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2010年05月18日08時24分

 宮崎県で口蹄(こうてい)疫の感染拡大が止まらない。
 殺処分の対象となった牛、豚などの家畜は8万頭を超えた。国内最悪の規模だ。さらに、宮崎牛ブランドの種牛にも感染の疑いが生じた。
 同県産子牛の約4割は県外で肥育され、松阪牛や近江牛、佐賀牛などに商品化されている。優れた子牛の供給が滞れば、他県の畜産低迷にもつながりかねない。
 ウイルスの感染力が強いだけに、関係自治体と国はこれ以上の拡大を防がねばならない。本県にも万全の予防対策が求められる。
 口蹄疫にかかると口や蹄(ひづめ)に水ぶくれができ発熱、食欲不振、歩行困難などで衰弱し死に至る。
 最も恐れられているのは、空気感染などにより家畜同士の感染力が猛烈に強い点だ。感染を防ぐため一度に大量に殺す必要も出てくる。農家らへの打撃が極めて大きいゆえんだ。
 日本では2000年に宮崎と北海道で発生して以来だが、今回は国内で初めて豚にも広がった。殺処分対象の9割が豚である。養豚は飼育密度が濃く感染が速いため、被害拡大につながったとみられている。
 現在、宮崎県の畜産関係者らの懸命の努力で被害は同県内でとどまっている。何としてもこのまま封じ込めて終息させねばならない。設置された政府の対策本部と連携し、消毒など防疫態勢の強化、畜産農家への経済的支援、風評被害の防止に努めてほしい。
 本県畜産関係者の不安も大きい。
 畜舎や車両の消毒など自衛策に追われているが、「消毒液が手に入らない」といった声も聞かれる。県や地元自治体には現場の声に即した、きめ細かな対策を取ってもらいたい。
 ウイルスは人や車、小動物、輸入飼料などさまざまな媒介によって運ばれると考えられている。港や高速道路など交通の要所ごとでの消毒も必要だ。四国4県が連絡を密にし、水際で防がねばならない。
 今後は感染源、感染ルートの解明も大切になってこよう。
 中国や韓国でも今年に入って口蹄疫が流行したが、宮崎のウイルスは香港や韓国で確認されたウイルスと塩基配列がほぼ一致する。
 これらの地域から日本に入ってきた可能性はないか。ルートなどを解明することが防疫に有効なはずだ。
5月 被害状況 防疫関係

最終更新:2010年07月16日 05:08