ライフ
by 大阪府
こなたの中学時代
こなた「おかあさん・・・全然友達出来ないよ・・・。どうしてだろう・・・。」
こなた「このまま三年間誰とも仲良くなれないのかな・・・。」
こなた「ネットがあるからいいや・・・。別にいいや・・・。」
こなたの高校入学
(つかさが外国人に道を聞かれている所に遭遇して)
こなた「大丈夫?えーと柊さんだっけ?(この人は私と
友達になってくれるかな・・・?)」
つかさ「あ、ありがとう・・・えと、泉さん???」
こなた「いやー、危なかったねー(変な人と思われない
ようにしないと・・・)」
つかさ「あはは、でも今の外国人さん道を聞いてきただけ
だったかも・・・よく聞いてみると・・・」
こなた「も、もしかして柊さんって英語で受け答えとかできちゃったり
する人???(と・・・とにかく普通に・・・)」
つかさ「あー・・・あ、うん。やっぱりちょっとピンチだったかも・・・。
英語全然出来ないし・・・。(変な人・・・だけどまぁ助けてくれたし・・・
悪い人じゃないのかな?)」
(らき☆すた本編を経て)
夕暮れの教室。
柊かがみと柊つかさ、そして高良みゆきの三人が楽しくお喋りしていた。
こなたはコスプレ喫茶のバイトがあり、既に学校を出ていた。
「へえ~、じゃあつかさ、その男の子に告白すんのね」
「ちょっとお姉ちゃん、大きな声で言わないで・・・」
「つかささん、私も陰ながら応援していますよ」
つかさは三年になって風紀委員を務めはじめた。そこで一緒に
委員をしている男子に淡い恋心を抱いたのだ。
「でも・・・ね、この事・・・こなちゃんには言わないでほしいの」
「泉さんにですか・・・?」
つかさが視線を落とした。
「うん。こなちゃん、酷い言い方になるけどさ・・・」
「空気読めない、ってこと?」
かがみがため息をつきながら言う。
「お姉ちゃんも気づいてた?」
「ちょっとね・・・最近前より拍車がかかってるのよ。
この前も二人で帰ってて、ずっと知らないギャルゲーの話されてさ。
私の話は全然聞いてくれなくて・・・」
「泉さんは、悪い人ではないんですけれど・・・」
「うん・・・。でも、こなちゃんには悪いけど、黙っていてね。
何かいらない事言われそうで・・・私、ひどいかな」
「ううん、仕方ないわよ。この事は三人だけの秘密だね。ね、みゆき?」
「わかりました」
いよいよつかさの告白の日がやってきた。
かがみやみゆきの計らいもあり、つかさは上手く男の子と約束を
こぎつける事ができた。二人は気を利かせて、一足先に下校した。
人気の少ない図書館の裏・・・ここで男の子が来るのを待つ。
「はぁ、どきどきするよ・・・ちゃんと好きです、って言えるかな・・・」
予定の時刻まであと数分。しかし・・・。
「あれ、つかさじゃん!なんでこんなとこにいるの?」
「えっ・・・こ、こなちゃん・・・?」
なんと校舎の方から、大きなゴミ箱を抱えたこなたがやってきたのだ。
「教室の掃除当番でさゴミ出し頼まれちゃってさ。ここ近道なのよ
ゴミ捨て場なの。いや~重たい重たい(=ω= ) つかさは何してんの?」
「私は・・・いや、その・・・用事があるから」
「あぁそうそう、エヴァの映画見てきたけどすっごいの、ヤシマ作戦のラミエルがね」
「こなちゃんごめん、私待ち合わせしてるから、また今度・・・」
「待ち合わせ?ひょっとしてデートとか?うりうり♪(=ω= )」
とその時、つかさの意中の男子が運悪くやってきてしまった。
「あっ・・・」
「柊さん、遅れてごめんね。で、僕に用って・・・?」
「おお~、この人がつかさの彼氏なわけ?お似合いだねえ(=ω= )」
「ちょっと、こなちゃん!」
つかさの顔色がみるみる青くなっていく。
「え・・・僕が彼氏?」
「も~とぼけなさんなよ、これからつかさと遊びに行くんでしょ(=ω= )」
「へ?柊さん、これって・・・」
「最低っ・・・」
声を震わせながら、搾り出すようにつかさは呟いた。
「あれ?どしたの、つかさ。そんな照れなくても・・・っ!」
こなたはひるんだ。つかさが物凄い形相でこちらを睨んだからだ。
瞳にはうっすらと涙が溜まっている。
「つ、つかさ、私何か悪いこと・・・」
つかさは答えることなく、校舎の方へ駆けていった。
こなたと、何が何やらわからぬ、といった表情の男子だけが呆然と立ち尽くしていた。
月曜日。
こなたはいつもより早く家を出ていた。
土曜と日曜は悶々としながら過ごした。ネトゲをする気も起きなかった。
つかさに謝ろうと何度も受話器を持ったが、結局柊家に電話することはなかった。
電話やメールでは自分の思いが伝わらないと思ったからだ。
今日つかさに会ってしっかり謝ろう。こなたは決意していた。
周りの人の気持ちを汲めない事があるのは、自分でも気づいている。
迷惑をかけている自覚もある。でも・・・かがみ、つかさ、みゆきは大事な友達。
これからもずっと、仲良くやっていきたい・・・。
学校に着いた。運良く、下駄箱の所につかさがいるのが見えた。
謝って仲直りしよう。そして放課後にみんなでカラオケにでも行こう。
「つ、つかさ!おはよう。あの、昨日はごめん・・・」
もしかしたら、すぐに仲直りできるかもしれない。・・・というこなたの
淡い期待は、次の瞬間粉々に砕け散った。
「・・・・・・っ!」
昨日と同じ顔。振り返ったつかさは、凄まじい怒気を孕んだ顔でこなたを睨み付けた。
いつもおっとりしたつかさに、こんな表情ができるのかというくらいの・・・。
「・・・・・・・・」
つかさはすぐに視線を逸らし、廊下を歩いていってしまった。
「・・・やっぱり相当怒ってるんだ。昼休みか放課後に・・・しっかり謝らないと」
意気消沈しながら、こなたは上履きを取り出す。
右足を上履きに入れた瞬間、足の裏に鋭い痛みが走った。
「痛っ!何かのトゲかな・・・あっ!」
こなたは目を疑った。上履きの底から画鋲が見つかったのだ。
セロテープでしっかり固定されている。・・・ということは、誰かが故意にやったことだ。
「そんな、嫌・・・一体、誰がこんなこと・・・」
画鋲を全て外してから、こなたはそっと上履きを履いた。
一体誰が・・・重い足取りでこなたは教室へ向かった。
「あははやっぱり臭いのよね~九月になっても」
「でもかがみさん、あの臭さは私は嫌いではないですね」
「絶望した!近所のスーパーにバルサミコ酢が置いてなくて絶望した!」
教室ではかがみ・つかさ・みゆきがいつもの様に楽しく談笑している。
こなたは一瞬ためらったが、勇気を出して三人の方へ近づいていった。
「あの、みんなおはよう。つかさ、少し話が・・・」
「今度近くの美術館で展覧会やるらしいのよ。三人で行かない?」
「素敵ですね。是非行きましょう♪」
「ばーるさぁみこす♪ばーるさぁみこす♪(アンインストールの曲風に)」
「・・・・・・・」
こなたは一瞬で悟った。・・・私、ハブられてる。
「ねえ、かがみん。みゆきさん。つかさ・・・ちょっと話を聞いて。
お願いだから、謝りたい事があるから・・・」
「秋と言えば食欲の秋ですよね。スイーツ巡りとかもどうですか?」
「いいわね!ちょっと体重が気にかかるけど・・・三人でいこっか」
「うん!私とお姉ちゃんとゆきちゃんの三人で絶対いこうね!」
殊更に”三人”という部分が会話の中で強調される。
つかさが怒っているのはわかる。でも何故かがみんとみゆきさんまでもが、
私をいないものとして扱うのか・・・。
こなたは自分の席へ向かった。
心臓がキリキリする。ジェットコースターが滑り出す時の感覚。
つかさがみんなに根回ししたの?
その日の夜。
こなたは部屋のベッドに突っ伏していた。枕は涙でびしょびしょだ。
口の中が酸っぱい。夕食は食べてすぐにもどしてしまった
あの後、画鋲を上履きに仕込んだのはつかさだとすぐにわかった。
席に着き教科書を開くと「死ね」「ゴミ」「うざい」「オタクキモいよ」
といった文字がびっしりと書き込まれていたのだ。・・・つかさの筆跡で。
昼休みや放課後も完全に無視。仲直りどころか、会話さえできなかった。
「・・・くっ、う、ううっ・・・どうして、どうして・・・つかさ・・・
かがみん・・・みゆきさん・・・わたし、わたしどうしたらいいの・・・」
柊家、かがみの部屋。
「ねえつかさ、もうやめよう。明日からまた普通にこなたと付き合おうよ」
「え?だって一週間って約束だったじゃないお姉ちゃん」
「そうだったけど・・・私、こなたの姿見てらんなかった・・・。
もうやめよう、あんまりだよ」
「お姉ちゃんだってこなちゃんの事空気読めないって呆れてたでしょ。
それに、私がどんな酷いことされたか・・・」
「それはそうだけど・・・」
「私、生まれて初めて好きな人に告白しようとしたのに・・・
こなちゃんが全てぶち壊したんだよ?絶対に許せない!お姉ちゃんは
私の味方でしょ?一番の味方だよね?」
「・・・・・・・」
つかさは、かがみに二つの嘘をついていた。
一つは、先日のいきさつを「こなたが暴言を吐いた」とかなり誇張して伝えたこと。
もう一つは、こなたへの「制裁」は無視だけに留めるということだ。
つかさがこなたの上履きに画鋲を入れたりノートに落書きした事実を、かがみは知らない・・・。
一週間が過ぎた。こなたにとって、とんでもなく長く、重い一週間だった。
学校では誰とも会話しない。一人で勉強し、一人でお弁当を食べ、一人で帰る。
つかさは執拗にいじめを続けてくる。体育の時間にボールをぶつけてきたり
トイレに連れ込んで水をかけたり・・・。勿論画鋲や落書き、持ち物隠しなど
もフルコースで行われている。
中学校の頃の孤独な毎日がフラッシュバックし始めた。
授業中、泣き叫びたくなる衝動に何度も駆られた。食べ物を食べても味が
しなくなった。・・・精神の限界が近づいていた。
そんなこなたを支える唯一の微かな希望は、かがみとみゆきだった。
二人は積極的にはいじめに加担してこない。無視は続いているが、日を追うに
つれてばつの悪そうな顔をするようになった。どうやらつかさに強制されているようだ。
学校ではつかさが見張っていて話せない。
土曜日の夜、意を決してこなたはかがみの携帯に電話をかけた。
これでつかさが出たらアウトだ。・・・七回目の発信音の後、かがみが出た。
「・・・はい・・・」
「かがみん、私・・・こなただよ」
「こなた・・・」
「今から会えないかな?近所の○○公園で・・・お願いだよ、かがみん
一度だけでいいから・・・」
「・・・わかった。つかさに見つからないようにする」
やっぱり、つかさに無理強いさせられてたんだ。
こなたの中で、希望の光は少し輝きを増した。かがみとみゆきを説得できれば、
つかさとも話ができるかもしれない。
○○公園。辺りは静まり返っている。
「こなた!遅くなってごめん」
ベンチに座っていたこなたのもとへ、缶コーヒーを二本持ったかがみがやってきた。
「ごめん、つかさがいなくなるのを待って家を出たから・・・」
「かがみん、かがみん・・・う、うう・・・うわぁぁぁあん!!」
「こなた・・・こなた、ごめんね、今まで本当にごめんね・・・」
涙を流し、震えが止まらないこなたの体を、かがみは強く抱きしめた。
ようやくこなたの震えが止まった後、かがみは今までのいきさつを全て話した。
「私達がおかしかったよ・・・。私達だってダメなところはいっぱいあるのに
こなたばっかり責めて・・・本当にごめんね・・・」
「ううん、私が悪いよ。つかさには迷惑かけちゃったんだね。
ねえかがみん、月曜つかさに謝ろうと思うんだ。一緒に・・・ついててくれる?」
「勿論よ!こなたさえよければ・・・またみんなで楽しく遊びたいよ」
「うん!かがみん・・・ありがとう。大好きだよ・・・」
日曜日。泉家。
「・・・お姉ちゃん」
「何?ゆーちゃん」
「今日のお姉ちゃん、なんだか明るいね。良かったよ!」
「そ、そうかな?」
「そうだぞこなた。最近元気がないからゆーちゃんと二人で心配してたんだ」
「ごめんね、お父さん、ゆーちゃん。心配かけちゃって。たまってた深夜アニメ
を徹夜で見てて疲れてたんだよ」
「そうか、それならいいがな。・・・こなた、辛いことがあったら何でも
お父さんに言いなさい」
「私も頼りないけれど、話を聞く事くらいはできるからね、お姉ちゃん」
「二人とも・・・ほんとにありがと!」
柊家。つかさが物置にやってきた。
隅にある木箱を開け、中から金属バットを取り出した。
「ふふふ・・・やっぱりお姉ちゃん、こなちゃん・・・いや、あの
バカ女に寝返ったね。計算してた通りだよぉ。・・・でも、まだ終わらせないよ。
ちゃぁんと次の手を考えてるんだから♪ばぁるさみこすぅ~♪」
翌日・・・こなたはかがみとみゆきと共に、つかさと話をする予定だった。
しかし、みゆきは学校に来なかった。しかも学校には連絡がきていない
のだという・・・。昼休みはこなたとかがみの二人でお弁当を食べた。
明日みゆきが来てから話し合いの場を設けることに決めた。
翌日。1時間目の半ばでみゆきがやってきた。だが様子がおかしい。
「なんや高良、遅刻とは珍しいな。昨日も無断欠席やし、何かあったんか」
「すいません、急に体調が悪くなってしまって」
「まあええ。席につき。教科書63ページからや」
だがみゆきは自分の席につかず、こなたの所へやってきた。
「え・・・?みゆきさん・・・?」
バチィィィイン!!!
みゆきは突然こなたを思い切り張り倒したのだ。こなたは椅子から転げ落ちた。
「・・・・・・・・」
教室は静まり返った。氷の様な瞳でこなたを見下ろすみゆき。
こなたは頭が麻痺したようだった。唇の端が切れて血が出ていることにも
気づかず、そのまま立ち上がれないでいた・・・。
昼休み、屋上。
こなた・かがみ・つかさ・みゆきの四人がいた。
かつて親友の絆で結ばれていた四人が睨み合う。つかさだけは薄笑いを
浮かべているが。
「どうしてよ、みゆき!あんたもこなたに謝りたいって言ってたじゃない!」
「気が変わりました。私はつかささんに協力します」
「そんな・・・なんでよ、どうしてよ!理由を聞かせてよっ!!」
一晩で状況は大きく傾いたようだ。悪い方向へ・・・。
こなたは半ば茫然自失としていた。自分のために必死になって食い下がる
かがみが、ただ可哀想でならなかった。
「この女は、この女は・・・殺したんですよ!うちのキャンディを!!」
「えっ・・・・・・」
キャンディはみゆきの家で飼っている犬だ。「番犬として飼い始めたのですが
誰にでもなついてしまって困ってるんです」とみゆきが話していた事がある。
「そんな事、こなたがするはずないでしょ!だいいち昨日こなたは私と・・・あっ」
「お姉ちゃんやっぱりこいつと会ってたんだねぇ」
つかさがクスクスと笑う。
「みゆきさん、私そんなことしてないよ・・・」
「うるさい!監視カメラにばっちり映ってたのよ!夜中の二時ごろ、お前が・・・
キャンディに何度も金属バットで振り下ろす姿が!」
「ひどいねぇこなちゃん、私達への仕返しにそんなことするなんて・・・」
「そんな・・・違うよ。私何もしてない」
「夜中の二時ごろならお姉ちゃんと別れた後だしアリバイもないね♪」
かがみが心配そうにこなたを見つめる。
「こなた・・・」
「かがみん信じて!私何もやってないよ、本当だよ!」
「わかってる・・・私はあんたを信じてる」
そう言いながらも、かがみは動揺を隠せないでいるようだ・・・。
「みんなそろそろお昼休み終わっちゃうよ、教室に帰らなきゃ♪」
「かがみさん」
「な、何よ・・・」
「これ以上この女の味方をするつもりなら、私はあなたも敵と認識します。それでは」
「・・・・・・・・・」
つかさとみゆきは教室へ戻っていった。
「どうしてよ・・・どうしてこうなっちゃうのよ!こんな、こんな・・・」
「かがみん、もういいよ・・・。私・・・もうダメだ」
かがみの頬を涙が伝った。こなたは虚ろな瞳で遠くの空を見つめた。
このままでは、かがみも酷いことをされてしまう。
その夜。柊家、つかさの部屋。
「あっはは、おっかし~。あんな簡単にいくとはね。
私の天然は計算してやってるけど、あの眼鏡バカは本物だからなあ・・・」
そう言いながら、つかさは煙草の火を灰皿に押し付けた。
つかさの机の上には青い髪のカツラとサングラス、ハンチング帽とコートが
置いてある。俗に言う「腐女子ファッション」だ、いつもこなたがしているような・・・。
「ったくあのバカも気づけよな、私とあのゴキブリは背丈同じくらいだろうが。
ほんとペーパーテストしかできない頭だな。・・・あ、マルボロ切れた。買いにいくか」
「・・・やっぱり、そういう事だったのね」
「!?」
ドアが開き、かがみが入ってきた。
「全部・・・あんたがやったことだったのね、つかさ・・・」
「あはは・・・何言ってるのお姉ちゃん・・・」
「とぼけないでっ!これは・・・これは何よっ!!」
かがみはクローゼットの戸を一気に開けた。カラーンと音がして、棒状の物が
倒れてきた。・・・乾いた血と動物の毛がこびりついた金属バットだ。
「・・・・・・・」
「あんた・・・狂ってるわよ。こんな事して何になるのよ!」
「お姉ちゃんが悪いんだよ・・・いつもいつもあの女の味方ばっかりして!!」
「・・・・・私、明日警察に行く。今までのこと全部話す」
「待ってよお姉ちゃん!私よりこなちゃんを取るの?ひどい・・・」
「うるさい!どれだけこなた達を傷つければ気がすむの?」
「・・・・・・・ない」
「え・・・?」
「そんなのさせない!!」
つかさは金属バットを手にし、かがみめがけて振り下ろした。
夜。泉家、こなたの部屋。
陽が落ちてから降り出した雨は、その強さを増していた。
「・・・・・・・」
ディスプレイから洩れる光だけが僅かに部屋を照らす。
こなたは自殺サイトを巡り、上手く死ぬための情報を集めていた。
今日は家に帰ってから一切部屋の外へ出ていない。そうじろうもゆたかも
きっとおかしいと気づいているはずだ。でも、もう取り繕う気力さえない。
「もってい~けさいごにわらっちゃう~のはあたしの・・・♪」
電話が鳴った。・・・こなたは何故か、相手が誰かを直感的に悟った。
「・・・・もしもし・・・・」
「遅いなぁ。さっさと出なよ、ゴキブリ」
「・・・・・・・何・・・」
「あのさぁ、今から会わない?うちの神社の境内だよ」
「・・・嫌・・・もう、行かない」
「ええ~ノリ悪いなぁ♪来ないなら、お姉ちゃんがどうなってもいいのかな・・・かな?」
「!! かがみんに何かしたの?」
「さぁ?それは来てからのお楽しみだよぉ♪」
「・・・行くよ。だから、かがみんには絶対に何もしないで!」
「偉そうな口聞いてんじゃねぇよ、さっさと来いゴキブリが!!」
そこで電話は切れた。こなたは気づかれぬように、一人家を出た。
横殴りの雨はますます酷くなっているようだ。
「遅いよぉ、あんまり遅いからハイネケン二缶開けちゃったよぉ♪」
「はぁ・・・はぁ・・・かがみんはどこ・・・?」
息も絶え絶えに聞く。傘も差さずに走ってきたこなたはずぶ濡れになっていた。
「ほら、お賽銭箱の横にいるでしょ。気を失っているだけだよ。
ねえ・・・お姉ちゃんを助けたかったら、ここで死んでよ」
つかさはオーバーオールのポケットからバタフライナイフを取り出した。
「どうして・・・かがみんは大切な家族でしょ?どうしてかがみんまで」
「・・・うるさい」
「・・・・・・・」
「うるさい!いっつもそうやって間の抜けた質問ばっかりして・・・
お前のそういう所が大嫌いなんだよ!!!」
つかさからは、いつもの優しい笑顔の面影は完全に消えていた。
「・・・つかさ・・・・」
「お前はいつもそうやって自己中してる癖に、みんなから好かれて・・・
お姉ちゃんにも・・・!オタクの癖に運動も勉強もそつなくこなして・・・
私、何にも勝てなかった。お前みたいな奴に・・・!だから自分を変えようと
頑張ってたのに・・・それをまたお前が邪魔して・・・うっ、うう・・・」
「・・・つかさ・・・・」
「許せない!許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
許せない許せない許せない!!お前さえいなくなればっ・・・!」
傘を捨て、つかさがナイフを振りかざしこっちに突進してきた。
「うぁぁぁああああああああああぁぁっっ!!!」
二人の動きが止まった。
「・・・どうして・・・どうして避けなかったの・・・」
こなたの腹部には、ナイフが深々と刺さっていた。シャツの赤い染みが
みるみる大きくなる。血がナイフを伝い、つかさの手へ零れ落ちた。
「お前なら、簡単に避けられたはずなのに・・・」
「・・・かもね・・・。でも、もう終わりにしたかった・・・ぐっ!」
こなたは自らの手で更にナイフの刃を深く押し込んだ。流れる血の勢いが増す。
「ちょっと・・・やめて、やめてよ・・・やめてよこなちゃん!!」
「あはは・・・久しぶりにこなちゃんって呼んでくれたね・・・嬉しいな・・・」
こなたは痛みに立っていられず、崩れ落ちた。
「つ、つかさ・・・つかさは・・・私と・・・一緒、だったんだね・・・」
「な、何が・・・私が・・・どうしてお前なんかと・・・」
「私は・・・みんなが羨ましかった・・・誰とでも楽しくやれて・・・
友達が沢山いて・・・私は人と付き合うのが・・・苦手で・・・いつも
引け目感じてた・・・・」
「・・・・・・・こな・・・ちゃん・・・」
「自分に・・・自信なんて・・・これっぽっちもなかった・・・。でも
こんな私にも・・・大切な友達が・・・ごふっ!」
「もう喋らないで!死んじゃうよ・・・やめて」
「いいの・・・これ以上生きてても・・・みんなに迷惑が・・・。
つかさは・・・自信が持てないかもしれないけど・・・笑顔が可愛くて料理が
上手くて・・・みんなを幸せにすることができるよ・・・だから、酷いこと
するのはやめて・・・」
「わかったよ、わかったから!だから死なないで・・・こなちゃん!!」
「あ・・・は・・・。つかさ・・の・・・泣き顔・・・萌えだね・・・。・・・・・・・」
「こ・・・な・・・ちゃん・・・?冗談だよね・・・待ってよ・・・
私がバカだったよ・・・謝るから・・・だから目を覚ましてよ!こなちゃん!!!!」
つかさの腕に抱かれたこなたは、安らかな顔をしていた・・・。
エピローグ
風が吹きすさぶ断崖。打ち寄せては砕け散る波を、ただ私は見ている。
ここは埼玉とは遠く離れた地。あんな事件が起こったのに、のこのこと
同じ場所に住み続けていられるわけがない。
「・・・いったい・・・どうして、こんなことに・・・」
もう何百回考えたのだろうか。大切な親友を失った。そして、その親友を
殺したのは私の妹なのだ。・・・私には、生きる希望などもはや欠片も見つからなかった。
思えば、四人とも本音を隠していたんだな。
私はため息をついた。「世話焼きなお姉さん」の様な役に知らぬ内に
酔っていて、こなたの苦しみにもつかさの苦しみにも気づいてやれなかった。
それは、みゆきも同じかもしれない。
私達の友情は危ういバランスの上にあったのだ。
ふとしたきっかけで、すぐに崩れ去ってしまう・・・。
私は柵をまたいで、崖の端へと足を向けた。
「・・・もう一度、もう一度やり直そう・・・私達、今度こそほんとの友達に
なれるように・・・ね、こなた・・・・・・・」
一瞬だけ、チョココロネを頬張る友人の姿を見たような気がした。
私は空へ向かって跳んだ。
(了)
最終更新:2022年04月17日 12:13