宮崎県で家畜伝染病の口蹄(こうてい)疫が拡大し、九州で家畜市場閉鎖の動きが広がっている。ブランド牛「近江牛」で名高い滋賀県内で感染は確認されていないが、近江牛を育てる県内の畜産農家は子牛の約6割を九州から仕入れており、今後の子牛確保に影響も懸念されている。
宮崎県内で感染が確認された4月20日以降、滋賀県家畜保健衛生所は県内で緊急の立ち入り調査を実施。3月から4月22日までに宮崎から購入された計271頭の牛をすべて診察したが、感染は確認されていない。
県内では約180戸の畜産農家が牛と豚計約3万2000頭を飼育している。立ち入り調査の対象ではない牛や豚についても、県は畜産農家への聞き取りから「異常はない」としている。
今後、心配されるのが子牛の確保だ。県によると、県内に入ってくる年間4500頭から5000頭の子牛のうち、宮崎県産が最多で約4割、九州全体だと6割を占める。「近江牛」の定義は「滋賀県内で最も長く肥育された黒毛和種」で、畜産農家は県内外から仕入れた子牛を大きくして出荷している。
県畜産課は「九州の牛は大きくなると言われ、最近は宮崎の子牛も増えてきていた。いま、農家はどこから仕入れようか思案しているのでは」という。
近江八幡市安土町大中で約200頭の近江牛を育てている松井信夫さん(49)は、毎月8頭前後の子牛を主に九州から買っているが、5月は見送った。「今後は各肥育農家が九州以外の産地に子牛を求め、相場が値上がりするだろう。子牛を確保できたとしても、九州以外の子牛を、これまでの近江牛と同じ肉質にできるかどうか心配だ」と話す。
県はこれまで、人の移動による口蹄疫ウイルスの拡散を警戒し、畜産農家を集める会合は控えてきた。ウイルスの潜伏期間で最長とされる3週間が経過し、異常が確認されていないのを受け、19日から県内4カ所で畜産農家を対象にした研修会を開き、防疫対策の徹底を呼びかける。
【 2010年05月18日 22時59分 】
5月 防疫関係
最終更新:2010年07月17日 03:15