赤いK悪魔の終焉

「いいでしょう。受けて立ちましょう。私は強いですよ」。
白熱したバトルが展開された。こなたは格闘ゲームはかなり得意だったが
青年もかなりの腕前で、結局6戦で3勝3敗だった。
「残念、もう帰らなくちゃ。又今度会えたら決着だよ。それまで他の人に負けるなよ」。
「望むところです。私は負けず嫌いですので。」
しかし、その後2人が生きて再開する事は無かった。
数年後帰国した青年はニュースを見て愕然とする。
「泉そうじろうさん殺害。容疑者の娘は投身自殺」。
「歪んだオタクの凶行。みの○んたが斬る」
青年は本当に彼女が犯人か考えた。人を見た目で判断してはならない
と言うのは鉄則だ。無論青年も熟知している。
やはり彼女が「黒」ならその現実を受け入れよう。しかし万一そうでない
としたら・・・・・青年は駆け出した。



(頭が痛い。ここはどこだろう)。ゆたかは頭がぼーっとする。
確か駅のホームから落ちて電車に・・・・・ここは天国かな?
ぼやけていた視界が次第に明瞭になってくる。照明器具のような明かりが見える。
「ゆたか!気がついたの。良かった、ひっく、ぐすっ」。
「み、みなみちゃん。あれ、ここは病院」。?
「ゆたかちゃん。気が付いたんだね。傷は痛む」?
「つかさ先輩、えとここは病院ですか」?
「ゆたかちゃん、駅のホームから落ちて、頭を打ったの」。
「危ないところだった。駅にいた人がゆたかを助けてくれた」。
「はぅー、目撃した人の話だと、まるで素早いネコさんのように線路に
落ちたゆたかちゃんを助けてくれたんだよ。だよ」。
どうやら助かったらしい。病室のテレビがそのニュースを流している。
コメンテーターが盛んにその人物をほめている。
「すばらしいですね。まさに日本人の鏡です」。
その時、見舞い客があったようだ。
「その本人が来た」。
「どうも。お見舞いに来ました。傷は痛みますか」?
「えと少し痛みが引いてきました。助けていただいてありがとうございました」。
「当然のことをしたまでです。あ、申し遅れましたが名前は」・・・・
青年は名刺を差し出した。「山口一平」とある。勤務先はゲーム関連のようだ。
「結構イケメンだね。でも少し疲れているのかな、かな」?
「はい、完成が迫っているので徹夜です。ゲーム完成前はどこも同じです」。
ふとみなみが時計を見る。後5分で面会終了の8時だ。
「ゆたか、今日は帰るね。ゆっくり休んで、おやすみなさい」。
「ゆたかちゃん。4日くらいで退院できるらしいよ」。
「みなみちゃん、つかさ先輩、山口さんお休みなさい」。
3人が病室を出て行き静寂が訪れる。ゆたかはベットに横になる。
(良かった。誰も気付いていないみたい。この事件は休暇だと思って
ゆっくり休もう。そして退院して希望に満ち足りた生活を)。
しかし、このときゆたかは着々と包囲されつつあったのである。



数日後、ゆたかの退院の日が来た。ゆたかは後遺症とかも皆無らしい。
「ゆたかちゃん退院おめでとう」。
「何か困った事があったら遠慮せずに相談してね」。
「先輩、ありがとうございます。あれみなみちゃんは」?
「今日は都合が悪くなったみたいなの。」
ところでゆたかの今後だが、この中でかなり裕福な高良家の養子になる
と言う話が出ていて、皆も大賛成のようだ。 
「えへ、これからお姉ちゃんって呼んでいいですか」?
「もちろんです。大歓迎ですゆたかちゃん」。
その時ドアが開いて、山口が入ってきた。
「退院おめでとうございます。傷は痛みますか」。
「あまり痛くありません。事故のことは良く覚えていないんです」。
「それは一種の自己防衛機能ですね。所で・・・・・」
「泉こなたさんを殺した事を覚えていますか」?
一瞬にして空気が凍結する。
「あんた、ふざけているの!ゆたかちゃんがそんな酷いことをするわけ無いでしょ」?
「ひどいよ!最低だよ」。
「私はこのような冗談を言うほど堕ちてはいません。ゆたかさん、
全て解っています。貴方はまず裏サイトに成美ゆいさんの情報を載せ
接触してきた男子生徒2名に金銭を渡し、事件を起こさせた。その後
成美ゆいさんは貴方の目論見どおりに鉄道で自殺しました。
その後、こなたさんを罠に嵌めて孤立させ家を飛び出るように仕向けました」。
半年後、泉そうじろうさんを殺害。かがみさんの携帯を盗み出し、
廃工場に呼び出し、全ての罪を着せて自殺に追い込みました。
実に見事な計画です。ここに貴方が書いた計画書もあります」。
山口はゆたかの字がびっしりと書かれた計画書を出した。
「逮捕された白石他1名は、貴方に会い金銭を受け取ったと供述しています」。
「違うよ、計画書はちゃんと捨てたもん。それにその2人と会っていないよ。
電話で話しただけだよ。いい加減に・・・・・あっ」。



 「はい、確かに暴行犯と貴方は直接は会ってはいません。この計画書
も偽者です。しかし、どうしてそのことを知っているのですか」?
「・・・・・」沈黙のゆたか。顔色も悪い。さらに追い討ちを掛ける。
「警察関係者と私しか知りません。マスコミには伏せてあります」。
「失礼、他にもう1名だけ知っている人がいました。・・・・犯人です」。
「ひっ。えとその」。
完全に狼狽し返答も出来ないゆたか。ようやくつかさが口を開く。
「本当なの?ゆたかちゃんがこなちゃんを・・・」。
山口が別の証拠を取り出す。それは血痕の付着した赤い頭髪だった。
「これは泉そうじろうさんの遺体のそばの血痕の中に落ちていた頭髪です。
鑑定から死亡推定時刻に落ちたことが判明しています。貴方が赤毛
で感謝しています。血の色と混じってしまい気付かなかったのでしょう」。
「それと、貴方の自室から、別の重要証拠も発見されました。恐らく
退院後にでも処分するつもりだったのでしょう」。
最早ゆたかの敗北は明白だった。酸素切れの金魚みたいに口を開くしかない。
「ゆたかさん、貴方は紅い悪魔です。同情の余地は皆無です。
私は以前ある凶悪犯と戦いました。彼は貴方と違い私が命を掛けて
戦うに相応しい相手でした。しかし、貴方はただの外道な殺人犯です」。
「・・・・・」
「くくくあっはははははははは!そうだよ私がやったの。あははははは。
全部山口さんが推理した通りだよ。もう動機も判ってそうだね」。
発狂し笑い転げるゆたか。つかさは泣きながらゆたかに。
「ゆたかちゃん。酷いよ、酷すぎるよ・・・・・ひっ」。
つかさを恐ろしい物を見た。恐怖で室内の気温が真冬みたいに
恐ろしい夜叉の表情の姉の姿を見た!
「アンタガコナタヲコロシタンダヨネ」?
「ひッ!助けて」。
かがみは窓際にあった花瓶を振り上げる!誰も凍りついたように動けない!



しかし、1人だけ動いた人物がいた。山口はチーターのような俊敏さで
動き花瓶を抑えた。花瓶は最早微動だにしなかった。山口は花瓶を
取り上げ、離れたテーブルの上に置いた。疲れた様子も見せず
「かがみさん、余計な仕事を増やさないでください。エネルギーの浪費です。
空腹になるじゃないですか。今度何か奢ってください。」
「ごめんなさい。」
そのとき外の廊下に複数の足音が響いた。中年の男性と若い部下や警官
が入って来てゆたかの前に書類を示した。
「埼玉県警ですふっふー。小早川ゆたか、殺人及び強姦教唆、銃刀法違反容疑
で逮捕しますよぉー。熊ちゃん、退院許可下りてますので連行しちゃってください」。
「了解しました。大石さん。おい行くぞ」。
ゆたかは手錠を掛けられ、刑事たちに連行されていった。
山口は椅子に座り、つかさたちに話しかける。
「さて、今回の件は残念です。私はこなたさんとは数時間ゲームをしただけです。
一連の事件の時は海外にいたので、知ることが出来ず助けられませんでした。
しかし、貴方達は違います。私とは遥かに付き合いも長く、こなたさんを助ける
事が出来る位置にいました。こなたさんはゆたかさんが言うような卑劣なことが
出来る人でしょうか?あなた達にもう少しでも信じる気持ちがあれば
こなたさんを助ける事は簡単に出来たのではないでしょうか?
貴方達は本当にこなたさんの友人だったのでしょうか?それを見つめなおす
為に必ず生きてください。これ以上余計な仕事を増やしたら怒ります。
蹴りを入れますよ。」
入口へ歩き出す山口、足を止める。
「今後ゆたかさんとは一切の関係を絶ってください。面会も差し入れも
絶対にダメです。彼女は更生は不可能です。特に岩崎さんには厳しく注意
して下さい。説得が難しいようであれば、私が直接説得してもよいです」。
今度こそ山口は病室を出て去っていった。
「泉さん、許してください。」「ひっく、こなた」「こなちゃん」。
3人はただ涙を流し続けるしかなかった。



 その時、病室にふと気配を感じた。かがみが振り向くと、そこにいたのは
「こなた」!「こなちゃんなの」「泉さんなの」。
「そーダヨ。みんな元気。かがみん。さあ一緒に」・・・・・
恐怖で震えるかがみ、かがみの運命や如何に?
「って冗談だよ、マジで怯えるかがみ萌えー」。
「あんたは、幽霊になっても変わらないわね。・・・ごめんこなた」。
「私、泉さんに酷いことを言ってしまいました。ごめんなさい」。
「こなちゃん。ごめんね」。
「問題なしダヨ。私も最後までゆーちゃんを疑いきれなかったくらいだからね」。
「ゆーちゃんは詐欺師の才能が、黒崎でも勝てないかもねー」。
病室の中で静かに笑う3人。こなたの表情が真剣なものになり、
「みんな、一つだけ約束して欲しいんだ。」
「どんな約束ですか、泉さん。何でも言ってください」。
「絶対に後を追わないで欲しい。みんな夢に向かってGO-ダヨ」。
「うん、約束する。」「約束だよこなちゃん」。「はい、泉さん」。
「みゆきさんは、女医さんかな。つかさは保母さんなんか合ってるかも」。
「天国まで往診してあげますよ」。「えへ、保母さんか、なれるかな」。
「かがみはインドでツンデレ修行をして、ツンデレ道を極めマスターに」。
「ちょw何で私だけ・・・・しかも何でインドで修行なのよ」。
「それと、パティとみなみちゃんのことお願いするよ。特にみなみちゃん
には気をつけてあげて欲しいの・・・・ひよりんはまあいいか」。
「家が近いので私が良く見てあげますね」。
「田村さんは人類が滅亡しても生きていそうだから大丈夫だよね」。
何気に酷いつかさ、次第にこなたが透明になってぼんやりと
「じゃ、時間だね。みんな半世紀以上経ってから又会おうね。ジャニー」。
「あっ、忘れていたよ。実はゆーちゃんが線路に落ちたのは事故じゃないんだ」。
「えっそうなの、こなた」?
「大丈夫だよみんなには手は出させないよ」。
うっすらと溶け込むように消えるこなた。病室は3人に戻った。



 衝撃の告白に驚き考え込む2人、いったい誰が
「誰がやったのかしら?私たちはこなたを疑っていたからありえないわね」。
「峰岸さんや日下部さんも無さそうですね。他に泉さんを信じていた人は」?
「黒井先生かなあ。先生こなちゃんを信じていたみたいなの」。
「黒井先生か。十分にありえるわね。他は全員疑っていたみたいだし」。
その時、外から陽気な歌声が聞こえてきた。
「♪WAWAWA、忘れ物ー♪」その人は病室を間違えたようだ。
「失礼しましたー。ってあれ高良さん。同級生のお見舞いですか」?
「あれっ、知り合いなの」?
「私の親戚で横浜に住んでいる谷口さんです。こう見えて何気に優等生ですよ」。
「うう何気に酷いです。所で、今聞こえた黒井先生って世界史の黒井ななこ先生?」
「えと、谷口さんが何で黒井先生のこと知っているの」?
「黒井先生、世界史の教師に欠員が出たとかで4月から俺の学校に」。
「えーそうなの、あっそういえば学校辞めるみたいな噂聞いたかも」。
「やっぱりショックだったんだね」。つかさ説明中。
理事長同士が幼馴染だったのでその縁で変わったようである。
「とっても明るい先生だけど、何か少し無理している感じがするんだ」。
「今、聞いた4月19日は確か、黒井先生の歓迎会があったと思うぜ」。
「アリバイありね。黒井先生説は確率高いと思ったんだけどなあ」。
「歓迎会の主賓が、途中で抜け出したりしたらおかしいのでないですね」。
「じゃ、友人の見舞いも済んだので帰るっす」。
再び軽い足取りで帰っていく谷口、歌は自重したようです。
「うーん、じゃ誰がゆたかちゃんを押したんだろう?変質者とか事故かも」。
「あの、こなちゃんを信じる事と、真相に気付くという事は違うと思うんだよ。だよ。」。
「つかささんの言うとおりだと思います。先生は泉さんを信じていたと思いますが、
真相に気付いたとは思えません。この2つが無いと絶対に不可能です」。
「それにニュースでは、監視カメラにも目撃者にも不審者情報無いらしいよ」。
再び考える3人、外は雨が降り出していた。
「誰にも目撃されないなんてそんな不可能犯罪・・・・・・ヒッ」。
薄気味悪い風が外の空気を薙いでいた。



ここで時系列は遡る(ゆたか入院中)山口はある疑問点を検証していた。
(状況証拠ではゆたかの犯行は疑い無い。しかし何故こなたさんの死亡に
ついて他殺や外傷の証拠が無いのだろう。やはり自殺なのか)?
こなたさんは、自宅を飛び出した他後、東武野田線八木崎駅から大宮行き
に乗った事が駅の監視カメラの映像から判明している。15分後に東岩槻駅
で降りている。これも確認済みで、この25分後の16:20分に投身自殺
している。ちなみにこの時点ではまだ警察は緊急配備等はしていない。
検死報告では、こなたが飛び降りた際に強風が吹き、背中から落ち、
地面に落ちていた少し古い包丁が背中に刺さったとされていた。
(もしかすると、同じ場所をゆたかに刺されていた?辻褄は通るが、ありえるだろうか)?
こなたは自宅のある北東に投身したが、他の方角で行う可能性もある。
「山口さん、自宅は今までは思い出深い場所でしたが、今や惨劇の場所
他の方角で投身する可能性もありえますねえ。熊ちゃん、当日の気象条件は」?
「昼過ぎから大気が不安定になり、強風が吹いていたそうです」。
「確か、数日前の予報では、快晴だと言ってたはずなんですがねぇー
地球温暖化で予報外れてしまったのかなぁー。最近多い気がしますねぇ」。
「こなたさんが、自宅の方向に投身したとしても、その瞬間に強風が吹かないと
背中からは落ちにくいはずなんですがねぇ。そう上手く行くかなぁ」。
「強風までは上手く行っても、上手く包丁の位置が重ならないとダメです」。
(こんな穴だらけの計画は不可能だ・・・・@@)!
「大石さん、直ぐに病院へ連絡してゆたかさんの入院を延すように要請してください」。
「解りました。直ぐに連絡します。何日必要ですか」?
「明日から4日で大丈夫です。それと逮捕日は岩崎みなみさんが病院へ行かないように工作を
お願いします。彼女は親友なので、直ぐには、現実を受け入れないでしょう」。
「解りました。直ぐに検討します。院長先生は、親戚なので大丈夫です」。
「それと直ぐに泉家の徹底的な家宅捜索を準備してください」。
「了解しました。2時間以内に準備しますよー。熊ちゃん高杉課長に連絡」。
「了解っす」。熊ちゃん通話中。
待っていろ、赤い悪魔、必ず証拠品を見つけ出してやる。



2時間後、泉家で家宅捜査が開始された。報道関係者は全て現場付近から
締め出され、表向きはこなたに対する捜査だと思わせておいた。
「問題は何処から重点的に調べるかである。」刑事の質問に対し、
「1 ゆたかの部屋2 それ以外の自宅 3 こなたさんの部屋でお願いします」。
「ゆたかさんが、こなたさんに罪を着せる為に、こなたさんの部屋に証拠品を置く可能性は」?
「普通の証拠品ならそれもありえます。しかし私が探しているやつはそれでは
危険が大き過ぎます。必ず自分の目の届く所に隠します」。
「こなたさんに発見されたり、家出から帰ってきた場合危険です」。
山口、大石、熊谷と鑑識2名がゆたか部屋を調べ、他の場所を残りが調べた。
山口は机や家具を手で軽く叩きながら調べていた。
「うーん、特に何も出ませんね。他の部屋かなあ」。
「大石さん。こっちも何もありません。証拠品は既に処分したのかも」。
その時机の引き出し周辺を調べていた山口が、
「大石さん、2重底になっています。中に何かありますね」。
「本当ですか、直ぐに開けましょう」。
「待った!迂闊に開けないほうが良いです。周りを調べます」。
山口は引き出しの周囲を慎重に調べる。なんと小さな穴を見つけた。
「誰かボールペンの中の芯を貸してください」。
大石から受け取った中芯をゆっくりと穴に入れる。蓋が開いていき
山口はビニール袋に包まれた証拠品を慎重に外した。中に液体が入っている。
「中の液体燃料を抜いてください。発火装置です」。
袋内の液体燃料が抜き取られ、証拠品が明らかに、それは山口の想定通りの品であった。
黒くて長方形の物体で、説明文は英語だったがタイトルは仏語だ。
「恐らく元の持ち主の趣味なんでしょうね。フランスに興味があったそうです」。
タイトルには「MORT CAHIER」とあった。
「MORT」は仏語で「死」「CAHIER」は仏語で主に、「ノート」を意味する
繋げて訳すると「死のノート」となる。
山口は中身をすばやく確認した。内容も想定通りであった。
「小早川ゆたかさん、チエックメイトです。試合終了です」。
山口は病院の方角に指を付き付け、厳かに宣言した。



ここで、死のノートがゆたかに渡るまでと事件までと事件についてまとめよう。
大量殺人犯キラが、山口いや竜崎に逮捕された後、ある事実が判明した。
死神達は、人間界のリンゴやおやつを1個食べると13日間寿命が延びることが判明。
「死神のノート」は封印される事が竜崎と死神との間で決定した。
死神たちもノートで裁くよりも、リンゴやおやつを食べる方が「いい暇潰し」だと気付いた。
死神の中に「ネギ」と呼ばれる死神がいた。ジェラス同様1人を好む死神だった。
境遇が似た、ジェラスとは仲がよかったらしい。
ノートが封印された頃、ネギが現れなくなった。 
いつもの事なので誰も気にしなかったが、封印期日になっても来ない。
リュークが見に行くと、何と砂になっていた。どうも人間を助けてしまったらしい。
ノートも人間界に落ちてしまったようだ。どうも川に落ちたらしい。
それは「元荒川」と後日判明。竜崎の元に連絡が来たのは、落ちてから3日後だった。
死神達も、リンゴが食べられなくなったら大変なので、必至に探した。
しかし、全く見当たらない。既に、所有権が人間に移ってしまったのだろうか?
「川に落ちて、使用できなくなったのでは」「拾ったやつが捨てたのでは」?
2ヵ月後、東北と中国地方で指名手配犯2名が相次いで「事故死」した。
「キラか」?捜査機関は騒然となった。しかし、それ以降は何も起こらず、5人10人ならともかく
2人では「ただの偶然」である可能性も否定できず、操作は打ち切られてしまった。
しかし、この時既にノートはゆたかの手中にあった。ゆたかはこなた抹殺を計画していた。
その際、廃工場近くの川辺で、黒いノートを拾った。
ゆたかは、本来なら直ぐに実験をしたかったかもしれない、しかしそれでは、入手直後に
裁きまくり、直ぐに竜崎に注目された、第1のキラの2の舞である。
ゆたかは実験も最低限に止め、計画の時節到来を待った。2年以上も魔性のノート使用を
我慢していた点(忍耐力)に置いては、ゆたかは第1のキラに勝っていたと言えるだろう。
計画の途中で、ゆたかは不良2名を抹殺している。
彼らの役目は、包丁と陶製ガソリン缶を購入し、ゆたかの家まで運ぶと言う役割だった。
彼らはその後、バイクで東京に出かけ、暴走行為が度々報じられる、首都高湾岸線
で「暴走行為を起こし事故死」している。この時も単なる事故死で処理されてしまった。



いよいよ計画実行となるが、ゆたかには1つ欠点があった。「実験不足」だ。
本来なら、白石他1名の暴行から、成美ゆい自殺まで流れを操るのがベストだっただろう。
その上で白石も死亡し、事件は解決が最上だったであろう。
しかし、ノートの実験が不足していたので、確実な方法が必要だった。
暴行事件の結果でノートを使用するという事である。
白石が来なかったり、返り討ちに遭う可能性も否定できない。
その際は「翌日以降に事故死」辺りが妥当だろう。
公園が見える範囲に潜んで、見ていた可能性が高い(電話等で信用できなかった)。聞き込みの結果は当たり。
公園近くの男子児童が、「しゃがんで、ノートに何かを書いている赤毛の少女を目撃」
していた。危険な行為だったが、ゆたかの身長が低すぎて気付かなかった。
ノートに記載されていた内容は以下の通りである。
成美ゆい 自殺 2008年11月15日 生きる希望を全て無くし、東急伊勢崎線踏切に入り、
22:36分頃特急スペーシアけごん239号新栃木行きに撥ねられ死亡。
白石他1名は死なずに済んだ。白石は名前が判るが、もう1名は知らない。
裏サイト等で本名を名乗る人はいない。白石も知らなかった。(千葉県の高校生)
白石だけを消す事は可能だが、片方だけだと疑念を持たれる恐れもある。
もう1人が危険を感じ警察に自首する危険性もある。足が付く可能性大。
裏サイトの性質が、2人を助ける事になった。
数日後、ゆたかは学園でこなたを罠に嵌め、友人たちから孤立させる事に成功する。
こなたとかがみ達の間に修正不可能な亀裂を生じさせた。
以後、こなたは家も飛び出し、黒井先生の救いの手も拒絶し、
二度と出られない袋小路へと追い詰められて行く事になる。
竜崎が手を休め、ケーキを食べていると、黒い影が降りた。リュークだ。
「竜崎、ネギが持っていたノートの変な噂を聞いたぜ」。
「どんな噂ですか」。
「ネギのノートには一つだけ妙な能力があるらしい。しかし内容については
死神大王も含めて誰も知らないんだ。都市伝説ってやつかも」。



翌年4月、ついにゆたかは泉親子抹殺に着手する。
泉そうじろう 服毒死 2009年4月10日12;00に電話をかけ、2分後に死亡。
泉こなた 自殺 2009年4月10日12;00頃に電話を受け、特急で幸手駅で下車。
タクシーで帰宅し、その後家を飛び出し、タクシーで八木崎駅まで行き、大宮行きに乗り
東岩槻駅で下車後、廃工場に行き、生きる希望を無くし、同日14:35分頃
屋上から北東方面に証拠を残さず投身し死亡(北東に幸手市がある)。
ちなみに秋葉原で高良みゆきが3万円を渡したのは、ゆたかに、
「お姉ちゃんが心配なので、少し様子を見てきて欲しい」。
と要請し渋々ではあったが了承。 その際にゆたかは2万円を渡した。
(残りは高良みゆきが出した)。11:50分頃に電話で結果を知り
計画を実行に移した。(先に死亡状況を書いておき、後で空欄に名前を書くのは有効)。
第1のキラがFBI捜査官12名を殺害する際にも使用)。
ゆたかは自転車を盗み廃工場へ(高校は早退・仮病。警察には気分が悪くなり公園で休息と偽証)。
こなた自殺時点では、まだゆたかは警察には証言していない(こなたを騙した可能性大)
警察がこなたを容疑者として手配したのは午後4時過ぎ(ゆたかの聴取は6時前)。
報道されたのは午後3時(ゆたかは5時のニュースを見て、警察に出頭)。
こなたは目撃があるが、ゆたかは無い(強風で住民外出自粛)?
数日後、ゆたか駅のホームから転落し救助(落ち方が不自然、しかし誰もいなかった)。
竜崎はここらで休憩し、テレビでも見ようとした。・・・・その時、
PCの電源が自動的に入り、画面に大きく「W」と表示される。
「竜崎、緊急事態です」。
「ワタリ、何か有りましたか」?
「検察への移送途中で事故が発生し被疑者が逃走しました」。 



「この時間は、予定を変更しまして、午後2時ごろ発生しました、篭城事件を報道します」。
「姉と、作家の泉そうじろうさん親子を殺害したとして、先日逮捕された埼玉県幸手市の
高2の被疑者が、検察への移送中に、発生した事故に乗じて手錠を外し逃走、近くの幼稚園に、
ナイフを持って押し入り、園児と職員、合わせて25名を人質に立てこもっている模様です」。 
「危険ですので、付近の住民の方は外に出ないようにお願いします。」
「竜崎、これはデスノートでしょうか」?ワタリの疑問に対し、
「ガス管を点検中に、爆発事故が発生し、通りかかった移送車両が横転
被疑者が手錠の鍵を奪い逃走・・・・ガス会社作業員は2名死亡していますが、
刑事と警官3名は、重傷ですが生きています。ノートなら全員死んだ可能性が高いです」。
ノートは全て回収しましたし、隠しがあっても、監視下での使用は難しいでしょう」。
「ノートとは、無関係の可能性が高いですね。なるべく早く解決しましょう」。
警察車両から、続々と警官や、機動隊が降りて行く、警視庁や千葉県警等からも
続々と応援が駆けつけつつあった。更に、警視庁がが誇る「対テロ特殊急襲部隊」(SAT)
も到着した。近くのマンションの屋上には万一に備え、狙撃隊も配置された。
「竜崎電話が繋がりました。竜崎と話したいそうです」。
「山口です。ゆたかさん、怪我は無いですか。負傷していれば、病院で治療します」。
「かすり傷だから、大丈夫です。それと、中の人は全員無傷ですので安心して」。
「ありがとうございます。そこでしばらく休んだら、出て来て頂けませんか」?
「ガス爆発事故は偶然の産物です。これ以上は無意味では無いでしょうか」。
「確かに、ガス事故は偶然だよ、でもそれだけで判断するのは、危険じゃないかな、かな」?
「貴方がノートを隠し持っていないかどうかは徹底的に調べましたが」?
「さっきニュースで、福岡で傷害犯が、金沢で窃盗の常習犯が逮捕されたの。3分後に消すね」。
「直ぐに確認してください」!竜崎の指示で、ワタリと大石が慌てて電話で確認する。
「竜崎、福岡の傷害犯が心臓麻痺で死亡しました」。
「うーん、金沢の方もやられました。取調べ中にお亡くなりに」。
「間違いありません、被疑者はノートをまだ持っています。しかしどうやって隠したのか」?
竜崎の質問に対し、ゆたかはまるでゲームを楽しむかのように、
「今から説明してあげるね。山口さんのような天才でも解らないのは、当然だから安心して」。



ゆたかは嬉々として、ノートが見つからなかった理由を話し始めた。
「他のノートは知らないけれど、私のノートには不思議な能力があるんだよ。だよ」。
「最初の1ページだけ、ノートを透明に出来るの。私以外には、見る事は出来ないよ」。
「下に落ちたりしないようにも出来るの。お姉ちゃんの前で試したけど大丈夫だった」。
「忘れていたけど、ナイフは公園で奪ったの。絡んできた人がいたので、謝る振りをして
名前を書いてあげたんだよ。2人とも公衆トイレの横に転がっているよ。
既に竜崎の下には、公園で、若い男性2名の遺体発見の知らせが入っていた。
その時。聞き覚えのある声が聞こえた、以前キラ事件で共に捜査した刑事の声だ。
「竜崎じゃないですか。て事はやはり相手はキラ」?
「はい、キラです。松田さんと、相沢さんはどうしてここに」?
「さいたま署に容疑者を移送した帰りに、応援に行くように言われたんだ」。
「松田、お前の銃の腕で何とかならんか、これ以上犠牲者が出るのはまずい」。
「そうですね、未成年者ですが、キラである以上止むを得ないでしょう」。
「松田さん、ダメですよ。相手の身長は138センチしかありません」。
「138って、小学生低学年と同じじゃないですか。人質を盾にされたら、
狙撃は無理ですね。何と狡猾な、月・・・第一のキラより性質が悪いのでは」?
その時、制止を振り切り現場に入ってきた人達がいた。かがみ等3人だ。
「小早川さん、もう止めてください」。「これ以上罪を重ねないで」。
「私の名前を書いて、それで終わりにして」。
「かがみさん、だめっ」!「お姉ちゃん、ダメだよ」。
「私達は、こなたを助けられなかった。1人くらいこなたのそばに行ってあげないとね」。
「こなたは、天国でも問題起こしそうだから、しっかり見張らないとね」。
「かがみさん、将来有望な貴方達が死んではダメです」。
「そうだね、私が書きたいのはかがみ先輩達の名前じゃないよ。だからダメ」。
「先輩達には、計画の役に立ってもらったから恨みも無いし」。
「誰の名前ですか、聞くまでも無さそうですが」。
「山口さん、貴方の名前だよ。山口って言うのは偽名でしょ」?



「はい、とりあえず竜崎と呼んで下さい」。苦笑して答える竜崎。
「それも偽名みたいだけど、竜崎さん、私のノート持っているよね」。
「はい、持っています。焼いたりしたら貴方の記憶が飛んでしまうので」。
「偽物とすり替えたりする時間は、無いはずだよ。だよ」。
「はい、この事態は想定外でした。対応する時間は全くありませんでした」。
事実、竜崎はここに来て、初めてノート(1ページ分)がまだある事を知ったのである。
「竜崎さんが持っているノートは本物だよ。私には判るよ。感じがするの」。
「ノートに書く際は、心臓麻痺、眠るように死亡で良いですか」?
「OK。他の人は書かないよ。竜崎さんが死んだら、ノートを持って投降するよ」。
「ありがとうございます。ただし、私以外の名前を書いたら生命の保証は出来ません」。
「じゃ、早く書いてね。ここから見える位置でお願いするね」。
「1つ、最後の願いがあるのですが、良いですか、直ぐ終わります」。
「良いよ、あっ助命はダメだよ」。余裕の表情を見せるゆたか。
「最後におやつを食べさせてください。この時期だと、苺大福と、桜餅が良いですね」。
「うん、良いよ。誰かに買いに行かせてね」。竜崎は、近くの評判の良い菓子店の場所を教えた。
「かがみさん、この前の何か奢るという約束を果たしてください。予約は無くても買えます」。
「そこの半月堂さんで買ってきてください。饅頭もあると良いですね」。
かがみは悲しそうな顔で買いに行き、10分ほどで戻ってきた。
「竜崎さん、本当にいいの?食べ終わったら、死んでしまうんだよ」。
「竜崎、考え直してください」。かがみとワタリが止めようとするが、
「彼女が持っているのは、最後のノートです。もうこれ以上キラ事件で
死者が出ることは無くなります。私の名前が最後に書かれる事で、キラ事件に永遠に幕が引けるのであれば」。
全員竜崎の覚悟に、言葉を発することも出来ない。竜崎はおやつを美味しそうに食べた。
やがて「最後のおやつ」も終わり、竜崎はペンを手にした。
「ワタリ、私が死んだら、後継者達をお願いします。(MとN)支えになってください」。
全員竜崎のそばから離れる。つかさやみゆきは泣いている。
竜崎は迷わずに名前を書いた・・・しかし、最後の1文字を書こうとした時、無線が騒がしくなる。
「入ってはならない。下がりなさい」。誰かを制止する複数の声だ。竜崎の手が止る。
「ゆたか、もう止めて」!振り向くゆたか、そこに居たのは…?
最終更新:2022年05月04日 17:02