『作家・泉そうじろう』


by (≡ω≡.)神奈川

担当「余り芳しくないですね。」
そうじろう「そうですか…… 自信作だったんですがね。」
担当「ファンからは星羅鬼シリーズの続編を望む声が多いのですが、書いていただけませんか? 」
そうじろう「何度も言ってるけど、あのシリーズは終わったんだよ。」
担当「そこをなんとかなりませんかね? 先生のデビュー作でもありますし。」
そうじろう「一応、考えておくよ。」

「おかえり~ (≡ω≡.)」
ゆたか「おかえりなさい。」
そうじろう「ただいま。おっ! 今日のご飯はハンバーグか。美味しそうだな。」
「私が腕によりをかけて作った花丸ハンバーグだよ~ (≡ω≡.)」
そうじろう「それじゃ、いただきま~す。」
そうじろう「モグモグ…… ところでこなた、確かそろそろ模試の結果が返される頃じゃないのか? 」
「!! Σ(≡ω≡.;)!」
そうじろう「父さん、ちゃんと覚えてるぞ。夕飯終わったら見せろよ。」
「は~い。(≡ω≡.;)」

そうじろう「はぁ…… 覚悟はしていたが、いくらなんでも酷すぎるな。」
「今回は調子が悪かっただけだよ。そろそろ本気出すし。 (≡ε≡.;)」
そうじろう「本気出すって、もう何月だと思っているんだ! 」
「え、えと……月。 (≡ω≡.;)」
そうじろう「聞こえないぞ。言いたくないなら教えてやる。」
そうじろう「11月だ。もう11月だぞ! 今から本気出して受かると思っているのか! 」
「でもさ、私一夜漬けとか得意じゃん。いつも学校のテストもどうにかなってるし、今回もその要領で…… 」
そうじろう「あのな、どんだけ範囲があると思っているんだ? 一晩で出来るほど狭くないし、大体学校のテストみたいに何日かに分けて受験するんじゃないからな! 」
「マジッ!? Σ(≡ω≡.;)!」
そうじろう「……」
そうじろう「これだけは言っておくが、浪人は許さん。高校卒業したら生活費を家に入れてもらうからな。」
「ええっ! いきなりなんで!? Σ(≡ω≡.;)!」
そうじろう「お前を遊ばしておけるほど家も裕福じゃないって事だ。」

そうじろう「(……とは言ったものの、あの様子じゃ浪人は確定だな。)」
そうじろう「(まったく、誰に似たんだか…… んんっ? )」
そうじろう「あれ? ゆーちゃん。何しているんだい? 」
ゆたか「叔父さん! ごめんなさい。勝手に入っちゃって。」
そうじろう「いやいや、別に良いんだけど…… それは、僕の本? 」
ゆたか「はい。叔父さんのデビュー作です。ちょっと借りて読んでたんですけど、駄目でした? 」
そうじろう「ははは、むしろ大歓迎だよ。どうだい? 感想があったら聞かせてくれないか。」
ゆたか「そ、そうですね…… 中性的って言うか、凄く優しい感じの作品です。なんか、こう、女性みたいな。」
そうじろう「作者がこんなオジサンで幻滅したかい? 」
ゆたか「いえいえ、むしろ叔父さんって凄いんだな~ ってビックリしました。それで、良かったら他のも借りて良いですか? 」
そうじろう「どうぞどうぞ。こんなので良ければ好きなだけ。」


「むふふ~♪ (≡ω≡.)♪」
「やっぱラグナは面白いね~ (≡ω≡.)♪」
そうじろう「こらっ! こなた!! 」
「ひっ! お父さん。なんで居るの? Σ(≡ω≡.;)!」
そうじろう「さすがに勉強してると思ったが、やっぱりサボってたな。」
「違うよ。息抜きだよ。もう少ししたら勉強始めるつもりだったんだよ! (≡ω≡.;)」
そうじろう「ったく、言い訳無用! こんなのがあるから勉強がはかどらないんだ。パソコンは受験が終わるまで没収な。」
「ちょっ! ちょっと待ってよ。それじゃ、調べ物とかどうするの? Σ(≡ω≡.;)!」
そうじろう「辞書があるだろ。1年生の時に買ってやったのが。」
「で、でも…… (≡ω≡.;)」
そうじろう「ほら、さっさと勉強始めなさい。」

「ただいま~ (≡ω≡.)」
そうじろう「おかえり。」
「……お父さん! 部屋にあった私の漫画は!? 同人誌は!? フィギュアは!? Σ(≡皿≡.#)!」
そうじろう「全部レンタル倉庫に入れてきたぞ。どうだ、勉強するしかなくなっただろ? 」
「馬鹿っ! この馬鹿親父! (≡皿≡.#)」
バシッ!
「痛っ! くっ…… うっうっ…… ひっく…… (TωT.)」
そうじろう「こうなったのはそもそもお前のせいだろ! 全然勉強しないで遊び呆けやがって、どうするんだ? ああっ? 」
そうじろう「Fラン行くのか? 就職は? まさかコスプレ喫茶に就職するとか声優になるとか馬鹿な事言わないよな!? 」
「そんな事言われても…… 大体! お父さんの本がもっと売れれば私が将来の事考えなくてもすんだんだよ! 悔しかったら面白い作品書いてよ! ヽ(≡皿≡.#)ノ」
「知ってるよ? 最近売れてないんでしょ。まぁ、娘が読んでも面白くないんだから仕方が無いよね~ くふふ…… (≡∀≡.)」
バシッ!
「二度もぶった! (T皿T.#)」
そうじろう「……出て行くか? この家。」
「…… (≡ω≡.;)」
そうじろう「分かったなら部屋に戻って受験勉強しろ。ほらっ! 怒鳴られたくなかったら急げ! 」

そうじろう「(こなたの奴、部屋の中で泣いてるみたいだな。さすがに殴るのはやりすぎたかな…… )」
ゆたか「叔父さん。」
そうじろう「あっ、ゆーちゃん。なんだい?」
ゆたか「これ、借りてた本です。ありがとうございました。」
そうじろう「どういたしまして。どうだった? 感想聞きたいな。」
ゆたか「う~んと、ちょっと展開が急だったかな? あと、最後の盛り上がりもちょっと…… でも、面白かったです。本当に。」
そうじろう「辛辣な意見ありがとう。次回作の参考にさせてもらうよ。」
ゆたか「それと…… 星羅鬼シリーズって書かれないんですか? 」
そうじろう「ええっ! 」
ゆたか「叔父さんの書かれた作品の中では一番気に入ったんですけど、最近書かれていないみたいで…… 」
そうじろう「あれは、もう完結したんだよ。ごめんな。期待に答えられなくて。」
ゆたか「そ、そうなんですか。」
そうじろう「それじゃ、俺は仕事があるから。」
ゆたか「はい。頑張ってください。」

そうじろう「星羅鬼、星羅鬼ってどいつもこいつも…… 書ければ苦労しないんだよ…… 」


担当「先生。今度の新刊、出足不調ですね。 」
そうじろう「そうかい…… 」
担当「まぁ、まだ発売して1ヶ月しか経ってないので分かりませんが、この調子が続きますと編集部としてもその…… 」
そうじろう「星羅鬼、考えてみるよ。」
担当「本当ですか!? 良かった~ ファンも待ってますよ。先生の星羅鬼シリーズ新刊を。」
そうじろう「アイデアまとまったら連絡するよ。」

そうじろう「(はぁ…… 星羅鬼か。今更書けと言われてもな…… )」
そうじろう「ただいま。」
「おかえり~ (≡ω≡.)」
そうじろう「こなた。もう帰ってきたのか。早いな。」
「うん。今日の午後は希望者だけの共通模試だからね。 (≡ω≡.)」
そうじろう「そうか…… って、なんでお前受けてないんだ! 」
「私? 良いの良いの。受験止めたから。 (≡ω≡.)」
そうじろう「はぁ? 」
「私ね。小説家になるの。ラノベとか結構数読んだし、やっぱりお父さんの娘じゃん? 結構才能あると思うんだよね。『美少女小説家爆誕!』ってどう? ヽ(≡∀≡.)ノ」
そうじろう「ふざけるな! お前小説家をなめるなよ? 」
「余裕だって。リアル鬼ごっことか恋空でも売れるんだし、第一お父さんでもなれるんだからね。アハハ! ヽ(≡∀≡.)ノ」
そうじろう「貴様っ! 」
「く、苦しいよ…… 離して…… (≡皿≡.)」
そうじろう「俺がこんなに苦労しているのに、貴様は…… 誰のせいでこうなったのか分かっているのか! ええっ!? 」
「お願い、許して…… ガハッ…… (≡皿≡.lll)」
ゆたか「ただいま~ あれ? 誰も居ないのかな…… 叔父さん! 止めて。お姉ちゃんを放して! 」
そうじろう「ああっ! 」
「ゲホゲホ、ゲホッ ハァハァ…… (≡ω≡.lll)」
ゆたか「お姉ちゃん。大丈夫? 何があったの? 」
そうじろう「ああっ、ああっ……あ~~~!! 」
ゆたか「叔父さん! 」

そうじろう「ははは…… もう限界だな。遅かれ早かれ俺は破滅だ。」
そうじろう「まぁ良い。あんな親不孝者と暮らすのも飽き飽きしてた所だ。死ぬのも悪くない。」
そうじろう「かなた、今から行くよ…… グッバイ。」

ゆたか「キャ~~~~~~!! 叔父さん! 」


告白

私の作品『星羅鬼シリーズ』、実は私が生み出したものではない。
あれは亡き妻、泉かなたによって書かれた作品である。
この罪、私の死を持って償いたい。

ただ、怨むべきは一人娘の泉こなた。
アイツさえ生まれなければ、夫婦二人いつまでも幸せに暮らせていけただろう。
それだけが恨めしい。

泉 そうじろう


「そんな…… 私は要らない子なの? 生まれてこなければ良かったの? (≡ω≡.lll)」
「嘘だよ。そんなの嘘だよ! ねぇ? お父さん!! (≡ω≡.lll)」
「うわ~~~~!! ヘ(T皿T.)ノ≡≡3」

『東武線、ダイヤが大幅に乱れております。当駅で振り替え運送を行っておりますので、駅係員に――』

(終)
最終更新:2025年02月24日 09:46