脱却


「父さん。何、庭で燃やしてるの? (≡ω≡.)?」
そうじろう「おっ、こなたか。おかえり。ちょっと書斎を整理しててな、紙くずを燃やすついでに焼き芋焼いてるんだ。お前も食べるか? 」
「う~ん、これからネトゲするから良いや。お父さん食べなよ。 (≡ω≡.)」
そうじろう「そうか…… 」

そうじろう「おい、こなた。ちょっと良いか? 」
「良くな~い。ちょうどネトゲで良いところなの。 (≡ω≡.)」
そうじろう「分かった。キリが良くなったら下に来てくれ。」
「何時になるか分からないよ? (≡ω≡.)?」
そうじろう「それでも良いぞ。」
「(夕方からなんか落ち着いてて変だな、お父さん。) (≡ω≡.)」

「お待たせ~ いや~結局2時間もかかっちゃったよ。 (≡ω≡.)」
「で、なんの用? (≡ω≡.)?」
そうじろう「ああっ、美味しいケーキを買ったんでね。お前にもどうかな? って思ってな。」
そうじろう「こなた。どのケーキが良い? 」
「それだけ? そんなの箱持って部屋に来てくれればいいのに~ (≡ω≡.)♪」
そうじろう「それもそうだな! アハハ…… 」
そうじろう「紅茶で良いか? 砂糖は入れるんだっけな。」
「モグモグ…… うん、ありがと。 (≡ω≡.)」
「美味しいね、このケーキ。 (≡ω≡.)♪」
そうじろう「こなた、このケーキ好きか? 」
「うん、気に入ったよ。 (≡ω≡.)♪」
そうじろう「そうか…… ここのケーキは母さんも好きだったんだよ。アイツ細い癖に、ここのケーキだけはバクバク食べてね…… 」
「へ~ 母さんも好きだったんだ…… (≡ω≡.)」
「ごちそう…… さ…… Zzz…… Zzz(≡ω≡.)」

そうじろう「やっと寝たか…… 」
そうじろう「ケーキの趣味までアイツと一緒か…… 」

「(う~ん、よく寝た~ って、ここ何処? ) (#ω#.)?」
「(病院っぽいけど、なんでこんな所で寝てるんだろう。) (#ω#.)?」
「誰か居ませんか~? (#ω#.)」
そうじろう「おっ…… やっと起きたか。どうだ気分は? 痛いところは無いか? 」
「お父さん。ここ何処? なんでこんな所で寝てるの? (#ω#.)?」
「? なに、これ? 包帯? なんで顔に包帯が? (#ω#.)?」
そうじろう「なあ、こなた。母さん死んで何年経つかな?」
「質問に答えてよ! Σ(#ω#.)!」
そうじろう「15年くらい経ってるんだよな。」
そうじろう「なのに、俺はいつまでもかなたの思い出に浸っているんだよ。」
そうじろう「正直、忘れたいんだよな。かなたの事。」
「!! Σ(#ω#.)!」
そうじろう「そりゃ、愛してたよ。この世で一番な。」
そうじろう「だけど、いつまでも死んだ者が足枷になってちゃ駄目だとも思うんだ。俺はかなたから解放されるべきなんだよ。」
「父さん…… (#ω#.;)」
そうじろう「だからさ、ぜ~~んぶ燃やしちまった。かなたの思い出、記録、形見、全てだ。」
そうじろう「不思議なもんでな、涙なんか一滴も出ないんだよ。むしろ、解放感すら感じたよ。」
そうじろう「でも、まだ足りない。最後の仕上げが残ってたんだ。分かるよな? お前だ、こなた。」
そうじろう「お前は憎らしいほどかなたに似たからな。どんなに形ある物を捨て去っても、お前の顔を見るとすぐに思い出しちゃうんだよ。」
そうじろう「だから、お前からも『かなた』を消したんだ。」
「まさか…… この顔の包帯は…… (#ω#.lll)」
そうじろう「お医者さんはもう包帯を取っても良いと言ってたな。どれ、取ってあげよう。」
そうじろう「…… ほら見ろ。これがお前の新しい顔だ! 」

こなた「これが…… 私の顔? 」

こなた「こんな顔、いや…… 」
そうじろう「何が嫌なんだ? 有名な声優に似せた顔にしてやったんだぞ。 ほら、オデコ出すと可愛いぞ~ 」
こなた「すぐに治して! お母さんから貰った顔に戻して!! 」
そうじろう「あんな女の顔なんかに戻りたいのか? それにもうお前の昔の顔のデータも捨てちゃったからな。戻すにも資料が無い。」
こなた「私の部屋のアルバムに写真があるよ! PCにもデジカメのを取り込んだデータもあるよ! 」
そうじろう「残念ながら、お前の部屋にあった写真は全部燃やしたし、PCも面倒だからHDDをレンジに入れて壊した。」
そうじろう「もう諦めろ。折角生まれ変わったんだ。友達の居なかった人生を忘れて楽しめばいいじゃないか。」
こなた「友達……そうだ! 学校は? 学校はどうしたの? かがみん達は? 」
こなた「かがみんに頼めば写真あるだろうし、それを使えば……」
そうじろう「糖日部に帰ると言うのか?諦めなさい。なにせここは――」

そうじろう「アメリカだ。」

こなた「嘘……」
そうじろう「驚いただろ? この日のためにグリーンカードを取得しておいたんだよ。」
こなた「こんなの…… おかしいよ…… 父さん……」
こなた「母さん…… 母さん…… 」
そうじろう「これからは親子二人でアメリカンライフを楽しもうじゃないか。なぁ? こ・な・た。」

かがみ「こなた…… 黙って学校辞めるなんて…… 酷いよ…… 」
ニュースキャスター「――アメリカの住宅街で高校生による銃の乱射事件がありました。」
ニュースキャスター「犯人のコナータ・イズミ(18)は父親を銃で殺害の後、近所の高校に進入し銃を乱射、五名殺した所で駆けつけた警官隊に射殺されました。」
ニュースキャスター「コナタ容疑者が重度の薬物中毒者だった事もあり、学校は深い悲しみに包まれております。さて、次の――」
かがみ「物騒ね~ それにしても同姓同名かしら? こなたなんて珍しいわね~ 」

最終更新:2024年04月15日 23:12