2010.5.18 20:02
宮崎県で家畜の伝染病、口蹄(こうてい)疫が拡大している問題で、農林水産省は18日、東京・霞ヶ関で専門家が防疫対応をする「牛豚等疾病小委員会」を開催し、拡大防止のために口蹄疫の症状を抑えるワクチンの使用を検討すべきだとの結論をまとめた。宮崎県では同日、新たに15カ所で感染疑い例が判明し、殺処分対象は1市4町の計約11万4千頭に拡大。東国原英夫知事は感染拡大防止と早期撲滅のため非常事態宣言を発令した。
委員会終了後、委員長代理の寺門誠致(のぶゆき)共立製薬先端技術開発センター長が会見し、対応策を明らかにした。
家畜へのワクチン接種は口蹄疫の症状を緩和し、ほかの家畜に感染しにくくする効果がある。発症のペースを落とし、殺処分を計画的に行うことができるメリットもある。その一方で、感染の完全な予防はできず、症状がわかりにくくなるため、感染経路の特定は逆に困難になる可能性もある。
寺門氏は「使用は慎重に検討されるべきだ。また、使用した家畜は処分しなければ、国際的に清浄国の認定は得られない」と述べた。ワクチンは現在約70万頭分の備蓄があり、接種地域や対象は今後、検討すべきだとした。
委員会では、一定の地域を決め、感染の疑いがある家畜だけでなく、疑いのない家畜も含め予防的に「全頭処分すべきだ」との意見も出されたという。
現行の家畜伝染病予防法では、口蹄疫の陽性反応が出た家畜と、同じ農場内の家畜が殺処分の対象となっており、予防的な殺処分には法改正や特別措置法の制定が必要となる。これについて、赤松広隆農林水産相は同日午前の閣議後会見で、「人の財産権を侵す話で、物理的にも無理がある」と否定的な見解を示していた。
委員会に先立ち、宮崎県の東国原知事は「拡大を止めることができない状況だ。全国にも感染が拡大する可能性を否定できない」として、非常事態宣言を発令した。
口蹄疫の発症地域では、車両の消毒を畜産農家以外の一般車両にも徹底。発症していない地域でも同様に、イベントの延期や、不要不急の外出の自粛、マスクの着用や手足の洗浄などを呼びかける。東国原知事は、宣言は「県民に事態を認識してもらうためのお願いレベル」としている。
5月 対応 防疫関係
最終更新:2010年07月17日 03:13