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 政府は17日、宮崎県で口蹄疫(こうていえき)の被害が拡大していることを受け、鳩山首相を本部長とする口蹄疫対策本部の第1回会合を開いた。

 会議で、鳩山首相は「口蹄疫は危機管理上、大変、重大な課題。防疫措置に万全を期す」と述べた。口蹄疫で殺処分の対象となっている牛と豚は、8万5000頭を超え、国内最悪の被害状況となっており、政府は対策を急ぐことにした。

 会議終了後に記者会見した平野官房長官は「牛の移動制限や(感染した牛の)殺処分を徹底、充実させる」と述べた。政府は、処分した牛を埋める作業や消毒のために、自衛隊の派遣人員を増員する。さらに、政府が畜産農家の生活や経営を支援し、宮崎県など地元自治体の対策にかかった費用を国の特別交付税で負担することも決めた。当面の対策費用について、鳩山首相は同日昼、赤松農相に2010年度予算の予備費から最大1000億円を拠出するように指示した。だが、対策本部の会合後、鳩山首相は「額の問題についてはこれからだ」と述べ、具体的な予算規模については今後、検討する方針を示した。

 また、感染の拡大防止のために、一定地域内の家畜をすべて処分できるように家畜伝染病予防法(家伝法)を改正する可能性について、平野官房長官は、「撲滅することを最優先に考え、(全頭の殺処分が)絶対に必要なら、やらなければならないが、(今日は)協議してない」と述べた。

 現行の家伝法では、検査で、口蹄疫の陽性反応が出た家畜と、同じ農場内の家畜については、国や共済の補償金が交付され、殺処分の対象となる。宮崎県などからは、一定の地域内について、感染していない健康な家畜も含めて殺処分して、感染拡大を防ぐべきだとの声も上がっている。しかし、農家に対する補償の問題や、強制的な処分が財産権の侵害にあたるとの指摘もあり、今後の対策本部での議論の焦点になりそうだ。

 ◆口蹄疫=牛や豚など蹄(ひづめ)のある動物のかかるウイルス性の伝染病。伝染力が極めて強く、発熱したり、口の中や蹄の付け根などに水ぶくれができたりする。動物伝染病の国際的監視機関「国際獣疫事務局」は、人間には感染しないとしており、感染した動物の肉や牛乳を摂取しても人体に影響はない。

(2010年5月18日01時15分 読売新聞)
5月 対応 補償 防疫関係

最終更新:2010年07月17日 02:36