源平繚乱絵巻 -GIKEI- 選評

ブランド インレ
ジャンル 平安剛勇列伝
原画・キャラクターデザイン ひっさつくん、ぬい
シナリオ 葉山こよーて
発売日 2021/3/26
価格 豪華特装版:14,800円(税別)
初回限定版:9,800円(税別)

選評

【2021】クソゲーオブザイヤーinエロゲー板 避難所 2本目
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356: 源平繚乱絵巻 -GIKEI- ◆Mj0lc9DLzk :2021/10/26(火) 21:41:33 ID:3iL.VpWI
源平繚乱絵巻 -GIKEI-

ブランド:インレ
販売日:2021年03月26日
シナリオ:葉山こよーて
原画:ひっさつくん/ぬい
ジャンル:平安剛勇列伝
価格:初回限定版 9,800円 / 豪華特装版 14,800円(共に税別)

〇ストーリー(公式サイトより)
源氏に所縁のある叶納神社の息子・叶納世志常。
その世志常には楼子という妹と対岸の西叶納神社の娘・紫都香という幼なじみがいる。
同じ学園に通う仲良し3人組。その仲は、ずっと続くものだと思っていた……。

そんなある日、3人は学園の修学旅行で京都へ行くことに。
その修学旅行先で、妹の楼子が鞍馬寺で謎の失踪をしてしまう。
楼子の行方を捜すため、世志常と紫都香も鞍馬寺へ。
だが、世志常と紫都香は鞍馬寺の金堂で気を失ってしまった。
2人は目を覚ますと、同じ鞍馬寺だが何かが違う。
そう……そこは約850年前、平安時代の鞍馬寺だった。

〇作品概要
本作品はいわゆるタイムスリップ&ループモノである。
ループモノであると明言こそされていないが
全3章構成であることは公式HPに明記されており
ループモノであることは容易に想像できるものとなっている。

平安時代末期・源平合戦の渦中にタイムスリップした主人公たち3人。
平家に捕えられてしまった妹を救うため主人公は表舞台に姿を現さない源義経に扮する。
妹を助け出すため、そして幼馴染と共に3人で現代に帰還するため平家を打ち滅ぼすことを誓う。

  • 妹を救う。
  • 史実通りに行動する(タイムパラドックスを防ぐため)。
  • 平家を滅ぼす。
  • 3人で現代に帰還する。
これが主人公の当面の目標となる。

〇問題点

第一章は基本的に史実通りに物事が進む√となる。
主人公はある人物から"平家を滅ぼしたタイミングで妹を助け出せれば現代に帰れる"
と聞かされていたため、主人公と幼馴染は史実通り行動し
結果、史実通り『壇ノ浦の戦い』にて平家を滅ぼし妹を救出することに成功する。
ここまでだが、歴史的な部分をかなり詳しく描写しているため
好き嫌いは分かれそうだがシナリオのクオリティは高い。
だが問題なのはここから。

これで3人そろって現代に帰れると思った主人公たち。
だが実際に帰還できたのは妹のみで主人公と幼馴染は平安時代に取り残されてしまう。
そしてその後、主人公は史実通り徐々に周囲に追い詰められていく。
そして史実通り、最後は死亡しループすることとなる。

問題点はこの追い詰められる描写が長すぎること。
作品概要で書いたが、本作品がループモノであるというのは容易に想像できるものである。
そのため現代に帰れなくなった時点で史実通り死亡しループすることは予想がつく。
だが、結末が分かっているにも関わらず追い詰められていくという陰鬱な描写を
延々読まされるため、話を進めるにつれプレイヤーの気分も暗く陰鬱になっていく。
前述の"歴史的な部分をかなり詳しく描写"が完全にマイナスに働いてしまっている。
プレイヤー側としては「もう結末分かってるからとっとと死ね!」とまで思ってしまう。

そして予想通り死亡からのループ発生。
『壇ノ浦の戦い』の翌日にループすることとなる。

第二章は北行伝説という"義経は実は生きていた"という伝説に沿って行動する√となる。

ループしていることについて妹と幼馴染に説明する主人公。
だがあまりに荒唐無稽な話に二人とも全く信じてくれない。

同じ結末を回避するため前回と出来る限り違う行動をとる主人公。
だが今回は幼馴染だけ現代に帰還、主人公と妹が平安時代に取り残されてしまう。

そして主人公と妹は前回と異なる行動をとっていく中で
結果として北行伝説と同様の行動をとることとなる。

史実とは異なるワクワク感を味わえる本章。
だが二章でも不満の溜る終末を迎えることとなる。

ある事情からお世話になった平泉(東北地方)から北海道へと渡ることとなった主人公たち一同。
だが平泉の使者から「平泉に変事が!」と聞かされ平泉に帰ると住人の多くが虐殺されていた。
そして戦死したはずの郎党(家来)に弓で撃たれ死亡し二章終了。
ちなみに平泉が何故襲われていたのか、何故郎党が生き返ったのかといった説明は一切なし。
これが数あるBadEndの1つなら分からないでもないが
三章あるうちの二章の終わりとしてはあまりに唐突すぎて
プレイヤーは困惑するしかない。
そして再び『壇ノ浦の戦い』の翌日にループ。

第三章では物語の真相が明らかになる。
物語中盤、3人をタイムスリップさせた張本人から真相が語られる。
だがその張本人からタイムスリップの原理及び理由については説明がなされたが
ループが発生する原理、なぜ主人公だけ記憶を引き継げるのか、
なぜループ地点が『壇ノ浦の戦い』の翌日なのか、
なぜ主人公はヒロインと恋仲になった記憶だけ抜け落ちているのか
といった部分の説明は一切なし。
尚、タイムスリップさせた理由についてだが、以下のように説明されている。(※1-1)

「現代で封印されていた悪霊が復活し平安時代にタイムスリップ。
 悪霊は平安時代で水源に毒を流し日本を支配しようとしている。
 もし平安時代で毒が回ってしまうと現代の世界も同じようになってしまう。
 だから悪霊を倒すため必要な人材(主人公たち3人)と共にタイムスリップし悪霊を止めにきた(要約)」

要は平安時代と現代は繋がっているということが明確に示されている。

だがその後、物語が史実とは異なる方向に進むと
「この世界はパラレルワールドだから史実と違っても大丈夫」と言い放たれる始末。(※1-2)
だがパラレルワールドならそもそも現代に影響はないため
わざわざタイムスリップし悪霊を倒しに行く必要がなくなる。
つまり物語が根底から覆されることになる。

この時点でかなり物語として破綻しかけているものの物語自体が面白ければ
「こまけえことはいいんだよ」で押し切れるギリギリのラインには踏みとどまっている。
実際"物語自体は面白い"と言えなくもない。
だがその"物語の面白さ"を純粋に楽しめない大きな問題点が存在している。

参照画像:
+ ...
  • ※1-1

  • ※1-2
 ここの場面の画面キャプチャも取得したかったが
 唐突に一言出てきただけなので場面を特定できずキャプチャ断念。
 ただ他者のレビューで同様のツッコミを確認したので発言自体があったことは確実。
 もしどなたか該当場面のキャプチャ持っていたら提供頂けると幸いです。

その大きな問題点は『歴史の蘊蓄(ウンチク)が頻繁に挿入される』ところである。
主人公は歴史に詳しくないため、歴女のヒロイン二人(稀にサブキャラ)が
主人公に歴史について説明するシーンが多々ある。
それ自体は問題ないし、むしろ世界観や物語を理解するために必要な描写である。
だが本筋と全く関係ない蘊蓄や小ネタ・小話が大量に挿入されるため
シナリオ進行のテンポを壊滅的なまでに悪くしてしまう。
具体的には『日本最古の温泉(※2-1)』『梅の花の歴史(※2-2)』といったものであり
当然これらは本筋とは一切関係ない雑学。
それどころか『ギリシア悲劇(※2-3)』といった日本史に関係ない蘊蓄が語られたり
挙句の果てには『最も明るい星シリウス(※2-4)』といった最早歴史と全く関係ない蘊蓄まで語りだす始末。
こういった蘊蓄が日常パートで数分おきに挿入されテンポを台無しにしている。
とにかく蘊蓄が多すぎて早く進めたいプレイヤーの感情を逆撫しイライラさせる。
しかもこれがオートプレイで67時間かかる(公式にて発表済)長編作品で
全編を通じ繰り広げられるのだからたまったものではない。

尚、この蘊蓄部分をSAVE&LOADすれば自分だけの歴史辞書を作ることができる。(※2-5)
※例えば(※2-5)の0005-02を開けば後出の[EX-13 平安時代の女房]を読むことができる。

劇中で主人公が
「さすが、楼子先生……オレの質問にも簡単に答えてくれる。」
と言っていたがプレイヤーからすると
「そもそも質問しないでくれ!」と突っ込まずにはいられない。(※2-6)

参照画像:
+ ...
  • ※2-1 日本最古の温泉
  • ※2-2 梅の花の歴史
  • ※2-3 ギリシア悲劇
  • ※2-4 最も明るい星シリウス
  • ※2-5
  • ※2-6

最後に、Hシーンの少なさも問題として上げられる。
女性キャラクターは軽く20人以上いるにも関わらず
Hシーンが存在するのが2人だけ。しかも2人で計5回という少なさ。
魅力的なサブキャラがいるにも関わらず
EXTRA的な扱いでHシーンを入れるという配慮も無し。

〇まとめ
シナリオだけ見れば問題点は多々あれどクソゲーと呼ぶほどの作品ではない。
だが蘊蓄の挿入により"面白さ以前に読み進めるのが辛い"レベルの作品へと昇華されてしまった。

〇その他、蘊蓄画像一覧
+ ...
  • EX-1 のみのすくね
  • EX-2 伊豆大島は流刑地?
  • EX-3 乙和椿の伝説
  • EX-4 釜石という地名の由来
  • EX-5 五臓六腑の語源
  • EX-6 御朱印の歴史
  • EX-7 治世の能臣、乱世の奸雄
  • EX-8 十二単ともぬけの殻
  • EX-9 上臈
  • EX-10 信長が平氏の後継者?
  • EX-11 東京湾の昔の呼び方
  • EX-12 納豆の起源は源氏
  • EX-13 平安時代の女房
  • EX-14 平将門の祟り
  • EX-15 勇略の主を震わす者は身 危うく(略)

補足

375: 源平繚乱絵巻 -GIKEI- ◆Mj0lc9DLzk :2021/10/27(水) 00:08:14 ID:NMqhbS5o
>>358について(※1-2)の画面キャプチャとれたので
一部修正・追記させてください。

修正:
「この世界はパラレルワールドだから史実と違っても大丈夫」と言い放たれる始末。(※1-2)
  ↓
「だが、この世界は恐らくパラレルワールド。なら、史実どおりじゃなくても構わない」
と言い放たれる始末。(※3-1)

追記:
平安時代で水に毒が回れば現代に影響がでる
(平安時代と現代がリンクしている)ことは明言されており
実際に主人公はその影響をニュースにて確認している。(※3-2~4)
にも拘わらず最終盤で主人公は「この世界は恐らくパラレルワールド」と判断している。
何故そのような判断に至ったのかの説明は一切ない。

参照画像:
+ ...
  • ※3-1
  • ※3-2
  • ※3-3
  • ※4-4
最終更新:2021年11月14日 19:12