家畜伝染病の口蹄疫問題で、宮崎牛ブランドを支えてきた種牛「安平(やすひら)」が殺処分されることが17日までに決まった。管理する宮崎県家畜改良事業団(高鍋町)で感染牛が見つかったためで、ブランド種牛の殺処分は初めて。地元の畜産関係者は「宮崎の宝を失った」と落胆している。
宮崎県庁畜産課の男性職員は「安平は宮崎の畜産を支えたエリート中のエリートで、私どもの誇り。値段では言えないぐらいの財産、宝を失うことになり、大きなショックを受けている」と涙声で語った。
同事業団では種牛49頭、食用牛259頭を管理。このうち5頭に口蹄疫の症状が確認され、家畜伝染病予防法に基づいてすべて殺処分されることが決まった。殺処分の期日は未定。
県庁などによると、安平の精液から人工授精で生み出された食用の牛は約20万頭。宮崎牛は上質な味わいで知られるが、特に安平からの牛はロース面が大きく霜降りもきめ細やかとされる。地元メディアなどによると、安平の精液は全盛期で1本(約0・5CC)25万円だったという。
安平の父は宮崎県産の「安福」、母は岐阜県産の「きよふく」。名前は、1989年(平元)に生まれたことからつけられた。91年に精液の採取、供給を始め、07年に引退。種牛の生殖能力のピークが8歳ごろとされる中、長く宮崎牛ブランドを支え、同事業団には功績を称える等身大の銅像が建てられた。多くの種牛は引退してすぐに処分されるが、安平は異例の扱いで、4月12日に21歳の誕生日を迎えた。
県内で初めて口蹄疫感染の疑いがある牛が確認されたことを受け、同事業団では先月下旬、牛舎の外周フェンスをシートで囲い、消毒液を牛や敷地内に散布。血統の良い「スーパー種牛」と呼ばれる主力級6頭は避難させていた。
安平の後代種牛は11頭いるが、畜産関係者は「安平は100年に1度の種牛。もうあんなに素晴らしい牛は出てこないのでは」と話している。
最終更新:2010年07月17日 03:16