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2010.05.17

 宮崎県で発生している家畜伝染病「口蹄(こうてい)疫」問題が、ついに高級ブランド「宮崎牛」にまで広がった。宮崎牛を飼育する県家畜改良事業団(同県高鍋町)で口蹄疫の疑いのある肥育牛5頭が見つかったことを受け、県は16日、種牛49頭など計308頭の牛の殺処分を決めたと発表した。

 宮崎牛は県外のブランド和牛産地に子牛を出荷するいわば供給基地。県は事前に優秀な種雄牛6頭を“避難”させているが、万が一この6頭も口蹄疫にかかっていれば宮崎の畜産だけでなくブランド和牛のピンチにもなりかねない。

 「もし、6頭がクロであれば宮崎の畜産は終わり。種牛を育てるのに7、8年はかかる」。JA宮崎中央会の羽田正治会長は16日の記者会見で沈痛な面持ちで語った。

 全国トップクラスの肉質を誇る宮崎牛は、年間8万頭の子牛が出荷され、うち半数は県外で松坂牛や佐賀牛、近江牛などのブランド和牛として肥育される。

 最後の望みがかかる種雄牛6頭は、農家に供給する種付け用精液の9割を受け持つ“エース牛”。国との協議で、13日から14日にかけ、同事業団から20キロ離れた西都市に特例的に避難させていた。しかし、同事業団で感染した疑いのある牛が見つかったのは14日。この6頭は移動直前の遺伝子検査では陰性だったが、ウイルスの潜伏期間が7-10日ほどあるため、感染の疑いはぬぐえない。

 県は、遺伝子検査を15日から1週間続け、経過観察を行う。その結果、異常がなければ殺処分の対象とはしない方針。16日の再検査では6頭とも陰性だった。

 新たな種雄牛の飼育には7年程度かかるといい、49頭が殺処分対象となっただけでも県内畜産業界にとっては大きな打撃。県の担当者は「(殺処分は)断腸の思い。心からおわびする」と繰り返した。現在、冷凍精液の在庫は15万本あり、農家への供給は約1年分はあるという。
5月 被害状況 防疫関係

最終更新:2010年07月16日 04:47