2021年 総評

Cuteness is justice(8/27)《Vanille Macaron》

2020年、あらゆる界隈を巻き込んだ不況と混乱の中で催されたクソゲーオブザイヤーinエロゲー板(KOTYe)は前代未聞の病に見舞われた。
不快な主人公、地雷ヒロインにご都合主義展開とクソのストロングスタイルを備えながら、テキストにキラキラルビの細菌を蔓延させ、
未知のパンデミックを引き起こした『LOVE・デスティネーション』がKOTYe2020を制した。
発足してから13年経過してもなお新たなクソ要素が発見される事態に対し、2021年に臨む歴戦の猛者たちは胸を高鳴らせていた。
KOTYeの冒険者達が乗り込むキャラベル船は、新たなる香辛料を求めて航海を続けるのである。

3月下旬、2021年のKOTYeはまさかの来訪者に慌ただしく動き始めた。
桜の開花がパンデミックで傷ついたこの国に春の到来を告げる頃、春告鳥としてウグイスカグラの『冥契のルペルカリア』がKOTYe開演の知らせを伝えてきたのである。
上質なシナリオで固定ファンを掴んでいる同ブランドだが、届いた選評は実態とあまりに乖離した宣伝文句に踊らされた、哀れな白鳥の叫びであった。
青春譚、恋愛譚、幻想奇譚の3本柱をコンセプトに据えているが、前2つは形骸化され、実際は虚構世界で展開される陰々滅々としたエピソードが続く。
各登場人物の長く重苦しいモノローグにより陰鬱さを極め、選評者をして「一個も明るい話が無い!」と言わしめた。
これを「ブランドの作風」と言えば聞こえは良いが、単に「ご新規さんお断り」とも取れる為、擁護派からも一定の支持を受けてしまう。
かくしてKOTYeに飛来した『冥契』だったが、このような予想外の良作ブランドが到来する例は本年の特徴である。
仮に「世間」である程度評価されていたとしても、たった一つの「裏切り」により、人の愛憎はオセロの如くひっくり返る。
『冥契』の演じた悲劇は本年のプロローグとして、後に檜舞台に上がる役者達を暗示していた。

ウグイスカグラの衝撃的な来訪に続いたのは、同月に発売されたCalciteの『女勇者と幻想カジノ~求む亜人巨乳美女ギャンブラー~』である。
何を隠そう、Calciteはかつての大賞作『SEX戦争』を輩出した名門スワンアイの流れを汲むブランド。
定番ジャンルとして異世界物の抜きゲーを続けてきた同ブランドだが、ついに4作目でダウトとなった。
ご都合主義展開や活かしきれないキャラ設定とクソゲーのお約束を押さえた本作だが、最大の問題は流用によるCG数の水増しである。
全60枚のCGの内、触手や背景の入れ替え、左右反転で作られたと思わしきものは26~7枚と半数近くを占める。
ED絵まで立ち絵改変で誤魔化す為、シナリオだけでなくCGまで投げっぱなしであり、これだけでフルプライス失格の赤牌といえるが、それ以外の配牌も悪い。
ギャンブルものとしての掘り下げが不十分で、登場するイカサマも「カードに傷を付ける」など、小学生の悪戯レベルである。
オーラスにはゲーム内ミニゲームのブラックジャックでブラックジャック(役)が存在しないというチョンボまで発見される。
スキップ可能とはいえ、製作陣が如何に付け焼刃のギャンブル知識で本作を手掛けたかの証左と言えよう。
これに立ち絵増殖やらエロシーンで突然シーン回想の挙動やらのバグのドラも合わさりクソの数え役満となった。
安牌の異世界物を掴んだと思ったら、まさかの直撃で箱点になり、スレには失笑が溢れることとなった。

GWに自粛を強いられた世間を尻目に、「失笑なら任せろ」と言わんばかりに登場したのが、4月末に発売したばかりのevoLLの『とっても明るい!お嬢様の満喫☆夢のどすけべ生活』である。
前年に、「風が吹けばストッキングが消える」でお馴染み『絶品バーガー』を送り込んだ新鋭が新たな方向性を携えて馳せ参じた。
「とっても明るい!」と題した本作だが、シナリオは「バスジャックで誘拐したら、レイプ願望のあるお嬢様に逆脅迫され仕方なく凌辱」という複雑怪奇なもの。
バカゲー狙いと思われるが、ぶれたコンセプトは凌辱ものとしてもバカゲーとしても満足することは無い。
主人公が凌辱に向いておらず、行為に入る前に挿入される鼻血や童貞臭いモノローグの演出がプレイヤーをいらだたせる。
それに続くのは、ピロートーク代わりの辛辣なH品評会制度であり、「主人公に感情移入出来ないのにダメ出しされる」という新手の言葉責めをしてくる。
一方のギャグはというと、「メイドが牛乳ととろろを入れ替えた」「言葉のダメージで9999のダメージが飛び出るのが見えた」など、バカゲーを馬鹿にするようなネタには乾いた笑いすら出ない。
全体的に何をしたかったのかが伝わらず、珍走団の如きライターの迷走っぷりには甚だ迷惑である。
前作『絶品バーガー』を下回る料理を出された美食家をして「エロゲから離れた方がライターの為」と評せしめ、スレ住人は大いに舌鼓を打つのであった。

6月に入ると前年にエントリー作を出したSUKARADOGから『家出ギャルを拾ったので育ててみた』が梅雨らしい陰湿極まるシステムで突き出されることになった。
ゲームを一回閉じると起動しなくなり、再インストールを要求と初っ端からイラつかせる本作だが、これはまだ掴みに過ぎない。
最大の問題はマウス左クリック以外の操作が出来ないことであり、息子をイカせる前に人差し指がイカれるという事態を引き起こす。
シナリオも設定を活かしきれない微妙さだが、ヒロインのイメチェンをCG差分とせず、41枚の内半分が被りという手抜きには、「お前は抜くんかい」と購入者が激怒しても仕方がない。
かくして「抜く為の利便性が低すぎて、エロゲに数えたくない」と断罪された本作は同ブランド2年連続のエントリーを飾ったのであった。

『家出ギャル』の放った湿気を吹き飛ばすべく、正統派クソゲー御一行様がお祭り男の座を争い立て続けに着弾。
夏真っ盛りを迎えようとするKOTYeの戦場は、足元ぬかるむ泥まみれ、もといクソまみれの地獄絵図と化したのである。

その急先鋒として、5月に発売されたpanacheの『ぱられるAKIBA学園』が自らのアイデンティティーを脱ぎ捨て参上した。
度重なる延期の果てに当初の予定から丸一年遅れで発売されたその姿は、初志貫徹とは言えないのが容易に窺い知れる内容であった。
本作のあらすじは異世界でヒロインの勇者一行とともに魔王を倒し、オタク文化を広めながら世界を復興するという意外と骨太なものである。
復興描写の都合上、筋の通った世界設定が求められるはずだが、本作は世界観を安定させる前にヒロインのキャラが安定しない。
共通ルートを終えると4人中3人がまるで別人に変貌し、プレイヤーの方がパラレルワールドに送られたかのような錯覚を味わうことになる。
委員長属性の勇者はネガティブモブに、吟遊詩人エルフは騒音お姉さんに、頭脳派魔導士は破壊行為中毒にと純然たる宣伝詐欺だが、
唯一変貌しない聖女に至っては徹頭徹尾イカれている為、結果として全員属性地雷と化す。
世界観についても、教育・文化そのものが無い為、オタク文化の布教以前に国家体制作りからやることが満載であり、踏む段階が多すぎて製作者が転落事故を引き起こしている。
貴族たちの腐敗など、無駄にリアルで気分を害する設定を挟んだと思えば、識字率が低い設定を踏み倒し遊戯王カードを普通に読むモブと、真面目に読むのがバカバカしいだけである。
およそシナリオには期待できない拙さだが、エロについても覚束ない。
個別ルートでも大半が3Pとアブノーマルなシチュが多い癖、巨乳ヒロインでもパイズリはゼロと「何をもってこの配分にしたのか」と小一時間問い詰めたい。
製作者の都合に振り回され、プレイヤーまで振り回した本作は、「ファンタジー」「異世界」といった本年の流行かつ鬼門の象徴として、KOTYeのコレクションに収められた。

8月になると、キャラメルBOXいちご味の『下戸勇者~酒は飲まねど酒池肉林!~』が夏の熱気を冷ますべく、絶対零度の呪文を携え戦場に現れた。
本作はドラゴンクエストシリーズを元ネタとしたパロディ抜きゲーだが、笑いを催すどころか、輝く息の如き寒いネタが所狭しと敷き詰められている。
始まりの町「アリアハン」をもじった「アリエヘン」はまだマシで、戦闘テキストや選択肢ループのパロディは脈絡もなくただ差し込まれ、笑い所として成立していない。
「チャラリーンハナカラニューギュー」といった呪文や、いつかの大賞作を彷彿とさせる名前枠長文化ネタなど、もはや元ネタの統一性も時事性も皆無であり、読み進める程苦痛にしかならない。
かつての強豪『銃騎士』の再来の如き寒さに対し、選評者から作中のセリフをもじり「アナキラシタクネーショック」と評され、草も生えないその醜態を知らしめた。
システム周りも、未読一択で声が重なりまくるスキップやカーソルを合わせないと表示されないコンフィグと、実績のあるブランド系列とは思えない代物である。
あまりの寒さに「語る気が失せる」とやや手短に報告された本作だったが、一部のスレ住人からはわかりやすいダダスベリゲーとして注目の的となった。
だがしかし、単に「語る気が失せる」では済まされないその正体を後に知った住人たちは戦慄することになる。

勇者のドスベリ納涼宴会芸も終わり、夏の終わりが近づく9月、「俺たちの百物語はこれからだ」と妖怪が襲い掛かってきた。
8月発売、ももいろPocketの『ぶっかけ陰陽師絵巻 ~Hなお祓いいたします~』の慟哭である。
同ブランドはスワンアイの正統後継者として2019年の『カスタムcute』、2020年の『姫武将』に続き3年連続の参戦となった。
本作は陰陽師の主人公が巷に蔓延るHな呪いを精液で解除する和風ファンタジー抜きゲーだが、素材を活かすどころか、そもそも素材が間違っている。
平安風な世界観に場違い極まりない現代風私服のヒロインや同ブランドの前作『姫武将』から流用したドットの粗い背景と、のっけから躓いて立ち上がることは無い。
肝心のCGについても、親戚のCalcite『幻想カジノ』から「CGを流用して水増し」を伝授されており、フルプライスにもかかわらず実質1jksを下回る。
テキストも陳腐なモノローグにより実用性は骨抜きにされ、「腹にぶっかける」を選んだのに、腹を写さないCGを無理くり誤魔化そうとする所業にはタイトル詐欺も甚だしい。
本筋は主人公の妖怪呪い考察が大半を占め、ヒロインとのイチャイチャも端折ったまま、ボスとの戦闘といった山場も立ち絵流用の戦闘CGの前には興ざめである。
この時点で壮絶な出来だが、そこはやはりスワン系、システム周りにも救済は無い。
かつての同門ブランドの大賞作、みるきーぽこの『孕らぽこ』に倣い、ノーヒントのぶっかけ三択を間違えるとルートが消えたり、途中で終わる嫌がらせ仕様を搭載している。
これにセーブ&ロードで対処しようとすると、前作同様の5~6秒の暗転が首を絞めてくる有様である。
そんな惨たらしい出来に飽き足らず、10月末には本作のDL版が某所の10本1万円セールに登場し、前代未聞の売り逃げを完遂させてしまう。
わずか2か月で税込9,680円の本作が実質1,000円と9割近い値下げとなり、発売日に購入したユーザーに哀悼の意を表したい。
一方で、白昼堂々の逃走劇に対し「もともと1,000円で売るのを想定して作ったのでは?」と邪推の声も上がってしまう。
こうしてCG流用、愚昧なエロ描写、無味乾燥なシナリオ、悪辣なルート周りに価格暴落と悪の陰険五行説を提唱したももいろPocketは
同ブランド3度目の正直にして同系ブランド3代目の大賞というクソ大河の完成に向け名乗りを上げたのである。

妖怪の跳梁跋扈によりどんよりした雰囲気の中、秋深まる10月末には大河ドラマの主役の座を取り返すべく、まさかの真打が登場した。
歴史もので評価の高いインレから『源平繚乱絵巻 -GIKEI-』が一ノ谷の戦いさながらの崖下りで奇襲を仕掛けて来たのである。
本作は現代の主人公が過去にタイムリープして、源義経として源平争乱の時代を戦い抜くというあらすじである。
プレイ時間30時間超、2回のループを挟んで実質一本道の本作は、純粋に歴史ものを期待した層を憤死させる杜撰な展開が問題である。
本筋では度重なるタイムリープで過去の歴史改変の影響が現代に現れる描写を展開する一方、
最終盤にはそんな設定をかなぐり捨ててパラレルワールドと開き直り、ボスの悪霊と少年漫画さながらのドッカンバトルに挑む。
そこに至るまでも、日常シーンで義妹ヒロインの蘊蓄がテンポを損ない、「日本最古の温泉」やら「ギリシャ悲劇」やら、源平合戦どころか日本史にすら無関係な豆知識自慢が展開される。
「太陽以外で最も明るい星」で金星をシカトする間違いも見受けられ、いかがでしたかブログを斜め読みする程度の信憑性には首をかしげざるを得ない。
せめてエロに救いを求めても、魅力的な女体化武将達にエロシーンは存在せず、現代から一緒に来たヒロイン二人で計5回と諸行無常を感じさせる。
勇壮な歴史絵巻たる中盤まで懐疑的にみられてしまう顛末に「神は細部に宿る」という言葉の重さを噛み締めるのであった。

『GIKEI』の非業の最期を見届けたスレ住人が対峙したのは、5月の発表当初より夏の怪物……むしろラスボスとして危険視されていた大作であった。
8月発売Vanille Macaronの『Cuteness is justice』がタイトルに合わぬ禍々しい姿でこの混乱に畳みかけてきたのである。
ファンタジー世界を舞台にしたやりこみ育成SLGと銘打った本作だが、ブランド処女作にしていきなり三部作構想、HPだけで分かる低品質、それでいてほぼフルプライスと
悪臭を通り越して腐乱臭を漂わせており、かねてより追跡対象となっていた。
かつて圧倒的な画力で頂点に立った『ママ2』になぞらえて、「見えている地雷」と称された実態を紐解こう。
本作のストーリーは亡国の皇女リンを調教師の主人公が拾い、Hを含めた調教育成を施して、亡国の再興を目指すという壮大なもののはずだが、
冒頭から「エンパイアエルフ王国」「ドワーフ王国」と安っぽい固有名称には噴飯せざるを得ない。
ジャンルとしては『プリンセスメーカー』に連なる昔ながらのコマンド式育成シミュレーションだが、SLGパートでは能力の増減に関するヒントが見当たらない。
ちょっとした能力の不足で即BADENDに直行する難易度に対し、マニュアルやパッケージにヒントは出ておらず、攻略には情報サイトBugBugの記事が必読となっている。
基本ノーヒントの理不尽さに加えて、本旨のやりこみを困難にする古臭いシステムがプレイヤーを苦しめる。
セーブは行動選択画面しか出来ない上に10個しか作れず、地道に8種類のエンディングを開拓していくトライ&エラーありきのゲーム性を根本から過酷なものとしている。
ゲームテンポも劣悪で、コマンドの度に切れるスキップ、場面切り替えで頻出する読み込みロードの嵐と、ストレステストの如き賦役が待ち受けている。
これを補うエロはというと、そもそもCGのクオリティが商業水準に到達していない。
キャラ毎に絵柄が安定せず、同人レベルとされた塗りが「見えている地雷」とされた所以だが、射精断面の白濁液に黄色い粒が混じるグロ画像が発見されるとスレを恐怖のどん底に陥れた。
添えられるテキストも「、」(読点)の位置がぐちゃぐちゃで読みづらく、形容詞の対象や主語が行方不明になる稚拙なものである。
何とか理解したとしても3クリックで射精するものや、普段弱気な主人公が急にハイテンションセクハラおやじに豹変するものなど、失笑をかっさらう出来である。
ほとんどのシーンで20~30クリック以下で終了する為、実用性には全く期待出来ない惨状だが、例によって調教コマンドのエロシーンは省略出来ず、1周クリアするまで100回超の苦役の一部と化す。
絶え間ない地獄の果てに登場するラスボスは一枚絵のモブトカゲであり、三部作の一作目とはいえ、苦役の代価の盛り上がりの無さに辟易するだけである。
理不尽かつやりこみに不便なシステム、商業失格のCG、我流点整を欠くテキストと税込8,580円の体裁をなしておらず、ラスボス級の圧倒的な戦闘力はスレを論争に巻き込んだ。
「2,000円の同人としてなら許せる」「いや、1,000円でもやりたくない」「熱意を感じる分余計にきつい」「Win98の時代に出ていたなら……」
程度の問題ではあるが、否否両論入り乱れた本作は本年のKOTYeのセンターとして、最後まで引き合いに出され続ける地位に君臨したのである。

ラスボス襲来に沸き立つスレだったが、そこに流行りの異世界エルフが魔弓ならぬ魔球を投じてきた。
North Boxの『エルフのお嫁さん ~ハーレム婚推奨~』がスクランブル登板してきたのである。
異世界ものに学園ものを合わせヒロインはエルフと、抜きゲーとしては置きに行った作品に見えるが、絵以外の褒め所が無い。
シナリオは食事とセックスを往復し、舞台装置の学園のせいで異世界設定が死ぬという共食いが発生している。
一方でエロシーンはお祭り風のBGMが自家発電を牽制し、タイトルの「ハーレム」要素も4回の3Pと4人フェラ一回ではただの見せ球に過ぎない。
その癖持ち球自体が少なく、終盤の展開が各ルートで重複し、プレイ内容もワンパターンな配球に終始している。
こうして宣伝された大半の属性が死に絶え、多様な購入者のストライクゾーンを避ける魔球と化した本作に対し、スレ住人は見送り四球を選ぶのであった。

エルフによる魔球を見送り、塁に出た先に待ち受けていたのは天使と悪魔の凸凹バッテリーであった。
QUINCE SOFTの『ごほうしアクマとオシオキてんし』の降臨である。
1月の発売直後もテンポを損なう読み込みロードの多さから話題となった本作だが、11月に未知の問題が発覚しKOTYeに召されることになった。
大筋としては天使と悪魔2人が旅館を手伝い、過疎化にあえぐ離島を盛り上げる町興しものだが、そんな触れ込みも悪魔の戯言に過ぎない。
採用2週間でいきなりリピート客増、それに続くご都合主義丸出しなPR動画撮影など、ろくな苦労も葛藤も無しに島は盛り上がってしまう。
エロの導入も強引で、仕事中に突然大浴場でおっぱじめ、何をしに来たのかを忘れる展開は「欲情しにってか!」とのツッコミとともに嘲笑の的となった。
そんな僅少な描写力に対して、膨大なのはフレームレートである。
本作はまるでベンチマークテストの如く、システムが許容する最大負荷をかけてフレームレートを暴走させる。
高スペックGPUではゲームの軽さで負荷が上がりきらないものの、密かに無駄な電力を消費するこの仕様は昨今叫ばれるSDGsの対極を行くものであり、
選評者をして新タイトル「こっそりグラボにオシオキべんち」としてクソの禁書目録に収められたのであった。

悪魔によるPCの強制労働を目の当たりにした衝撃も冷めやらぬ中、12月にやって来たのはやる気のない風俗嬢であった。
11月末に発売されたばかりのCalciteの「ニート娘を更生させよ!~性技があれば生きていける~」が同ブランド2連勤を果たすことになったのである。
本作のシナリオはニート更生員の主人公が社会不適合者のヒロイン達を更生させて就職を目指すというものだが、
税込7,480円のミドルプライスながら、メーカー推奨1.5GBに対し、ゲーム容量が302MBしかない。
『ママ2』の悪夢を思い出すような数値だが、そのダイエット法はとにかくセリフをケチること。
売りとされたヒロインを更生させる展開は1周+各ヒロイン個別1回で終了し、途中の交流描写をカット。
CG40枚、シーン数36と体裁だけはまともだが、モノローグが水増しされたエロシーンではなかなか声が聞こえない。
「しゃべれよ!ちゃんと喘げよ!イクの早すぎるよ!」の三重苦には右手も職務放棄してしまうだろう。
おまけにBugBug記事以外で未告知の風俗堕展開も強引展開の末のやっつけ仕事であり、難病の闘病資金の為に風俗勤務という倫理観の破綻した展開には開いた口が塞がらない。
システムも完成度が低く、説明書通りに右クリックが動作しない、クイックロードでタイトルに戻る、シーン回想の範囲設定ミスなど、大小さまざまな不手際が脇を固める。
風俗堕ちの末、ヒロインが出演したAVの男優名がなぜか「Man」と、厚顔無恥な出来に「ニートに働かせる前に、お前が働け」と製作陣に物申したいところである。
一方で前作がスワン系の新奥義「CGを流用して水増し」を咎められた為、反省したのか。
本作は卑怯な真似に頼らない正統派のクソゲーとしてKOTYe2021の社員名簿に名を連ねることになった。

12月も末に差し掛かり年の瀬の足音が聞こえる頃、まさかのブランドから年内最後の選評が投下された。
シルキーズプラスの「ふゆから、くるる。」が同系ブランドで初めてKOTYeの門を叩いたのである。
本作はすみっこソフトより引き継いだSFミステリー、四季シリーズの最終作だが、最終盤の解決パートを除き問題が山積している。
全体の1/3を占める導入パートでは、理路整然さの欠片もないヒロインが主人公の話も聞かずに明後日の方向に脱線しまくる。
メインの推理パートでも読者が推理する為に必要な情報が開示されず、事情聴取でさえミスリードさせる会話劇には、十戒を唱えたノックスも草葉の陰で激怒するだろう。
これに加えてエロシーンでは、百合をPRしたにもかかわらずふたなりを混入させ、属性を持たない選評者を阿鼻叫喚に至らしめた。
独特な作風でファンからは好評を得た本作だが、本編の常識にとらわれない世界観をエロにまで持ち込む姿勢にスレ住人も感嘆するのであった。

2022年を迎え、例年通り1月の予備期間に突入した。めぼしい有力作をあらかた平らげたスレ住人たちは大賞談議に花を咲かせていたが、そこに早馬が届き、事態は風雲急を告げることになる。
CIRCUSの『D.C.4 Plus Harmony ~ダ・カーポ4~ プラスハーモニー』の非道な行いが告発されたのである。
曲芸商法と言われる悪徳な作品展開を続けてきた同ブランドの末端がついにKOTYeの捜査網にかかったのであった。
本作は全年齢版『D.C.4』の18禁移植作だが、罪状はシンプルに「手抜き移植」である。
18禁化の都合上、CVの変更を余儀なくされた本作だが、本編シナリオの一言一句を一切変えずに解き放たれ、ファン層に刺さる毒矢と化した。
加えて、本編終了後の追加要素であるエロにも埋伏の毒が仕込まれている。
メイン・サブ合わせて8人のヒロインに各4枚のエロCGだが、その大半を流用して2回使うという誰得仕様を搭載したのである。
死の商人たるCIRCUSの売り方に辟易する者もいたが、同時に「曲芸にしては良くやっている」と罪深い擁護まで飛び出し、スレはヒートアップするのであった。

曲芸の出廷により、にわかに盛り上がり始めた予備期間も残るは1月31日のみ。
選評締め切りまであとわずかになって、立て続けに3本の選評が襲来し、KOTYe史上稀に見る電撃戦が展開された。
その先鋒を務めるのはPrincess Sugarの『プリンセス☆シスターズ!~四姉妹は全員あなたの許嫁~』である。
外国のお姫様四姉妹とのイチャラブをお題目に据えた本作だったが、萌えゲーを期待させておいて、その実態は虚無シナリオの抜きゲーであることからKOTYeの舞踏会に連れ出された。
ヒロインは一人を除いて自ら股を開く尻軽であり、それに発情するだけの竿と化した主人公には「空気」以外の印象を持つことは無い。
イチャイチャ要素のはずの日常描写もひたすら虚無で、「記憶喪失がフライパンで治る」などの愚鈍なネタではお茶も濁せない。
美麗CGにより抜きゲーとしては佳作に成り得るものの、エロ以外で未読スキップを推奨された本作は、文字通り最終日の動乱の姫始めとして役割を果たすことになった。

そんなビッチ姫の窮地を救うべく、何やら見覚えのある勇者が戦場に現れた。
キャラメルBOXいちご味の『下戸勇者~酒は飲まねど酒池肉林!~』が最終日の動乱を制圧すべく再臨したのである。
8月に肝試し要らずの極寒スベリ芸で「語る気が失せる」と評された本作だが、ただのスベリゲーに留まらない圧倒的破壊力を備えた正体が詳らかになった。
DQパロとしては、原作ヒロインのビ〇〇カやベ〇〇カを「バ行で始まり、カで終わる」と小馬鹿にする無神経な茶番が発見された。
寒いネタもエロまで侵食し、「会心の一撃」と叫びながらピストンするなど、抜けず笑えずの二兎を追うものと化してしまっている。
凌辱メインの抜きゲーである本作だが、ネタの侵食以外にもエロに多くの問題を抱え、パルプンテ並みの不安定さを誇る。
CG70枚、シーン数33の見かけに反してその半数以上がハリボテであり、
各エピソード冒頭のチラ見せH、需要不明な主人公の女体化逆レイプ、和姦用とはいえオホ声を台無しにするゆったりBGMと、実用性無しに枠だけ埋めるシーンが入り乱れる。
凌辱で悪役然たる主人公も和姦中に「はぐれ狩り」もといDQあるあるを語りだし、抜き所をバシルーラしてしまう。
一方で世界観描写は過剰に凝っており、貨幣経済の実情まで長々説明してくるが、クリアまで15時間弱の苦行を増長させるだけである。
いくら終盤でそれらの設定を回収しようとも、そこに至るまでの失態の数々の前には、力の入れ所が間違っていると言わざるを得ない。
止めとばかりに確認ダイアログから簡単に背景をブラックアウト出来る立ち絵鑑賞用バグも発見され、ようやく全容解明となった。
寒いギャグとおざなりなエロという二刀流で地獄の帝王の如き本作はDQシリーズの魔王にならい、最後に進化の秘法によって真の姿を現したのである。

魔王の踏み荒らした大地を砂漠に変えるべく、本年のトリを務めたのはDESSERT Softの『彼女は友達ですか?恋人ですか?それともトメフレですか? Second』である。
2019年エントリーのシリーズ前作が甘酸っぱいヒロインとのイチャイチャ同棲から急転直下のハーレム性奴隷bot化で顰蹙を買ったのに対し、
本作は評価されていた日常イチャイチャ描写を大幅削減し、改悪したハーレムエロを増量した罪で再び御用となった。
イチャイチャが薄い分、性奴隷化してもショックは少ないとも取れるが、前作比およそ半減のプレイ時間で、売りのネタ要素すら削減されてしまっては擁護のしようもない。
本作で登場する「露骨にハーレム結成に向けて立ち回る妹」は前作の「策士妹」と悪い意味で対照的な存在であり、同ブランドを三年連続のKOTYeハーレムに導く原動力となったことを付け加えておく。

以上、全エントリー作品16本が出そろったところで、本年の大賞および次点を発表する。

次点は、
『ぶっかけ陰陽師絵巻~Hなお祓いいたします~』
『下戸勇者~酒は飲まねど酒池肉林!~』
そして大賞は、
『Cuteness is justice』
とする。

本年のクソゲーを俯瞰してみると前年の傾向の先鋭化が顕著であると見て取れる。
すなわち手抜きに基づく「価格不相応」の品質と事前情報と実態の乖離による「裏切り」の二大要素であり、多くの作品を貶めることになった。
前者については、パンデミック不況によってエロゲ業界全体の製作サイドが予算不足に陥っていたのは想像に難くない。
一方で後者については非常に解釈が難しく、「自分が理想を抱きすぎたのかもしれない」と選評執筆をためらう者が続出した。
書くべきか、書かざるべきか……
苦悶に苛まれた選評者達はスレで悩みを吐露し、その度に住人たちが慰めたのである。
「KOTYeはネタスレであり、選評はあくまで『個人の意見』である」と。
本年程KOTYeの原理原則が確認されることはかつて無かったかもしれない。
炎上騒動やクソゲーへの注目など、SNSを含めた一人一人の行動が作品に影響を与えやすい世の中となり、ある意味で選評のハードルが上がってしまったが故の事態と言えよう。
結果として『冥契』、『GIKEI』、『ふゆくる』、『DC4PH』のように世間からある程度評価されている作品も選評が寄せられたが、
いずれもクソの誹りを免れない「裏切り」を抱えており、全体としては凡作以上としても選評執筆に至った心境を咎めることは誰も出来ないのである。
例によって次点以上には、このようなためらいを伴って選評が届いた作品たちとは一線を画す魔物が据えられた。

TPOをわきまえない寒いネタとおざなりエロで需要不明の権化となった『下戸勇者』。
スワン系の後継者として、飽くなき手抜きで無価値に近づこうとする『ぶっかけ陰陽師』。
ヒントの無い理不尽難度、不便UIに低質なCGと価格不相応の極致たる『Cuteness』。
価格不相応、ユーザーへの裏切りとクソの二大要素を携えるいずれ劣らぬ強者揃いだが、僅差で『Cuteness』が大賞たりえたのは、
ひとえに最も「悲劇的な存在」だったからである。
ではゲーム制作における本当の意味での「悲劇」とは、いったい何であろうか。
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を始め、古来より悲劇が人を惹きつけるのは、様々な思いに生きる登場人物達に観客が十二分に共感することで、後に待ち受ける皮肉な結末に涙するからである。
同様に『Cuteness』も製作陣が思い描いた理想は痛いほど伝わり、多くの共感を集めたが、天と地よりも理想からかけ離れた実態がスレ住人たちに憐憫の感情を抱かせることとなった。
壮大なファンタジーの序章を謳いながら、安っぽい固有名称、モブの様なラスボスにただただ呆れ、
やりこみSLGとしては、ゲームテンポの悪さやセーブ枠の少なさに辛酸を舐め、
調教シーンでは、塗りの足らないCGと不自由な日本語に対して右手はマウスから離れない。
本来、熱意が伝わること自体は評価されるべきであり、多少の粗があっても擁護したくなるゲームも存在するが、『Cuteness』の場合は熱意の分だけ現実の冷酷さが強調されるだけであった。
BugBug記事において「やりこみSLGの楽しさを伝えたい」と製作者が熱弁しているが、熱意よりも先に目に付くのはジャンル特有の難易度と作業感であり、
ことごとく低いクオリティも相まって、むしろ同ジャンルに嫌悪感を抱かせる結果には落涙を禁じ得ないのである。
振り返ると、手抜きに基づく価格不相応を非難された作品は数多存在するが、手抜きを感じさせない「理想の片鱗」と裏腹な「実力不足」にこそ、『Cuteness』の悲劇性は極まってしまっている。
これに対して、『下戸勇者』は需要不明とはいえ、寒いネタさえ我慢できれば、冒険ファンタジーとして成立している。
安定せずとも一部凌辱エロに活路も見出せる為、全く救いが無いとは言えない。
スワン系の正統後継者である『ぶっかけ陰陽師』も同系としてはやや小粒と言える。
売り逃げの問題こそあれ、手抜き中心のクソ要素では大賞としては力不足感が否めないだろう。

『Cuteness』のゲーム性の絶対的な酷さは歴代の魔王達と比較しても遜色無いが、伝わる情熱でスレ住人たちの心情的評価を持ち上げることが出来たのは特徴的である。
安価であれば挑戦したいという声も上がり、「間違いなくクソなのに応援はしたい」という矛盾した感情を持たせたが、それでも満場一致で大賞に選出され「懐の深さ」を見せつけた。
本作を手掛けた夢追い人の挑戦はエロゲの裾野を広げる可能性を感じさせ、理想を求めて戦う姿勢の重要性を説き、それだけではままならない過酷な現実を示すカタストロフとして語り継ぐにふさわしい。
熱意だけではプロ失格という当たり前の厳しさを教えてくれた『Cuteness』に対し、クソを評するアマチュアの端くれとしてKOTYe2021大賞の栄誉を贈りたい。

かくして、KOTYeの新たな王者が誕生したが、我々の冒険は終わらない。
未だ「クソゲーとは何か」の真理探究の途上であり、逆風吹きすさぶエロゲ業界も含め、険しき道のりがこれからも待ち受けているだろう。
それでも……たとえどんな悲しい終局が待ち受けていようとも、明日に踏み出す一歩を止めるわけにはいかない。
悲哀なる王『Cuteness』と同じく、ただひたすら嵐の中を彷徨い続けるKOTYeの物語もまだ終わっていないのだから。
「どんなに長くとも、明けない夜はない」
好事家たちの冒険は続く。悲劇ではない、誰もが笑いあえる大団円のエンドロールを追い求めて。

最後に慈しむべき大賞作へ、現世で叶わぬ愛の言葉を叫び、KOTYe2021の幕切れとする。
「ああ『Cuteness』よ、どうしてあなたは『クソゲー』なの」
最終更新:2022年06月07日 20:55