宮崎県で感染が拡大する家畜伝染病「口蹄疫(こうていえき)」は、ほとんどの種牛を殺処分する事態にまで深刻化した。
約34万6000頭を飼育する鹿児島県内でも「鹿児島黒牛」に代表される県産牛を守るため、種牛を管理する県肉用牛改良研究所(曽於市)で厳戒態勢を敷き、感染防止に懸命だ。
県肉用牛改良研究所では現在、24頭の種牛のほか、将来の種牛を選抜するための雄牛50頭や卵子を供給する雌牛など計約250頭を飼育している。県内ではこのほか、民間の種牛管理者15戸で種牛を飼育している。
これまで同研究所では、出入りする車両を自動噴霧器を使って消毒していた。しかし、宮崎県で口蹄疫の疑いが確認された4月20日以降、毎朝、入り口付近に消毒用の石灰を散布、出入り口に職員が待機し、1台ずつ噴霧器で丹念に消毒薬を散布する方式に変更した。
また、種牛を見学するため、畜産農家が研究所を訪れることも少なくなかったが、今回の発生を受けて、所内への立ち入りも関係者だけに制限。職員に対しては、所内に入る際に着替えを徹底するなど、感染防止に力を注いでいる。
同研究所によると、県内で飼育されている約3割が研究所の種牛の精子を使用している。桑水郁朗所長(58)は「種牛1頭をつくるのに7年以上かかる。もし、感染し殺処分することになれば、県内の肉牛生産に与える影響は計り知れない。絶対にウイルスを侵入させないため、最大限の防除態勢を敷いている」と語った。
県は今月7日、県内の全畜産農家約1万4300戸に対して、家畜伝染病予防法に基づき施設内の消毒を行うよう命令。県畜産課は「民間の種牛管理者も、畜産農家以上の防疫態勢で、感染防止に取り組んでいる」と話している。(赤井孝和、浦郷明生)
(2010年5月18日17時43分 読売新聞)
5月 防疫関係
最終更新:2010年07月17日 02:43