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 長い年月をかけて作り上げるブランド牛の「種牛」。

 宮崎県で拡大する家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」で、ついに種牛にも被害が及んだ。防疫対策を取っていた宮崎県高鍋町の県家畜改良事業団で、感染の疑いが発生。肉牛の生産が盛んな九州各県も、ブランド牛の種牛を守るため警戒を強めている。

 同事業団には種牛55頭のほか、種牛の肉質検査・評価用の牛259頭がいる。うち5頭に口蹄疫感染の疑いがあり、同じ農場にいた種牛49頭も家畜伝染病予防法に基づき殺処分される。残りの主力級6頭は同県西都市に避難ずみ。

 口蹄疫は、人には感染しない。感染した肉が市場に出回ることもなく、もし感染した肉を食べたとしても、人体に影響はないとされる。

 ただ、ウイルスの感染力が強いことなどから、感染が疑われる牛や豚だけでなく、いっしょに飼育されているすべてを殺処分することが、家畜伝染病予防法で定められている。

 宮崎県によると、同事業団では、県内で口蹄疫の疑いがある牛が確認された後の4月27、28日にシートで牛舎内を仕切り、牛を分離。発生が多発している同県川南町の職員に出勤を控えさせ、牛舎に入る際はシャワーを浴びるなど衛生面に注意を払ってきた。

 それでも施設内で感染の疑いが判明したことを受け、他県の種牛施設は警戒を強めている。

 長崎県内の大半の種牛を扱う同県肉用牛改良センター(平戸市)では、全国的に有名な「平茂晴(ひらしげはる)」のほか「雲仙丸(うんぜんまる)」「勝乃勝(かつのかつ)」など29頭を飼育。宮崎県で疑い例が発生した後は、22日にセンター内で検討会議を実施。同日から、種牛の見学など県内外からの訪問は基本的に断り、敷地内に入ることを禁じた。

 佐賀県武雄市の県畜産試験場では「佐賀牛」につながる種牛1頭と、その候補牛7頭を飼育。4月の口蹄疫発生から、PRのための一般見学を中止している。

 ◆種牛=霜降りが入るなど品質の高い子牛を得るため、雌牛に精液を提供する雄牛。家畜改良増殖法に基づき、農林水産省が認定している。肉用牛では2009年度末現在、全国で1829頭が認定されており、畜産の盛んな県や民間業者が保有している。宮崎県の種牛で種付けされた牛肉は特に評価が高く、子牛は全国に出荷され、「松阪牛」などのブランド牛として育てられる。

(2010年5月17日15時54分 読売新聞)
5月 イベント 防疫関係

最終更新:2010年07月16日 03:08