秀才と双子
byおもらし中尉
輝く太陽
活気有る学び舎
清楚たる生活
そしてすすり泣く少女
少女の名は泉こなた、こんななりだが中身は立派な高校生だ
その泉こなたは3年B組の教室では格別の待遇を得ていた
御他聞にもれず『いじめ』られていた
理由は何故だろうか?
何故だろう?
「どうして苛められているか解らないといった様子ですね?」
「そうね★」
「そだね☆」
こなたの前に立つのは長い髪を美しい手で撫で下ろす学級委員の高良みゆき
眼鏡の奥に秘めた青い瞳は優しい眼差しをこなたに向けていた
そのみゆきを挟む様にして並ぶ二人
右を担うのは腰に手を当てて常に臨戦態勢の柊かがみ
ツインテールの釣り目のは強気の象徴である口元をへの字に曲げてこなたを蔑む
左で薄笑いを浮かべて口元を両手で隠すのは柊つかさ
黄色いリボンと小動物的な雰囲気が象徴的だが、そのしたたかさはこなたを疎む
学級委員と二人の姉妹に囲まれて、泉こなたは涙を浮かべ、床にへたり込んでいた
「なんで苛めるの?」
数日前まで…いや数週間前、数ヶ月前?
あの楽しかった四人での生活が、一体いつ終わりを迎えたのかすらも記憶が定かではない
ましてや二クラスの中心人物に目をつけられて、学園生活は三年生にして最悪なものと変貌していた
「それは貴女が人間の屑だからですよ、可愛い泉さん」
「そう、アンタはこの世の屑の中の屑なのよ★」
「こなちゃん凄いね~、喋る屑だなんて☆」
これがかつての友人に向けられた言葉だとはとても思えない
周囲の反応は、おそらくそれが正常なのだろうが…
このクラスは違った
いつもの風景だ
白石が意味もなく掃除用具入れを明け
窓際のミクルに似た生徒は虚空を見つめ
変な頭の不良は机にふんぞり返っている
これがこのクラスの日常である
しかるに、こなたの目の前に散らばった大量の吐瀉物…
これも日常の風景なのである
「高良さん、ボディブロー3発ってこんなもんでいっすか?」
「俺らもスッキリしたし、これで泉の体が使えたらもっとすっきりするのになぁ」
こなたは「まさか」といった表情で男子のいやらしい視線に怯える
「いいえ、いけません。学生同士での性行為は校則で禁止されていますので、あしからず」
「ま、一応お礼は言っておくけどね★」
「どうしてもってなら、こなちゃんを彼女にしたらいいよ☆」
「ちぇ、まぁ いいけどよ」
「彼女には…ねーわw行こうぜ~」
こなたは少しホッとした、しかしこの状況に救いなどあるのだろうか?
クラスの男子生徒たちにすら屑扱いのこなたはお腹を押さえて震えた
チョココロネと牛乳、そして胃液の匂いが鼻を付く
「あら、こんなに汚してしまって…いけませんね」
「そうね、それじゃあ…そこのあんた達★」
「お掃除お願いしまーす☆」
「あ、はーい」
「せーの!」
じゃばあああ
「びゃあああ!!」
バケツに入った灰色の水がこなたに向かってかけられた
言わずとも、こなたは汚水にまみれて顔を歪ませる
「お二人ともおドジさんですね、床でなく泉さんに水がかかってしまいましたよ」
「仕方ないから、こなたが雑巾になって床を拭きなさいよ★」
「駄目だよ、こなちゃんは屑だから雑巾にはなれないんだよ☆」
「あ~、泉さんごめんね~」
「ほら、髪の毛がこんな…」
ビシ!
「きゃ!」
予想外のこなたの反撃に少女Aは弾かれて少女Bにぶつかる
少量の飛沫が舞い、こなたの目に憎しみが浮かんだ
みゆきはこなたに近づいて、自分のスカートの裾を摘んで見せると
突然こなたの頭を踏みつけて、長い髪で床の吐瀉物をふき取らせ始めた
「泉さん、汚水の飛沫でスカートの裾が汚れてしまいましたよ。弁償しますか?」
「あんた最低の屑ね、友達の制服を汚すなんて★」
「ついでに空気を汚すのも止めてくれないかな☆」
「くうう……」
少女Aと少女Bはこなたの両手を掴み、反撃を阻止している
こなたはその内、痛みと悔しさ、そして悲しみで大声を上げて泣き出す
そうするとこの時間のイベントはこれで終了し
何事もなかったかのように机も床も綺麗にされる
あとに残ったのは体中に異臭を漂わせた『人間の屑』である
どうして苛められ始めたかなんて、覚えていない
というか、そんな理由が本当にあるのだろうか?
空気が読めてないから?
頭が悪いから?
もしそうなら入学当初からいじめられていた筈だろう
友達なんか出来なかっただろう
そんな事を考えていたらまた次のイベントの時間が始まった
今度は机をすべて前に移動して教室は大掃除の様になっている
こなたを後ろの黒板付近に立たせドアは封鎖された
「さあ、では班対抗のダーツゲーム大会を開催いたします、主催は私、高良みゆき」
「サポートは私、柊かがみ★」
「マネージャーは私、柊つかさ☆」
「さあ、それでは各班はラインに並んでください」
『ヨーイ……はじめ!!』
わーわー
やんや やんや
「いた!やめてぇ!!」
三人の掛け声につられて、ペンやカッターナイフ、石までがこなたの体目掛けて投げられる
「顔は駄目ですよ~」
「狙うならお腹か肩にしなさいよ、服で痣が隠れるから★」
「脚を狙ったら、下着が見えるかもよ~☆」
「いだ!うげえ…あ!!」
こなたの体には無数の小さい刺し傷が見え始め
腕や脚にも痣が見え始めた
石が脚を捕らえ、転倒するや否や男子は下着を覗き込み「いえー!」と叫ぶ
女子の投げたカッターナイフは的確にこなたの髪を刈り取っていく
「やめて!!許してぇ!!!」
こなたは床に倒れこんでガタガタ震え始めた
みゆきは口元を押さえてニコニコ笑い、時計を見た
「はーい、ここで一旦終了します」
「はい、そこ投げない!★」
「じゃあ、皆でダーツを拾いにいきましょう☆」
クラスの全員がこなたの周りで自分たちが投げた物を拾っている
「泉のパンツ何色だった?」
「ん?ああ、ピンクだったぜぇ~へへ」
「あれって最近結構人気のデザインなんだよ~」
「そうなのか、じゃあまさかお前もかよw」
「や、エッチ~♪」
すすり泣き、体を抱くこなたに目もくれず
クラス内は談話に包まれている
「では皆さん、ラインに戻ってください」
「はいはい、さっさと動く~★」
「そこの男子、ドサクサにまぎれて体操服盗まな~い☆」
「さあ、では皆さん張り切って二回戦に突入です」
「みんな頑張ってね★」
「点数は付けてないけどね~☆」
そして、横たわるこなたは更に傷だらけになった
あくる日の午後、日常の光景
「あらあら、いけませんね泉さん利尿剤は残さず飲んでください」
「そうよ、こなた」
「そうだよ、こなちゃん」
「うう・・・・・」
こなたはみゆきに無理やり利尿薬を飲まされる
かがみはとつかさはこなたの手足を掴み、鼻を摘んで笑っていた
「いい飲みっぷりですね、ウジ虫さん」
「こなたにお似合いね★」
「そーだね、ウジ虫さんらしいよね☆」
「うっぷ…げえ…うええ」
「いけませんよ、吐き出さないでください」
「おっとと、駄目じゃないのこなた★」
「さあ、みんな出口を塞いで~☆」
三人はこなたを羽交い絞めにしながら窓際に連れて行く
「うう…口の中が苦いよ…」
みゆきは時計を見た
秒針が進み、時計は時を刻む
薬品はこなたの血液に乗って全身を駆け巡り
己の効果を存分に発揮する体制に入った
「い…ちょっと!離して!!いやあぁ!!!で、でちゃう!?」
「あら、何が出ちゃうんですか?」
「そうよ、出ちゃうじゃ解らないわよ?★」
「中から別の生き物が出てきちゃうとか?☆」
「お、オシ…オシッコが出ちゃう!!」
こなたは体をバタつかせるが三人はこなたを離さない
「何を言ってるんですか、利尿薬をのんだからってそうそう出ませんよ」
「そうよ、だって利尿薬っていうのは健康に良いのよ★」
「そうだよ、だから体から出すのは勿体無いよぉ☆」
「やめて!!離してよ!!!ひい…あ…がああああ!!!」
こなたは目を向いて三人を振り解こうと必死にもがく
「しかた有りませんねえ」
「そうね、仕方ないわね★」
「しょうがないなぁ☆」
三人が同時に手を離すと、こなたは勢い余って無様に転ぶ
床に打ち付けられたせいで「ぐええ!」と悲鳴を上げながらも
こなたは股間をしっかり押さえて起き上がる…が
「うう…」
ドアの前にはクラスメイトが人の壁を作っていて進めない
「どいて!どいて…ぎゃあ!!」
こなたがドアに駆け寄ろうとした瞬間、男子生徒がこなたのお腹を蹴飛ばす
こなたは苦悶の表情を浮かべてのたうち、またも起き上がる
今度は隅の女子生徒がほうきをこなたに投げつける
続いて塵取り、雑巾、バケツ…
「いだ!…やあ、やあああ!やめて、漏れる、漏れるぅぅぅぅ!!」
今度は数人の男子生徒が必死に耐えるこなたを捕まえ
両手両足を掴み、観音開きの形にして窓際に連れて行った
図らずとも、こなたの照準は校庭に向けられる
校庭には数十、いや数百人の生徒の視線
「いやあ!!離してええ!!」
「わっしょい!わっしょい!わっしょい!」
男子たちはこなたを高く掲げて神輿の様に揺らす
定期的な振動により尿意は波となってこなたを襲う
『わっしょい!わっしょい!わっしょい!わっしょい!』
掛け声は、掛け声を呼び
男子たちからクラスメイト全員へ、そして廊下、校庭
全ての人が見守る中で泉こなたの糸が切れる
「見ないでええええええええええええええ!!!!!」
ブッシャアアアアアアアアアアアアアァ!!
窓のさんや校庭からはビチャビチャと飛沫が上がり
教室や校庭からは歓声が上がる
「蛆虫~!」
「サイテー!!」
「おお~最高の眺めw」
「ざまーw」
「こなた様!!」
「神降臨!」
まだまだ続く、途切れることを知らない黄色い架け橋は中を仰ぎ
そして、虹を描く
かつてこれほどまで大規模な排尿行為が有ったであろうか
永遠に続くと思われたこなたの黄金水の鎖がピチャピチャと雫を垂れる頃
こなたの顔は涙で濡れていた
そして辺りは、もとの日常に戻る
まるで何も無かったかの様に平静に戻る
「はい、では皆さん片付けましょう」
「そうね、祭りも終わった事だし★」
「くさいね~☆」
「ううえええええええええ!!あああああああああああ!!!」
片付けの最中もこなたの泣き声はコダマした
誰も気に留めない大声であった
翌日、こなたは学校の屋上から飛び降りてこの世を去った
恨みを込め、周囲を地獄に落とす為に書いた遺書は
担任の黒井ななこによって破り捨てられ
こなたの机は物置へと変わった
無残にも体の骨が砕け、ハラワタがはみ出した死体は丸一日放置され
この世の未練を恨んで空を睨む瞳がカラスについばまれる頃
この学校に古くから勤める用務員によって下水のマンホールに捨てられた
後日、マンホールを取り囲むのは高良みゆきと柊姉妹の三人
みゆきは白い油性ペンでマンホールの蓋に『蛆虫の墓』と達筆でしたためる
「これで泉さんも安らかに眠れる事でしょう」
「そうね、屑こなたにはお似合いの最後だったわね★」
「………何言ってるのお姉ちゃん☆」
「え…?★」
みゆきはニコリと笑うとかがみを優しく見据える
「こなたさんが居なくなってしまったので屑は…かがみさん、貴女ですよ」
「だよ☆」
END
最終更新:2024年04月25日 21:01