2010年5月18日1時21分
鳩山内閣は17日、宮崎県で発生した家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)の被害拡大を食い止めるため、鳩山由紀夫首相を本部長とする口蹄疫対策本部を発足させ、宮崎県庁に現地対策本部も設置した。防疫体制の強化や被害農家への経済支援などを行う。ただ、対策費の金額を巡り政府内で食い違いも表面化するなど、混乱も見られる。
鳩山首相は17日夕、対策本部の発足会合を首相官邸で開き、「口蹄疫の拡大が懸念され、大変重大な課題だ。政府を挙げて対処し、一刻も早く宮崎県の皆さんに安心してもらえる状況を作らなければならない」と述べた。今月16日までの口蹄疫の感染疑い・確定例は計111例、殺処分の対象になった牛は8210頭、豚は7万7511頭、ヤギが2頭で計8万5723頭にのぼる。
対策本部は、これ以上の被害の拡大を防ぐため、車両や道路の消毒の徹底や、自衛隊の派遣・増員の実施、家畜を殺処分するなどの被害を受けた畜産農家や移動が制限される農家に対する生活支援や経営再建対策をとる方針を決めた。また、関係自治体が負担する殺処分などの経費に対する特別交付税措置や、国からの支出の迅速化を図ることも確認した。
拡大防止には、一定区域内の家畜全頭を殺処分することが有効との指摘もある。だが、そのためには、殺処分を感染が疑われる家畜に限定している現行の家畜伝染病予防法を改正するか、特別措置法を制定する必要がある。平野博文官房長官は17日の会見で「全頭を殺処分して抑えるという考え方もあるが、現行の法律でできるのかという議論もある」と述べ、今後の検討課題との認識を示した。
政府内の対応には混乱もみられた。
首相は17日昼に赤松広隆農林水産相らと会談。その後、出席者の一人は記者団に、口蹄疫の対策費として「予備費から1千億円使っていいということだった」と紹介したが、平野官房長官は同日夕の記者会見で「まったく承知していない」と否定。首相は同日夕、記者団に「額はこれからだが、迅速性が求められているときには、予備費を使用することが正しい判断ではないか」と述べた。
政府は口蹄疫が確認された4月20日、赤松農水相を本部長とする対策本部を同省内に設置したが、首相の指示に基づき、首相自身をトップに据え、全閣僚が参加する対策本部に格上げすることにした。副本部長には赤松農水相と平野官房長官が就いた。
現地対策本部は山田正彦農水副大臣を本部長とし、小川勝也首相補佐官(農業政策担当)のほか農水省、防衛省、総務省、財務省など関係省庁の実務者ら19人を常駐させる。
平野官房長官は16日に宮崎県庁で東国原英夫知事と会談した際、要望を首相に伝えると約束していた。
5月 対応 被害状況 防疫関係
最終更新:2010年07月17日 02:58