2年の秋

by 兵庫県

2年の秋のことだった。
私はいつものように、普通に、普段と変わらず登校した。
……はずだったのだが、バスの遅れで遅刻してしまった。
ガラッ
「せんせー!!!遅刻じゃないです!今回はまじで遅刻じゃありません!バスが遅れて…」
「わかったわかった。はよ席つきい。」
「おおっ!さすが先生!心が広い!!」
そう言って席に向かう。途中何故か皆に見られてるような気がしたが、気のせいだと思い、無視した。
「ふう……ん??」
ふと自分の机の異変に気づく。
そう、教科書が全て無くなっていたのだ。
(あれ……?なんで無いんだろ……持って帰った覚えはないし……)
「せんせー!!私のきょうk…」
「なんや??遅刻見逃したったのにまだ何かあるんか??以上!HRは終わり。」
先生に聞こうとしたが、阻止された。
(なんでだろ……?あとでつかさとみゆきさんに聞いてみよっと。)


キーンコーンカーンコーン
一時間目終了のチャイムが鳴る、と同時に、私はつかさとみゆきさんの席に向かった。
「つかさ~~~!みゆきさ~ん!おはよ~~~」
「あっ……おはよう。こなちゃん。」
「……おっおはようございます、泉さん。」
ん??なぜか二人とも少し様子が変だ…と思いつつ、聞きたい事を話す。
「あのさあ~~聞いてよ~~。私の教科書が無くなっちゃったんだよねえ。だからさっきはずっと筆箱で机隠してたんだあ。二人とも知らない??」
二人は何故か私に視線をあわさず、ぶんぶんと首を横に振った。
「そっかあ。なら仕方ないなあ…じゃあかがみんのとこに行くかな。」
つかさが何故か顔をしかめたような気がしたが、私は気にせずかがみの教室に向かった。

「かがみ~~~~!!」
教室のドアのところでかがみを呼ぶ。
「?こなた、どうしたのよ。」
「あのさあ~~~聞いてよかがみん~~。朝きたら何故か私の教科書が全部なくなってたんだよ~~かがみん知らない??」
「はあ!?それかんっぜんにイジメじゃない!!許せないわ!!こなた、私も探すの協力してあげるから、一緒に探そ??」
「かがみ~~!さすが私の親友だよ~~~」
私はかがみに抱きつく。
「///ちょ、ちょっと!みんなの前でやめてよ!恥ずかしいじゃない//」
「も~~う、かがみんはいちいち可愛いんだから~~~。じゃあ、昼休みにまたね!」
「わかったわ。それまでに先生とかに聞いておくわね。」
用件を終えた私は、トテトテと小走りで教室に戻る。
結局昼休みまでは、全て寝てすごした。

昼休み。私達はいつものように一緒にごはんを食べる。かがみは何故かまだ来ていなかった。
「つかさ~~~~!みゆきさ~~ん!ごはん食べよ~~~!」
つかさとみゆきさんを呼ぶ私。
「…………こなちゃん。私達用事があるから。じゃあね。」
「そうですね。では失礼します。泉さん。」
「えっ……ちょ……」
二人は私と目も合わせず、スタスタと教室を出て行ってしまった。
「ちえっ。しょうがないなあ……かがみんがくるまで一人で食べるかな。」
そう言って私は机に弁当を出し、一人で食べ始めた。
(つかさとみゆきさん……なんか変だったなあ?なんでだろ……)
そんなことを考えて食べていると、男子が数人声をかけて来た。
「おい!泉。」
「??」
私が顔を上げると、3名の男子が私の机を囲んでいた。
「ど、どうしたの??」
少し驚いたが、私は物怖じせず喋りかけた。
「どうしたのじゃねえよ。お前、朝教科書無かっただろ。」
男子達がくすくすと笑う。
「!??なんで男子達が知ってるの!?まさか男子達が…!」
「ちげーよ。俺達はお前の教科書が焼却炉に捨てられてるのを見ただけだよ。」
「!!!!えっ……」
言葉が出てこなかった。誰がそんなひどいことを……私は聞いてみた。
「だ……誰がやってたの??」
怒りに震える声で私は聞いた。
「ん??それは言えねえなあ。金もらってるからさあ。」
ハハハッと男子達が笑う。教室のギャラリー全員が好奇の目で私達を見ていることに気がついた。


「んじゃ、そういうことだから。」
男子達が自分の机に戻っていくと、ギャラリーもざわざわと皆続きを食べ始めた。
(一体誰が……まさか……)
考え込んでいると、かがみがようやく現れた。
「おっすこなた!!……あれ?つかさとみゆきは??」
「それが二人とも用事ある~とかいってどっかいっちゃたんだよ~~それより聞いてよ。私の教科書全部、燃やされちゃったみたい」
「!!!!????」
かがみは予想通りの反応をする。
「なによそれっ!!もうそれは犯罪のレベルよ・・・・私もクラスの子に聞いてたんだけどね、みんな口を揃えて「知らない。」って言うの。だからわからなかったんだけど…まさか…そんな…
犯人は誰か分かってるの??」
かがみは怒り狂っていたが、表に出さないようにしているようだった。
「それがね…わかんないんだ…」
「ほんとに許せないっ!!私、そういう陰湿なイジメって大っ嫌いなの!!こなた、まけちゃダメよ。私がついてるんだからね。」
「ありがとかがみん……!!うわあああああん……!!」
私はかがみの優しさに、思わず泣いてしまった。
「大丈夫よ。それじゃあ少しつかさとみゆきを探してくるわ。二人なら何か知ってるかもしれないから……!」
「うん。じゃあ私は少し中庭でぶらぶらしとくよ……」
言い終わるとかがみはすぐに教室から走って出て行った。

かがみ視点です。



「ほんと…許せない……!」
私は怒り狂っていた。つかさとみゆきは多分屋上にいるだろう。何故かそんな気がする。
走って屋上に向かうと、案の定つかさとみゆきが弁当を食べていた。
「つかさ……!みゆき……!はあはあ……」
「あ、お姉ちゃん。どうしたの?そんなに息切らしちゃって。」
「つかさ……あんた、こなたの教科書知らない??」
「あはは♪こなちゃんのかは知らないけど、名前も書いてなかったのは全部燃やしちゃったよ~~♪」
「!!!!!」
まさか……つかさが……そんな。
とそこへみゆきが割って入る。
「あれは泉さんのだったんですか。名前も書いてないからこういうことになるんですね。泉さんらしいです。」
「!!ふざけないでよっ!!あんた達何してるか分かってるの!!!」
「お姉ちゃん熱くなりすぎだよ~~~どんだけ~~~♪燃やしちゃったものは仕方ないよお~~♪」
「確かにそれはありますね」
…………信じられなかった。実の妹と親友が犯人だなんて。私はへなへなと座り込んだ。
「あ、もうそろそろチャイム鳴るよ~~♪ゆきちゃんかえろ~~~♪」
「そうですね」
つかさとみゆきがいついなくなったのか気づかなかった。気づいたときはすでに5時間目が始まっていた。


「……」
ふらふらと私は保健室に向かった。この時間は少し休もう。そう思った。
保健室に入ると誰もいなかった。……と思ったが、小さいこなたがいた。
「あっ……かがみん……どうしたの??」
私の頭の思考回路がようやく復活した。
「あっあのね……こなた……」
私は一部始終を話した。するとこなたが口をあけた。
「……しょうがないよ。かがみ。私、日ごろから二人に迷惑かけてたのかもしれないし。」
「いいわけないでしょ!!!先生に相談しなくちゃダメよ……!」
「いいってかがみん。また私が買えばいい話だしさ。私、面倒くさがって名前すら書いてなかったし。」
あはは……とこなたが力無く笑う。………私は思った。
「……こなた。力をあわせてがんばりましょ。なんとかして二人にイジメを辞めさせるの。」
「ええっ!?まだ暴力的なこともされてないんだし、ほっとけばおさまるんじゃ……」
「私はそうは思えないわ。燃やすなんて普通するわけないじゃない……!!」
「かがみん……」
沈黙が続いた。ようやくチャイムが鳴った。
「……じゃあ、私帰るわね。こなた、一緒に教室まで戻ろ」
「でもかがみん。私教科書ないんだけど…」
「私が貸してあげるわよ。ノートも一冊余りがあるからあげるわ。」
「……!!ありがとかがみん……!!」
「何言ってるのよ。私達親友じゃない。」
そういって私達は6時間目の授業へと向かった……



こなた視点



こなたに教科書とノートを渡し、教室に入った。
………?なぜか静かになった。みんなが私を見ている。
変だなと思いつつ、席に着く。
何事もなくラノベを読んでいると、隣から大きな泣き声が聞こえてきた。
間違いない。これはこなたの声だ。
教室のみんながぞろぞろと何事かとB組を見に行く。
私も急いで行こうとしたそのとき、腕を掴まれた。
「!?何よ!!離しなさい!!」
男子だった。3人の男子が私を囲んでいた。
「柊……お前、泉こなたと仲いいんだなあ……」
「当たり前じゃない!!こなたは私の無二の親友よ!!離しなさい!!」
「うるせえよ。ギャーギャー喚くんじゃねえ。それよりこの本……」
そう言って男子の一人が私の読んでいたラノベを持ち上げた。もちろん腕は掴まれたままだ。
「お前これ好きなんだよなあ??」
「だから何!!本を置いて早く離しなさい!!」
こなたの泣き声はやまない。一刻も早くこなたのそばにいかなければ……!!
そう思っていると、その男子は信じられない事をした。
カチッ
なんとライターの火を本につけた。見る見るうちに私の本が燃えていく。
「あああああ!!!止めてええ!!!!」
必死に叫ぶが無駄だった。数秒後に私の本は燃え尽きた。私は目の前の光景が信じられなかった。
「へへへ。これで泉こなたと付き合うとどうなるかわかったよな??おおっと、先公に言おうなんて考えんじゃねえぞ。言ったら泉を……レイプしてやる」
「!!!!!!それだけはやめて!!誰にも言わないから!!」
「じゃあ泉こなたとはもう縁を切るんだな…じゃあな。」
気がつくとみんながぞろぞろと席に戻っていった。こなたの泣き声もやんでいた。
「なんで……???どうしてなのよ……!!」
その時間中かがみは顔を伏せて泣いていた。

視点なし




「これでいいんだよな??」
先ほどの男子がみゆきに尋ねる。
「ええ。十分です。ありがとうございました。」
そういってみゆきは男子に2000円を渡す。
「うほっ!サンキュー!じゃあな!」
そういって男子は去っていった。
「ふう……私達の計画通りですね。」
みゆきはふふっと笑ってつかさの元へ報告しにいった。

こなた視点




私はかがみを待っていた。ひたすら待っていた。どこで待っていたのだろう。多分教室だ。
つかさが帰り際に私の机をわざと倒して行ったのを覚えている。今の私にはかがみんしかいない……そう思っていた。
まさかたった一日でこんな事になるとは思わなかった。そう思っていると、いつのまにか教室には誰も居なくなっていた。
タッタッタッタ……かがみだろう足音が聞こえてきた。やはりかがみだった。そしてやはり第一声は予想通り。
「こなた!!!!………!!!!その髪、どうしたのよ!!!!」
かがみには心配をかけたくない。しかし先ほどの泣き声は明らかに聞こえているだろう。
「あ、あはは……じ、自分で間違って切っちゃったんだ……」
「嘘よ!!そんなわけ無いじゃない!!誰??つかさにやられたの??」
あれ……よく見るとかがみんも泣き跡が見える。どうしたんだろう。
「……なた!!!こなた!!」
はっとして我に返る。
「いや……その…………うわあああああん!!!」
私はいてもたってもいられなくなり、かがみんに泣きついた。
「………やっぱりつかさ達にやられたのね………許さないわ……」
そういうかがみんの声は、明らかに震えていた。
「ひぐっ……えぐっ……かがみん、かがみんも泣いてたの??なんで??」
かがみんはしまった、というような顔をした。
「うん…ええとその…読んでたラノベなくしちゃってね……ついショックで……」
……
嘘だ。かがみんは嘘をついている。
しかし私はわざと追及しなかった。だってかがみんが嫌がるのは嫌だったから……

私達はずっと寄り添って帰った。

かがみ視点




いつの間に授業が終わったのだろう。気づくと教室にはだれも居なくなっていた。ただ黒板に大きく、


柊かがみは
オタクキモい 死ね


と書かれていた。私はしばらく無反応で、その後その文字を消した。
「こなたのとこへいかなくちゃね……!」
そう思い、B組にむかった。
……と、視界に入ってきたこなたの姿は、今まで見知ったこなたではなかった。
髪をばっさりと切られ、まるで別人みたいだ。
「こなた!!!!………!!!!その髪、どうしたのよ!!!!」
こなたはしばらくして、こう言った。
「あ、あはは……じ、自分で間違って切っちゃったんだ……」
「嘘よ!!そんなわけ無いじゃない!!誰??つかさにやられたの??」
私はすかさず聞き返した。しかしこなたは答えず、話しかけても答えない。



「こなた!!!こなた!!」
こなたはようやく気づいたらしく、しどろもどろにこう言った。
「いや……その…………うわあああああん!!!」
言うや否や、こなたは抱きついてきた。私の胸に顔をうずめ、わんわん泣いている。
「………やっぱりつかさ達にやられたのね………許さないわ……」
多分声は震えていただろう。
こなたの頭をなでていると、こなたが口を開いた。
「ひぐっ……えぐっ……かがみん、かがみんも泣いてたの??なんで??」
しまった……!涙のあとが完全に消えていなかったようだ。私は答えに困り、こう答えた。
「うん…ええとその…読んでたラノベなくしちゃってね……ついショックで……」
……
沈黙が続く。こなたは多分疑っているのだろう。しかしこなたは追求してこなかった。

「かえろっか。こなた。」
こなたはなにもいわず、私に引っ付いてきた。
そしてそのまま、私達はずっと寄り添って帰った。


こなた視点



「ただいまー」
「おかえりー」
私はいつもどおりに振舞う事にした。お父さんにだけは心配かけたくなかったから。
「こなたー。頼んでた新作エロゲー届いたぞ………ってこなた!頭どうしたんだ!!」
「え!?あ、ああ……帰りに散髪してきたんだよ。いい加減鬱陶しくてさあ。アハハ」
「………こなた、学校で何かあったのか??」
「いや~~~別に何もないよ。ところでゆーちゃんは??」
「ゆーちゃんなら部屋で勉強してるぞ。」
「そっか。ありがとお父さん。」
私は自分の部屋に戻った。とりあえずゆーちゃんは何もされてないみたいでほっとした。しかし今の自分の姿を見せたら、凄く心配するだろう。体調を崩すかもしれない。だから私はゆーちゃんには姿を見せないようにした。
その日はずっと自分の部屋にこもってた。ごはんも夜中に作って食べ、夜に呼ばれたときも忙しいと言って断った。
「かがみん…………私どうすればいいんだろう……?」

かがみ視点



「………」
私はただいまを言わずに家に入った。すると先に帰ってたらしいつかさが走ってきた。
「お姉ちゃんお帰り~~!私バルサミコ酢料理作ったんだけど、食べる~~??」
………
私はつかさを無視して部屋に戻った。
「あれ~~~??無視とかひどいよお姉ちゃ~~ん♪でもま、いっか♪明日が楽しみだね~~♪お姉ちゃん♪」
「………」
私は部屋に戻るなりベッドにダイブした。
「………こなた。私、どうしたらいいか分からない……」
結局その日はほぼ無言ですごした。つかさが何かとこっちを見てたが、無視していた。

「……」
寝るときも明日どうすればよいかわからず、長く寝付けなかった。


視点なし


いじめはそのまま2週間以上続いた。
こなたは教室に入ると机が落書き(死ね、ブスなど)されているのは当たり前。消す気力もなくなり、ひたすら教科書で隠していた。
教科書は全て新しく買った。もちろんこなたの実費で。幸い教科書は捨てられなかった。というか捨てさせなかった。こなたはしっかりと教科書を家に持って帰るようにしていた。
休み時間はつかさとみゆきが毎時間やってきて、
「まだお姉ちゃんと仲良くしてるの~~??いい加減キモいよ~~」
「確かにそれはありますね」
「こなちゃんキモいからこうしてあげるね。えいっ!」
「ちょ……何を……!!」
こなたはいつも嫌がらせをされた。ゴミ箱に投げられたり、雑巾でふかれたり。
「あはは♪ゴミは捨てないとね~~~♪」
ギャハハハ、とクラス全体が笑っていた。こなたの精神も限界に近づいていた。
「うう……かがみ……」


一方かがみは、こなたほどひどいイジメはされていなかったが、毎日机に落書き。そして朝来るといつも黒板にでかい文字で中傷の言葉。
気が強いかがみは落書きも黒板の文字も毎日しっかり消していたが、そのせいで勉強があまりできなくなった。
休み時間は毎時間一人で読書をしてすごす。なぜなら休み時間になるとすぐに男子が数人でドアのところでタムロして私の出入りを禁止するからだ。
唯一教室の外に出れるのは昼休みのみ。その時だけはこなたと一緒に、屋上で昼食をとることにしている。
その時間だけが学校での二人を支えていた。気の強いかがみですら、もう限界に近かった。
「こなた……私がついてるからね……」
かがみは必死でこなたを慰めようとする。しかしこなたはいつも
「うん……」
とだけ言っていた。学校が終わると二人は屋上で待ち合わせをしていた。そうして全校生徒が帰ったあと、二人は手をつないで帰っていた。
そのおかげで帰り道はだれにも嫌がらせは受けなかった。家に帰ると二人は毎日にように部屋に閉じこもっていた。

こなた視点


次の日だった。私は学校に向かった。かがみはきてないらしい。どうしたのだろう??
「ね、ねえつかさ……かがみ知らない??」
机の落書きとクラスの白い目を無視して、つかさに言った。
「お姉ちゃん??風邪じゃない??クスクス」
「そ、そっか……ありがと……」
風邪か。かがみんもとうとう体調崩しちゃったのかな。帰りにかがみの家に寄ってみるか。

その日はずっと一人ですごした。特に昼休みは辛かった。クラス中から
「ねえねえ、泉さんなんでいるの??」
「しらね。友達いねえからじゃね??」
「アハハ。そっかあ」
などという会話が、私に筒抜けでずっと聞こえていたからだ。
授業が終わるとすぐに私は駆け出した。教室から出るときにつかさに足をひっかけられてこけたが、無視した。
「かがみ……早く会いたいよ……」
私は急いでかがみの家に向かった。
「ハアハア……」
ピンポーン。
「……はい……柊ですけど………」
「かがみん!?私だよ、こなただよ!開けて!」
「………分かったわ」
かがみは家に入れてくれた。そしてかがみの部屋まで案内された。そのときはずっと無言だった。

私とかがみは戸を閉めて座った。
「ねえかがみ。今日なんで休んだの??私、辛かったんだよ。」
「……」
かがみは答えない。うつむいたままだ。……泣いてる??
「…ねえかがみ……?どうしたn」
「レイプされたのよ!!!」
………え??
私は耳を疑った。かがみは大声でそう叫んだあと、またうつむいてぽつりぽつりと喋りだした。
「……昨日ね、あの後わかれたでしょ。その後家に向かってたらいきなり後ろから変な匂いを嗅がされたの……」
私の頭は混乱していた。なんとか整理するように努力した。
「それでね……私は気を失って。気づいたら知らないところで縛られてた…………周りには10人ほどの男……その後はわかるでしょ………ううっ…えぐっ…ひぐっ……」
どうすればいいんだろう。私はようやく搾り出した言葉でかがみに尋ねた。
「………かがみ、なんで………レイプされたの??」
「……………」
長い沈黙が続いた。
「……泉こなたと仲良くしてるからだって。こなたをレイプされたくなかったら、お前がされろって」
そういってかがみは泣き出した。わんわんと大声で。いつものかがみとはまるで別人だった。

私はどうすればいいのか全く分からなかった。しばらく無言でかがみの泣き声を聞いていた。
するとつかさが帰ってきた。
「ただいまー♪」
というのんきな声を聞き、かがみは泣きやんだ。
「……えぐっ…つかさが帰ってきたわ……こなた、つかさに見つかると厄介よ。隠れてて。」
「う、うん……」
そういって私はベッドの下にもぐりこんだ。しばらくするとつかさが入ってきた。
「おねえちゃーん♪玄関にこなちゃんの靴があったよー??どういうことかなーー♪」
「えっと……こなたなら今トイレよ。わ、私が呼んだのよ。」
「ふーん♪じゃトイレ見てくるねーー♪」
「あ、そうそう、お姉ちゃん、こなちゃんとはもう仲良くしないっていったよね~?嘘はいけないよ、お姉ちゃん♪」
「……いいから早く行きなさいよ」
「アハハ♪」
つかさは部屋を出て行った。すかさずかがみが言った。
「こなた!今のうちに逃げるわよ!!」
「えっと……って、ええ!?」
かがみは私の腕をつかんで走り出した。走り方がぎこちない。多分昨日のことのせいだろう。
「はあはあ……」
家をでて駅まで走り続け、かがみが言った。
「こなた……」
「……?どしたのかがみん?」
「いままでありがと、こなた。そしてこれからもよろしくね。」
かがみはそう言って、私と手を繋いだ。
「え??どうしちゃったのかがみん??」
すでに電車がホームに近づいていた。私はかがみが何をしようとしてるのかようやく気づいた。


「!!!!!だめだよかがみんっ!!!!」
遅かった。かがみは私と手を繋いだまま飛んだ。


ぶちっ

不思議と痛みはなかった。ただ、四肢がちぎれた感覚はした。


私とかがみは、17歳の生涯を閉じた。


11月20日○曜  朝刊

昨日の夕方、埼玉県糟日部市に住む高校生二人による駅での飛び込み自殺が起きました。
原因は追究中ですが、どうやらふたりはイジメにあっていたようで、それが原因で自殺したと見ています。



「あはは♪ゆきちゃん、こなちゃんとお姉ちゃんやっと死んでくれたねーー♪」
「ええ。私としても嬉しい限りです。で、マスコミの取材にはどう対応しますか??」
「ゆきちゃんの財力で男子達を犯人にするんだよー♪嘘じゃないしね♪」
「それはいいですね。では早速手回ししときます。」

fin


あとがき
疲れました。処女作です。自分的にはこなたというよりかがみが虐められる、というのが書きたかったので、とりあえず書けたかな、という気がします。
まとめサイトに載せてくれたら嬉しいです。駄作かもしれませんが、読んでいただきありがとうございました。
最終更新:2022年04月16日 13:27