「ん……?」
なにやら寝苦しくてシンは目を覚ます。枕元の目覚まし時計に目をやると、針は午前2時を指していた。
「……はぁ……」
寝苦しさの原因を探し求めて視線を動かす……視界の端にその「原因」を捉えて、思わず彼はため息をついた。
羽織ったタオルケットの中に、何か大きなものが潜り込んでいた。無言でタオルケットをまくる。
「……毎晩、毎晩、こいつも飽きないな」
そこでは眠ってる間に入り込んできたらしい少女……泉こなたが眠っていた。
「ほら、
こなた。寝るなら自分の部屋で……?」
そこでシンは様子がおかしいことに気づいた。
いつもの彼女ならシンの腕に抱きついているか、股間のあたりに無理矢理頭を乗せているか、あるいは上下逆さまにひっくり返ってよだれを垂らしているかのどれかだったが、この日のこなたは違った。
まるで寒さに耐えるように、あるいは自分の体を守ろうとするかのように、己の五体をかき抱いていた。
「……こなた?」
「……お母さん……」
シンが問いかけると、こなたが静かにつぶやいた。同時に、そのほほを涙が一筋伝う。
そう言えば、
かなたさんの命日が近いんだったなと、今更のようにシンは思い出した。食卓でその話題が出たときは平気な顔をしていたこなただったが、実際平気なはずがない。
(無理をして……
そうじろうさんの前でぐらい、泣いたっていいだろうに)
シンはほんの少しいらだった。そして、彼女の内心を読み取れなかった自分には、それ以上の怒りが湧いた。大切な家族を失ったという点では、彼もこなたも同じだったからだ。
(同じ体験をした俺がわかってやらないで、どうするんだよ……)
四六時中一緒にいる女の子の心情一つ読み取れない自分に苛立ちながら歯がみする。
「おかあ……さん……」
こなたの寝言で現実に引き戻された。今や目は涙でいっぱいになり、自身の体を抱いていた両手は、今は亡き母を捜し求めてさまよっていた。
ふらふらと左右に振られている右手を、シンはそっと握りしめる。すぐさまこなたは、それを引き寄せて抱きしめた。
「……一緒、だよ……」
泣き顔から安らかな寝顔になったこなたを観て、シンはほほえんだ。
自分の血塗られた手で代わりになるのなら、それでよかった。
「おやすみ、こなた。いい夢を」
今は隣で寝息を立ている少女の安らかな眠りを願って、シンはまぶたを閉じた。
最終更新:2007年11月24日 21:42