ここの『年下の男の子が居候しますた』スレの人たちには世話になったから、つい……」
シン   「だからって、詳細に書き込むことないだろうが?しかも、俺の一人称で」
(=ω =.) 「いや~、そっちの方がスレ住民には受けるかな~と思ってね」
シン   「つーか、なんか服着ろよ。裸のままでPCに向かうなよ」
こなた  「ゴメンね、シン。大好きな貴方を放っておいて、他の男の人に気を使っちゃって……」
シン   「そんなのいいから、ほら……こっちこい、身体冷えるぞ」
こなた  「……はい(もぞもぞ)」

シン   「もうそろそろ明け方か……夏休みでよかったな。流石に今日は7時起きはつらいな」
こなた  「起きたら……お父さんに報告しないとね」
シン   「ああ、そうだな……『絶対しあわせにしますから、娘さんを俺にください』って言わないとな。」
こなた  「シン、私はもうしあわせだよ……」


『そうして私とシンは結婚を前提にした恋人同士に――(カタカタ)』

「――止めよう、こんな妄想文を書いても悲しくなるだけだね(プチッ)」
私はため息ひとつついて、テキストを保存もせずにPCの電源を落とした。
私が同人作家ならば、この胸の思いを原稿にぶつけて本にするところなのだろうが、生憎私は消費する側の人間だ。
叶わぬ思いを文に綴っても、切なさと悲しさが募るばかりで何も満たされそうになかった。

シンと結ばれる文章を綴っても、現実は何も変わらない。むしろ、シンとの距離を自覚するだけで辛いばかりだ。
結局、思うだけでは何も解決しないのだ。まあ、分かっていたことだが、心が重い。
この胸の想いはシンに伝えなければ、なんにもならないのだ。原稿用紙に、掲示板にぶつけても解決しない。ただ、辛くなるだけ。

でも、シンに想いを打ち明けてもし、受け入れなかったら――それが怖くて、私は今日も臆病なまま。ゆる~い、曖昧な態度を取り続けている。
シンとの距離を3センチに保てば、触れることはできなくても、触れて火傷をすることもないのだ。曖昧3センチはゆる~い距離なのだ。
シンの同居人として、物理的な意味でも、心情的な意味でも一番近くにいるのは私だろう。だけど、私は一寸先は闇から進めずにいる。

「こなた~、まだ起きてるのか?」「あ、シン、もう寝るよ~(=ω =.)」
自室で思い悩んでいた私を、シンが気遣ってくれる。そのやさしさが嬉しくて、同時にちょっと悲しい。シンにとって、それは特別なやさしさではないのだから。
私はシンを愛している。愛していると伝えたい。愛していると言って欲しい。愛して欲しい。愛し合いたい。愛を確かめ合いたい。
でも、私は今日も告白できないまま。

シンの布団に潜り込んで、シンのぬくもりに触れながら眠りにつく。こんなに近いのに、その距離をゼロにはできない。
シンは紳士だから、事故でもない限り私には指一本触れようともしない。だから、私から打ち明けるしかないのに――その勇気がもてないまま、今日が終わる。
曖昧3センチ。その距離は吐息がかかるほどに限りなく近く、その距離はこの胸の鼓動が伝わらないほどに果てしなく遠い。

 戻る 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年11月20日 12:44
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。