タイトル | 創神のアルスマグナ | ![]() |
ブランド | ninetail | |
ジャンル | 錬金術学園RPG | |
メディア | DVD-ROM、ダウンロード | |
原画 | まさはる/椎咲雛樹/なるみすずね | |
シナリオ | あくまっこ | |
発売日 | 2020/3/27 | |
価格 | パッケージ版:9,800円(税抜) ダウンロード版:9,800円(税抜) |
855 名前:創神のアルスマグナ 選評者[sage] 投稿日:2020/07/07(火) 00:40:34 ID:CPBNkTmk
創神のアルスマグナ
ブランド名: ninetail
発売日 : 2020/03/27
原画 : まさはる , 鳴海鈴音(なるみすずね) , 椎咲雛樹
シナリオ : あくまっこ(久巳友和)
ゲームジャンル : 錬金術学園RPG
定価 : ¥9,800
○はじめに
私はninetail、dualtailの作品は大好きだ。
ただ今回は一線を越えてしまったので投稿する。
ちなみに本稿はVer.1.13時点のもので修正された過去のバグ・バランス調整については問題無しとしている。
○ADVパート
- ストーリー
舞台は塵灰と呼ばれる触れたもの一切を塵に返す物質に侵食され、緩やかに破滅に向かっているアルケウス大陸。
錬金術師としての高みを目指す主人公が王都にあるカリオストロ学院に入るため上京する所から話が始まり、
錬金術師として活動(冒険と戦闘)をしつつ時折現れる選択肢や鑑賞シーンのフラグでロウルートかカオスルートかに分かれてエンディングとなる。
評価は「普通につまらない」といったレベル。特筆すべき点は無いがそのつまらなさゆえ本気で読まず、粗や矛盾があってもスルーしてしまうタイプ。
問題点は一言で言うと「くどい」。
ADV:RPGが4:1ぐらいにテキスト量が多い。
いつものようにADVでボス戦前半描写→RPG戦闘勝利→ADVでボスが健在な状態から倒すまでをで描写。というのはいいのだが
戦闘前描写が長すぎて「よっしゃこいつを(RPG戦)でぶっ倒すぞ!」というテンションが霧散する。
主人公も何の逡巡も無く戦闘を開始した割に、敵にとどめを刺す段階になってためらい、敵を完全に無力化しているわけでもないのに自問自答モードに入り仲間を危険に晒す。
悪落ちした神の眷属を救うために手術のような事をする際も迷わず切開し、重要な器官に施術する直前になってまた自問自答モードで悩みだし時間を無駄にする。
その間、当然眷属は切開された状態のまま放置されている。
精神的に未熟な主人公が成長する物語ならまだ理解はできるが、最後までこの傾向は変わらない。
ロウルートラストでもとどめをためらい事態を悪化させたうえ、一時は完全にやる気を無くすが、ヒロインの応援で何とかやる気になる始末。
敵役も3人ほどしかいない為、(敵が)敗北or失敗→逃走→再登場が繰り返されくどさに拍車をかける。
「テンポ良く爽快感を味わえる」の間逆を目指したらこんな感じになるだろうか。
例外はカオスルートで、過去訪れた場所4箇所を再訪問し理界の果てでラスボスを倒してエンディングとなる。
悪落ちした主人公による陵辱エロなども一切無く打ち切りエンドかと思うほどあっさり終わる。
- UI
UIは問題無い。シーンスキップ等もあり。
主人公は声無し。RPGパートのみ声ありになっている。
文章にルビをふる機能が無いのは減点対象。
理界、塵界、塵灰、灰魔、塵界侵食、といった単語が頻出するが、それぞれ読みは
ソシエ、オーズ、ダスト、かいま、オブリビオン、である。
種類は多くないので慣れれば済む話ではあるが、慣れるまではひっかかる。
○PRGパート
RPGと言ってもゲームによって楽しむ部分は違う。
ストーリーを追うのを楽しむもの、自由なキャラ育成を楽しむもの、広大な世界を旅するのを楽しむもの、等々。
今作は空虚なクレスト収集ゲーである。
- 拠点
RPGパートはADVパートの区切りがついた時に拠点画面のような所から始まる。
「物語」項目からメインストーリーかサイドスートリーを選んでマップへ移動し攻略開始となる。
アイテムの購入・作成やパーティ編成はマップでもできるので、ここでやるのは実質ストーリーを選ぶだけである。
サイドストーリーは数が少ないので選ぶ余地も少ない。
何度でも挑めるフリーダンジョン1~9が段階的に開放されていくが、それ以外のメイン・サイドストーリーはゲーム自体の周回をする以外再挑戦はできない。
- マップ
物語を選びADV形式での導入が終わるとダンジョンのマップ画面になる。
マップは3Dで描画されているが要素は簡略化されており、線で繋がったマスとマスを1マスずつ移動していくタイプ。
ドラッグでスクロール可能で最初からゴールまでの道筋が確認できる。稀に中継地点に達すると後半マップが表示されるものもある。
線には通常のものと一方通行の2種類があるが、分岐があっても大抵は合流するのであまり意味が無い。
ローリスクローリターンとハイリスクハイリターンの選択を迫るマップはおそらく2つしかない。
マスの種類には、回復、錬金素材獲得、クレスト獲得、敵出現、罠、何も無し、がある。
回復はHPMP全回復で何度でも使用可能、それ以外は一度踏むと何も無しになる。
ギミックは鍵と鍵のかかった扉ぐらいしかない。それも1マップ1組だけなので頭を使う要素ではない。
3Dで描画されているのにそれを活かした立体的な構成も無ければ、
十字路の左右の先にいる中ボスを倒すと中央への道が開ける、などというものも無い。
謎解き要素も無く構成も単純なので、迷路ゲーム的な意味でのダンジョンを攻略する楽しみといったものは皆無。
罠はHPかMPにダメージを受ける。ドラクエにもダメージ床があるし存在自体はいいのだが、
回復マスの手前や直後に設置されていて即回復可能だったりと意図のよくわからない罠も多い。マップの作成にはあまり力を入れていない、というか適当にやった印象を受けた。
(一応、一方通行で罠→罠→敵→敵、と繋がるような意味のある罠もあるが)
実際のところ罠は本来の効果よりもエフェクトも厄介。
そもそも今作のマップ移動は非常にもっさりしている。
隣のマスに移動するだけでも、現在位置を表すコマが「加速→等速移動→減速→次のマスに到着」という挙動であり、コマが移動している間は入力は受け付けない。
コマの移動後はコマが画面中央にくるようマップがスクロールされるが、その次のコマが画面外という事も多い。
コマの移動中に画面をドラッグでスクロールし、次の移動先の準備をしたくなるが、そういった事は一切できない。
コマの移動中に次の移動先を先行入力したり、2マス先をクリックしてススッと移動したりといった事もできない。
そこに先述の罠である。マスに止まると2~3秒ほどのエフェクトが発生した後、罠にかかった旨のメッセージが表示される。
ゲーム的な影響よりもプレイヤーの精神にじわじわとストレスを与えてくる。
また、3Dにした弊害かシーンの遷移に時間がかかる。マップ→戦闘、戦闘→マップ、マップ→マップ(クイックロード)、などそれぞれ3秒弱かかる。
なお、マップからの撤退はできない。クリアするか、親切に「マップ挑戦直前のデータをロード」機能が用意されているのでそれを利用するしかない。
他、マップの拡大・縮小ができない、クイックセーブ・クイックロードのショートカットキーが無い。(そもそもADVと違いキーボードを全く使わなくなる)といった欠点もある。
スクロールのしすぎで現在位置がわからなくなった時はワンクリックで現在地に戻るボタンがあるのは数少ない評価ポイント。
- 戦闘システム関連
今作はステータスがシンプルになっており、HP・MPと
ATK:物理攻撃力
DEF:物理防御力
TEC:素早さ、クリティカル率、デバフ成功率
MND:魔法攻撃力、魔法防御力、デバフ耐性
の4種に簡略化されている。
他に属性耐性、状態異常耐性があるが、属性耐性は基本的に意図して上下させるものではなく、状態異常耐性に至ってはマスクデータとなっており表示する事すらできない。
パーティは5人で編成され、装備は武器が1つとクレストが4つ。
武器(後述)はステータス上昇の他に基本的に8つのアクティブスキルを持ち、クレスト(後述)は1~4つのパッシブスキルと、ステータスと属性耐性の増減を持つ。
パーティメンバー、武器、クレストの構成を模索し有用な組み合わせを見つけて強敵を倒していくのがこのゲームの面白さだったらよかったのになぁ。
仲間の数はほぼ5人。途中イベントでの一時的な増減があり4~6人になり、ロウルートなら終盤でようやく8人になる。そのためパーティ編成で悩んで楽しむ余地はほぼ無し。
- 戦闘
戦闘はターン制。敵を攻撃すると奥義ゲージが貯まり3つまでストックできる。
奥義を使用すると攻撃行動(語弊あり)を取った味方のキャラとキャラの行動の間に敵が割り込めなくなり早いキャラから遅いキャラまで一気に攻撃できる(アサルトチェイン)。また参加人数×10%のダメージボーナスがつく。前作、前々作と比べると大人し目で、武器によっては奥義スキルより通常スキルの方が強いものまである。
また、バフ・デバフが豊富で味方にバフ15個、敵にデバフ10個なんて状況もある。
バフ・デバフはキャラの顔グラの所にアイコンで表示されるが、左下のボタンからより詳細な情報、残りターン数と効果説明を見る事ができる。
欠点は「バフ消去」を食らった時に何を消されたのがすぐに把握できないあたりか。
フィールドエフェクトというものもあるが今作ではほぼ死に要素。
ちなみにこれはクレストを集められた場合の話で、高火力奥義チェイン瞬殺もバフデバフ山盛り持久戦も、クレストが無いと不可能。
欠点はキーボード操作不能なこと。何度も同じ戦闘を繰り返す事になるので、マウスで仕様スキルをカチカチするよりも
キーボードの1~8にスキルの1番目から8番目が割り振ってあれば、「33745」のように一瞬で入力が可能になったのに。
自動戦闘もキー1つで開始できればだいぶ楽。
- 武器
武器はキャラ毎に装備可能な系統が決まっており、主人公はガントレット系、別のキャラはハルバード系、といった感じで、違う系統の武器は装備できない。
多いキャラは18種の武器を持つが、少ないキャラは3種しかない。
入手手段は素材を集めて錬金術で合成。新たな武器を合成するとより高ランクの武器のレシピが開放される。
素材は基本的に1~8までランクがあり、同じ素材4つを合成して1ランク上位の素材を作成できる。
が、最初の1個だけはマップに落ちてるものか敵のドロップで手に入れる必要があり、それまではいくら下位の素材が余っていようと上位の素材レシピは開放されない。
これは通常のRPGでもストーリーを進めて新たな町に行くまで強い装備が手に入らないのと同じなので、せっかくの錬金術設定を薄めてる程度の問題。
アクティブスキルは武器に属しているので、武器1がスキルABC、武器2がスキルABDだった場合、スキルCとDを同時に使う事はできない。
同じ武器系統でも回復スキル有りと無しが混在していたりするため、高位の武器を作っても現状の武器の方が使い勝手が良く使い続けるというケースも多い。
武器が上位になるとスキルも上位(効果だけ見れば上位互換)のものになる事があるが、MPコストパフォーマンスが低下し、リキャスト(戦闘中再使用可能になるまでのターン数)も増えるので、全体として見れば上位互換にはならない。
それらの要因で、高位の武器を作れた喜びを味わえない事もままあるが、逆に言えば単純に最強の武器というものが無く、編成時に武器選択の幅があるという事でもあり、個人的には良いと思う。
ただしランクBの武器は不要だと思ってもランクAのレシピを出す為にはランクBの武器を作らざるを得ない点は減点。
レシピで武器の性能は確認できるのだが、レシピすらない武器の性能は確認できないので、AのためにいらないBを作ってAのレシピで性能確認したら、Aもいらなかったというケースもある。
- クレスト
敵から得られるアクセサリーのようなもの。
286種類ほどあり、誰も一度も使わないようなゴミから戦力が劇的に変化する優秀なものまである。
クレストに関するUIは非常にクソで、編成画面のメニューでの表示が「クレスト」だったり「創神」だったり統一されてないレベル。
一覧表示では所持スキルのアイコンとその数値しか見る事ができないうえ、それがかなり小さい為探していると非常に目が疲れる。
ステータスの増減は表示されないため、小さいアイコンで『魔法攻勢[20]』(おそらく魔法によるダメージが20%上昇する)を見つけたと思ったらMNDが-50で微妙なクレストだった、なんて事もある。
『魔法攻勢』で絞込み検索ができる機能などがあればいいのだが、あるのは「攻撃支援系」「威力上昇系」などどういった基準でカテゴライズされているのかよくわかない9種類の絞込みのみである。
また、スキルの効果についても1行程度の簡素な説明がなされるだけでよくわからない。
効果が重複した際も加算なのか乗算なのかどちらか一方のみ効果発揮なのかわからない。
おそらく開発関係者以外でスキルの効果をしっかり把握している人はいないと思われる。
一般プレイヤーはクレスト選択で悩むと言っても一部のわかりやすい効果を持ったクレストに限った話で
286種あってもゴミクレストと意味不明スキルを除くと構成の自由度は想像よりずっと少ない。
とは言っても、前述の通り新規武器の入手は戦力の強化に結び付かない事も多いため、戦力は主にクレストで強化する事になる。
4つのクレストの組み合わせで攻撃力を劇的に増やしたり、防御を固めたり、持久力の伸ばしたりとできる事は多岐に渡る。
が、これが悲劇の発端でもある。
クレストの入手方法は(ADVでの説明と大きく離反して)敵を倒した時のドロップがメインとなる。
- パーティ強化の為に優秀なクレストを入手する必要がある
- 実際に入手するまで優秀かゴミかはわからない
- クリアしたマップに再挑戦はできない。敵出現マスも1戦闘で消える
- 今相手にしている敵が今後も出現するかはわからない(特定マス固定の敵もいる)
結果、新たな敵が現れる度にクレストを落とすまでセーブ&ロードである。さらに
- 戦闘開始、戦闘終了、クイックロード、の遷移時間だけで10秒ほどかかる
- ドロップ率が低い
- そもそもその敵がクレストを落とすのかわからない
が加わる。
とにかくセーブ&ロードの繰り返し。苦痛である。
ゴミだった場合1つ拾って確認すれば済むが、逆に優秀で5人分揃えたいといった場合5回頑張る必要がある。
一応、救済はある。ドロップ率UPのクレストがあるのだ。
パーティメンバー5人各キャラに2つずつぐらい装備させればドロップ率は2倍ぐらいになる。
ゲーム慣れしている人はすぐ気づいたと思うが、パーティ強化の為のクレスト集めの為に装備枠2つ潰して弱体化させるのは本末転倒だ。
ボス戦だけ本気を出す?残念ながらボスもクレストを落とす。しかも優秀な事が多い。
高耐久のボスを相手にセーブ&ロード、仮にテキストが良かったとしても没入感や盛り上がりは台無しだろう。
参考として、筆者がドロップ率1.75倍の状態でとある雑魚のクレストを拾うまでにセーブ&ロードを繰り返し倒した数は94体。
クレストマスから目当てのクレストを引くまでロードした回数は65回である。
もちろん運次第なのであっさり落とす事もあるが、クレストは286種類ほど。そんなに幸運ばかりは続かないだろう。
ちなみに難易度は1:[イージー、ノーマル、ハード]、2:ベリーハード、3ナイトメア、の5種類あり、高難易度の方がドロップ率が高くなり1ではクレストを落とさない敵が2、3では落とすようになったりする。
しかし、1、2、3で出現する敵に変化があり、ドロップするクレストも変化する。
なので1でしか取れないクレストと3で集めた方が効率的なクレストがあるが、そういった情報は(ゲーム内には)どこにも無いので、やはりセーブ&ロードで目の前の敵のクレスト性能を最低1回は確認しながら進むしかないが、その敵がクレストをドロップするとは限らない。
○余談
このゲームは周回前提である。
ロウルートヒロイン別エンド×3+カオスルートで4周、というわけではない。
それだけならよくあるADVのように分岐点でセーブして最短で各エンドを見ればいいだけだ。
RPG部分が周回前提の作りになっているのだ。
1週目は仲間は多くて8人、内魔法系キャラは1だけである。
しかしクリアすると魔法系キャラ5人とサポート系キャラ1人が仲間に加わり、
この辺りからようやくパーティ編成に頭を悩ます事ができるようになる。
(どうやっても使い道の無いキャラもいるが。バランス改善パッチ欲しい)
クレストもベリーハード限定、ナイトメア限定のものがあり、システム的に周回を推奨していると言えよう。
ノーマルが終わったら周回でベリーハードで新規クレスト目当てにセーブ&ロード。
ベリーハードが終わったら周回でナイトメアで新規クレスト目当てにセーブ&ロード。
クレストが全部集まったらようやくクレスト枠4つ解禁と同時にゲームクリアだ。
おまけのナイトメアのオブリビオン深度4(敵にレベル上昇補正がかかる。メリットは無い)に挑むのもいい。
○まとめ
これはクレスト装備欄をつぶしてドロップ率を上げクレストをセーブ&ロードで集めるゲームである。
戦闘に関する部分を見て面白そうだと思った人もいるかもしれない。実際ある程度は面白い。
ただ、勝てると判った相手にロードして何十回も挑むとなると面白さはどこにもない。あるのは単純作業の疲労と空しさだけだ。頑張っても得たのはゴミクレストという事も多い。
しかし、それでもセーブ&ロードが最前の手段だ。優秀なクレストを見つけて揃えなければパーティの強化もままならない。
プレイ時間の大半がゲーム性皆無のセーブ&ロードになるこのゲームは最早ゲームとは呼べない。セーブ&ロード作業アプリである。