朝日新聞社の記事へ飛ぶ (魚拓)


2010年7月11日21時12分

 家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の問題で農林水産省は、現場で短時間に感染を診断できる簡易キットの輸入や、家畜の死体を分解処理する装置を備えた車両の導入などの対策に乗り出す。宮崎県での流行で家畜の処理の遅れから感染拡大を招いたことを教訓に、今後、別の場所で発生した際にすばやく対処できるよう、来年度の予算概算要求や定員要求にこれらの事業を盛り込む方針だ。

 宮崎県で計約27万頭の牛や豚が殺処分された今回の流行では当初、診断はすべて遺伝子検査で行っていた。検査できる施設は東京の1カ所しかなく、検体の輸送などに1日以上かかったため、6月以降は写真などで症状を診断し判断する方法に切り替えた。

 今後、別の地域で感染が疑われる事例が出た場合、症状を見ただけで適切に診断できる獣医師がすぐ確保できるとは限らない。このため、現場で検体を採取して2~3時間で診断できる簡易検査キットをスウェーデンから近く輸入する方向だ。ただ、これまでに英国や韓国などで使われた際、感度に問題があったとの報告もあり、判定は遺伝子検査や写真判定と併用して総合的に実施される見込みだ。

 また今回の流行では、豚への感染が発生した際に大量の家畜を埋める土地が用意できなかったことが、感染のさらなる拡大を招いた。埋める以外に、処理施設で死体を肉骨粉と油に分解する方法もあるが、宮崎では施設への家畜の運び込みに周辺の農家が反対し、実施できなかった。

 このため農水省は、家畜の死体を処理する装置を備えた大型のトレーラーの開発を検討している。車両が口蹄疫が発生した農場まで出向き、殺処分した家畜を現場で分解処理する。1日あたり牛で100頭程度を想定している。

 農水省が現在所有する車両では鶏を焼却することしかできない。大きさや費用の面で課題もあるが、開発する際は鶏の死体を粉砕する機能を持つデンマークの車両を参考にする予定。

 早期の殺処分、埋却を実現するため、発生直後に現場に入って処理を支援する国の専用チームを設ける。チームは殺処分に当たる獣医師数人と、補佐の作業員十数人などで構成。普段は動物衛生研究所や各家畜改良センターなどで勤務するが、口蹄疫が発生した場合は通常業務を離れて素早く現地入りする。山田正彦農水相は「日本のどこでいつ起こってもおかしくない状況。そのときにさっと処理できるよう準備している」と話す。(大谷聡)
7月 農水省発表 防疫関係

最終更新:2010年07月19日 04:21